ガンパレードオーケストラとは、2006年に発売されたPS2専用ソフトである。
概要
「高機動幻想ガンパレード・マーチ」、「絢爛舞踏祭」の続編にあたる作品。
ストーリーは「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のその後を描いたものだが、厳密には「高機動幻想ガンパレード・マーチ」の世界とは異なる、ネット上で展開した小説『Return to Gunparade』の世界から続く物語である。
システムはこれまでの2作と違い、「指揮官」としてのプレイに特化したものになっており、戦闘もRTSとなっている。前作では運用できなかった、戦車やヘリが使えるようになり、歩兵も狙撃兵や衛生兵など、幾つかの兵種を使い分けることができるようになった。兵種の編成も自由で、歩兵のみの部隊や人型戦車のみの部隊も可能。プレイヤーが取れる戦術の幅は前作よりも飛躍的に高くなっている。
ゲームの流れは学園パートと戦闘パートを交互に繰り返して、一定の日まで生き残るか、特殊なストーリーを進めてエンティングを目指す。前作同様、自由度は高い。雑談やテレビ鑑賞など、今までではできなかった微妙なロールプレイが可能になっている。「クリスマス」や「運動会」など、前作ではなかった行事も発生する。
「高機動幻想ガンパレード・マーチ」では隠しコマンドを使わないと使えない隊員がいたが、今作では正式に全隊員をプレイヤーキャラにできるようになった。ステータスや技能に加え、性格や特性などによって前作以上にキャラの個性が出るようになった。特にキャラの性格付けは前作よりも個性的になっており、スポーツ用品をひたすら集める、ひたすら訓練に励む、ハーレムを作ろうとするなど様々である。
「白の章」「緑の章」「青の章」の3部作構成になっている。1月に「白の章」、3月に「緑の章」、7月に「青の章」が発売された。基本システムは同じだが、登場人物や舞台が大きく異なる。また、条件を満たすと前の章からキャラをコンバートすることができる「転戦」というシステムも存在する。
小隊メンバーを自由に選べる、歩兵・戦車・人型戦車の同時運用など、新しい試みがなされたが・・・
- 小隊には自分含めて9人しか配属できない(「高機動幻想ガンパレード・マーチ」は22人、絢爛舞踏祭は最大38人。)
- プレイヤーが隊長で固定なので、前作のように好きな役職を選ぶことができなくなった。
- 戦闘中および戦闘後に装備・兵器がランダムで故障して消滅する。装備によってはかなり高い確率で故障する。武装が戦闘中に故障しても修理などできない。
- 爆風が発生する兵器は命中率に関係なく命中する仕様。そのため実弾砲やミサイル装備の幻獣が非常に手強くなった。代わりにレーザーが主力の敵は空気。一応味方に有利に働く面もある。
- 勲章の授与がどの勲章も同じになった。前作では特殊なイベントが発生した手作り勲章(みんなと仲が良いともらえる)や極楽トンボ章(授業連続ぶっちのペナルティ)も上官殿から機械的に手渡されるだけ。ゲーム性とは関係ないが寂しい。
- 装備にはそれぞれ「戦力値」というコストが与えられているが、装備の性能と「戦力値」が釣り合わない(人型戦車の半分の戦力値で倍近い体力を持つ歩兵など)。前述の故障と相まって、装備の自由度がかなり低い。
- HPが「致命部位」「武装部位」「移動部位」「装甲部位」に分かれている(メダロットみたいなもの)。そのため、ザコでも複数回攻撃を当てなければいけないので面倒。
- 人型戦車が使いづらい(移動射撃ができない等)
- プレイの仕方によって特殊なストーリーイベントが発生するのだが、その進行がランダムなので、ストーリーが発生したのに運悪く話が進まないまま期限切れエンティングなんてことも。
- 『Return to Gunparade』の続編にしたことにより、前作からのキャラや世界観の激変。「高機動幻想ガンパレード・マーチ」のみプレイしていた人たちを置いてけぼりにした。
- 露骨な三作分割商法。
・・・などが不評で評価はあまり高くなく、クソゲーオブザイヤー2006にノミネートしてしまった。
登場する兵種
- 突撃兵
- 歩兵の基本となる兵種。武装は砲撃兵に劣るが、装着できるウォードレス(戦闘服)の種類が豊富。特に突撃兵専用の「烈火」は3作通して戦車以上の防御力を持つ高性能なウォードレスである。
- 戦車兵
- 人型戦車や戦車に搭乗することができる兵種。単体での戦闘力は皆無に等しい。
- 航空兵
- ヘリに搭乗することができる兵種。戦車兵同様、単体での戦闘は不可能に近い
- 狙撃兵
- 狙撃銃が使える兵種。他の部位を無視して「致命部位」にダメージを与えられるが、狙撃銃が故障しやすいので使いづらい。
- 砲撃兵
- ミサイルやグレネードなど、強力な武装が使える兵種。戦車兵と比べて防御に難があるが、うまく立ち回れれば強い。
- 衛生兵
- 歩兵のHPを回復することができる兵種。マシンガンが使えるので歩兵時の戦車兵や航空兵よりも戦闘力は高い。
- 偵察兵
- 視界が広く、索敵に向いた兵種。警戒車両に乗ることができ、戦闘向きな車両もあるので、偵察以外の目的で使われることが多い。
- 整備兵
- 装備全般の整備を行う兵種。プレイヤー選択不可。前作から人数が3分の1に減少しているが、これは主人公の部隊では戦車兵の3機編成が想定されていないため。装備の故障率やHPの回復などに関わり、重要度は非常に高い。担当のCPUがやる気、体力、気力が高いか低いかで、修理の進み具合に大きく差が開く。そのため、プレイヤーの学園パートでのNPCとの接し方が大きく反映される。
主な兵器・兵装
- アーリー・FOX
- 標準的なウォードレス。全章通して登場する。能力は高くないが、必要な発言力と戦力値が低く、使える兵種も多い。
- 零式栄光号
- 前作に登場した士魂号の後継機。センサー類と火器管制装置が一新され、国民の支持を得るために装甲デザインが変更されている。中身は熊本で運用された士魂号M型とほぼ同じである。空気設定に等しかった「整備性の悪さ」がゲーム性能に色濃く反映されており、故障率が非常に高い。戦力値と必要発言力の高さも相まって、多くのプレイヤーから敬遠される存在になってしまった。
- 95式対空戦車
- 上方の射角に優れた戦車。故障値の低さ、装甲の厚さ、使い易い兵装を備えているため、とても使い勝手が良い。下方の射角が狭く、懐に飛び込んできた小型の幻獣を狙うのは得意ではないが、それを差し置いても優秀なキャリアであることには変わりない。白の章では多くのプレイヤーに部隊の主力として重宝された。
しかし緑の章以降は固定兵装が戦闘中に故障するようになったので信頼性が悪化。ヘリとか鳥とかが死ぬほどウザいので需要は増加したのだが・・・。 - はやかぜ
- 航空兵力としては、必要発言力が最も低い。戦闘力は決して高くなく、撃墜されると搭乗者が即死する。必要発言力が低いとはいっても、あくまで航空兵力の中での話であり、他の兵器と比べて異常とも言える必要発言力が要求される。更に戦力値が高いなど、非常に扱いづらいキャリアである。搭乗者が即死する特性を活かして、前作のスカウトのように、暗殺に使われる。
- 対馬
- 水陸両用の人型戦車。見た目がずんぐりしたザク。足を折りたたんでガンタンクのような形態になることが可能で、この状態だと移動攻撃が出来る。装甲や耐久力にも優れているが必要発言力も高い。
- 栄光号本国仕様
- 零式栄光号に士魂号M型の装甲を取り付けた特殊仕様。上記の変更点を除けば士魂号M型そのものといえる。栄光号に比べて移動速度等には優れているが格別に強いとは言いがたい。また複座型のミサイルは仕様変更のおかげで殲滅力が低下している。
主な幻獣
前作の舞台である熊本とは違い結界が存在しない、という設定なので大型幻獣もどんどん出て来る。でもデカいだけで一部を除けばあまり脅威に感じない。
- ベヒモス
- 全身に88もの目がある四脚の大型幻獣。全身の目のうち半数がレーザー砲になっている設定で重火力・重機動型なのだが、ゲームの仕様で頭部にある目からしか攻撃できないので設定が死んでる。白と青に登場。
- うみかぜゾンビ
- 前作に登場した「きたかぜゾンビ」の亜種で、設定上は同じようなもの。上述したミサイルの仕様変更により非常に厄介度が増した上に緑の章からは雲霞のごとく寄ってきてじゅうたん爆撃をかましてくる。
- グレーターデーモン
- 異常に発達した上半身と四本の腕、申し訳程度についた足が特徴の中型幻獣。人型戦車の出現に呼応して進化したタイプとされ、四本の腕は様々な武装を運用できる、という設定なのだがゲーム中では砲撃しかしてこない。しかしこの砲撃が射線さえ合っていれば絶対当たる迷惑仕様で、しかも集団で固まってウジャウジャ出現するため強さはその辺の大型幻獣の比ではない。全章に登場し、緑は出現時期が早まるので余計に恐ろしい。
- ヴィーヴル
- 二足歩行のトカゲ型の中型幻獣。頭部についた目から強力なレーザーを発する。設定では目を取り外してファンネルみたいに運用できるらしい。初登場した白では出現時期が遅くどうでも良い存在だったが緑では出現時期が早まった上に爆撃もしてくるので脅威。何故か青ではいなくなった。
- ペンタ第5世代
- 厳密に言うと幻獣ではなく、幻獣と戦うために超能力を持たせたクローン人間。しかし超能力のせいでむしろ幻獣と同調してしまい人類の敵となった。耳が翼状になった天使のような外見で、自殺ウイルスという特殊な武器を用いる。特定の作戦にのみ登場し、敵幻獣の指揮官的役割を果たす。こいつを倒さないと戦闘が終わらない上に戦場の奥まったところで大量の増援に囲まれているので倒すのが面倒。
- ヘカトンケイル
- 全長数10Kmにも及ぶ超巨大幻獣で、幻獣たちの空中要塞のような存在。あまりに巨大なので特定のシナリオでしか出現せず、ヘカトンケイルの体に直接上陸して戦うことになる。弱点部分は全身に80万個以上ある目だが、システム上はプレイヤー担当地域にある20個を潰せば勝利。時間が経つと増援の幻獣がわんさか出現する。
- バジリスク
- 小型幻獣。ニワトリでもトカゲでもなく2mくらいの甲殻類のような形状。緑色の強酸を吹き付けてくるがこれが必ず当たる。痛い、数が多い、的が小さいと最悪の連中。緑の章にしか出現しない。
- オウルベアー
- 100m超の巨躯と光学障壁による強大な防御力を誇る大型幻獣。当然攻撃力も高い。側面を突かないことには有効打を与えることが出来ない。緑の章にて初登場し、同作では最強の存在。幻獣側の決戦兵器という認識らしくオウルベアーばっかり大量に出現するパターンもある。青の章では最強ではないが強いことにかわりない。
- ジャイアントトード
- のそのそ動き回る巨大なカエル型の幻獣。海辺に数匹固まっていると生理的に気持ち悪い。青の章にのみ登場。能力はオウルベアーより高いはずだが、人型戦車の対馬がかなり強いのであまり問題にならない。
各章の特徴
白の章
舞台は冬の青森県。
戦闘の難易度は低め。難易度の高い戦闘でも、比較的ではあるが楽にクリアできる。平地が多いため、戦車が戦いやすい。ゲームのテンポはかなり悪く、ゲーム全体が非常にもっさりしている。好感度が高い隊員が2名いると発生する「嫉妬大爆発」が非常に発生しやすく、気軽に隊員と仲良くなれない(前作同様、あるアイテムを使えば容易に回避可能ではある)。
緑の章
舞台は春の広島県。
ゲームのテンポ、「嫉妬大爆発」の仕様が改善され、学園パートが格段に遊びやすくなった。森や急な坂が多いため、戦車は動き辛く、歩兵が若干有利な戦場になっている。この章にのみ「雷電」という兵器が登場する。「雷電」はHP回復の手間がかり、ものによっては入手が面倒だが、歩兵の能力を大きく高めたり、兵の数を疑似的に増やすことができる。戦闘は敵が強い、装備が補充しづらい、装備が故障しやすいの三重苦で、難易度が非常に高い。
- キャラ紹介
- 源健司
- 本作の主人公。古典的な「不良だけどイイ奴」なキャラ。体力と気力、運動力が高く、技能も優秀。「雷電」を初めから所持しているのも強み。ただし、勉強関連のパラメーターが非常に低い。やたら喧嘩をするので、NPC向きとは言い難い。
- 芝村英吏
- 公式設定が「イケメンデブ」というすごいキャラ。イケメンかどうかはともかく、NPCにするとイベントや能力の関係で大活躍してくれる高性能デブ。ストーリー的にも重要人物で、カッコイイ見せ場も多い。
青の章
舞台は夏の父島。
島の天体観測所を使って、黒い月という星の観測を成功させるのが一応の目的。
離島だからか物価が上昇している。また部隊用の食料(ジャガイモや米俵)の陳情に必要な発言力も上昇しており、食糧難になりやすい。
白・緑の章の隊員たちを転戦させていれば、最大で61名ものキャラクターの中から小隊メンバーを選べる。まあ選べるのは9名までだが・・・。
水着を購入し、自分で着ることも、隊員たちに着用を義務付けさせることも可能。水着着用ハーレム部隊でカラオケボックスの王様ゲームを行うと、これなんてエロゲ状態となる。
白・緑の章でとあるイベントを起こしたデータがあれば、そのイベントの結末を見ることができる。
主なゲームの目的である黒い月観測は、成功させても、様々な謎を残したまま終了してしまう。その一部は漫画版で解答が得られるが、それ以外は未だに謎のままである。絢爛舞踏祭から続く、ネットコミュニティ偏重のストーリー作りの弊害の一つである。
アニメ版
2005年10月~2006年3月放送。
ゲームに先行して放送された。三つの章を2クールで描くという無茶な構成。
橋本みゆきが歌うOPとED、豪華声優陣の演技は好評だった。
が、ゲームのプロモーションアニメであるはずなのに、ゲーム版と性格・設定が違うキャラが多数存在した。以下はその一例。
- 谷口竜馬 ゲーム:マッチョな見た目の反してストレス性胃炎を抱える苦労人→アニメ:筋肉バカ
- 芝村英吏 ゲーム:冷徹である一方で、地元住人への支援を忘れないイケメンデブ→アニメ:ただのヤなデブ上司
- 紅・エステル・ヴァラ ゲーム:大陸出身の少女。たどたどしい日本語を話す→アニメ:戦災のショックで失語症に。主役の話があるのにセリフほぼ無し。
- 結城火焔 ゲーム:自称スーパーガールor美少女ハンターのおバカキャラ→アニメ:男口調・男勝りな性格に
この他、セリフが無かったり、そもそも登場しないキャラもいる。ちなみにGPMキャラは一切登場しない。
シナリオの評価は人や章により様々である。
(例「白の章の一部隊員の印象の悪さが消えなかった」「緑の章のオチ・・・」「青の章幻獣さんドコー?」)
ゲーム版の各章には特典アニメDVDが付属しているのだが、内容はこのアニメ版設定での外伝である。どうしてこうなった・・・。
小説版
榊涼介氏によるノベライズ。各章1巻の全3巻。
登場人物たちの性格設定はゲーム版に準じており、各章20名以上の登場人物らをうまくまとめていると好評である。全3巻なのが惜しまれる。
同氏のガンパレ小説シリーズ的には『九州撤退戦』から分岐したパラレルストーリーという位置付けになっている(善行の役職が『山口防衛線』以降と異なったりしている)
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