ボートを用意しろとは、「メタルギアソリッドⅤ ザ・ファントム・ペイン」にてヴェノム・スネークが放った言葉である。
※!ネタバレ注意!※
本項目には「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の重大なネタバレに溢れています!
以下は自己責任で閲覧願います!!
BIGBOSSことヴェノム・スネークが率いるダイアモンド・ドッグズは傭兵部隊であり、その構成員の出自は多様である。かつては敵同士であった者も、ダイアモンド・ドッグズの基地マザー・ベースに来てからは同じ部隊の仲間である。
その中に唯一の裏切り者が居た。
エメリッヒ博士――かつて国境なき軍隊「MSF」にてヒューイと呼ばれていた科学者であった。
彼は理由や目的はどうあれ、スネークや仲間たちを裏切る行為を重ねてきた。
作中終盤、ダイアモンド・ドッグズの中で裁判が行われ、多くのスタッフはエメリッヒの死を望んだ。
そしてスネークは、エメリッヒを前に静かに判決を告げた。
「ボートを用意しろ 一人乗りでいい」
エメリッヒは上記の罪状について責められながらも、容疑を否認し続けた。
傍から見れば見苦しい言い訳をしているように見えるが、これはエメリッヒが言い逃れのために自分自身をも騙しているためであり、少なくともエメリッヒ本人にとっては真実の言葉である。
あまりにも都合よく事実を改変し続けるため、尋問していたオセロットも呆れ果て
「現実がお前を傷つけてるんじゃない お前が現実に傷をつけているんだ」と言い放った。
数々の裏切り行為とそれらを裏付ける言動を重ね、信頼を失ったエメリッヒにスネークが下した罰は追放だった。その判決に、カズは非難の声を上げる。
「ボートを用意しろ 一人乗りでいい 水と食べ物を」
「ボス?」
「出て行ってもらおう」
「おい……俺たちをこうした、張本人だ!
あの時の仲間も……なのにこいつだけは……こんな奴が俺達の、本当の敵なんだ!」「カズ……そう、こいつは敵だ。仲間じゃない。
だからこそ、俺達にこいつは裁けない。ただマザーベースは降りてもらう」
一人用のボートに僅かな水と食料を与えられ、死刑を免れた恩赦すら忘れて、エメリッヒは最後までスネーク達を非難する言葉を叫びながらインド洋を一人漂っていった。命よりも大事と称した脚まで捨てて…。
そんな裏切り者の末路を見据えながら、カズとオセロットは呟くように言い放つ。
「見ろ 既に失くしたファントムも取り払おうとしている」
「ああいう奴は死なないぞ どうなるか眼に浮かぶ
俺達に聞こえない場所で 俺達がどれだけ害悪か喋り続ける 偉そうに
自分がどれだけ正しいか 薄っぺらい道徳心(モラル)を笠に着て……
同じような馬鹿共が それを聞いて何度も頷く」「いや いくらごまかしても いつか気付く 自分がどんな人間か
自分の生き方は"誰でも" 自分に帰ってくる」
オセロットの発言の通り、エメリッヒはその後、自宅のプールで溺死と言う悲惨な末路を辿るが、
堕ちる所まで堕ちた最低の人間に成り下がってしまった為、息子の義理の妹(エマ・エメリッヒ)が自宅のプールで溺れて死に掛けたのも、妻が息子との浮気現場を目撃して発狂状態になったエメリッヒが、エマと無理心中しようとしたり、殺そうとして自滅のではないかと推測されるが・・・。
しかしオセロットの言う"誰でも"とはエメリッヒに限った話ではなく、現にオセロット自身も重大な秘密を抱えており、決して他人の事が言える立場ではない。カズやスネーク、マザーベースの面々が抱える歪さは、そのままダイヤモンド・ドックズの行く末に関わって来るのである。
ヒューイの悪行を全て彼の意志とすると9年前にサイファーに裏切りマザーベースを壊滅させ、さらに9年間サイファーのメタルギア開発に専念し、マザーベースに帰還してからも寄生虫変異で壊滅一歩寸前まで追い込むというそこらのスパイを凌駕する働きをみせている。しかし、それぞれには疑問点が多々ある。
・核査察の件については裏切ったという明白な証拠が無い。あくまで状況からして怪しいという点にある。また、彼は非常に優秀な技術者であり、AI兵器、二足歩行兵器の開発経験を豊富に持つ超重要人物である。マザーベース襲撃後にサイファーで研究を行えたのも、特別不自然というわけではない。
・オセロットが尋問で自白剤を相当量使用してもヒューイの性格から効果が無く、奴から真実を聞き出せないといっている。しかし、相当量の自白剤を使用したのにもかかわらず後遺症がみられない。本当に自白剤を使用したのか?自白剤を使って真実を話したのにミラー達には都合が悪いから効果がないと判断したのか?
・証言内容に矛盾が多いことは事実だが、ヒューイに対しては、自白剤の投与等の過酷な尋問が行われていることも考慮すべきである。過酷な尋問から逃れたいがために虚偽の証言を行う、という事例は現実でも珍しくない。
・寄生虫が放射線で変異することはスカルフェイスとコードトーカーのみが知っている機密事項であり、専門外のヒューイが簡単に発生させることが難しい。そして何よりミラーにほぼ黒扱いされて監視されているのに機材に怪しい装置をつけて、さらにサイファー側に通信することができるのかが怪しい。(裁判でもサイファーに関連した企業と通信していたと暴露するが肝心の通信内容はわからない。傍受した時点で何故拘束しなかったのか?)
・イーライの脱出幇助は確かにヒューイの言い訳は正論ではある。あんな大型機械を子供が、しかも技術など持たない元少年兵に直せて動かせるはずがなく、実際マンティスの超能力で動いているようなもので予想できるわけがない。何よりどうしてヒューイは生活棟から少年を連れてくることができたのか?監視は?
(ただし、追放後に得られる研究資料からは光学迷彩が開発できる。おそらくはそういうことだろう。それでも何故そこまでしてイーライ達に手助けしたのかの疑問は残る。)
・ヒューイ及びダイアモンドドッグスの組織の表現が小説「1984年」のオマージュとみれる部分が多々ある。(MGSⅤの舞台も1984年である)その小説の特徴としては特定の人物に無実の罪を着せて悪者に仕立てあげ、公開処刑することによって組織の団結や監視を強め、支配者層の権力を永続的なものにする。という内容で、実質的な組織の行政役であるミラーとオセロットはヒューイの性格を利用してスケープゴートに仕立て上げたということも考えられる。
ビッグボスはヒューイは断罪される罪はあるものの、全てが黒ではないということを知っていたかもしれない。しかしあの暴動寸前の裁判で無罪と処理するわけにもいかず。濡れ衣で処刑することもできないから追放という形をとったとも見れる。ボートを用意しろという言葉にはミラーの狂気を止められなかった。という意味も含まれる。
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最終更新:2025/12/11(木) 06:00
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