建物とは、不動産の一種で土地に定着した建造物である。
現代日本における建物の法的な定義は、不動産登記法の関連法令である不動産登記規則に見出すことができる。
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
別にこの要件を満たさなくても勝手に建物を名乗る分には支障はないが、少なくともこの要件を満たさない構造物は建物として登記ができない。固定資産税の課税対象となる建物も「登記能力を有している」ことを要件としており[1]、上記の要件を満たした建造物が建物であるという認識で問題ないだろう。
以下では、各要件についてより詳細に説明する。
屋根や周壁などで建造物の内外が物理的に分断されていることを、専門用語で外気分断性という。どの程度屋根や周壁に覆われていれば外気分断性が認められるか、という点が問題になるが、これは建造物の用途も考慮して判断する。
たとえば居宅であれば、外周全てが屋根や周壁で覆われて風雨を凌げる状態でなければ、居宅としての用に供せるとは言えないため、周壁のいずれかの面が常時開放されているものは外気分断性を認めることができない。一方で車庫の場合は、周壁のいずれかの面を車両の出入りや排気のために開放していても外気分断性が認められる。
屋根や周壁の材質も考慮される。温床施設を例にすると、周壁が耐用年数1~2年程度のビニールで出来たビニールハウスは外気分断性が認められないが、ガラスなど永続性のある素材で出来ている場合であれば外気分断性を認めることができる。
要するに、簡単に動かせるものは建物とは認定できませんよ、ということである。たとえば、基礎工事をせずにただ置いただけの物置は定着性を認めることができないが、同じ物置でも土地に固定する工事を施した場合や、電気・水道・ガスを引いて店舗に転用するなどした場合は、容易に動かせないと判断して定着性が認められる。基礎の存在は定着性の必須要件ではなく、掘立式の建造物などであっても定着性が認められる。
定着性の認定にあたっては、その建造物の利用が半永久的であるか否かも着目される。たとえば工事現場などに設置されるプレハブ小屋や展示用のモデルハウスなどは、用が済めば撤去されるものなので定着性があるとは言えない。
外気分断性と定着性を備えた建造物であっても、その目的とする用途に供し得ないハリボテのようなものは建物として認定することができない。たとえば居宅であれば、内部に生活を営むための十分なスペースと設備が必要で、明らかに人が住めないようなミニチュアの家などは用途性が認められない。
用途性が認定されるには、人や物が一定期間とどまって建造物を利用すること(これを人貨滞留性という)が求められ、したがってただ通過するだけの渡り廊下のようなものはそれ自体に用途性を認めることはできない。
不動産登記事務取扱手続準則では、建物として扱うもの・扱わないものの具体例を挙げている。
第77条
建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。
一 建物として取り扱うもの
ア 停車場の乗降場又は荷物積卸場。ただし、上屋を有する部分に限る。
イ 野球場又は競馬場の観覧席。ただし、屋根を有する部分に限る。
ウ ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物
エ 地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物
オ 園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。二 建物として取り扱わないもの
ア ガスタンク、石油タンク又は給水タンク
イ 機械上に建設した建造物。ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。
ウ 浮船を利用したもの。ただし、固定しているものを除く。
エ アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆いを施した部分)
オ 容易に運搬することができる切符売場又は入場券売場等
上記の認定要件と照らし合わせて、「建物として取り扱わないもの」に欠けている要件は何か、考えてみよう。
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