ウインスロー・ケネス・タウンゼント(Winslow Kennes Townshent)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
概要
西暦時代末期の政治家(A.D.2666/67~2707)。
高い財政的センスとすぐれた行政処理能力をあわせもつ人物であり、”シリウス戦役”においては貧しい植民星からなる反地球統一戦線を経済面から支えてその勝利に貢献した。
経歴
”ラグラン・グループ”の結成まで
西暦2690年当時、若きウインスロー・ケネス・タウンゼントは、シリウス星系第六惑星ロンドリーナにある金属ラジウム鉱山で会計係として働く一方、労働組合において書記の地位を占めていた。
この年5月、タウンゼントが居住していたラグラン市でかの”ラグラン市事件”が発生すると、23歳の彼も当事者の一人となった。彼の母が、兵士によって狙撃され死亡したのである。親子二人、アパートの窓から下を行進する軍隊を見ていたさなかを、酔った兵士に撃たれたものであった。タウンゼントはこの狼藉を訴え出たが、無視されたあげくに母親を殺したのが自身であると濡れ衣を着せられてしまう。追跡を受けて鉱山に逃げ込んだ彼は、そのまま消息を絶ち、反地球活動に身を投じることになる。
そして翌2691年2月28日、中立地帯たるプロキシマ系第五惑星プロセルピナにおいて、彼はある一団の結成に参画する。炎上するラグラン市からの逃亡者、すなわちカーレ・パルムグレン、ジョリオ・フランクール、チャオ・ユイルン、そしてウインスロー・ケネス・タウンゼントの四人が一所に集まり、地球支配の打倒に動き出したのである。
革命戦争と権力闘争
四人が自然と役割を分担したこの”ラグラン・グループ”のなかで、タウンゼントが担当したのは反地球統一戦線を経済面からバックアップすることだった。彼は統一戦線の経済的基盤を整備・形成し、低開発星域の生産力向上に尽力し、生産物を効率的に流通させる機構を整えた。こうしたタウンゼントたちの活動の結果、2704年にはついに地球の支配は終焉を迎え、ラグラン・グループの指導するシリウスが人類社会を牽引する時代がやってきた。
この新体制において、タウンゼントはシリウス星系首相として人類社会の再建にあたることとなった。しかし2706年、ラグラン・グループの中核であったカーレ・パルムグレンが41歳の若さで病死すると、三ヶ月のうちにタウンゼントと国防相ジョリオ・フランクールとの確執が顕在化した。タウンゼントは財政家としての立場から地球旧体制の経済的支持者であった”ビッグ・シスターズ”と呼ばれる巨大企業群を維持・活用しようと企図したが、教条的なフランクールが財閥の解体を主張したのである。
両者の確執はそのまま加速し、ついにはクーデターに及んだフランクールを実行直前に公安局員が射殺したことで決着した。フランクール麾下の黒旗軍は凄烈な粛清に晒され、タウンゼント体制に膝を屈した。こうしてライバルに打ち勝ったタウンゼントだったが、彼はその猜疑心をもう一人の同志、隠棲するチャオ・ユイルンに向ける。チャオが地球支配打倒のために弄した辛辣な策略は、もはやこの権力者の恐怖の的でしかなかったのだ。フランクールの死から僅かに一週間後、タウンゼントはラグラン・グループ最後の一人となった。
終焉
かくして、タウンゼントはシリウス星系首相と汎人類評議会主席をかねる人類の最高権力者となった。
しかしそれも、翌2707年に早すぎる終焉を迎えた。対地球戦勝記念祭において爆破テロが計画されているという情報を受けて会場から官邸へと引き返すタウンゼントが乗る地上車を、極低周波ロケット弾が消滅させたのである。犯人はチャオ・ユイルンの甥チャオ・フォンとも目されたが、結局判明しなかった。
それは、彼の消滅がラグラン・グループとシリウス新体制の消滅であり、人類秩序の消滅でもあったからだった。最後の柱であったタウンゼントの死は新秩序を瓦解させ、解き放たれた黒旗軍は暴発・分裂して内戦状態を現出させることになる。そしてこの混乱が収まるのははるかに94年後、銀河連邦の成立を待たねばならなかったのであった。
能力と人格
ラグラン・グループにおけるタウンゼントの役割は行政と財政であり、他の三人に比べて地球との戦いの矢面に立つものではなかったが、反地球統一戦線においてその貢献はけして小さくはなかった。
経済面で彼が成し遂げた主要な功績は、低開発星域の生産力を”向上というより飛躍”といわれるほどに発展させた「野心的な経済建設計画」と、「生産物を効率的な流通機構にのせること」であったが、単一作物栽培や作物の安価での販売を地球資本に強制されていた多くの植民星にとって、これらの政策はまちがいなく福音であったといえるだろう。このようなタウンゼントの経済センスは、のちにシリウス戦役が終結したのち、理想に反してもその「地球資本」であるビッグ・シスターズを維持しようとしたことにも表れている。
また、この件からしても、タウンゼントが現実的な政治家であったことが見て取れる。彼の考えでは、地球支配打倒後に為すべきことは、未来に向けて人類社会を発展させ市民の生活を安定させること、つまり「混乱の収束と秩序の再建」であって、フランクールの主張するように、教条的に反地球革命を徹底させることではなかった。ただし、同時にタウンゼントは自己の正義を信じるタイプの権力者でもあり、上記したような人類社会の発展を自らが手がけることになると確信していた。それがついに実現しなかったのは、彼の死が示すとおりである。
関連動画
関連項目
- 1
- 0pt