エンジェランとは、SEGAのアーケード及び家庭用ゲーム「電脳戦機バーチャロンオラトリオ・タングラム」に
登場するVRである。
招かれざる客『アジム』のお出迎え専用VR
V.C.a0年代前半になって突如として出現し、VRパイロット達を悩ませてきた謎の戦闘体「アジム」。これへの対応策として、かつて0プラントでプラジナー博士が開発したVR-017号機をもとに、第4プラント「TSCドランメン(以後TSC)」が再設計した機体がSGV-417エンジェランである。
開発経緯
O.M.G.終結後DN社が崩壊すると、第4プラントはTSCドランメンと改称されて再建が進み第8プラントであるフレッシュリフォー(以後、FR-08)が推進した新たな体制づくりにも協カ的な姿勢を保ち続けていた。
だが、バーチャロイド開発・実用を契機にしたかのように現れた外からの脅威に対し苦戦するTSCは一つの忠言をする。
「現行の戦闘VRのパワーを遥かに凌駕するアジムに対抗しうるのは、オリジナルVR以外にないのではないか?」
彼らがFR-08に示した提案は、ある意味理にかなっていた。両陣営のエースパイロットでも対応できず、まともに対抗できるのが商用バーチャロイドを遥かに凌ぐ機体・パイロットを擁する白虹騎士団(ホワイトフリート)だけ。TSC側はアジム討伐の度にFR-08に頭を下げるのを嫌がったのだ。
その為独自の対抗手段が欲しくてVR開発再開の承認を求めてきたのである。FR-08は警戒の念を隠さなかった。
だがFR-08側もアジム討伐にトップシークレットの白虹騎士団を何度も投入するのを嫌ってもいたのだ。最終的にFR-08は極めて厳重な制約を課したもののTSCの提案を受け入れた。
オリジナルVRの力を代行という形ながら発揮することの出来る機体として、本機が製作されることとなる。
必然的に本機はTSCが確保していたオリジナルバーチャロイド、通称「アイス・ドール」に似せたものとなっている。
VR-017 『アイスドール』
「アイス・ドール」とは、プラジナー博士の作品であるオリジナルバーチャロイド、VR-017の別称である。
以下、一般兵用と区別するため、アイス・ドールと記す。
V.C.9X年代、博士は数体の至高のVRを創出した。0プラントにおいて彼の手がけたVRは、どれもまっとうな形で
日の目を見ることはなかった。プラジナー博士が失踪するまで、人々は彼の残したVRの革新性に気づくことはなかった
ためである。
これらの機体は、すべてオリジナルVRと同等の驚異的な潜在能力を有し、かつ自らの自我を持ち、独自の意思で行動した。その結果、VR-014ことオリジナルフェイ・イェン(ファイ・ユーブ)は人々の手を離れ(各地で馬鹿騒ぎを起こし)、旧0プラント職員を事実上の死刑にあたる記憶抹消刑に処する事態へと発展。当時のV-プロジェクト最高責任者、アンべルⅣは新たな損失を嫌い、VC.9c年に回収したアイス・ドールを強制的に凍結して第4プラント内に監禁保存していた(この処置によって、VR-017は「アイス・ドール」と呼称されるようになった)。
やがて、対アジムプロジェクトの名目で蘇生されたアイス・ドールの姿に、人々は目をみはった。
後にSGV-417エンジェランの素型となるその機体は、従来のVRが持っていた戦闘兵器としての無骨なイメージからはほど遠い、たおやかな女性型フォルムを有していたのである。
しかも機体サイズは既存のVRと違い人間の等身大程(約160cm)だったのである。
SGV-417 氷雪魔法系神聖機体『エンジェラン』
そうして、限定戦争用ではなく、対アジムというより高度な脅威に対抗すべくこのVRは開発されてゆく。
本機は他の戦闘VRとは異なり、駆動カの大半はアイス・ドールによって供給される。また、制御のイニシアチブも彼女が持つ。つまりパイロットは、アイス・ドールの見守る中、彼女が認める範囲内での戦闘行動がとれるに過ぎないのである。これは―見不便のようであるが、対アジム戦ではパイロットの精神に大きな負荷がかかり、人間による制御では戦闘カの維持にも事欠く状況が珍しくなかったので、かえって安全であった。
アイス・ドールの最大の特徴は人工V-クリスタルの実装にあった。再現率40%とはいえあらゆる人々が試みて果たせなかったV-クリスタルの複製化を人知れず実現していたプラジナー博士は、それをはめ込んだロッドを自らの創造物に託していた。それは、ひとたび武装として機能した際には、絶大なる力をVR-017に供給するはずであった。
エンジェランの主装備である「対偶の法杖」は、アイス・ドールだけが所持する人工V-クリスタルの作用を増幅発現させる機能を持つ。これによって、C.l.S.にある様々な事象を瞬時に実体化させることができる。
実体化事象はすべて氷の属性を有するが、その理由は厳密な意味において解明されているわけではない。現時点で有カな説では、長らく強制監禁を強いられてきたアイス・ドールの、頑なに閉ざされた孤独な心が、実体化機能の起動時に氷の属性として具象化されているのではないか、と推諭している。
"eclosion mode"は、羽化を伴う本機の特徴的機能であるが、当初から想定して組み込まれたものではない。本来アイス・ドールが何らかの事態に対応して発現させる機能であるとされているが、実際に目撃されたわけではない。
結局SGV-417自体がアイス・ドールの不完全なレプリカであるがゆえに、彼女の持つ能カの全てを正しく再現し得るはずもなく、その強大な戦闘カとは裏腹に、様々な歪みが機体各所に散見される。
ゲーム中での性能
ゲーム内の本機は防御面に重点を置いた機体。引き撃ちの女王。
ドルドレイに次ぐVアーマー強度、相手の攻撃を無効化する手段が多め、ジャンプ、空中移動性能はトップクラスなどが理由。だがその反面機体自体の防御力は見た目通り程、攻撃手段は追尾性能が高めだが見極められると簡単に回避される。
近接攻撃は杖を振り回すかビンタ程度のものだが、短時間だがフィールドに残る氷を設置するユニークなものもある。
厄介なのが移動後に「若干だが」慣性モーションが発生すること。他の機体のように移動後の硬直を回避できるキャンセル入力を行っても「隙」が出来るので相手に狙われやすい。
ジャンプ性能はトップクラス、と記載したが実際は「上昇と移動速度はそこそこ速いが降下速度はやたら遅い」ので使い勝手は並、しかも着地直前を相手に狙われると防御力の低さ故にダウンを奪われやすい。
その為、懐に潜り込まれると脆く、ひたすら相手と距離を離す必要があり、有利な局面だったのが一瞬で引っ繰り返される危うさを持つため引き撃ちに徹さざるを得ない難しさがある。
能 動的に直撃を狙える武器が少ないということもネックだが、『“高さ”にも対応する弾幕』という要素はバルバドスのERLコンボを除けばほぼ独自要素といえ る最大のセールスポイント。これらによる事故待ち主体ながら、狙いどころではレーザーや前ビ等の確定を取る攻撃的な武装による駆け引きの分厚さがプレイ ヤーに愛される点といえる。
「エンジェランの略奪」 事件
アイス・ドールは自らの意志を有していた(プラジナー博士の手がけたVRに共通することだった。)彼女の心は、長期間に亘る―方的な凍結監禁によって堅く閉ざされ戦闘を強要する人々との接触を頑なに拒み続けた。
TSCドランメンはなんとか説得してSGV-417の開発に協力してもらっていたのだが、終盤に差し掛かったタイミングで彼女は自らの実体を解いて電脳虚数空間(C.I.S.)へと姿を消してしまったのである。
問題はこの後に生じた。―度姿を消したはずのアイス・ドールが、どうしたことか再び舞い戻ってきたのだ。ただし、TSCにではなく対立勢力であるFR-08に。彼女がFR-08を選んだ理由は明らかにされていないが、FR-08は彼女の身柄を受け人れ、TSCの再三の要求にもかかわらず、その返還に応じようとはしなかった。
TSCはこれを「エンジェランの略奪」であるとして、激しく抗議した。先述の通り、彼らの開発したSGV-417エンジェランは、VR-17があって初めて機能し得る。つまり、VR-017を確保しているものが、エンジェランの起動に際して主導権を握る。ある一面から見れば、FR-08はSGV-417を横領したも同然だった。
両者の確執はこの後行われたFR-08の若き総帥リリン・プラジナーと、TSCの首魁、アンベルⅣの会談によって明らかとなり、『オラトリオ・タングラム』と呼ばれる大戦へと発展してゆくこととなる。
なお、アイス・ドール自身は非常に多忙でぶっちゃけ実世界に居ることが稀な状況にあるため、TSCに帰還しなかったのは政治的な意味以上にそんな暇がなかったというのが実情であるという。
お蔭で比較的暇なファイ・ユーブが一般兵用のエンジェランの輸送にパシらされることとなったりするがそれは別の話。
FR-08とTSCの対立は表向きのもので、真相はアイスドール自身がアンベルⅣ含むごくわずかな首脳陣に掛け合ってアジム討伐戦力の設営を願い、それをTSCは受諾。そして、FR-08は白虹騎士団によるシャドウ討伐に、TSCはアジム掃討にそれぞれ分担するという合意を得るための会談であった。つまり、アイス・ドールが会談を仲介したと言えるだろう。
結果、オラトリオ・タングラム戦役で得た利益で打撃艦隊フォースが結成され、これがVO4の物語に繋がる。
後継機 TA-17
世代は移り変わり、主な戦場は地球のみならず太陽系全域に広がりつつある時代。
リリン・プラジナー独自のVR開発プラント「TRANS AFG」より限定発売されたのが本機「TA-17」系列である。
バーチャロイドは撃破されるとVコンバーターの活性が落ち、リバース・コンバートで形成された機体構造が消滅してしまう。(誤解を恐れずに言えば、ブルースクリーンで作業途中のデータがぶっ飛ぶようなイメージ)
それによる被害を軽減するために2組のバーチャロイドが相補的に活性を維持し合う「ツイン・リンク・コンバーター・システム」の試験機として生産されたのが本機体の前身にあたる。つまりVO4の2on2バトルのレスキューやMARZのリペアディスク(正式名称:パーシャル・コンバート)といった技術の実証機である。
同時に、本機シリーズのみが、体力回復・状態異常消去といった能力を発揮できるのは、「ツイン・リンク・コンバーター・システム」の由来となるアイス・ドールの能力の一部を再現することができているためといえるだろう。
三世代型VRの例に漏れず、武装の異なる3(+1)機が登場している。2~3種類のターボ攻撃による攻撃バリエーションはいくつか削除されており、削除されたそれらの攻撃が派生機に割り当てられている。
弾速が遅い攻撃で上手く2機へ攻撃を配分すれば擬似的な一人二役を演出することが出来る点を活かすことに終始した玄人好みの立ち位置。
雪の勲カラーは俺の嫁
TA-17L 慈愛
バーチャロンフォースに登場。 指揮機体は司祭帽を被る。
テムジンのCWなど、一般的な防御兵器を凌ぐ防御性能を誇るLW(通称ミラー)を装備したモデル。機動力はVO4登場のエンジェランでは最も遅いという欠点があるが、バランスが良く、近距離戦を挑む相手への迎撃が優秀。
TA-17S 治癒
バーチャロンフォースに登場。 指揮機体はナースキャップを被る。
LWはオラトリオタングラムの主力攻撃であった氷柱となっており、ジャンプに対する抑止力が高い。
反面、攻撃の燃費が悪くなっており、ゲージ管理が難しく、戦略的な動きが要求されるものの、単発威力に優れ、爆発力やダメージレースに強い。
TA-17H 慰撫
バーチャロンフォースに登場。 指揮機体は天使の輪が頭上で光る。
LWは新武装「ウイングボール」(同社のSTG「ファンタジーゾーン」の自機に似ているため、通称「オパオパ」)
LWが壁を越える攻撃となったため、系列中最も遠距離への援護射撃力に優れ、RWの回転率にも優れるが、逆に言えば近距離火力に劣ることとなったため、近接タイプの粘着に苦労させられることも。
TA-17B 化鳥
バーチャロンMARZに登場。
ベースは前述の「慈愛」だが、苦手だった近接攻撃の性能が向上している。ただ、立ちCWが設置龍でなくなっているほか、治療魔法のTCWが単なる高追尾攻撃となっている実質死に技だったので無問題だったが。
その他エピソード
- 女性型バーチャロイドフェイ・イェンと共に電脳戦記バーチャロンシリーズのマスコットとしてバニー姿等を披露するグラフィックが公開されていたりする。それらマスコット活動を支えるたおやかな姿は勿論、カトキハジメ氏によるもの。
- 発表当時は当時人気だった「ああっ女神さまっ」のパロディではないかとスタッフ含めた大暴走としてシリアスな笑いのネタになっていた。
……のだが、21世紀に入ってから『漫画的なかわいらしさとロボらしさを女性的で制約の多いはずのシルエットに落とし込んでいる』という冗談ではなくガチな方向性で評価されている。 - 執拗なほど出てくる型番のナンバー「17」はオリジナルの『アイスドール』が人型状態で観測された際の外見年齢とも言われている。 ちなみに、17歳と聞いて想起されるであろう声優は同作において「タングラム」を担当している。
- アーケード版のバーチャロンフォースで隠し要素として話題となった「胸部サイズの個体差」であるが、XBOX360版の限定特典「フェティッシュ解放コード」にて任意決定可能となった。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 3
- 0pt