心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい)またはPTA(Post-traumatic stress disorder)とは、心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後になって様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。
心の傷は、心的外傷またはトラウマ(本来は単に「外傷」の意だが、日本では心的外傷として使用される場合がほとんどである)と呼ばれる。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷がある。
よって心的外傷後ストレス障害は、地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災や、テロ、監禁、虐待、強姦など犯罪など、多様な原因によって生じうる。
以下の3つの症状が、PTAと診断するための基本的症状であり、これらの症状が1ヶ月以上持続している場合にはPTA、1ヶ月未満の場合にはASD(急性ストレス障害)と診断する(DSM-4 TR)。
患者が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。そのため、その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとする。そのため、事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、身体性障害、身体運動性障害などが見られる。特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られる。
精神の一部が麻痺したままでいると、精神統合性の問題から身体的、心理的に異常信号が発せられる。そのため、不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引 き起こす場合がある。とくに子供の場合は客観的な知識がないため、映像や感覚が取り込まれ、はっきり原因の分からない腹痛、頭痛、吐き気、悪夢が繰り返さ れる。
これらの症状が1か月以上持続し、社会的、精神的機能障害を起こしている状態を指す。症状が3か月未満であれば急性、3か月以上であれば慢性と診断 する。大半のケースはストレス因子になる重大なショックを受けてから6か月以内に発症するが、6か月以上遅れて発症する「遅延型」も存在する。
現在から過去にさかのぼる「出来事」に対する記憶が、診断に重要である。しかしながら、1)重大な「出来事」の記憶 2)それほど重大でなかったが 事後的に記憶が再構成される 3)もともとなかった「出来事」が、あたかもあったかのように出来事の記憶となる このような3つの分類ができる点に留意す る必要があろう。
PTAを持つ人はしばしばアルコール依存症や薬物中毒といった嗜癖行動を抱えるが、それらの状態は異常事態に対する心理的外傷の反応、もしくは無自覚なまま施していた自己治療的な試みであると考えられている。しかし、嗜癖行動を放置するわけにはいかないので、治療はたいがい、まずその嗜癖行動を止めることから始まる。
PTAは、脳内に永続的な変化をもたらす。とくに心的外傷が幼少期などの成長過程で起きると、脳の発育にダメージをあたえ、海馬の不発達や萎縮、扁桃体領域の血流障害、ブローカ中枢部の機能低下などを起こす。
その結果、成人の場合でも原因となった刺激があまりにも強すぎた場合、一生涯、食事も一人では取れなくなるなど生活に重度の支障を来す場合もある。
これら機能障害は、顕著な海馬の萎縮などの場合を除いて、CTスキャンやMRIなど、従来の撮影システムで発見されるなど器質的に判別できるものと は限らない。そのため「精神障害は必ず脳の器質異常が検出されるもの」などといった、旧来然とした精神医学観をいまだに持っている者に、PTAを患う者 が詐病扱いされるなどの外傷の二次災害が起こりやすい。
こうした病理的特徴を再帰性といい、このような経緯でPTAが治らない、あるいは悪化することを再犠牲者化(revictimization)という。
上記のようなPTAの脳への影響は、現代の脳科学ではたとえ器質的に検出できなくとも、機能的障害として残ることは多くの研究で証明されている。ときには、人格形成に破壊的な影響を及ぼす。こういう事例にあてはめて「本人の意思」云々を議論することは有害であっても益は少なく、少なくとも治療的ではない。
fMRI(functional MRI)など、2009年現在アメリカで実用化が進められている脳の画像撮影システムでは、CT scanやMRI、RIなど従来の方法では可視化できなかった、上述のような脳の(器質的ではない)機能障害も可視化できるのではないか、という期待も持 たれている。
PTAは通常の処理能力を超えた極端なストレスが引き起こす生化学のメカニズムによるものとも考えられているため、深刻な過去の外傷からの回復を試みる患者にとっては、意識的なコントロールが及ばない領域の現象であるため、しばしばPTAからの回復は困難を極める。
治療は通常、薬物治療と精神療法の双方が用いられる。心理的外傷となる出来事への情緒的な反応を解決するには、薬物療法などの助けも借りながらも、ナラティブセラピーが最も有効だと考えられている。また、近年ではEMDRも効果的な治療方法として注目を集めている。
PTSDにおける回復とは、事件を繰り返し整理し、異常な状況や事件を思い出すことによる無力感や生々しい苦痛に襲われなくなる状況や、それに強く影響されず、最低限の生活ができるようになった状況を指す。
しかし、後遺症としてストレスホルモンによる海馬の萎縮、脳機能の低下が起きているので、この記憶処理作業には大変な困難がつきまとう。扁桃体の興奮によって「焼き付けられた異常」の処理は難しい。
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最終更新:2024/04/18(木) 14:00
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