ここではTPP推進派と反対派それぞれの主張を対置してリストアップする。
| 推進派 | 反対派 |
| TPPに入らなければ世界の流れに乗り遅れてしまう。 | TPPには世界GDP2位の中国、9位のインド、EUなどが入っていない。 GDP比でみると日米が9割を占めており、実質二国間のFTA・EPA状態である。 上記より、世界的な経済連携協定とは言いづらい。またTPPはアメリカを中心とするブロック経済の1つともいえるため、貿易自由化と単純にはいえない。 |
| TPPは、ASEAN構成国を含めたFTAAPになり、参加国が増えることで、現在参加していない中国もTPPをベースにしたルール作りを飲まざるを得なくなる。これは高いレベルの自由・法の支配を基盤とする先進国にとって有利である。 | ASEAN構成国の内、タイ・インドネシアが従う事は考えづらい。またAPEC構成国のロシア・中国が上海協力機構を結成しているのも考慮に入れていない。 |
| 自由貿易圏が今後作られていくのは確実であり、参加しなかった場合、日本が自由貿易によるメリットを享受出来なくなる可能性がある。 | TPP以外にもASEANを基にした経済圏や個別のFTA・EPA交渉による貿易が考えられる。 |
| 比較優位・劣位の法則、ヘクシャー・オリーンの定理に則って劣位産業をそのままに保護するのではなく、逆に労働と経営資源の移転を促進、助成するためにも参加すべき。 | 比較優位、ヘクシャーともに前提としている仮定と現実の状況とで大きな乖離があり、机上の空論に近く、主要なマクロ経済の教科書でも自由貿易推進の根拠にはなっていない。 参考文献「自由貿易の罠」 |
| ルールに納得が行かない場合、交渉から離脱すれば良い。 | 下記「TPPの交渉の席につく」参照 |
| 日本は少子化や景気の悪化でこれから内需は減っていく。だからTPPに参加すべきだ。 | 日本のこれらの問題は適切な景気刺激策を取れば大方解決できるものである。景気が悪いから子供が生まれないしデフレが加速する。 |
| アジアの需要を取り込むことができる。 | 通貨戦争と言われるような中で円は高止まりしており、数%関税がなくなったところで輸出を増やすことは難しい。 (例:ウォン安の影響のあるテレビの輸出等の消費財の輸出) そもそも日本の輸出の主力は円高に比較的強い工作機械やシリコンウエハー等の資本財である。 |
| グローバル化をして輸出を増やしていくことが大切であり、そのためにTPPに参加すべきだ。 | グローバリゼーションをいいものであると強調するが、先進国からしてみれば産業の空洞化、賃金の低下等デメリットが大きい。現にアメリカは国内産業の強化による雇用増加を目論んでいる。 また、グローバル化が極限まで進んだ韓国では平均時給でビックマックも買えなくなってしまったことを考慮すべきだ。 |
| 韓国は韓米FTAを締結している。貿易立国である日本も見習うべきだ。 | 米韓FTAは明らかな不平等条約であり、反面教師とすべきものである。 また、日本は輸出が2004年度GDP比13.36%で世界全体で見ても171位であり、韓国の2005年度42.5%、88位と比べても貿易立国とは単純にはいえない。 |
| 日米の安全保障政策についてのこじれ、普天間基地代替施設移設問題があるので、代償が必要。 | 日米の安全保障の強化が目的ならば他にいくらでも手はある。 また、 国防は自国のみでも十分行える状態で、そこに付随しての同盟があるべきである。(例:軍事費の増額、憲法の改正による自衛隊の国軍化) |
| 1.5%(農業)のために98.5%(農業以外の産業)が犠牲になってしまう。 | 問題を矮小化している。農業と工業だけの問題ではない。 むしろたかだかGDPで1%程度輸出を増やすために大多数の国民が犠牲になってしまって良いのか。 |
| 日本に有利なルールにするためにも交渉に早期に参加すべきである。 | 現与党に「外交」ができるとは思えない。ルール作りに参加しても、まともな交渉も出来ず日本に不利な内容になる可能性が高い。(例:世界的公約でCO225%削減、消費税5%UPを宣言) 2006年のP4協定から始まり現在の9カ国に増えるまで、数年がかりの交渉が行われているため、かなりの項目について条項が決定がされているはず。そんな中に今更日本にとって都合の良い項目をねじ込むのは無理である。 |
| 利権構造を外圧によって排除し、経済構造を変えることができる。 | 自国内の問題は自国で解決すべきであり、それを外国に頼るということは主権の放棄に他ならない。 |
| 経済連携協定を結んでいるにも関わらず、工業製品に対して高い関税が残っている場合がある(例えば、ベトナムの二輪車の関税は90%、乗用車の関税は83%である)。このような交渉態度と異なり、我が国がTPPで全ての品目について関税を撤廃するという質の高い協定を結ぶことができることを示せば、通商問題について、対外交渉力を向上させることが可能となる。 | 個々の関税は個別に解決すべきで、全面的な自由貿易は好ましくない。 |
| TPPでは、SPS協定上各国に要求される規律を変更することなく、透明性向上のために手続を細則化することが検討されている。またTBT(貿易の技術的障害に関する)協定については、基準の策定過程において相手国の利害関係者の参加を認めることや、一般からの重要なコメントへの 回答を開示することによる透明性の向上などが議論されている。もちろん、日本政府もTPP参加国からの意見を聴取することになるが、日本企業も貿易相手国の規制に対して意見を述べることが可能となる。これを反映するかどうかは各国の規制当局の判断や裁量によるものであり、意見を容れなければならないというものではない。 | WTO・SPS協定上の権利義務の変更が求められるおそれがある。 例えば,「措置の同等」と病害虫発生国であっても病害虫の発生していない地域において生産されれば輸入出来るとする「地域主義」について,ルールが一律に適用されるおそれがあるが,WTO・SPS協定に従って,個別案件毎に科学的根拠に基づいて慎重に検討することが難しくなる。 |
| アメリカは、TPPに参加しても豪州に対する砂糖の関税だけは維持する(他の国に対しては砂糖の関税は撤廃する)という交渉態度を採り、オーストラリアなどと対立している。 我が国がTPP加盟国全てに対し全ての農産物関税を撤廃するという交渉方針を採れば、TPPの質を高めることに貢献できる。 ガット・ウルグアイ・ ラウンド交渉で、生産者数が多く政治力が強い米だけを関税化の例外として救おうとしたことが、その代償としてのミニマム・アクセスの加重により米産業の衰退を招く一因となってしまったことがある。参加しなければ、TPPにおいても同じ代償を払う事になる。 二国間の経済連携協定交渉において、 農産物の例外扱いを要求すれば、相手国も農産物関税を維持しようとするだろう。日本の農産物輸出にとっては、我が国が米の関税を維持することは、人口減少時代を迎え国内市場が縮小相手国の関税を撤廃し、米の輸出によって農業を振興するという道を阻むことになる。アメリカもEUも多数の経済連携協定を締結しているが、農業補助金は一切変更していない。国内の農業補助金はTPP などの経済連携協定の対象ではない。 |
野菜類や果物ならまだしも米や小麦、豆やとうもろこし等は完全に規模が大きいほど有利で、限られた農地しか持てない日本の農業では太刀打ち出来ない。 |
| 現在の農産品の高関税は、農家にとっても集約化が起きないので強い農家になることを妨げる。 | コメやこんにゃくなど一部の農産品が突出して高い以外は、EUなどと比較しても日本の関税は取り立てて高いわけではない。 |
| アメリカやEUのように農業生産者に対して直接支払いという補助金を交付して生産量を維持すれば、生産者も不利益を受けない。水資源の保護、洪水の防止など農業が農産物生産以外に果たしている多面的機能も維持できる。 | アメリカやEUは途上国などに余った穀物を売りつけることで稼いでおり、そのようなことをされたせいでメキシコのとうもろこしは今大変な危機にある。日本もそのような倫理上問題のあることをすべきだろうか。 |
| 投資のホスト国というよりホーム国である日本にとっては、「特定措置の履行要求の禁止」は義務の加重ではなく、権利の拡充である。 日本企業が海外で投資をする際に、条件として現地合弁企業への技術移転や投資収益の日本への送金制限を課されないようにする国際ルールなどは、日本自身が積極的に求めていくべき事項である。 日本の海外直接投資残高の40.6%がTPP 参加9カ国に存在するので、それらの投資が保護される利益は大きい。 |
「特例措置」というものがある。現地政府が外資企業に賦課する義務のことで、原材料や部品に一定の比率で現地の国産品を使うことを義務付ける「ローカル・コンテント」が代表的である。 2009年にオバマ大統領が打ち出した「米国再生・再投資法」のバイ・アメリカン条項がある。これは米国の公共事業に使用する資材の一部に米国製品の使用を義務付けるもので、あからさまな保護主義として国際的な非難を浴びている。 その他の「特例措置」としては、マレーシアのブミプトラ政策のように外資系企業の役員や従業員に一定の比率で現地人の採用を義務付けるもの、中国で横行している外資系企業に設立認可の見返りとして先端技術の開示や知的財産権の移転を要求するものなどがある。 「特例措置」の履行要求の禁止で困るのは日本ではなく、むしろ米国やマレーシアである。 |
| アメリカ自身、NAFTA締結後にISD条項によって20件程度提訴されている。その教訓から、ISD条項を修正している。最近アメリカが締結したFTAでは、国家が正当な規制権限を行使した場合に、仲裁裁判で敗訴しないように投資協定の内容を改訂している。また日本は20以上の国とISD条項を結んでおり、それによる不利益を被っていない日本はISD条項を積極的に取り入れるべきである。これは双務条約であるので一方が不利益を被るものではない。またグーグル税など特定業種への規制は法学的には危険とされており、それに歯止めをかけるISD条項は必要である。 | 裁判には多額の無駄な費用がかかる。さらに裁判に必ず勝てるとも限らない。オーストラリアはISD条項に反対している。 |
| 現在のTPP協議では労働に関する規定について、合意が無い。また参加国のシンガポールと参加表明国のマレーシアは、地続きでシンガポールは単純労働者受け入れには厳しい。またブルネイも人口が35万人の小国で単純な移民受け入れは考えづらい。 | 労働力の移動の自由化が起きると、単純労働者が増加し、治安が悪化する。 |
| アメリカでは、労働や環境の基準が低い途上国から安い産品の輸入が行なわれることを、ソーシャル・ダンピング、あるいはエコ・ダンピングと言って非難する。 労働水準の引き下げをアメリカ政府が画策すれば、加盟国が共通の義務を負うというTPPという協定の性格から、アメリカの労働基準も低下するので矛盾する。 |
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| 投資家や貿易商等のビジネスマンや技術者、専門家を除き、いわゆる単純働者がFTAで取り扱われることはない。労働組合の政治力が強く、またテロ対策を講じなければならないアメリカは単純労働の自由化には反対してきたし、 単純労働者の移動を自由化の対象とするとの情報もない。 | |
| 著作権法が厳しいとされるアメリカでもファンジンと呼ばれる同人文化はあり、一概に犯罪化・即摘発になるとはいえない。 | 著作権法が高いレベルに設定される場合、現在日本が大きく抱える同人市場にとって悪影響になる可能性がある。 |
| TPPの全容について政府は十分な説明を果たしていない。交渉内容の日本語化すら公式には発表されていない。協議内容の秘密主義はACTAの時と似ている。 | |
| エネルギー自給率が低い日本は、貿易に頼る事が前提である。食料自給率を語るのは、その点を無視している。世界全体では農産物が余っており、国内消費分を見ても輸入したものを廃棄している分がある。また一般に先進国は食糧危機の影響があっても買い付けが可能であり、影響を受けるのは農産物輸出国である途上国の国民である。実際パキスタンでは2008年食糧危機が起きた際、農家は輸出をはかり、その後食物を緊急輸入せざるを得なかった。 | 農産物の場合足りなくなったからといって他国にすぐに増産してもらうことは非常に困難であり、「戦略物資」として扱うことができる点も考慮すべきである。よって食料自給率改善は必要である。また、例え食糧危機時に買い付けができたとしてもそれは途上国の国民を苦しめることに他ならない。 |
| 食料自給率はカロリーベースでは約40%と言われているが、金額ベースで見ると、70%以上である。また95年度以降の市場改革による影響があったにも関わらず、自給率は大きく落ち込んではいない。また今後人口減少と高齢化によるカロリー需要の減少が予想される為、農業の雇用を増やすには外へ需要を求める事が必要。 | |
| 各国とも主力の農産物は違っており、単純に輸入障壁を無くしたからといって、日本の場合コメ産業に、影響があるとはいえない。また日本のコメ価格は中国と比べても近年は価格が近づいており、カリフォルニア米よりも4割安い。 | 農家の1戸当たりのヘクタール数は、日本を1とするとアメリカはEUは9倍、アメリカは109倍、オーストラリアは1000倍以上である。このような状態で輸入障壁を無くすと、農家へのダメージが大きい。 |
| 一度大幅な制度変更が起きた場合、その後後戻り不可能な状況になることがある。米国議会で新貿易法・スーパー301条が制定された後、日米構造協議で日本に取り入れられた大店立地法により、地方はシャッター街になり地域共同体は壊れた。環境・教育・医療といった社会的共通資本は壊してはならない。 |
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最終更新:2025/12/08(月) 19:00
最終更新:2025/12/08(月) 18:00
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