アドミラル・グラーフ・シュペー(アズールレーン) 単語

アドミラルグラーフシュペー

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アドミラル・グラーフ・シュペー

「鉄血海軍ドイッチュラント級装甲艦三番艦、アドミラル・グラーフ・シュペー。ロイヤルの巡洋艦の攻撃を受け、モンテビデオ港に逃げ込んだが、最後は自沈した…… 指揮官、今度は最後まで――戦い抜くよ!」

アドミラル・グラーフ・シュペーとは、STGアプリ『アズールレーン』の登場キャラクター、KAN-SENである。ドイツ海軍の重巡洋艦(装甲艦、ポケット戦艦とも)『アドミラル・グラーフ・シュペー(KMS Admiral Graf Spee)』をモチーフにしている。

※なお動画や静画のタグでは文字数制限のため、主に「アドミラル・グラーフ・シュペー(アズ)」が用いられている。

概要は殺戮のためにあらず、勝利のためである

KAN-SEN名
アドミラル・グラーフ・シュペー
KMS Admiral Graf Spee
基本情報
所属 鉄血
艦種 重巡洋艦
レアリティ SR
CV 渕上舞
イラスト 不可燃物
艦歴
国籍 ドイツ
出身地 ニーダーザクセン州
ヴィルヘルムスハーフェン
造船所 ヴィルヘルムスハーフェン海軍工廠
艦級 ドイッチュラント級装甲艦3番艦
進水日 1934年6月30日
就役 1936年-1939年(ナチスドイツ軍)
最期 1939年12月17日(沈没)
備考
  • ラプラタ沖海戦の後、ウルグアイのラプラタ河口にて自沈。

ドイッチュラント級装甲艦の三番艦。

戦争には達観しており、自らの感情を殺し「鉄血」の一員として自己定義しているが、 本当は「普通」の生活、そして人の愛情と温もりに憧れを感じている。

ーーーー公式Twitter・艦船紹介より

鉄血陣営に所属するドイッチュラント級重巡洋艦の三女。2018年4月10日から開催されたイベント「グラーフ・シュペー追撃戦」で限定建造と特殊任務クリア報酬として先行実装された。

本イベントで入手できる新規艦はシュペー1隻だけということもあってか、建造の方は期間限定建造ではなく、大型建造内のピックアップという形で実装。もちろん建造できるかは運次第……とはいえ、一部では「1点狙いの場合はSSRよりも難しい」とされるSR艦。任務報酬で確実に入手できることもあって、わざわざ狙って回す指揮官は少数であったと思われる。艦隊戦力勢?そんなゴリラは知らん。一方で特殊任務クリア報酬での入手条件は、最終海域のSP3を合計60回クリアすること。イベント期間はおおよそ10日間なので、毎日6周すれば達成可能であった。

2018年4月19日にイベントが終了した現在は入手不可。手に入らなかった指揮官は次の機会を待とう

2018年12月14日からイベントが復刻開催。翌年2019年5月9日のアップデートで、ついに大型艦建造に恒常実装された。同時に待望されていたキャラストーリー「小さな出来事」も追加されている。先述の通り建造沼と名高いSR艦船だけあって入手にはそこそこ運を要するが、未所持の指揮官諸君には是非とも頑張って頂きたい。

なお恒常実装に伴い、開催されていたイベント(ストーリー・海域)は復刻されることがなくなり、代わりに作戦履歴にていつでもプレイすることが可能となった。図鑑の思い出欄を二度と埋められない、なんてことはないので安心されたし。

みんなとおしゃべり…か?いつも一人だから、みんなの前では何を話すべきか…(容姿・性格)

はみ出しそうなシュペーちゃん

好きなもの・こと:大切にしてくれる仲間たち、コーンスナック
苦手なもの・こと:愚痴、戦争
一人称     :私
趣味      :(最近の趣味としては)スマホチャット
特技      :手先器用

ーーーー「アズールレーン びそくぜんしんっ! 1巻」より

銀髪のメッシュ入りショートヘアー。蒼い瞳が印象的な童顔。表情は物静かそうな雰囲気であり、Sッ気全開の姉と比べて随分と落ち着いた印象。首元には大きな赤いスカーフを巻いており、口元が隠れているため、少々表情が読みにくくなっている。衣装は全身黒ずくめのボンデージドレスで、胸元のリングでスカートを吊り下げるような構造。なお胴の側面部分ががら空きで素肌が見えており、程よい大きさの南半球が覗いているみ、見え…。

身にまとう艤装は長姉のドイッチュラント譲りの非常に禍々しいもの。両腕に巨大な甲殻類の如き鉤爪状の小手を装着しており、初見のインパクトが凄まじい。主砲および副砲部分は鮫のような形状となっているが、他のスキンを見ると本人から分離しているため、おそらく独立して動く機械生物のようなものだろう。なお、尻尾については構図の都合上本人から生えているように見えるが、実際は艤装のものであると判明しているため注意されたし。

性格は異形すぎる姿に反して大人しいタイプ。戦いに対して達観とも言える境地に達しているようで、任務を遂行することを何よりも重んじている。指揮官に対する忠義も厚く、たとえ勝率が低い死地に赴くような任務であっても嫌がる素振りを見せない。用心深く、勝利を第一に考え、殺戮を好まないという理想の軍人らしい彼女ではあるが、このような滅私奉公な性格になった理由については、自身の艦歴に由来するようである。

他のKAN-SENとの関係については、姉のドイッチュラントについては「姉ちゃん」と呼ぶ他、イベントで敵対していたエイジャックスとは一緒に買物や食事に行くくらい仲が良好。下記の私服スキン2種は彼女ら二人がそれぞれ選んだものらしく、他にも色々とファッションを見繕ってもらっているようである。「ドーテーゴロシ」な危ない服を着てみたりして、アドミラル・ヒッパーに怒られたりもしているらしい。俺にも見せてくれよ…。なお、いいお出かけ先を教えてくれるのはあのオクラホマだそうである。一方でレナウンのことは嫌っているようだが、その理由については史実の項をご覧頂きたい。

余談

自爆するシュペーちゃん

イベント「アドミラル・グラーフ・シュペー追撃戦」では海域のボスキャラとして登場してくる彼女だが、最初に登場するSP2ではボス戦の途中で撤退しはじめる。この時は無敵状態になるため、物理的に倒すことは出来ない(もちろん勝利判定はちゃんとSになる)。そして続く最終海域であるSP3のボス戦にてようやく倒すことができるわけだが、その戦闘中に彼女の体力を一定以下にすると本人の周囲に円形のゲージが現れ、それがゼロになるとラングスドルフ艦長「降伏はする。しかし、シュペーは渡さない」シュペー「任務了解」とばかりに自爆する

自爆されてしまうと味方艦も巻き添えで大ダメージを食らう上、戦闘評価もAになってしまう(だれかが沈もうものならB評価にまで落ちうる)。おそらく史実での最期を再現したものだろうが、指揮官にしてみれば報酬は不味くなるし沈んだ味方艦の好感度は下がるしでデメリットしかない。戦闘評価に関わらずクリアすることは可能だが、最終ボス戦だけはこっちも戦力を整えて速攻で倒すことが望ましい。

オイゲンに化粧を教えてもらったけど……キレイに見えるかな…
(着せ替え)

着せ替えスキンが用意されており、2019年8月現在で合計4種類が実装されている。期間限定販売のスキンは、その殆どがメンテ日の午前0時に販売終了となる。つまりメンテが始まる頃には既に入手できないということ。「メンテ直前にやっとキャラを手に入れたぜ!よし着せ替えも買うぞ!」と意気込んでショップを見たらスキンが無い……なんてことがままあるため、欲しいと思ったスキンは前に予め購入することが望ましいにゃ

シュペーちゃん(着せ替え)

1つ目はイベント「アドミラル・グラーフ・シュペー追撃戦」と同時に期間限定でショップ販売された「日曜日の少女」。二度の復刻を経て2019年5月9日から定常販売となっている。

衣装は赤いネクタイがワンポイントの黒い洋服と黒ストッキング。生体艤装は胴部分の装甲が外されて青い透明の肌を見せており、ややファンシーな外見になっている。両肘にはそれぞれレジ袋と手提げ鞄を引っ掛け、鞄には姉のドイッチュラントを模したマスコットがついている。また手には「YE YE」という商品名のスナックの袋を持っているがどう見てもとんがりコーンです、本当にありがとうございました

なおこのスキンでわかることだが、通常スキンにおける彼女の両腕の艤装は着脱が可能。着脱に際しては姉が手伝っているようだが、「どうして日常的に艤装をつけてるの」だとか「ネジ強く締めすぎてて外すのが大変」などと愚痴をこぼしていることから、私生活に置いては基本的に外しているらしい。本人としてもあの大きな鉤爪は自身のコンプレックスを刺激するため、あまり好ましくないようである。

まあそれはともかく左手を見てみると、とんがりコーンを指に挿して鉤爪を再現している。タッチ2のセリフでは「この手で抱きしめてもいい?」と言ってくるのだが…。

こら!スナックもった後の手で抱きついてきちゃダメでしょ!

抱きしめてくれるシュペーちゃん

なお2018年8月9日のアップデートで、着せ替え専用のボイスが実装された。これによってパイタッチ2のセリフが変わり、普通に「怒るよ?」と返してくるようになった。他にもプリンツ・オイゲンに化粧を教えてもらったり、エイジャックスからストッキングをプレゼントしてもらったり、Z46(フィーゼ)が絵本を読まないのを不思議がったり、アドミラル・ヒッパーのツンデレに的確に対応したり、ドイッチュラントの姉バカぶりに呆れたり…と平和な暮らしを謳歌している様子がセリフから明らかになっている。

平穏な日常

2018年12月14日のアップデートでのイベント復刻に伴い、着せ替え「平穏な日常」が実装された。一時期入手不可能となっていたが、現在は上記の「日曜日の少女」と一緒に定常販売となっているにゃ

セーターに包まれた私服姿は露出度が極めて低いが、露出の高さと魅力は必ずしも比例しないものであることがわかる。表情バリエーションも7種類と多く用意されている。アドミラル・ヒッパーの催すお茶会とはどんなものか気になるところだが……。現在は後のアップデートでボイスも追加され、戦闘でMVPを取ったら記念写真を友達(エイジャックス?)にスマホで送ろうとするなど、とても微笑ましい姿を見せてくれる。

2019年5月30日のアップデートで、今度は大陸版での2周年記念パーティー衣装「未知の記念日」が実装された。

いつものイメージと異なる青色系のドレスである。ビロードのひらひらなスカートは前のほうが大きく開き、生足を見せつけてくる。可愛らしいが大胆でもある。それにしても、表情の豊かさが母港に来て以来すっかり感情を取り戻して幸せな暮らしをしていることを伺わせる。

この衣装は6月12日までの限定販売となっているにゃ。次の復刻はいつになるかわからないので、ほしい指揮官はショップへ急ぐことにゃ

大切なもののために!(性能)

スキル1:ポケット戦艦
駆逐、軽巡に与えるダメージが15%(最大レベルで35%)アップ

性能面は長姉のドイッチュラントとほぼ共通。300ほど耐久が高いが、火力・雷装・装填が少し低い。史実の経歴からして不幸タイプの娘なので、運の値は低め。いろいろな所で微妙な影響があると思うが、そこは指揮官の愛でカバーしよう。

スキルも『ポケット戦艦』で姉と同じ。駆逐艦及び軽巡洋艦に対するダメージを35%(初期15%)アップするもので、専用砲(徹甲弾)を使って遠距離の標的を狙うか、榴弾砲を装備して軽装甲の相手へのダメージアップを狙うかは指揮官の決断次第だろう。

防御面の脆さも同じ。速力と回避が致命的に低い。改良型缶やビーバーズエンブレムを装備して、少しでも足の遅さをカバーした上で、足の早い駆逐艦や軽巡洋艦に引っ張ってもらおう。

それでも回避の低さは痛いが、2018年4月19日のアップデートでレベルキャップ開放の新システム「認識覚醒」が実装された。その中で、重巡洋艦はレベル100から110に上がる過程で特に回避が大幅上昇することが明かされている。シュペーもかなりの回避上昇されることになり、2019年4月現在はレベル120まで開放され、最終的回避値は57まで達するようになった。ちなみに科学研究室の産物である装備「強化油圧舵」は、回避に難がある彼女にとってはかなり有用。貴重ではあるが、完成したらぜひとも彼女に持たせてあげよう。

初戦が最期になるなんて…私たち鉄血にとっては別に珍しくないよ(艦歴)

ドイッチュラント級装甲艦(重巡洋艦)の成り立ちについては、ドイッチュラント(アズールレーン)の記事を参照。

また、史実についてはこちらも参照→ドイッチュラント級装甲艦

アドミラル・グラーフ・シュペーは、ドイッチュラント級装甲艦の3番艦として、1934年6月30日に進水。この時に洗礼の儀式を行ったのは、名前の元となったドイツ帝国海軍のマクシミリアン・フォン・シュペー提督の娘さんであった。1936年1月6日に就役。

3番艦とあって、1番艦のドイッチュラントに比べると数多くの改良点が施されていた。装甲も若干増加しており、排水量も約400トン増えていた。艦橋は、2番艦のアドミラル・シェーア以降の、マストと一体化した上が狭くなる台形の艦橋となっている。

就役後まもなく、訓練の最中にスペイン内戦が勃発、反政府側を支援するべく姉とドイッチュラント共々スペイン沖へ派遣される。1937年5月には、イギリスのジョージ6世国王の戴冠記念観艦式に出席。日本の重巡「足柄」、イギリスの重巡「エクセター」と舳先を並べることになった。この3隻が敵味方に分かれて戦う未来があろうとはとても思えない平和な光景であった。ここにはフランスも戦艦「ダンケルク」を出席させ、壮麗なる勇姿を競ったのである。全くの余談だが、あのルーデル閣下に後に沈められることになるソ連のマラートもいたりした。

第2次世界大戦勃発が現実味を帯びてきた1939年。8月21日にアドミラル・グラーフ・シュペーはドイツをこっそりと離れた。戦争が勃発すれば直ちに通商破壊任務に入れるようにするためである。果たして9月1日にドイツのポーランド侵攻に応じてイギリスとフランスが宣戦布告。しかし総統閣下はまだこの時点では事態を丸く収めることに望みを持っていたため、シュペーはすぐに任務に投入されずに待機することとなった。時の艦長は、ハンス・ヴィルヘルム・ラングスドルフ大佐。彼はなんとシュペー提督の家のお隣さんであり、この艦への思い入れはひとしおだったことだろう。

司令部からの指示で南へ向かうことを命令された艦長は、南大西洋の南米沖をひとまずの目標に定めた。9月30日、ようやく本格的な通商破壊活動を開始。同行する補給艦アルトマルクから燃料補給を受けつつ、夥しい数の商船を撃沈あるいは拿捕し、彼女、シュペーは南方で暴れまわった。その方法は巧みで、ニセの煙突と砲塔をハリボテで作って艦影を偽装し、あたかもイギリスの巡洋戦艦レナウン級のように見せかけた。自身を味方艦と思わせて接近し、正体をあかして拿捕するという寸法である。

しかしその功績にも関わらず、ラングスドルフ艦長は船の乗組員の命を奪うことは一切なく、通商破壊任務自体にすら良い感情を持っていなかった。元々彼は熱心なプロテスタントであり、ドイツには忠誠を誓えどもナチズムを心酔してはいなかったのである。

やがてこの活動はイギリス本国にも知れるところとなり、ハーウッド提督率いるG部隊がフォークランド諸島の基地から出撃した。一方、シュペーは次の目標をウルグアイの首都モンテビデオに通じるラプラタ川に定めた。イギリス側商船にとっての重要な航路だったが故の判断である。12月13日、ついにG部隊はシュペーの姿を補足。数の不利はあれど、砲の威力はこちらが上、ラングスドルフ艦長は受けて立つことにした。こうしてラプラタ沖海戦が始まった。

G部隊は旗艦の軽巡洋艦エイジャックス、重巡洋艦エクセター、軽巡洋艦アキリーズから成っていた。エクセターは皮肉にもあの観艦式で舳先を並べた仲である。エクセターとエイジャックス、アキリーズの二手に別れたイギリス側に対し、シュペーは果敢に発砲。エクセターは命中弾を喰らい大破、アキリーズも損傷を負った。

だがシュペーも命中弾を喰らって長距離航行が困難になり、修理のためにモンテビデオ港に逃げこむことに。エクセターは応急修理を急ぎつつ戦線離脱。エイジャックスらはイギリス本国に報告の上でラプラタ川河口沖で待ち構えることにした。

当時のウルグアイは中立国の立場を取っていたが、どちらかと言うとイギリス寄りであり、イギリスからさっさとシュペーを追い出すように要請が来ていた。結果としてウルグアイ側がシュペーに許可した滞在時間は72時間、すなわちたったの3日。一方シュペーはディーゼル機関に使う重油燃料を温めるための機構が損壊しており、航行できる分の処理済み燃料が底を尽きかけていた。修理すれば再び長距離航行ができるようになるが、それには数日を必要とする。そしてウルグアイから提示された日数では、故障を直すには明らかに短すぎた。

そんなシュペーの危機感を他所に、イギリス側はシュペーにプレッシャーをかけようと様々なデマを流し始める。G部隊の一員で修理中の重巡カンバーランドが修理を終えて向かっている、本国が増援として巡洋戦艦レナウンや空母アーク・ロイヤルを差し向けたetcetc...。もちろん完全なハッタリではなく、実際に増援は現地に向かっていた。ただシュペーの滞在期限までに間に合うかは微妙であったのだが。

しかし事情を知らぬシュペー側にとっては効果的であり、乗組員達にこの上ない焦燥をもたらした。そしてシュペー側は、見張り員が沖で待ち構えていたエイジャックスらをレナウンと誤認するという致命的なミスを犯してしまう。その報告を聞いたラングスドルフ艦長はラプラタ川が完全に封鎖されてしまったと思い込み、滞在期限が差し迫った中ある決断をする。航行のための最低限の人員だけ乗せたシュペーは港を出港、ラプラタ川の河口に近づいた。その場で突然艦は爆発し、河口の浅瀬に自沈したのである。

ラングスドルフ艦長は艦と運命を共にしようとしたが、乗員たちの説得によって脱出した。その後一同はドイツの外交ルートを通じてアルゼンチンへと逃亡。帰国を図ったがアルゼンチン政府はそれを拒否。終戦まで彼らは抑留されることとなる。終戦後、彼らを本国に連れ帰ったのがエイジャックスだったのは数奇な因果としか言いようがないだろう。

しかし、帰国した者たちの中にラングスドルフ艦長の姿はなかった。乗員たちの命を助けられたことを確かめた艦長は、シュペーから唯一持ち出すことが出来た旧ドイツ帝国海軍の旗にくるまり拳銃自殺を遂げたのである。

後に総統閣下はこの報告を受けて、艦長を「臆病者だ」と罵ったという。彼の遺族は冷遇され、本来支払われるべき遺族年金も停止された。これにはモンテビデオで行ったシュペーの戦死者の葬儀において、艦長がナチ式敬礼ではなく、海軍敬礼を行っている様子を写した写真が本国に伝わったことも影響したとされてる。しかし最終的な結末として、艦長の高潔な行いが後世に伝えられ、彼を罵った総統閣下が破滅の道を歩んだのは読者諸君の知る通りである。

現在、アドミラル・グラーフ・シュペーの艦体はラプラタ川の浅瀬にその身を横たえている。これは本来ドイツの所有物ということになるが、一時、ウルグアイ政府が「俺の国にあるんだから俺のものだ」とジャイアニズムを発揮して艦を引き揚げ、記念施設として展示しようと計画していた。そのため、艦橋の測距儀などが21世紀に入って地上に上げられて展示されている。今のところ艦全部を引き揚げるのは予算がかかりすぎるとのことで、2009年に大統領自ら作業を停止させているとのこと。いち艦艇ファンである編集者としては、そのままラングスドルフ艦長らの墓標としてそっとしておいて欲しい気持ちと、復元されてポケット戦艦の勇姿を現代に蘇らせて欲しい気持ちでなんとも複雑であるが…。

余談として、カナダのオンタリオ州の都市エイジャックスに、「ラングスドルフ通り」と言う道がある。これは、軽巡洋艦エイジャックスの元乗組員が、グラーフ・シュペーと艦長を偲んで名づけたものだという。

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