メタルマン(映画)とは (メタルマンとは) [単語記事]

メタルマン(映画)とは、2008年ハリウッド映画最大の話題作・・・の『アイアンマン』に似て非なる何かである。

制作は『エイリアンVSアバター』のTOM CAT FILMS　日本での販売は(株)トランスフォーマー社。

概要

天才発明家が生み出した戦闘用パワードマスクで、悪を駆逐せよ！上質のVFXと斬新なアクションを交えた興奮の展開！

スーツから放たれるミサイル、どんな弾丸も弾く特殊シールド、ジェット機を上回る飛行能力…。スーパーアイテムを揃えた史上最強のヒーロー！！

（以上販売会社の作品紹介文より一部抜粋）

もちろん全部ウソなんだ　本当に申し訳ない

あらすじ

かつて全米有数の軍事企業で極秘裏に製造された軍事用パワードスーツと、その中枢であるマスク。
人間に圧倒的な力と数々の特殊能力を与えるそれらを悪用されるのを嫌った開発者・ピーター博士は、マスクを完成させるための電子チップを秘匿、そして姿を消した。
マスクを受け継いだブレイク博士と名を替えると、迫り来る危機を感じ取ってマスクの完成を急ぎ、そのうちの一つを教え子であり助手の天才大学生カイルに装着させる。
しかしカイルが低温実験室に隔離されているさなか、ブレイク博士のもとを軍事企業のボス・セバスチャンが部下を伴って襲来。セバスチャンはもう一つのマスクを博士の手から奪取し、博士は揉み合いの末に重症を負った。
ブレイク博士は最後の力を振り絞り、カイルを低温実験室から救出する。そしてカイルに未完成のスーツを託し、「そのスーツを正義の為に使え」という言葉を残して事切れる。
両親をセバスチャンの手先に殺害され、ブレイク博士殺しの汚名を着せられたカイルは、こうして孤独な正義のための戦いに身を投じるのであった……。

人物紹介

カイル・フィン
主人公。ブレイク博士からメタルマンスーツとマスクを(半ば強制的に)託される。
IQ(知能指数)は173の天才青年であり、高いコンピューター工学技術を持っている。研究への資金調達のために自らの技術を徹底的に注ぎ込んだ自作のゲーム「バイオ・デス」を売ろうとしているのだが、ゲーム製作に傾倒しつつあるという指摘も劇中されている。
MMPI(ミネソタ多面人格目録)の結果によれば「善悪の区別がはっきりし、冷静な行動力のある慎重派」とされているが、実際には意外と大胆な部分も持ちあわせ、冥府魔道に叩き落とした張本人たるブレイク博士にも寛容だったりする。
もともと閉所恐怖症だったが、メタルマンスーツの効果によりこれを克服している。
二度と脱げないメタルマンスーツを騙されて押し付けられ、両親を殺害され、自分もブレイク博士殺人犯の汚名を着せられて人生を滅茶苦茶に破壊された作中最大の苦労人。

ブレイク博士
メタルマンスーツをカイルに託し、カイルを修羅道にたたき落とした張本人。巷では「狂気の科学者」と呼ばれている。
その考えは理想主義的で、戦争ゲームを嬉々として作成するカイルを不安に思っている。
が、その実独善的な一面も持っており、二度と脱げないメタルマンスーツを説明もないままカイルに押し付け、そしてなんの説明もないままにメタルマンマスクをめぐる争いに無関係なカイルを巻き込んでいる。
作中序盤でセバスチャンに突き飛ばされた傷が元で死亡するが、密かにメタルマンマスクに自らを模した人工知能を入力しており、悪と戦うカイルへのヘイト溜めサポートを行っている。
よく「時間がない」「時間がなかった」と嘯いている。

ピーター博士
かつてメタルマンスーツを開発した天才科学者。本編には未登場。
突如としてスーツの開発計画に反旗を翻し、部下であるマリッサの父親を殺害。未完成品のマスク2個を強奪し、研究所を破壊して逃亡、マスクの部品であるチップを隠蔽したとされる。
セバスチャンは「蛇のように狡猾な人物」と彼を評している。

その正体は名を変え、身を隠す以前のブレイク博士であり、彼はメタルマンスーツ計画に疑問をいだき、マスクを奪取し、身を隠した。
自ら開発したはずのメタルマンスーツの性能を測りかねており、彼自身その性能の真価を解っていないようである。

ジュリー
カイルのガールフレンド。カイルの外への最大の接点であったために中盤、セバスチャンに誘拐・監禁されてしまう。

マリッサ
軍事企業の女性科学者。
プライドが高く、才覚ある科学者。カイルと似たタイプと評される。
父親が元スーツ開発チームの一員であり、ピーター博士に殺害されている。その後はセバスチャンの援助によって大学への進学を果たした。
しかし彼女自身はセバスチャンに裏があり、援助も彼女の頭脳を利用するための下準備であること気づいている。
そのためか、度々カイルに協力的な態度を見せている。
TM(超越瞑想)が趣味。

ダイアナ
マリッサの助手。真面目なマリッサに対して軽い性格の持ち主。
セバスチャンには表面的に従っているが、実際は嫌っている素振りを見せている。
物語中盤、マリッサへの見せしめとマスクの研究結果の改竄への報復として殺害される。

セバスチャン
米国有数の軍事企業のオーナーにして、大富豪。
「全ては金」と言い放つ拝金主義者であり、冷酷にして狡猾で残忍な男。劇中でもブレイク博士やダイアナを手にかけている。
マスクの完成とその所有を望み、ブレイク博士からマスクを強奪。さらに無関係な人間を人質に取るなどして隠匿されたチップの在処を探しだそうとしているが、具体的に何にマスクを利用したいのかは説明されていない(拝金主義の軍事企業オーナーなので、おそらく戦場に売り込むためだろうが)。
なお農場経営も行っている模様。

ハゲ(通称)
軍事企業側の戦闘員の一人。セバスチャンからの信頼が厚いらしく、彼と行動を共にすることが多い。
役者さんが同じ製作会社の映画「ブラックナイト・リターンズ」でも似たような役柄で登場している。

映画としての特徴

素人でも超低予算と見抜けるレベルのチープな画面と、意味のない会話と酷い演技が織りなす冗長かつカタルシスのない展開、そしてなにより無理のあり過ぎるシナリオが織りなすZ級映画である。

まずそもそも映画撮影用の専用機器を使っているかも怪しく、全編ホームビデオ用のハンディカムか何かで撮影されたような画質で構成されている。
またガンマイクなどと言った高尚なものも使用している形跡もなく、すべてカメラ内蔵マイクで録音したのか、これまた全編に渡り屋外シーンでは不必要な環境音(鳥の囀りや自動車の通過音)が録音されている。
その上舞台やセットも予算がなかったのか非常にチープで、「屋内」「誰かの家の庭」「そのへんの路地」「農場」くらいしか本編には映らない。中盤登場する敵の研究室のセットも、30年か40年前の映画並のクオリティである。

シナリオ面でも、予算の関係上あまり多くのシーンが撮れないためか、一つのシーンを水増ししてとにかく時間を稼ぎ、なんとか映画としての体裁を保とうという考えが露骨に読み取れる。
そのため意味のない会話を挟んで本題に入るのを極力迂回させ、独特の溜めによる引き伸ばしも相まって、見ているものに眠気や苛立ちを誘うのである。（ついには「メタルマン式会話術」などと称されている。）
だが、そうしてまで時間を稼ぐ割には脚本面では説明不足や矛盾・破綻が多く、脚本の配分を間違えていたとしか言い様がない。
その上(予算の都合上)回想シーンが一つも含まれず、過去の事象は口頭説明のみで済まされるため、メタルマンマスクの過去に関して何度も謎の人名が出てくるなどの不親切な作りである。

俳優の演技や演出も語るに落ちず、序盤で博士が重症を負うシーン(どう見ても転んだだけにしか見えない)、中盤や終盤の緊迫感のない雑な殺陣、そして延々と続く単調なショットの繰り返しなど、脚本も相まって余計に眠気や苛立ちを誘ってくる。

つまるところ、「高校の映研か放送部が作った自主製作映画レベル」と言っても過言ではない出来だ。

ただし最初からこの点を割りきって観てしまえば、高度にシリアスな笑いとチープさが産み出すシュールギャグ映画として結構楽しめる。
実況向けとしても楽しめる側面もあるので、映画の評判を前もって知っている友人数人と一緒に見れば、より面白さも増す……かもしれない。