M1 エイブラムス(M1 Abrams)とは、アメリカ合衆国をはじめとした、西側諸国の主力戦車(MBT)一つである。
開発はクライスラー・ディフェンス(現:ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ)で、第3世代戦車(90式戦車、T-80など)に属する主力戦車である。1981年に正式採用された戦車であり、現在までに複数のバリエーションが存在している。
1970年代、米陸軍のMBTは控えめに見ても旧式化が進み陳腐化していた。東側諸国では着々とMBT開発が進み、115mm滑腔砲を搭載したT-62の開発も聞こえて来る中、米陸軍は第2世代型MBTに属するM60を長らく改良して使用することが続いていた。
流石に危機感を感じたこのことからレオパルド1を開発した西ドイツと共同で新たな主力戦車を開発するMBT-70計画がスタートするものの、二カ国でも思惑はすれ違い、結果的に挫折。相互に独自開発の道を選ぶことになる。
クライスラー・ディフェンスが主開発元となって完成されたM1は、開発当初から120mm滑腔砲の搭載が念頭に置かれて開発薦められていたものの開発が遅れたため、当初のM1やM1IP(IPM1)にはロイヤル・オードナンスL58 105mmライフル砲(制式名:M68)を搭載して実戦配備された。結果的に、M1A1を初めとした火力強化型にはラインメタルL44 120mm滑腔砲(制式名:M256)を搭載する事となる。
開発中に第4次中東戦争で対戦車ミサイルが猛威をふるったことから、装甲の研究もスタート。イギリスのチョバム研究所で開発された積層装甲(チョバム・アーマー)、空間装甲などなど様々な新しい装甲開発の成果も取り込まれることなった…が、結果的にアメリカではその後の複合素材装甲の開発に頓挫したのもあって、最終的に鉛の比重に近い劣化ウランを積層化した装甲が採用された。
エンジンは米軍MBTで使われて来た燃料であるガソリンより廉価な航空機用の燃料ケロシンを使う、軽量で信頼性が高い1500馬力のハネウェルAGT1500Cガスタービンエンジンを採用した。非常時には軽油・ガソリンも転用可能と言う兵站上の利点があるが、燃費の悪さは折り紙付きであり、アイドリング中に湯水の様に燃料を消費する。世界有数のアメリカ軍兵站能力を以てすれば解決できるものの、エンジンの燃費の悪さを補う為にディーゼルエンジンやガスタービン発電機の補助動力装置(APU)が湾岸戦争以後に装備された。
M1は改良が進められ、M1A1で120mm滑腔砲の搭載。M1A2では劣化ウランを使用した装甲化を行っている。
開発当初はガスタービンの燃費の悪さや車高の高さ等の色々な欠点が指摘され、評価も同時期開発のレオパルド2に離されていたものの、1991年の湾岸戦争にて実戦に投入された。
レーガン政権下などで大量のM1が生産されていたこともあり、本国向けM1A2も含めて1992年、トータル8322両(!)で終了。中東などでの輸出版(従来のディーゼルエンジンに換装、装甲は鋼板ともいわれるが定かではない)は1997年まで生産が続けられた。
M1とはいえないがM1の設計思想を受け継いだものとして、開発下のチームが携わった韓国のK1(88戦車)がある。
そ の後、M1A2をベースにC4I機能を搭載したM1A2SEP、市街地戦闘に特化したTUSKキットを搭載したM1A2TUSKなどのバリエーション開発 が進むが、これらの車輌はすべてM1、M1A1などの旧型車輌を回収し、改修作業を行って配備という形をとっている。フレーム(ドンガラ)まで解体したあ と錆や塗装を落としてもう一度組み立てるようなもので果たして改修といっていいものか悩むレベルのではあるのだが。
湾岸戦争、そのあとのイ ラク戦争などその能力を実戦において証明(コンバット・プルーブン)したM1A2は現在ではその性能を高く評価されているが、M1A2+TUSKで重量が 70トン近くなってしまうなど順調に肥大を続けており、これ以上のの際限ない重量増大にはいかなアメリカ軍としても懸念を示しつつあるのも実情である。
そ のため、次の改良型となるM1A3では新型軽量戦車砲、車内配線の見直し(光ファイバ化?)、自動装填化、装甲とエンジンの改良、等々によって火力と防御 力を維持したまま55トン級(初代M1と同じ水準)にまで軽量化するのではないか、という見方が示されている。このアプローチは日本の10式戦車(TK- X)、中国の0910工程などと似た道をアメリカが歩むのではないかという点で注目されているが、例によってドンガラを再利用したままでのダイエットには 様々な困難がつきまとうことが予想される。
このときの逸話として、湾岸戦争でT-72に至近距離で撃たれた125mm砲弾を全てはじき返した上に、3台全てのT-72を撃破したといわれている。なお、イラク軍側のT-72は輸出仕様兵器のお約束、性能の劣化した「モンキーモデル」であったと言われており、ロシア軍仕様のT-72では違った結果になる可能性もある。
又、戦場で故障したM1A1を回収することが出来ず鹵獲を恐れて破壊を決定。内部を爆破したものの完全破壊に至らず、同部隊のM1の主砲を数回打ち込んでもだめで、結果的に回収してみたら修理すれば直る程度のダメージしか与えられていなかったといわれる。
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最終更新:2025/12/07(日) 08:00
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