スター・ウォーズ ローグ・プラネット

『スター・ウォーズ ローグ・プラネット』（Star Wars: Rogue Planet）とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。

「レジェンズ」作品群に属する。単巻。著者はグレッグ・ベア。

なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。

概要

映画『エピソード1/ファントム・メナス』から3年後を舞台とし、未知の惑星ゾナマ・セコートを訪れる幼きパダワン、アナキン・スカイウォーカーの物語。原著は2000年の刊行であり、2002年の『エピソード2』公開を控えて少年アナキンの成長を描くとともに、同時期に刊行が始まっていた「ニュー・ジェダイ・オーダー」シリーズのクライマックスへ向けた重大な布石ともなる作品となっている。

長年のSWファンであったSFの大家グレッグ・ベアによる唯一のSW小説作品であり、ゾナマ・セコートの風景の迫力ある描写は単体のSF長編としても評価に耐えると評される（ベアは「登場させてはいけないキャラクター一覧」程度の指示だけ受けて自由に書いたらしいが、よくNJOにつながったものである）。

原著は長編小説単巻（ハードカバー）で2000年刊行（翌年にペーパーバックでも刊行）。邦訳は同年にハードカバー単巻でソニー・マガジンズより出版された。日本語訳は大森望。邦訳表紙イラストはデビッド・スティーブンソンによる原著表紙イラストを用いている。

若き日、共和国時代のグランドモフ・ターキンや、TIEファイターの製造でおなじみサイナー社のレイス・サイナー（シーナー）が敵役として登場する作品でもある（サイナーの直接登場は本作が唯一）。

ストーリー

遠い昔、はるか彼方の銀河系で……

ジェダイ大聖堂を飛び出し違法レースに出ていたアナキンは、自身を狙う暗殺者キ・ダイヴの存在に気づく。間一髪、師オビ＝ワンに助けられた彼はジェダイ評議会の叱責を受け、自己の弱点を見つめ直す機会として師とともに未知領域の謎の惑星ゾナマ・セコートの調査に赴くことになる。いっぽうサイナー社の若き社長レイス・サイナーは、旧友ターキンの計画に強引に乗せられ、未知の特別な宇宙船を作るゾナマ・セコートを征服する艦隊を率いてジェダイを追った。

ゾナマ・セコートに着いたアナキンとオビ＝ワンは、宇宙船を作るための儀式に参加する。その儀式とは、シード・パートナーと呼ばれる生物と出会うこと。シード・パートナーはオーダーメイドの宇宙船の一部を構成し、素晴らしい生きた宇宙船を形作るのだ。前例のない数のシード・パートナーを引き付けたアナキンは、“導師”と呼ばれる惑星の指導者と対面することとなる。

導師はかつてジェダイと訣別した、独自のフォース認識を持つ一派ポテンティアムの教えを引き継ぐ存在だった。彼の娘の少女ジャビサの案内で惑星をめぐる二人は、最近地表に刻みつけられた尋常でない戦いの傷に気づく。そしていよいよ、アナキンのための船の建造が始まる。だが惑星には、サイナーが通商連合が供出したドロイド艦隊とともに迫っていた……。

【以下、後半はネタバレ回避のため格納】

陰謀家のターキンをも警戒するサイナーは慎重に動こうとするが、ターキンの計略で突然ドロイド・スターファイターが惑星への攻撃を始める。その混乱を衝き、潜入したキ・ダイヴがオビ＝ワンを傷つけ、ジャビサを人質にアナキンに完成間近の船を操縦させ飛び立つ。アナキンの中でキ・ダイヴへの怒りが積み重なり、ついに抑えきれなくなった感情の奔流がフォースのエネルギーでキ・ダイヴを殺してしまった。

宇宙ではサイナーの企みで慌てて駆けつけたターキンが惑星に総攻撃をかけ、アナキンも船ごと捕らえられるがオビ・ワンの助けで難を逃れた。征服軍が圧倒するかに見えるなか、惑星の精神だというセコートなる存在がアナキンに語りかけ、遠来の敵ファー・アウトサイダーとの戦いのこと、そして惑星には脱出の手立てがあることを語る。地表に隠された巨大なエンジンが起動し、惑星は超空間へと消えた。

ゾナマ・セコートは行ってしまった。アナキンは戦いで傷つき治す手立てもなく死んでゆく自分の船に＜ジャビサ＞と名付け、その体が横たわる肌寒い格納庫に佇むのだった。

ゾナマ・セコート

ティングル腕、ガーダージ宙溝の三重星系に位置する惑星。名前も場所もほとんど世に知られていない星で、植民から60年程度しか経っていないが、破格の性能を持つエレガントな自家用小型宇宙船「セコート船」を建造する不思議な技術を持つことがごく一部にのみ知られている。

ボラと呼ばれる巨大樹を中心とした密林と渓谷からなる惑星で、惑星が「ゾナマ」、その星に栄える生命の世界が「セコート」である。60年ほど前に〈中の地〉と呼ばれる地にフェロー人が入植したことで文明が始まった。惑星上の移動のためには、飛行船が常用されている。

登場人物

ジェダイ騎士団

アナキン・スカイウォーカー　Anakin Skywalker

人間・男性。12歳のジェダイ・パダワン。
信頼するオビ＝ワンのもと修行中の身だが、ジェダイ大聖堂に馴染めず無鉄砲なことばかりしている。
まだまだ未熟で、自身の内面に潜む恐怖や闇を制御できずにいるが、ゾナマ・セコートへの任務のなかでフォースや生命への理解を深め、精神的に成長していく。

オビ＝ワン・ケノービ　Obi-Wan Kenobi

人間・男性。ジェダイ・ナイト。 やんちゃな弟子アナキンに手を焼く若きジェダイ。
しかし時に感覚が先行しがちなアナキンの一番の理解者でもあり、互いに強い信頼で結ばれている。決断的だがけして強硬な姿勢はとらず、巧妙なフォースのトリックに長ける。

スレイシア・チョ・リーム　Thracia Cho Leem

人間・女性。小柄なジェダイ・マスター。
長く銀河をめぐってきた皮肉屋で経験豊富なジェダイ。ジェダイ評議会の指導者メイス・ウィンドゥの旧友。年長者としてアナキンを諭し、成長のために赴くべき任務を提示する。

チャーザ・クィン　Charza Kwinn

プリアプリン・雄性体。貨物輸送船＜スター・シー・フラワー＞船長。
周囲に自分を中心とした小さな生態系を作り共生する種族。ジェダイの外部協力者であり、ゾナマ・セコートへの旅に自身の船を提供する。その生態はアナキンに考えさせるものがあった。

ヴァーゲア　Vergere

フォシュ・女性。ジェダイ・ナイト。スレイシアの弟子。
鳥類種族のジェダイで、独立独歩の気風を持つ人物。アナキンとも親しかったが、一年前にゾナマ・セコートの調査に赴いて戻っていない。彼女の捜索もアナキンたちの任務のひとつである。

ゾナマ・セコートの人々

導師　Magister

男性。ゾナマ・セコートの人々の精神的な指導者。
ゾナマ・セコートへの植民時の最初の「導師」の子で、その後を継いだ存在。フォースを認識する一派ポテンティアムの出で、高度なフォースのトリックを用いる。〈中の地〉の屋敷で過ごしている。

ジャビサ　Jabitha

女性。ゾナマ・セコートの「導師」の娘。アナキンと同じ年頃に見える少女。
父とは別の場所で暮らしている。ジェダイの一行にゾナマ・セコートの文化、特に人々と共生する巨大樹ボラの生態や加工を案内する役割。アナキンと仲良くなる。

銀河共和国

レイス・サイナー　Raith Sienar

人間・男性。大手造船企業サイナー・システムズの総帥。
サイナー家の御曹司で、優れた科学者にして野心的な設計者。旧友ターキンにゾナマ・セコートへの遠征の司令官に仕立てられる。軍事教育の経験はあるが軍人気質ではなく、何事もエレガントなやり口を好む。ターキンに出し抜かれたり利用されることには諦め気味。

ターキン　Tarkin

人間・男性。銀河共和国辺境領域保安軍の中佐で、有能な野心家。
ゾナマ・セコートを征服し、その技術を自身の功績にしようとする。若い頃の学友サイナーとは親しく技術者として高く評価してもいるが、己の野心のためには平気で都合よく利用する冷酷な人物。

キ・ダイヴ　Ke Daiv

ブラッド・カーヴァー・男性。暗殺者。
仕事でアナキンを付け狙うが失敗する。ターキンの配下としてサイナーに帯同し、ゾナマ・セコートの征服にも尖兵として使われる。非情だが自身の誇りのために仕事を果たそうとするプロ。

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関連項目

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