たかなみ型護衛艦とは、平成15年度から18年度に5隻が竣工した。むらさめ型護衛艦の準同型艦に相当する、海上自衛隊の汎用護衛艦である。俗称は「なみ型護衛艦」。
概ね、むらさめ型護衛艦を原型としつつも、周辺情勢や技術進歩に合わせた。適切な改修が施されており、実用性と完成度の高さは健在である。国外派遣任務から災害派遣まで、幅広く活躍している護衛艦の一つ。
海上自衛隊では。後にあきづき型護衛艦に搭載されるFCS-3を、むらさめ型護衛艦の段階で搭載する構想が存在した。それは、たかなみ型護衛艦でも継承されたが、新型国産短SAMの開発中止。FCS-3のシステム構築再設計などから、むらさめ型の過不足を是正した準同型艦となっている。
目を引くのは武装であり、離島事案対処も視野に入れた速射砲の大口径化。垂直発射装置のMk41への統一などである。これにより甲板レベルが一つ上昇している。また、当初より哨戒ヘリ2機運用のため。格納庫からヘリ甲板展開レール数まで、航空艤装は再設計が行われており、新型のSH-60k運用も当初から可能であった。
近現代の水上艦の要といえるC4Iは、基本的にむらさめ型護衛艦のそれを踏襲している。但し4番艦「さざなみ」、5番艦「すずなみ」では、イージスシステムベースライン7と同じ。民生電子部品ベースの分散処理を導入。Link16を当初から搭載。もしくは前就役艦にバックフィットするなど、相違点も多い。
なお、むらさめ型護衛艦の項目で触れたとおり。当初はマストのステルス化も検討され、実効自体は不可能ではなかった。しかしその場合、排水量が更に200トン以上増大。船体改設計に掛かる負担が増大すること。既存のマストが実用性の面で、大きな問題を有していなかったことから、あきづき型まで見送られた。
また、これは目立たない改正であるが、海士や海曹の居住区を大部屋化。人員居住用隻に余裕をもたせ、邦人輸送などで3段寝台を用いた場合。最大で50名の収容が可能と言われている。
| 全長 | 151.0m |
| 全幅 | 17.4m |
| 排水量 |
基準4650t |
| 乗員 | 175名 |
| 武装 | 54口径127mm単装速射砲1門 高性能20mm機関砲(CIWS)2基 Mk41VLS(垂直発射装置)32セル (装填弾)シースパロー系列短SAM、垂直発射アスロック 90式艦対艦誘導弾発射筒4連装2基 3連装短魚雷発射管2基など |
| レーダー | OPS-24B対空レーダー OPS-28D対水上レーダー OPS-20航海用レーダー |
| ソーナー | OQS-5-1バウソーナー OQR-2曳航ソーナー(TASS) |
| ESM/ECM | NQLQ-3電波探知妨害装置 及び Mk36SBROCK(チャフ、フレア発射機) |
| 速力 | 最大30kt |
| 主機 | COGAG方式 4基2軸 出力6万馬力 「スペイSM1C」 13500馬力 2基 「LM2500」 16500馬力2基 |
| 搭載機 | SH-60JないしSH-60k哨戒ヘリ1機(最大2機) |
速射砲の大口径化
はつゆき型護衛艦以来、海自の汎用DDはオットーメララ76mm速射砲を愛用している。しかし離島事案対処、つまり艦砲射撃なども視野に入れて、こんごう型護衛艦と同じ。54口径127mm速射砲を搭載している。 発射速度では劣るものの、1弾あたりの破壊力は大きい。なお、当面最後のオットーメララ127mm砲搭載艦ともなっている。
垂直発射装置の統一
むらさめ型護衛艦はアスロックをMk41、シースパロー短SAMをMk48VLSに装填していた。それに対して本クラスではMk41VLSに統一。整備性、船内容積の効率化が図られた。対潜攻撃手段としては垂直アスロック。対空攻撃手段としてはシースパローが装填されている。現在、ESSM対応改修は行われていないが、これは予算優先度が低いとみなされたのか。当初よりFCS-2方位盤とOYQ-9C/D/EがESSMに対応しているのか、不明である。
CIWSの更新
4番艦、5番艦に限定されるが。高性能20mm機関砲(ファランクスCIWS)が、最新のブロック1Bに置き換えられている。これは赤外線センサーによる対水上、あるいは小型無人自爆機対処能力を付与。その上で弾薬、銃身を強化。FCSの近代化を図り、本来の用途である対艦ミサイル破壊能力も強化されている。
航空艤装の改良
あさぎり型、むらさめ型は哨戒ヘリを最大2機。搭載すること自体は可能であった。しかしそれは搭載するのみであり、効率的な運用にまでは至っていない。たかなみ型の段階でようやく、哨戒ヘリスライドレールの複数搭載。SH-60k対応の整備設備などが設けられた。これは後続する新型DDにも踏襲されると思われる。
C4Iの見えない近代化
4番艦「さざなみ」、5番艦「すずなみ」では戦術情報処理システムに、イージスベースライン7と同じ分散処理と艦内ネットワークを導入。処理速度を格段に向上させている。C4Iに限れば別物とも言える。また、それ以前の3隻の戦術情報処理装置も「OYQ-9C/9C-1」となっており、何らかの改良が施されていると思われる。
むらさめ型護衛艦と並び、高い実用性と航洋性。居住性などからアデン湾哨戒任務など、国外派遣任務にも広く活躍している。また、2011年の東日本大震災にも全艦が出動。ネームシップ「たかなみ」が、幼稚園屋上に取り残された園児、保護者、関係者をヘリコプターで救助したニュースは有名である。
近年、あきづき型護衛艦が徐々に就役しつつあるが、現段階では限りなく最新鋭に近い護衛艦でもある。4個護衛隊群に配備されており、今後も日本近海の安全保障。あるいは遠隔地の国外派遣任務などで、活躍し続けることとなるであろう。なお、地道な改良だが、Link16などは逐次バックフィットが継続されていると言われている。
| 艦名 | 艦番号 | 竣工日 | 配備先 | 定係港 |
| たかなみ | DD-110 | 2003年3月12日 | 第2護衛隊群第6護衛隊 | 横須賀 |
| おおなみ | DD-111 | 2003年3月13日 | 第2護衛隊群第6護衛隊 | 横須賀 |
| まきなみ | DD-112 | 2004年3月18日 | 第3護衛隊群第3護衛隊 | 大湊 |
| さざなみ | DD-113 | 2005年2月16日 | 第4護衛隊群第8護衛隊 | 呉 |
| すずなみ | DD-114 | 2006年2月16日 | 第3護衛隊群第3護衛隊 | 大湊 |
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最終更新:2025/12/12(金) 21:00
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