アーサー王物語(アーサー王伝説)とは、ブリテン島の伝説を基にした中世騎士道物語である。円卓の騎士の冒険譚が有名で、現代のゲーム・アニメ作品などでもたびたび引用される。
概要
元々はローマ帝国崩壊後のブリテン島において、異民族(アングロ・サクソン人)と戦った伝説的英雄の存在が土台となっている。その後、イングランドやフランスなど欧州各地において、吟遊詩人などの手によりロマンティックな騎士道物語として彩られていった。
本来アーサー王と無関係な物語が伝説に取り込まれるなどして、多くのバリエーションが生まれていったが、15世紀にイングランドのトマス・マロリーが「アーサー王の死」として一連の物語をまとめあげ、ちょうどヨーロッパで出版技術が発達しつつある時代だったこともあり、以降これがスタンダードなストーリー構成となった。
物語は大きく四部に分かれる。
- アーサーの誕生からブリテン島統一、更にはローマ皇帝を倒すまで
前述の通り本来はローマ帝国崩壊後を舞台にした伝説だったので、時代設定がハチャメチャである。ローマ遠征から世代交代して、ガウェインはじめ有名な騎士たちが本格的に登場する。 - 円卓の騎士たちの冒険譚
ここからアーサーは本拠地キャメロット城から基本的に動かず、騎士たちを主人公とした短編が多数語られる。 - 聖杯探索
世界最高の騎士ガラハッドの登場に始まり、聖杯による奇蹟を求めて騎士たちは各々旅をする。最終的に三人の騎士が聖杯へとたどり着く。 - 円卓の王国の崩壊、アーサー王の死まで
これまでの様々な因縁が爆発、円卓の騎士たちが二勢力に分かれて争う事に。
先述の通り、様々な物語をつぎはぎして作られていった関係上、エピソードによってキャラクターの性格が大きく異なっていたり、死んだはずの人物がひょっこり再登場したりするのは御愛嬌。
!注意!
作品が書かれた時代、場所、本によってとにかく設定がバラバラで、何が正しいのか言い出すとぶっちゃけキリが無い。なのでここでは現代一般的に知られているであろう設定を簡単に説明する。異説や原設定については「本によっては」「古い設定では」「元々は」等の注釈を入れておく。また、作中における年代経過(序盤・終盤など)と、作品成立に関する現実の年代経過(古い本・初期の設定)との混同にも注意。
主な登場人物
アーサー王とその近親者たち
- アーサー王
父・ユーサー王が、敵対する領主ゴルロイスの妻・イグレーヌを魔法でNTRして…という少々後ろめたい出生の秘密を持つ、ぼくらのブリテン王。
自分が王の子である事を知らず、ユーサーの遺臣エクター(エクトール)に育てられるが、たまたまカンタベリーを訪れた際、「石に刺さった剣」(カリバーン)を引き抜いた事で、王として生きる事になる。よく誤解されるが、この剣はブリテン統一の戦いの途中で折られてしまっている。その後、湖の精に与えられたのが知らぬ人のいない聖剣「エクスカリバー」。
中盤以降は前線に立つ事は無く、基本的に騎士たちを送り出す王様としての役割に徹する。だがモーガン姐さんの罠にハメられ、愛剣エクスカリバーをすり替えられた事に気付かぬまま決闘に挑んだ事も。この時はチート鞘の性能を身を持って味わう羽目になった。
終盤、ランスロットの離反により円卓の騎士団が崩壊したことで、再び戦いの場に舞い戻る。
その際に不義の子であるモードレッドに国を預けるが、彼が謀反を起こしたためランスロットとは和睦。モードレッドとの最終決戦(カムランの戦い)に挑み、一騎討ちの末に相討ちとなる。瀕死のアーサーはエクスカリバーを湖の精に返却し、迎えに来た小舟に乗って楽園アヴァロンへと旅立ち、物語から退場する。
人々を惹きつける魅力はあるのだが、完璧超人ではなく、妻の浮気をずるずると黙認したり(気付かなかったとも)、知らなかったとはいえ異母姉と関係を持ってしまったりと、とにかく肝心なところでやらかしてしまう。最終的にそれらのツケにより王国は崩壊するのだが……。 - グィネヴィア(ギネヴィア)
アーサーの后。カメリアド王レオデグランスの娘。
出会いの部分は諸説あるが、まだブリテンを統一できていない足元不安定な頃のアーサー王と出会い、婚約した。アーサーの一目惚れとも、惹かれあっていたとも、政略結婚とも言われるが、結局のところ中盤以降の夫婦仲は微妙。一方でランスロットに一目惚れし、長きにわたって愛人関係を結び続ける。
最終章ではこの不倫をモードレッドらに告発され、火あぶりの刑に処されそうになる。この時はランスロットにより間一髪救出されるが、これによりランスロット派と反ランスロット派の決裂は決定的なものとなった。
一時休戦後の際にアーサー王の元に送り返されたグィネヴィアは、留守役のモードレッドに預けられるが、モードレッドが謀反を起こし、彼に求婚される。これを拒絶してロンドン塔で身を守るが(また時代設定が…)、その間にアーサーとモードレッドは相討ちとなった。
王国崩壊後はランスロットに別れを告げて修道女となり、数年後にこの世を去った。
基本的にランスロット一筋で、そこまで悪女という訳でもないのだが(ヒステリー気味なところはある)、アーサー王にとっては不幸を呼んでしまう存在である。アーサーとの夫婦関係もランスロットとの愛人関係も15~25年くらい続いていると思われるのだが、子供は一人も授からなかった。 - マーリン
父王ユーサーの代から仕える宮廷の魔術師。アーサー王の良き助言者。
魔術士としての能力は非常に高く「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」と言いたくなるレベルだが、賢者キャラの宿命なのか、物語後半でひどくあっさりと退場させられてしまう。
ドルイドのような異教の祈祷師がモチーフになっていると思われ、後世、物語のキリスト教色が強くなるに従って、彼の存在は邪魔になってしまったのではないかといわれる。
物語冒頭では、ユーサーをゴルロイスの姿に変化させてイグレーヌの元へ向かわせる。だが事が終わった後、イグレーヌは本物のゴルロイスが既にその時には戦死していた事を知り……という展開。しかし未亡人となったイグレーヌはその後ユーサーに再嫁していたりする。
わざわざ魔法で必要以上にNTRを演出するマーリン、有能……なのか? - モーガン・ル・フェイ(モルガン)
コーンウォール公ゴルロイスの三女で、アーサーの異父姉のひとり。
フェイは妖精の意だが、物語においては強大な魔女として登場する。たびたびアーサー王や円卓の騎士たちの前に立ちはだかり、時に直接、時に刺客を送り、彼らの命を狙う。一方で、瀕死のアーサー王をアヴァロンへと導く役を担っている事もある。
マーリン同様、キリスト教から見た異教・異文化の要素が含まれていると考えられ、味方役のマーリンに対して敵役を担うのが彼女である。 - モルゴース
コーンウォール公ゴルロイスの長女で、アーサーの異父姉のひとり。
オークニーのロット王の后。ガウェイン、モードレッドらの母。
ロット王は、アーサー王のブリテン統一の戦いにおいて激しく敵対する人物。モルゴースはスパイとしてアーサーの本拠に潜入するが、そこで彼女が姉とは知らぬアーサーに見初められ、この結果、姉弟の不義の子であるモードレッドをもうける事になる。はるか後々の王国崩壊へと繋がっていくとも知らず。
ロット王が戦死した後は未亡人として暮らしていたが、いつしか、ロット王を討取ったペリノアの息子・ラモラックと愛し合うようになる。何故だ。
その結果、父の仇の子と関係を結ぶ事に憤った実子ガヘリスによって殺害されてしまう。
名前の語感が似ている事も手伝ってか場合によってはモーガンと混同、役割がまとめられている事も。なおもう一人異父姉(次女)がいるのだが、特にこれと言って物語には登場しない。
円卓の騎士
ペリノア王の一族
武勇に優れた者が多い。
- ペリノア王
ノーサンバランドの王。本作屈指の脳筋。
当初は「唸る獣」なる怪物と戦うために泉のほとりにキャンプを張っているのだが、そこを通りがかった騎士に次々と決闘を挑んでは重傷を負わせるという、迷惑極まりない行為を行っている。お前は武蔵坊弁慶か。
アーサー王もこの決闘に巻き込まれ、「石に刺さっていた剣」を折られてしまう。絶体絶命の大ピンチであったが、乱入してきたマーリンがペリノアを倒して事なきを得た。なんという便利キャラ。この結果、アーサーは新たな武器・エクスカリバーを授かることになる。
その後はアーサー王に協力するようになり、ロット王討伐に参加。見事ロット王を討取る武功を挙げた、が。これによりペリノア一族とロット一族に深い確執が生まれ、以後の王宮に暗い影を落とすことになる。
そしてペリノア自身は、ロット王の息子・ガウェインにより暗殺されてしまうのである。 - ラモラック
ペリノア王の子。父の武勇を受け継ぐ、円卓の騎士最強格の一人。トリスタンとは当初険悪な仲だったが、後に友人となる。
かつて父が討ったロット王の未亡人・モルゴースと愛し合うも、彼女は息子ガヘリスの怒りを買い、殺害されてしまう。この時ラモラック自身は全くの丸腰だったため、騎士道精神に則って見逃された。
しかしロット一族の恨みは収まらず、槍試合に出場して疲労困憊のところをガウェインら兄弟4人に襲撃され、ラモラックは殺害されてしまった。四!対!一!騎士として恥ずかしくないのか!
この因縁と不幸の連鎖は彼の死後も続き、ラモラックの従兄弟が「晩餐会に毒リンゴを仕込む」というガウェイン暗殺計画を立てている(※ガウェインはリンゴが好物)。が、肝心の毒リンゴは全くの別人が食べてしまった。この晩餐会を主催していたのがグィネヴィア王妃であった為にあらぬ疑いがかかり、それをかばった愛人・ランスロットへと憎しみの向きは変わっていく。 - パーシヴァル(パルツィヴァル、ペルスヴァル)
ペリノア王の子だが、母の下、世間から離れた暮らしをして育っていた。だがある日、森で見かけた騎士の存在に憧れ、アーサー王の宮廷へと赴く。
育った環境もあって純粋・無垢な良き心を持つが、世間知らずな面も強く、数々の失敗を繰り返しながら成長していく。あの親父の遺伝子も健在でセンスは抜群。聖杯探索の旅の中で、一度の失敗にめげずに多くの試練を乗り越えていく。
聖杯へと辿り着いた三人の一人。その後はアーサーの元へは戻らず、聖杯の下に僧となり、間もなく死去したとされる。
古い時代の話では聖杯探求の主役だったのだが、ガラハッドというチートが生み出されたことにより、だいぶ割を食ってしまった経緯を持つ。リヒャルト・ワーグナー作のオペラではちゃんと主役を担っている。 - ローエングリン
ワーグナーによるオペラ作品で有名。正確には円卓の騎士の一員ではなく、アーサー王伝説の後日譚にあたる物語の主人公。
パーシヴァルの子。通称「白鳥の騎士」。白鳥の曳く舟に乗って現れる、聖杯を守護する城の騎士。
本家アーサー王伝説では、聖杯に辿りつくには貞操を守ること(要するに童貞)が条件。それ故にパーシヴァルは後に出家しており、息子がいるのは矛盾してしまう。まあ、パラレルワールドという事で。
ロット王の一族
- ガウェイン
ロット王の子。アーサーにとっては甥にあたる。マロリー被害者の会会長。
ランスロットと並ぶ、円卓の騎士達の中でも最強格の一人。
勇猛果敢、忠誠も人望も篤く、また日の出から正午まではパワーが3倍になるという特殊能力まで持つ。一方で復讐心に燃える乱暴な面も(弟たちに比べるとまだ抑えが効くが)。この辺りが災いして、聖杯には辿りつけなかった。
最終決戦では無抵抗だった弟・ガレス(とガヘリス)を殺害されて怒りに燃え、ランスロットと一騎討ちを繰り広げるが、正午に力が元に戻った隙を突かれ、敗れる。その傷が癒えぬままモードレッドの叛乱鎮圧へと転戦するが、力尽き戦死した。
特殊能力からも分かるように、太陽の象徴という古きウェールズ土着の伝説から発展したキャラクターである。古くから重要人物として扱われてきたが、時代の推移と共にランスロットに存在感を食われてしまった。
ペリノア一族に容赦しないが、例外的にパーシヴァルに対しては面倒見が良い。
ラグネルと言う年上の女性を嫁にするエピソードも存在している。 - ガレス
ロット王の子。ガウェインの末弟だが当初はその身分を隠していた。その為、ケイに「白い手」「美しい手」(=戦えない奴)という渾名をつけられて厨房係にされてしまう。とある事件をきっかけに、その正体が明らかとなり円卓の騎士の一員となった。
ランスロットファンクラブ会員の一人。
他の兄弟たちとはかなり性格が異なり、復讐に走る事は全くなく、止めようとしても聞いてもらえない可哀そうな弟。かなりの人格者なのだが聖杯には辿りつけなかった。兄たちのせいだろうか……。
グィネヴィア処刑の際に警護役となるが、もしランスロットが助けに来た時に戦いとならないよう、武器も鎧も身につけてはいなかった。しかし救出に必死のランスロットは、彼をガレスと気付かずに斬殺してしまう。 - ガヘリス
ロット王の子。ガウェインの弟でよく一緒に行動している。
やはり影のある性格で、ペリノア王の子・ラモラックと関係している実母モルゴースを殺害。更にガウェイン、アグラヴェイン、モードレッドと4人がかりでラモラックを惨殺している。
かと思えば、アグラヴェインとは異なりランスロットに対しては好意的で、グィネヴィア処刑時はガレスと同じく丸腰で警護にあたっていた。そして同じく誤殺される。この辺の扱いはほとんどガレスのついで状態。哀れガヘリス。
でも母殺しは言い訳できない。 - アグラヴェイン
ロット王の子。ガウェインの弟。
間違いなく五兄弟の中でも一番の小物。
異父弟モードレッドと共に、ランスロットを陥れる証拠を得るべく王妃との密通現場に乱入するも、ランスロットに返り討ちにされ死亡。この時、14人掛かりで押し入ったのだが生き延びたのはモードレッドひとりである。どんだけ無敵なんだランスロット。
ちなみに死後もガウェインたちには全く同情してもらえない。 - モードレッド(モルドレッド)
表向きはロット王の子とされるが、実はアーサーとその異父姉モルゴースの間に生まれた不義の子。
そうした出生もあり、五兄弟の中でも特にダークサイドに堕ちている人物で、物語を終わらせる役割を担う。
アーサー王とランスロットが敵対する原因を作り出した張本人。唯一密通現場から逃げおおせ、王妃処刑を主張した。アグラヴェインは犠牲となったのだ……。だが言い出しっぺにも拘らず、ランスロット討伐には参加せず、摂政として留守役を任される。この辺りから一応アーサーの庶子である事は認識されていたようだ。
しかし留守中にブリテンの貴族たちを味方につけて謀反を起こす。この時、義母にあたるグィネヴィアに求婚しているのは国王としての正当性を示す為なのだが、祖父や父から続く出生のあれこれを考えると、やはり業の深い一族という気がしないでもない。
カムランの戦いで円卓の騎士たちが悉く戦死する中、最後は父との一騎討ちで敗死する。
ランスロットの一族(フランスの騎士たち)
- ランスロット(ランスロー)
ベンウィックのバン王(フランスの人)の子。通称「湖の騎士」。
バン王はアーサー王のブリテン統一に協力した人物。ランスロットは湖の精に育てられた後、ブリテン島に渡り、アーサーに仕えた。が、間もなく王妃グィネヴィアとの愛人関係が始まる。
外見も身分も騎士としての能力も高い完璧超人。欠点は女性関係のだらしなさ。あと唐突に放浪する悪癖がある。とにかく作中ではモテモテで、惚れた女性陣はあらゆる手で籠絡に挑む。しかし本人はあくまでグィネヴィア第一と心に誓っているため、色々と余計な不幸が起こる羽目になる。
この辺りが災いして、こちらも聖杯には辿りつけなかった。
終盤、グィネヴィアとの関係が暴かれ、彼女が処刑されそうになったため、やむなくアーサー王に反逆を起こす。
途中でモードレッドが反乱を起こしたために和議が結ばれるが、ランスロットがアーサー王への援軍を出す前にカムランの戦いは終結し、アーサーの王国は崩壊してしまった。援軍が間に合わなかったのはモーガン・ル・フェイの妨害もあったとされる。
自分の行いがこれらの破滅を招いた事を後悔し、その後は出奔して僧となり、グィネヴィアの死後には後を追って餓死した。 - ボールス(ボース)
フランスのボールス王(バン王の兄弟)の子。ランスロットの従兄弟。ボールス王もかつてアーサーに協力した人物である。
同名の父と入れ替わる形で息子の彼が登場し、以降ローマ遠征から最終決戦に至るまで、長きにわたり脇役として物語を支える。基本的な役目はトラブルの多いランスロットの補佐役。とりあえず困ったらボールス。脇役の鑑。
しかし、そんな地味ながらもコツコツと騎士の務めを果たした彼は、ランスロットを差し置いて聖杯に到達するのである。三人の聖杯の騎士の中で唯一、アーサーの宮廷へと帰還した。
ちなみに聖杯に辿りつくには貞操を守る必要があるのだが、彼は旅の途中で(相手に騙されて)脱童貞してしまっている。ただ、それを深く悔い改めたためか、無理矢理だったからセーフにされたのか、とりあえず聖杯的にはOKが出たらしい。いいのか。
終盤の内乱においても常にランスロットの傍らで活動。途中、アーサー王をあと一歩まで追い込むなどの活躍も見せている。聖杯の騎士は伊達ではない。
全てが終わった後に出家したランスロットを発見、ボールスも同様に出家し、ランスロットの最期を看取った。最終的には十字軍として戦死した模様。
一連の物語を見届ける人物、と評される事が多い。 - エクター・ド・マリス
ランスロットの弟。
ボールス同様、しょっちゅう兄に振り回されている。が、ボールスに比べるとどうにも頼りなく、損なエピソードが多い人。いわば円卓のルイージ。アーサーの義父・エクトール(エクター)との区別の為に「ド・マリス」付けで呼称される。出身地の関係上、この呼び方もフランス風となっている。
最終決戦では当然ランスロット側について戦う。が、戦後に兄が出家した事は教えてもらえなかった。7年間もかけてあちこちを捜索した末に、ようやく発見したランスロットは既に息を引き取っていた。どこまでも不遇な弟である。この時の「兄が死んだと聞いて気を失い、目覚めるも本当に兄が死んでいるのを見てブッ倒れる」というショックの受けっぷりはある意味必見。
その後はボールスと共に十字軍で戦死した。 - ライオネル
ボールスの兄(本によっては弟)。ポジションはだいたいエクター・ド・マリスと同じ。要するにかませ担当。
聖杯探求の旅では、ボールスの試練の中で登場。二手に分かれた道の先、一方ではライオネルが何故か集団にフルボッコにされており、もう一方では乙女が襲われそうになっているのを目撃したボールス。どちらか一方しか救えないというこの状況、ボールスは兄を信じて乙女を救出する。
通りがかった同僚のコルグレヴァンスと共に、急ぎライオネルの元へ向かうボールスだったが、哀れライオネルは既にこと切れていたのであった……と思いきや、直後に突然蘇り、自分を見捨てた弟に襲い掛かる。コルグレヴァンスは瞬殺され、己の行動を悔いたボールスは一切抵抗せず死を選ぼうとするが、このボールスの悔い改めによりライオネルは正気に戻り、惨劇は回避された。
めでたしめでたし………あれ、コルグレヴァンスは?(※死にました)
最終決戦の後はボールス、エクター同様にランスロットの捜索に赴くが、モードレッドの残党に襲われて死亡というエクター以下のひどい扱いを受けている。 - ガラハッド(ガラハド、ギャラハッド)
円卓の騎士団が誇る神公認のハイパーチート。
ランスロットの子。母は漁夫王の孫娘エレイン。
母・エレインはランスロットにより呪いから助けられ恋をするも、グィネヴィア一筋のランスロットは全くなびかなかった。なので、例によって魔法の薬でグィネヴィアに変身することで、一夜を共にする事に成功する。こうして授かったのがガラハッドである。
父・ランスロットをもしのぐ武勇と、父に似ずけがれなき心を持つ本作最強の騎士。円卓には一つだけ「座ったら死ぬ」という呪われた席があるのだが、この呪いも彼には通じなかった。流石チート。これにより円卓全ての席が埋まり、騎士団は最盛の瞬間を迎え、聖杯探求の旅が始まる。
当然のように聖杯に辿りついた彼は、パーシヴァル、ボールスと共に聖杯による奇蹟を目撃した後、けがれなき存在のままに神々の世界へと旅立つ。あまりにも次元を超えた存在だが、ここで退場した事で、その後の欲望と破滅の戦いに巻き込まれる事は無かった。
余談ながら、アーサー王物語の作中にはエレインという名前の女性が多数登場して非常に紛らわしい。アーサーの次姉の名前も、ランスロットの母の名前もエレインである。更にもう一人別にランスロットに恋するアストラットのエレインという女性もいるが、こちらは悲恋に終わる。
その他の円卓の騎士たち
その人数は13人から300人まで諸説ある。
- ケイ
アーサー王を育てたエクトールの子であり、アーサーの義兄。
アーサー即位後は司厨長だったり国務長官だったりと和訳は様々だが、要するに王国の大臣ポジションとして義弟を支える。
やたら毒舌家で、新参者に何かと変な渾名を付けたがるブリテンの有吉弘行。アーサーが石に刺さった剣を抜いたと聞いた際には、自分が抜いた事にしようとするが、あっさり父に見破られるなど、なんだか憎めない円卓のコミカル&シニカル担当。ローマ遠征あたりまではそれなりに戦っているが、その後は基本お留守番。
最終決戦のカムランの戦いで戦死。 - ベディヴィア(ベディヴィエール)
物語初期からアーサーに仕える古臣のひとり。隻腕。
ローマ遠征の道中ではアーサー王の巨人退治に付き従うなど、序盤の主戦力を担う一人。
最終決戦のカムランの戦いを生き残った数少ない騎士の一人。モードレッドの死に際の一撃を受けて瀕死のアーサー王を発見し、兄のルーカンと共に運ぼうとするが、この時ルーカンは傷が開いて死んでしまう。
遂に最後の一人になってしまったベディヴィアは、アーサーからエクスカリバーを湖に返す役割を託される。伝説の聖剣を湖に投げ入れるという行為に躊躇してしまうが、最終的にはその役を全うした。その後は隠者として暮らす。
本によっては序盤のローマ遠征で戦死して、最後の役目は彼の従兄弟グリフレットに置き換わっている。 - グリフレット
ルーカン&ベディヴィア兄弟の従兄弟で、同じく物語序盤よりアーサーに仕える古参の騎士。
名前がカッコいい(筆者私見)。アーサーとは同い年らしい。
「神の子」という仰々しい二つ名を持つ。単なる例えなのか、それとも本当に高貴な血筋なのかは不明だが、物語形成の初期から存在するキャラクターなので、ガウェインのように何らかの土着信仰の名残なのかもしれない。
ストーリー序盤では、唸る獣を探すペリノア王にボコボコにされている。(この後アーサーが挑み、剣が折れる)
長きに渡ってアーサーに仕え続けるが、ベディヴィア生存ルートの場合、王妃処刑騒動の際にランスロットに殺されてしまう。ベディヴィアが戦死している場合は、彼がエクスカリバー返却の役目を担うのは既に述べた通り。二人とも生き残るルートは存在しない。現実は非情である。 - ルーカン
ベディヴィアの兄。
同じく最序盤からアーサーに仕える騎士だが、弟とは違って武功を挙げるシーンはほぼ皆無。専ら宮廷を取り仕切る裏方として活動する内政役。
最後のカムランの戦いでは彼も出陣し、かなりの重傷を負いつつも何とか生き残る。だが瀕死のアーサー王を発見した際、アーサーを運び上げようと無理をした結果(本によっては再会を喜んだアーサーと抱擁した際に)腹の傷が開いて死んでしまう。長年の忠臣のあまりにもあっけなく報われない死であるが、おそらく騎士団崩壊の一因がアーサー王にある事を暗示しているのだろう。アーサーも、彼を死なせてしまった事実を目の当たりにして、己の最期への覚悟を決める事になる。
最後の一人がベディヴィアでもグリフレットでも、ルーカンはこの場面で死亡する。 - トリスタン(トリストラム)
リオネスのメリオダス王の子。ちなみに母の名前はエリザベス。
元々は「トリスタンとイゾルデ」という独立した物語の主人公だったのがアーサー王伝説に組み込まれた。その為、他のエピソードにはあまり登場しない。
父は彼の誕生前に死去しており、叔父・コーンウォールのマルク王の家臣となっていた。コーンウォールとアイルランドの関係のいざこざの中で、アイルランドの王女「金髪のイゾルデ」と出会う。後、マルク王はイゾルデを妻とする事を希望するが、イゾルデを迎え入れる道中で誤って媚薬を飲んでしまったトリスタンとイゾルデは愛し合う関係になってしまう。こうして王とイゾルデが結婚した後も、讒言や嫉妬など数々のトラブルに見舞われ、コーンウォールを出奔した。
途中で偽名を用いるシーンがあるが、名乗った名前は「タントリス」……もうちょっと捻りなさい。
本来の物語では、その後別の女性と結婚するもイゾルデが忘れられず、後に重傷を負って悲劇の死を遂げる。
アーサー王物語では出奔後にアーサーの宮廷に仕えるという設定になっている。円卓の騎士たちの中ではラモラック、ディナダン、パロミデスといった面々と仲良くなるが、何故か彼らには物語途中で非業の死を遂げるという共通点がある。
アーサー王物語のトリスタンは、途中マルク王からイゾルデを略奪するにおよび、最後はマルク王に殺される。なお不倫つながりなのか、ランスロットとも仲良しである。 - ディナダン
円卓の騎士の一人だが、あまり強くない(※あくまで円卓の中では)。その代わり明るく話術に長けている、人望厚い人物。元々よそ者だったトリスタンとも打ち解けて、良き友人となった。
そんな盛り上げ役の彼の存在が気に食わなかったのか、トリスタンが宮廷を去った後、聖杯探求の旅の途中でモードレッドに殺されてしまう。 - ラ・コート・マル・タイユ(ブルーノ)
ディナダンの弟。本名はブルーノだがもっぱら渾名の方で呼ばれる。
父の形見のコートを身にまとっているのだが、まるでサイズが合っていない。その為ケイから「ラ・コート・マル・タイユ」(だぶだぶコート野郎)なる渾名をつけられる。
そんな扱いを受けているが、父の仇を討つまでは何と言われようがコートを手放さないと心に誓っている。だが騎士としての実力はまだまだ未熟で、せっかくの主役の話も最終的にはランスロットの大活躍に助けられていた。最終的には仇討ちを達成する設定だが、マロリー版ではその辺の話もカットされている。悲しい。
終盤の行動はいまいち不明瞭だが、兄をモードレッドに殺されている事や、ランスロットに恩がある事を考えると、ランスロット側についたのではと推測される。現代なら萌え袖ショタっ子としてキャラクターを確立できそうである。 - パロミデス
サラセン人(=イスラーム教徒)という異色の出自を持つ円卓の騎士。相変わらず時代設定が滅茶苦茶である。
実力ではガウェイン達と並ぶ強者だが、異邦人ゆえか騎士道には疎い。トリスタンとはイゾルデを巡るライバル関係。時に争い、時に助け合い、というテンプレな展開を経て、最後は良き友人となった。この時キリスト教に改宗している。悪役だったイスラーム教徒が改宗して味方に、という辺りに中世の宗教観・情勢が見て取れる。
マロリー版では最終決戦でランスロット派に属したため生き残り、プロヴァンス公となった。本によっては聖杯探求の旅の途中で「唸る獣」に殺されてしまう。 - ラヴェイン
アストラットのエレインの兄。いつものように発狂・放浪していたランスロットをたまたま父が保護した事から彼と一緒に行動するようになった。妹であるエレインはランスロットに恋するも実らず、悲しみにくれた末に衰弱死してしまったが、それでもランスロットに一途に付き従い続けた。
登場は終盤ながら、ボールスに次いで有能な立ち回りが目立つ若き騎士。やっぱりエクター・ド・マリス涙目である。 - ウルリー
ハンガリー出身。かつて倒した相手の母に呪いをかけられ、癒えない傷を負っている。この呪いを解けるのは「世界で最も優れた騎士」だけなのだが、アーサー王を始め、円卓の騎士全員が挑戦するも失敗。最後に挑戦したランスロットが呪いを解いてみせた(※聖杯探索後の話なのでガラハッドはもういない)。以降はランスロット派として行動している。
一見するとただのランスロット贔屓なエピソードなのだが、マロリー版ではここで全110人の騎士のプロフィールが紹介されるという一種の番外編・ファンサービスになっている。そしてこの話の後、王宮が真っ二つに割れる展開に……。 - アコロン
円卓の騎士の一員としてアーサー王に忠誠を誓う身でありながら、モーガン・ル・フェイの愛人でもあるという不思議な立ち位置のキャラクター。
モーガンがエクスカリバーを偽物とすり替えた際に、本物のエクスカリバーを受け取った人物。その剣である騎士と決闘を行うことになるが、実は相手はアーサー王(しかも手元の剣が偽物と知らない)なのであった。(※補足:当時は頭や顔まで防具をフル装着しているので、相手が誰なのかは持ち物や紋章などでしか判断できない)
最終的には、相手の剣が本物のエクスカリバーであることを確信したアーサー王に鞘を叩き落され、敗死。死に際に互いの正体を知る事となり、王に剣を向けた事を許されながら息を引き取る。聖剣だけじゃないアーサーの王としての実力が垣間見れるエピソード。
結局モーガンには利用されていただけなのか、本気でアコロンを新たな王に据えようとしていたのか、それともアコロン自身も密かな野心があったのか、詳しくは語られない。やられ役ではあるのだが、なかなか想像の余地の広いキャラクターである。 - メレアガンス(メリアガーンス)
バグデマス王の子。円卓の騎士だったが、グィネヴィア王妃を愛するあまりに誘拐に及ぶ。一言で言うと卑怯(笑)。王妃誘拐も警護が10人(しかも軽装)しかいない状況に対し、重層騎士160人で襲撃する大げさっぷり。もちろん王妃はランスロットに夢中なのだが。
ランスロットが城に来ると即降伏。しかし言いがかりをつけてランスロットを拘束したり、脱出したランスロットとの決闘にあっさり負けると命乞いをしたり、と騎士として恥ずかしくないのか!的な行動の数々を繰り広げてくれる。遂にはランスロットに「左腕を後ろに縛り、左半身の武装を可能な限り解除」というすごいハンデを背負わせるのだが、お約束通り一撃で斬り捨てられて死亡。どこまでもネタキャラである。
その他の人物
- ベイリン(バリン)
アーサーのブリテン統一戦争時代の家臣。通称「双剣の騎士」あるいは「蛮人」。
物語序盤のアーサー軍に属する汎用人型決戦兵器。
粗暴で短絡的な問題児。しょっぱなからアーサーの従兄弟を殺害した罪で刑に服している。だが「この世で最も優れた騎士にしか抜けない剣」を見事抜いてみせた(どう考えても性格的に優れた騎士では無いような気がするのだが……馬鹿力で抜いたんじゃあるまいな)。
しかしこの剣には「愛するものを殺してしまう」という呪いがかかっていた。直後、エクスカリバーを与えた湖の精が現れ(あまりに危険な剣であるからだろうか)剣の持ち主となったベイリンの命を要求するも、彼は逆に湖の精を殺害してしまう。恩人を殺された事で流石のアーサー王も激怒し、宮廷を追放された彼の放浪の旅が始まる。
アーサー王の敵を勝手に倒すなど前田利家のような真似をしていたが、旅の中で漁夫王の城を訪れた事が、後の物語に大きな影響を与える事になる。城内でトラブルを起こし、漁夫王の怒りを買ったベイリンであったが(帯剣禁止の場であったため、自慢の愛剣が無く)城に安置されていたロンギヌスの槍を漁夫王に向けてブチ込んでしまう。この一撃で城は崩壊、周囲は不毛の土地と化し、漁夫王は永遠に癒えない傷を負ってしまう。
こうして結果的に罪に罪を重ねてしまったベイリンは遂にアーサー王の下に戻る事を諦める。やがて旅先である騎士と決闘する事になるのだが、実はそれはベイリンの行方を捜していた実弟。剣の呪いによって大切な家族と殺し合っている事に気付いたのは、互いに致命傷を負った後であった。
なお問題の剣は彼の死後、マーリンによって回収され、後にガラハッドの手に渡る。当然ハイパーチート騎士の前では呪いなど発動する訳も無かった。 - 漁夫王(いさなとりのおう)
本名はペラム王。カーボネック城主。アリマタヤのヨセフの子孫。孫にエレイン。
ベイリンの暴走で城は崩壊するわ、領地は荒れ地と化すわ、自分は足に一生癒えない重傷を負うわ、と酷いとばっちりを受けた本作屈指のかわいそうな人。周りの土地が全滅してしまったので、以降は近所の川で魚を釣って糊口をしのぐ暮らしを強いられていた。
聖杯探求の最終目的は、呪われてしまった彼の傷と土地を奇跡で癒す事である。そしてそれを達成したのは彼の曾孫にあたるガラハッドであった。 - ルキウス・ティベリウス
架空のローマ皇帝。アーサー王がブリテン島を統一した後、自らの臣下に降るよう命ずるがアーサーはそれを拒否。逆にローマまで攻め込まれ敗北する。
かませ。
アーサー=ヨーロッパ全土の王、という箔付けの為のやられ役である。ただアーサー王の時代から100年ほど遡れば、ブリタニア軍を率いてイタリアにまで攻め込んでローマ皇帝を名乗った人物がなんと二人も実在する(マグヌス・マクシムス、コンスタンティヌス3世)。末期の西ローマ帝国は現実でもこんなもんだった。 - 湖の精
湖の乙女とも。水の妖精と人間の中間的存在とされる。アーサーにエクスカリバーを授けた事で有名。マロリー版での名前は「ヴィヴィアン」。
特に説明は無いが、おそらく種族的なもので一人ではない模様。ランスロットを育てたり、ベイリンに殺されたり、マーリンを退場させたりと手広くやっている。 - 唸る獣(うなるけもの)
頭としっぽは蛇。胴体は豹。尻はライオン。足は鹿。
……と何が何だか訳が分からない正体不明の怪物。ペリノア王が退治しようと狙っていた存在。彼の息子のパーシヴァルが獣を退治するエピソードもある。
モードレッド誕生の時、アーサーの夢の中にも現れる。つまり、近親相姦に始まる破壊と混沌の象徴とされている。
用語集
- エクスカリバー
ご存知アーサー王の愛剣。詳細は個別記事参照。剣の性能も素晴らしいが、何よりも治癒能力を持つ鞘が反則的。あまりのチートっぷりに、最終決戦前にモーガン・ル・フェイによって鞘だけ奪われてしまう。狙い所が分かっている姉さんである。 - カリバーン
これまた有名な石に刺さった剣。ユーサー王の死後、後継者不在の混乱の最中、カンタベリー大聖堂に突如出現。マーリンによって「王の器を持つ者にしか抜けない」魔法がかけられている。
兄の剣を取りに宿屋まで往復するのが面倒だった少年アーサーによってあっけなく抜かれる。そしてペリノア王に折られる。折られた後にエクスカリバーとして生まれ変わったとも、全く別の剣であるとも、諸説ある。選定の剣、途中で折られるなどの共通点から、北欧神話の魔剣グラムが元ネタという説もある。 - ロンゴミニアド
ロンの槍とも。アーサー王の聖槍。エクスカリバーの陰に隠れがちだが、これも強力な聖遺物。 - プリドゥエン
アーサー王の盾。船に変形する能力があるらしい。
- アロンダイト
ランスロットの愛剣。あまり多くを語られないが、決して刃毀れしない名剣らしい。某ガンダムが持っていたりするので、名前は有名なほう。 - ガラティン(ガラチン、ガラティーン)
ガウェインの愛剣。やはり情報は少ないが決して刃毀れしないとも、エクスカリバーの姉妹剣であるとも。持ち主の実力もあって間違いなく名剣なのだが、エクスカリバーやアロンダイトに比べるとやや引用は少なく若干マイナー。 - クラレント
宝物庫に保管されていた儀礼用の宝剣。終盤のどさくさでモードレッドに強奪されて彼の剣となる。 - キャメロット城
アーサー王の宮殿。もちろん円卓が置かれているのもここ。気がついたらキャメロットが本拠地になっていて、その辺の時期や経緯は不明瞭。テムズ川沿岸にあるようだ。本によってはカーリオン、カーライルなどの地名も登場する。
ローマ帝国時代に古都・要塞として栄えたカムロデュヌム(現・コルチェスター)がキャメロットだと主張される事もあるが、一種の町おこしと解釈した方が良いかもしれない。 - ペンドラゴン
ウェールズ語で「竜の頭」を意味する王の称号。正式には父・ユーサー王が名乗った称号。アーサーが引き継いでいる事も。称号であって名字では無い。赤い竜はウェールズの象徴で、国旗にも書かれている。 - アヴァロン
物語の終わりに、アーサー王が旅立ったとされる妖精郷。アーサー王は完全に死んだわけではなく、ここで眠りにつきいつか復活するときを待っているともされる。 - ライオン
この手の騎士道物語における強さの象徴。東洋における虎と同義。アーサー王物語では何故かヨーロッパのあちこちに野生のライオンがいて、アーサーの宮廷に乱入してきた事もある。 - 槍試合(馬上槍試合)
大戦争がなくなる中盤以降の定例イベント。ルールは特に語られていない場合が多いが、タイマンから団体戦まで様々。かませ役の輝く瞬間でもある、もちろんかませ的な意味で。
キャラクター性の変化やバリエーション
概要の通り、元々長い期間をかけて各地で作られていった物語であるため、バリエーションが多い。(現実の年代において)特に古くから登場する人物としてはガウェイン、ケイ、ベディヴィア、グリフレット、モードレッドなどが挙げられる。
扱いの違いにおいて顕著なのがガウェインとランスロットである。
ブリテン系の物語では、ガウェインはまっとうに勇敢な騎士として描かれている。一方、フランス系の物語ではフランス出身のランスロットが優遇されており、ガウェインは乱暴者の面が強調されていたり、噛ませ犬的扱いになっていたりする。
物語が作られていった中世には百年戦争(1337-1453)を中心に、英仏が犬猿の仲であったのでこれも止む無しか。
クレティアン・ド・トロワの登場
12世紀のフランスの吟遊詩人クレティアン・ド・トロワは、散文詩の題材としてアーサー王伝説を度々用いている。特に有名なのが「荷車の騎士ランスロ」と「聖杯の騎士ペルスヴァル」の二点(後者は未完)。これらは現代に至るまでのアーサー王物語の最重要ワード「ランスロットとグィネヴィアの禁断の愛」および「聖杯探求」を(伝えられている限りでは)初めて物語内に取り入れた作品なのである。彼の登場によりアーサー王伝説はそれまでの土着伝承からロマンス文学への脱皮を果たしたと評される。(ガウェインにとっては受難の始まりであるが)
マロリー被害者の会
これまでに述べた通り、トマス・マロリーの「アーサー王の死」によって一連の物語が体系化されて現在に至る訳だが、この際に上記クレティアン作品を始めとしたフランス系の物語がベースになったため、ガウェインの印象がかなり悪いものとして広まってしまった。中にはマロリー版で出番がカットされて、存在自体が忘れられてしまう人物もいたりする。
時代考証
物語は3世代にまたがっていて、始まりから終わりまでは40~50年間程度と推測される。 マロリー版では、ガラハッドが登場して聖杯探求の旅が始まるのが 「イエスの受難(AD30ごろ)から445年後」とされているので、大体5世紀後半が舞台のようだ。
アーサー王は本来ブリテン島に侵入してきた異民族と戦っていた人物なのだが、 物語としてはそうした侵入者は描かれず、単にブリテン島の覇権をめぐる戦いとなっている。 ローマ遠征やサラセン人の存在まで考えると時代背景がますますカオスになる。 え、ゲルマン人の大移動? なにそれ?おいしいの?
- 384年
ブリテン島の将軍マグヌス・マクシムスがイタリアに攻め込み、勝手にローマ皇帝を名乗る。 - 395年
ローマ帝国が東西分割 - 407年
ブリタニアの将軍コンスタンティヌスが全軍を率いてイタリアに攻め込み、勝手にローマ皇帝を名乗る。 - 410年
正統な西ローマ皇帝ホノリウスがブリテン島放棄を宣言し、ブリテン島がローマ帝国の統治を離れる。 - この後
ブリテン島にアングロ・サクソン人が防衛の傭兵として招かれるも、次第に逆に島を侵略するようになる - 476年
西ローマ帝国が滅亡 - 518年(カンブリア年代記より)
ベイドン山の戦い。アーサーのモデルとされる人物がアングロ・サクソン人を撃退して、一時侵略が鎮静化 - 539年(カンブリア年代記より)
カムランの戦いが起こったとされる - 7世紀以降
再びアングロ・サクソン人の侵入が活発化 - 610年
イスラーム教が起こる - 827年
ウェセックス王国がイングランドを統一 - 9世紀
アーサーの名前が歴史書に初めて登場する - 10世紀
「カンブリア年代記」成立 - 1136年ごろ
ジェフリー・オブ・モンマスが「ブリタニア列王史」を執筆し、以降本格的にアーサー王の伝説が広まる - 1170年ごろ~1190年ごろ
クレティアン・ド・トロワが一連の作品を執筆 - 1470年
マロリーが「アーサー王の死」を執筆
補足:史実における古代ブリテン島とアーサーのモデル
イタリア半島の外へと拡大したローマ帝国は、西暦43年にブリテン島南部を征服し、ここに属州ブリタニアが設置された。当時ブリタニアに住んでいた先住民はケルト系のブリトン人と呼ばれる人々である。一方北部のスコット人・ピクト人に対する征服は諦められて、五賢帝の一人ハドリアヌスにより長城が建設された。
ブリタニアに限った話ではないが、以降は現地土着の文化・宗教とローマのそれとが、やんわりと融合していく事になる。
が、帝国はやがて肥大化と内乱と異民族侵入でガタガタになってしまった。そんな410年、西皇帝ホノリウスからブリタニアにお手紙が届く。
……マジでこんなだから困る。このときホノリウスはブリタニアから全軍を率いて勝手に皇帝を名乗るコンスタンティヌス3世に苦しめられていた。まさにルキウス・ティベリウスそのものである。ああ、なさけなや。そんな訳で辺境のブリタニアは帝国から切り捨てられてしまい、北のスコット人・ピクト人を始めとした異民族に自力で対抗する羽目になってしまった。なおこの頃のブリタニアは、イタリア本国から派遣されてきたローマ人と、おローマ色に程よく染まったブリトン人とが適度に混住している状態である。前述の通り、ブリトン本来の土着文化が潰されたわけでは無かったので、ブリトン人の各有力者を中心にいくつかの国に分かれつつも、今後の対策が練られた。
彼らの結論はこれまでのローマ帝国のやり方に倣い、目には目を、異民族には異民族をぶつける事であった。そこでお声がかかったのが当時移動中だったゲルマン人たち。アングル人(アングリア半島出身)、ジュート人(ユトラント半島出身)、サクソン人(低ザクセン地方出身)から選りすぐりの傭兵団が招かれた。
が、そう上手くはいかない。なにしろ対岸のガリア(フランス)と並んで平原・穀物生産地としての価値が高かったのがブリタニアである。ゲルマン人(以下アングロ・サクソン人)も間もなく反旗を翻し、ブリテン島征服を計画するのであった。
内部の主導権争いなどもあってブリトン人側は連戦連敗。このまま万事休すか……と思われたが、518年、ベイドン山の戦いにおいてブリトン人連合軍は起死回生の大勝利を収める。この戦いのブリトン人司令官が、アーサー王のモデルとされている。当時の史料不足から人物の完全な特定には至っていないが、これによってアングロ・サクソン人が一時撤退した事は確かである。まさに救世主であった。
だが結局ブリトン人の内輪揉めは収まりきらず、ウダウダしている内にアングロ・サクソン人が再度侵攻を開始。遂に島南東部の豊かな平原地帯を奪われてしまう。これによりアングロ・サクソン人の移住が本格的に始まり、ブリトン人はウェールズやコーンウォール半島へと追いやられていった。中にはコーンウォールから海を渡り、ガリア北西に位置するアルモリカに移住、のちこの地域はブルターニュと呼ばれる。
こうして「ローマの文化を持ったケルト系ブリトン人の子孫」がウェールズやブルターニュに定住し、救世主たるアーサー王や英雄(騎士)たちの伝説が発展・拡大していくに至る。
関連動画
関連項目
※2021年3月6日現在時点でニコニコ大百科に記事がないものは灰字としている。
- 騎士
- 用語
- 人名(個別)
- 映像作品
- エクスカリバー(1981)
- トゥルーナイト(1995)
- キング・アーサー(2017)
- モデル・モチーフとして用いられている作品
- アーサー王宮廷のヤンキー
- 王様の剣
- エースコンバットZERO ザ・ベルカン・ウォー
- SDガンダム外伝2 円卓の騎士
- アーサー王伝説との直接の関係性は薄いが、使われている地名はイギリス由来のものが多かったりする。
- 拡散性ミリオンアーサー
- Ga1ahad and Scientific Witchery(ガラハッド1号と科学的黒魔法)
- 機動戦士ガンダムSEED / 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
- グランブルーファンタジー
- コードギアス 反逆のルルーシュ
- ソニックと暗黒の騎士
- 七つの大罪(漫画)
- ファイナルファンタジーVII:召喚獣「ナイツオブラウンド」
- Fate/stay night
- ライジングインパクト
- (※ここから下は、まだニコニコ大百科に作品記事がないもの)
- GALAHAD 3093
- トランスフォーマー/最後の騎士王
- 燃えろアーサー
- モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル
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