ニコニコ大百科 : 医学記事 ※感染した可能性がある方は、直接医療機関を受診しないでください。 まず、各保健所等に設置された発熱相談センターにご相談ください。 |
ウイルスとは、核酸とそれを包むタンパク質の殻から成る結晶、機械的な構造体である。
細胞や細胞膜を持たず、増殖もできないが、ゲノム情報を持っているので「感染」によって他の生物の細胞を利用して自己を複製できる…という、生物と非生物の間に位置する存在である。[1]
細菌と混同する人が少なくないが全くの別物で、肉眼で見えないほど極々小さな細菌よりもさらに小さく、普通の顕微鏡では見ることができないので、観察には電子顕微鏡が用いられる。
ウイルスが生物と一線を画す存在とされる理由としては、生物の最小単位である細胞を構成単位としないこと、生物が両方持っているはずのDNAとRNAどちらかしか持たないこと、そしてATPの合成やリボソームによるたんぱく質の合成が不可能なこと、などが挙げらている。
ウイルスは粒子の中心にある核酸と、それを取り囲むカプシドと呼ばれるタンパク質の殻で構成されており、ウイルスによってはエンベロープと呼ばれる膜成分がカプシドの外側を覆っている。核酸にはDNA(デオキシリボ核酸。遺伝情報の伝達において機能する)とRNA(リボ核酸。タンパク質合成において機能する)の2種類があり、ウイルスはDNAとRNAのどちらか一方を持っている。[2]
近年「巨大ウイルス」と俗に称されるいくつかのウイルスの種が見つかっている。これらは実際のサイズ的にも、ゲノムの量的にも、同じく目に見えない細菌と比べても格段に小さいとされてきたこれまでのウイルス観を裏切り、まさしく「巨大」である(ある巨大ウイルスなど、一番小さな細菌よりもサイズもゲノムの量も大きい)。また上述では核酸に「DNAかRNAのどちらか」という補足がついてる通り、DNAかRNAどちらかを持っているのがこれまでのウイルスの常識であったのが、巨大ウイルスの発見により初めてDNAもRNAも持った種が確認された。機能的にもこれまでウイルスが用いていなかった「生物らしい」ものを備える種がいることもわかっている。
これら巨大ウイルス、すなわち「ミミウイルス(最初に発見された巨大ウイルス。ミミとはミミック=真似る、似せるという意味であり、これは当初ウイルスの常識を外れたサイズの大きさゆえ「ブラッドフォード球菌」と言う名がつけられ菌と混同されたことに由来する)」や「メガウイルス」「パンドラウイルス」「ピソウイルス」といった存在は諸々の理由により、「バクテリア(細菌)」と「アーキア(古細菌)」そして我々人間を筆頭とする動植物含めた「真核生物」という、生物の一番大きな三つの「ドメイン」分類にひとつ付け加えられるべき「第4のドメイン」ではないか、という提案もされている。つまり先の話を裏切って(少なくとも巨大)ウイルスは生物学的には生物である、という主張が存在するのだ(これは反論もあり、議論は紛糾した)。
どちらにしろ「ブラッドフォード球菌」が菌ではなく「ミミウイルス」だとわかったのが2003年、それから年ごとにウイルス研究は進んでおり、まだまだ研究の余地は多分にある。何しろ相手は普通では目に見えない存在なのだから。
まずウイルスは宿主となる細胞の表面に付着する。細胞は常に外部と物質のやり取りを行っているが、細胞はその物質の一部としてウイルスを取り込む。細胞自体にウイルスとそれ以外の物質を区別できないが、ウイルスの種類によってどの種類の細胞の内部に侵入できるかは異なる(例えばHIVならヘルパーT細胞)。
細胞内への侵入に成功するとカプシドは一度分解され、核酸が遊離する。その後、細胞の複製能力によりウイルス核酸が細胞内に大量に生成され、細胞のタンパク質合成能力によりウイルスのタンパク質が合成される。
できあがった核酸とタンパク質が集合し再びウイルスとして元の姿に戻る。出来上がったウイルスは細胞外へ脱出するが、このとき細胞膜や細胞壁は破壊される。
以上が簡単ではあるがウイルスの増殖方法である。ウイルスに代謝能力を乗っ取られた細胞がまともでいられるはずがなく、一度ウイルスに感染した細胞は癌化するか死を迎える運命である。
ウイルスといえば前述した感染と増殖によって誘発される病気を引き起こすような、我々にとっては「敵対者」というイメージが強いかもしれない。しかし、生物の進化過程ではウイルスの影響や恩恵を強く受けている、という研究結果も出ている。
例えば人間=ホモ・サピエンスのゲノムにも多くの内在性レトロウイルス(レトロウイルスのゲノムが定着した部分)箇所が見られ、それらは出産時の胎盤の形成や脳の形成の一部を担っている、という報告がある。より正確なところはこれからの研究が待たれるが、少なくともウイルスが人間を含めた多くの種の進化に影響を及ぼし、今も何らかの機能を果たしている可能性を指摘する声は多い。
また近年ではそこから進んで、生物はおおむね内在性ではないものも含めたウイルスと「共生」しており、我々がイメージするような何らかの異常を引き起こす存在としてのウイルスという像は、前述したHIVウイルスであればチンパンジーに感染するタイプのそれが突然変異でここ最近人間へと感染するタイプに変わった(という考えがある)ように、ある意味では「ウイルスの側からしても慣れない環境に突然放り込まれた」ゆえの過渡期的な事象という説もある。
どちらにしろウイルスと生物との関係性に関しては昔より研究が進んでいるがまだまだわからないことのほうが多いゆえ議論が尽きず、現代の生物学におけるホットな話題のひとつになっている。
なお日本のwebでは日本人学者が唱えたいわゆる「ウイルス進化説」が広まっている。前述した通りウイルスが進化に及ぼした影響に関しては多くの支持する声があるが、この「ウイルス進化説」はウイルスによる進化こそが生物進化の原動力であり、現代進化論的な突然変異と自然選択による進化を否定しているので、今のところ主流の科学者からは相手にされていない。「ウイルス進化説」と違ってウイルスが進化に影響を及ぼしたという説は、変異がDNAの突然変異だけでなくウイルスとの共生でも起きると述べているだけであり、また自然選択がそれを整えていることを認めるという意味で、現代進化論を否定するのではなく補足や拡張をしていると言った方が正しく、両者ははっきり別物である。
括弧内はそのウイルスにより引き起こされる感染症(人間以外のものを含む)。
掲示板
126 ななしのよっしん
2023/06/24(土) 15:53:07 ID: xNUwJ+pAQ0
127 ななしのよっしん
2023/09/13(水) 17:35:54 ID: gHzzt044V/
一節を全部太字にするの読みにくい
128 ななしのよっしん
2023/11/08(水) 20:09:02 ID: mXVD7muXcH
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最終更新:2024/11/25(月) 00:00
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