ダイアナソロン(Diana Tholon)とは、1981年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
グレード制導入後最初のGⅠ馬となり、1984年牝馬三冠の主役を務めた「幽霊の曾孫」。
主な勝ち鞍
1984年:桜花賞(GⅠ)、サファイヤステークス(GⅢ)
父*パーソロン、母ベゴニヤ、母父ヒカルタカイという血統。
父は言わずもがな、同期の皇帝シンボリルドルフを輩出した当時のトップサイアー。
母は23戦2勝。伯母に桜花賞馬ワカクモ、そのワカクモの仔に名馬テンポイントがいる。
母父は初代南関東三冠馬で、中央に移籍して1968年の天皇賞(春)を八大競走史上最大着差で圧勝した馬。種牡馬としては全くと言っていいほど結果を残せなかった。
テンポイントの名が出てきたところで察した人もいるだろうが、彼女の3代母「丘高」は競走名をクモワカという。1951年の桜花賞2着・菊花賞4着などの実績を残したのだが、現役中に馬伝染性貧血(伝貧)の診断を受けて殺処分の命令が下ってしまう。ところが全く症状が出なかったため「誤診なのでは?」と関係者が匿って繁殖入りさせ、裁判を経て繁殖牝馬としての身分を回復したという波瀾万丈の馬生を送った馬。身分回復まで登録上は死んだことになっていたため、その子孫たちは「幽霊の子」「亡霊の一族」と言われることになった。詳しいことはクモワカの記事を参照。ダイアナソロンは、つまり「幽霊の曾孫」ということになる。
1981年3月18日、苫小牧市の「ランチョトマコマイ」という牧場で誕生。競馬新聞における馬柱や予想印のフォーマットを作った人として知られる白井新平が設立した牧場である。
オーナーは後にルイジアナピットなどを所有した大島秀元。1985年からは繁殖牝馬としての受け入れ先となった大塚牧場の所有となった。
※この記事では時代に合わせ、馬齢表記を数え年(現表記+1歳)で記述する。
栗東・中村好夫厩舎に入厩したダイアナソロンは、「天才」田原成貴[1]を鞍上に、1983年9月11日、阪神・芝1200mの新馬戦でデビュー。単勝7.5倍の4番人気だったが、2馬身差の快勝デビューを飾る。
続く阪神・芝1400mの萩特別(400万下)も快勝し、翌年の牝馬クラシック有力候補と見られるようになったダイアナソロンだったが、年末の阪神・芝1600m戦、シクラメン賞(800万下)ではまさかの10頭立て8着に撃沈してしまう。ただしこのときは主戦の田原が有馬記念のため中山に行っており加用正騎手がテン乗りだったので、そのせいもあったかもしれない。なお、田原はその有馬記念をリードホーユーで勝利。グレード制導入前の最後の八大競走にて八大競走初制覇を飾った。
明けて4歳、田原が戻ったダイアナソロンは京都・芝1400mのエルフィンステークス(OP)から始動。重馬場も苦にせず3勝目を挙げる。
桜花賞へ向け、続いてトライアルの4歳牝馬特別(西)(GⅡ)へ。ところがここでは道中馬群に閉じこめられて6着撃沈。まさかの優先出走権も逃す大敗で、桜花賞へやや暗雲漂う前哨戦となってしまった。
迎えた桜花賞(GⅠ)。この年から日本競馬には新たにグレード制が導入され、それまで「八大競走」と「八大競走以外で賞金の高い重賞」と「それ以外の重賞」というふんわりした区別しかなかった重賞競走の格付けが整理され明示されるようになった。そんな日本競馬における初めてのGⅠがこの年の桜花賞である。
そんなこの年の桜花賞はダイアナソロンも含め有力候補が揃ってトライアルで敗れたため本命不在の混戦ムード。ダイアナソロンは単勝4.5倍の3番人気であったが、陣営は渾身の仕上げで彼女を送り出し、田原騎手はまたがった瞬間に勝利を確信したという。
当時の阪神・芝1600mの先行有利なコース形態もあって、レースは先行争いが激しくなりハイペースの流れ。ダイアナソロンと田原成貴はじっくり中団のインに構えた。3コーナーからハイペースで潰れた先行勢が次々と脱落、4コーナーを曲がりきれずに外に膨らんでいく。結果、インを立ち回ったダイアナソロンの前は綺麗さっぱり誰もいなくなり、そのまま4コーナーでもう先頭へ。直線に入るとあとは後続を思うままぶっちぎって、終わってみれば5馬身差の圧勝。完全なダイアナソロンの独り舞台だった。
同日の中山大障害(春)でテンポイントの全弟・キングスポイントが悲劇の最期を遂げた直後、クモワカの血がまたもその力を証明する勝利。これで一躍ダイアナソロンは、この年の牝馬三冠の主役に躍り出た。
田原成貴もまた、昨年の有馬記念の「八大競走最後の勝利ジョッキー」に続いて、「グレード制導入後最初のGⅠジョッキー」の称号も獲得。「天才」の評価を確固たるものとした。
二冠を目指し、続いて向かった優駿牝馬(GⅠ)では、ダイアナソロンは堂々2.6倍の1番人気に支持された。ところがここには思わぬ伏兵が息を潜めていた。桜花賞で18番人気ながら4着に食い込んでいた、ダービー牝馬ヒサトモの血を引く9番人気トウカイローマンである。
内の1枠3番からスタートしたダイアナソロンだったが、スタートで出遅れてしまった上に内の馬場が非常に悪く、田原成貴は一旦下げて外に出さざるを得なかった。そのまま外を回し、今回もハイペースで前が潰れるのに伴って4コーナーでもう先頭を捕まえる。そのまま直線で抜け出し押し切り――と思いきや、内から伸びてきたトウカイローマンにあっさりかわされ、それ以上食い下がる余力はなく2着。あえなく二冠の夢は散った。
夏休みを挟み、秋はサファイヤステークス(GⅢ)から始動。トウカイローマンも同じくこのレースから始動となったが、ダイアナソロンは1番人気に応え、桜花賞馬の貫禄を見せて危なげなく勝利。エリザベス女王杯へ向けて幸先の良いスタートを切る。トウカイローマンが5着に沈んだ一方、このときブービー6番人気で2着に突っ込んで来たのが、初勝利まで13戦を要した「サラ系」のキョウワサンダーだった。
続くローズステークス(GⅡ)でも1番人気に支持されたが、ここでは桜花賞2着馬ロングレザーを捕まえきれず、クイーンステークス2着のジムベルグにもハナ差かわされて3着。むむむ。まあここはトライアル、トウカイローマンはまた6着に沈んだし、前走2着の変なサラ系の馬は8着だし、こっちは本番に向けて仕上げればいいだけの話である。
そんなわけで迎えた牝馬三冠最終戦・エリザベス女王杯(GⅠ)。前走の敗戦もダイアナソロンの評価を下げるには至らず、堂々2.5倍の1番人気。2番人気からは7倍台、8倍台で、揺るぎなき大本命であった。
今回も1枠2番の内枠になったダイアナソロンと田原成貴は先行争いに加わらず、後方まで位置を下げる。レースは有力馬の後方待機でスローペースの流れとなり、中盤から徐々に位置を上げていくと、直線で馬群を割って末脚を伸ばすダイアナソロン。スローなのに前崩れの、いわゆる「直線ヨーイドン」の瞬発力勝負となり、桜花賞をぶっちぎった末脚で一気に差し切る! ――はずだったのだが、外から彼女以上のキレ味で馬体を併せて叩き合う馬が2頭。穴人気していた5番人気キクノペガサス、そして14番人気の完全な伏兵、「サラ系」のキョウワサンダー! この2頭の熾烈な追い比べに並ぶことができず3着。世代トップの実力は見せながら、残る二冠はともに伏兵の末脚に屈して勝ちきれずに終わってしまった。
ダイアナソロンはその後、シンボリルドルフvsミスターシービーの三冠馬対決に沸くジャパンカップ(GⅠ)に果敢に挑戦したが、カツラギエースの逃げ切り日本馬初制覇の栄光の後ろで最下位14着に撃沈。とはいえ牝馬三冠での安定した成績が評価され、この年の優駿賞(現:JRA賞)最優秀4歳牝馬を受賞した。
明けて5歳はマイル路線に進んだが、2月の読売マイラーズカップ(GⅡ)でニホンピロウイナーに蹴散らされて3着。3月のコーラルステークス(OP)では先輩桜花賞馬シャダイソフィアの3着に敗れ、その後脚部不安により現役引退となった。通算13戦5勝 [5-1-4-3]。
引退後は、5歳時からオーナーになっていた三石町の大塚牧場で繁殖入り。テンポイントのライバル・トウショウボーイとの間に産まれた第4仔クエストフォベストがデビュー2連勝を飾り、岡部幸雄がビワハヤヒデより優先したほど将来を嘱望されたが骨折で大成できずに終わるなど、直仔からはこれといった活躍馬が出ることなく、1994年に14歳で死亡した。
仔出しはよく繁殖入り後は毎年ちゃんと産んで8頭の仔を残し、うち3頭の牝馬が牝系の血を現在まで繋いでいる。
*パーソロン 1960 鹿毛 |
Milesian 1953 鹿毛 |
My Babu | Djebel |
Perfume | |||
Oatflake | Coup de Lyon | ||
Avena | |||
Paleo 1953 鹿毛 |
Pharis | Pharos | |
Carissima | |||
Calonice | Abjer | ||
Coronis | |||
ベゴニヤ 1972 鹿毛 FNo.3 |
ヒカルタカイ 1964 鹿毛 |
*リンボー | War Admiral |
Boojie | |||
ホマレタカイ | ハクリヨウ | ||
シマノオー | |||
オカクモ 1965 鹿毛 |
*ライジングフレーム | The Phoenix | |
Admirable | |||
丘高 | *セフト | ||
月丘 |
クロス:Avena=*プリメロ 4×5(9.38%)、Tourbillon 5×5(6.25%)
動画がないので1984年の牝馬三冠はYouTubeで見てください。
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