仕事中毒とは、家庭や趣味といった私生活を犠牲にしてまで仕事に熱中する状態を指す言葉である。
英語ではワーカホリック(workaholic)、ワーカホリズム(workaholism)という。
仕事中毒(ワーカホリック)をどのように定義するかは、有識者によって少し異なるところがある。
大竹文雄と奥平寛子は、2008年の共同論文で「ワーカホリックとは、長時間労働をすると労働それ自体が苦痛でなくなってくるというアルコールや喫煙と似た依存症である」と書き、長時間労働を苦にしない心理状態のすべてをワーカホリックと扱った。
その一方で、島津明人は、ワーカホリックを「長時間労働を苦にしない心理状態のなかで、『私は働かなければならない(I have to work)』と仕事に対して義務感を感じている心理状態」と扱っている。そして、「長時間労働を苦にしない心理状態のなかで、『私は働きたい(I want to work)』と仕事に対して肯定感を感じている心理状態」というのはワークエンゲージメントと定義しており、ワーカホリックと区別している。2015年の論文で、そのような考えを披露している。
「仕事中毒」の日本語版Wikipedia記事は、2020年7月16日の時点で、島津明人の考えを支持して執筆されている。
2020年7月16日の時点におけるニコニコ大百科の本記事は、大竹文雄と奥平寛子の定義を採用し、長時間労働を苦にしない心理状態のすべてをワーカホリックとして、記事を執筆した。
仕事中毒を英語で言うと、ワーカホリック(workaholic)となる。
workaholicとは、work(ワーク、仕事)とalcoholic(アルコホリック、アルコール中毒)を組み合わせた造語である。
余談ながら、holicという文字列の入った接尾辞を伴って「~中毒」という意味になる英語が多い。特に多いのが~aholicという接尾辞である。chocoholic(チョコレート中毒)、colaholic(コーラ中毒)、foodaholic(過食症)、shopaholic(浪費依存症)、cardaholic(クレジットカード依存症)、bookaholic(読書依存症)、blogaholic(ブログ依存症)、twitterholic(ツイッター依存症)、など。
この言葉は、トロント・デイリー・スターというカナダの新聞の1947年4月5日版6ページにおいて、すでに使われていた。そのようにオックスフォード英語辞典が解説している(記事)。
この言葉を有名にしたのは、ウェイン・オーツという米国人教育者である。この人が1971年に「Confessions of a Workaholic(ワーカホリックの告白)」という書籍を発表したことで、ワーカホリックという言葉が流行し、人々に認知されるようになった。
累進課税という課税方式がある。税額を算出する上で基礎となる課税対象が増えるほど、より高い税率を課する課税方式であり、日本においては所得税、相続税、贈与税で採用されている。
このうち、所得税の累進課税には、仕事中毒の発生を押さえ込む力がある。所得税累進課税を強化して、「働けば働くほど、稼いだお金を税務署に取り上げられてしまう」という状況にすれば、誰もが「仕事に人生のすべてを捧げるのは、バカバカしい」と思うようになって労働意欲を適度に喪失する。その結果として、仕事中毒の発生を封じ込めることができる。
ダニエル・ハマメッシュとジョエル・スレムロッドは、2005年に共同論文を発表し、所得税の累進課税により仕事中毒(ワーカホリック)を抑制することができる、と論じた。
The evidence and theory suggest that the negative effects of workaholism can be addressed with a more progressive income tax system than would be appropriate in the absence of this behavior.
This evidence suggests that corrective policy might involve a more progressive tax burden than otherwise, and we derive the optimal income tax structure in the presence of the internalities and externalities that might result from workaholism.
※共同論文『The Economics of Workaholism: We Should Not Have Worked on This Paper』
英語文章を簡単な日本語文章にして大意を掴みたい、という人には、Google翻訳の利用をお奨めする。
題名を意訳すると、次のようになるだろうか。『仕事中毒についての経済学:いや、私たちは、この論文を書くにあたって、仕事中毒に全然なっていませんよ』
大竹文雄は、2010年に著した書籍で、ハマメッシュとスレムロッドの共同論文を紹介している。
職場でのワーカホリックで一番迷惑なのが、上司がワーカホリックになってしまうことである。もし、所得が高い人ほどワーカホリックになりやすいのであれば、所得の高い管理職層でワーカホリックが多いことになり、その弊害は職場全体に及ぶことになる。ところが、管理職に対して労働時間の規制をしたところでその実効性はほとんどない。ハマメッシュ教授とスレムロッド教授は、高所得層ほどワーカホリックになりやすいのであれば、累進所得税をかけることがワーカホリック対策として有効であると主張している。累進所得税は、高所得層の労働意欲を削ぐことになり、彼らがワーカホリックになる比率を引き下げる。そうすると、高所得である管理職のワーカホリックが減って、部下が望んでいない職場での長時間労働が減るということになる。
日本の所得税制の累進度は九〇年代後半から低下してきた。長時間労働が問題になり出したのも九〇年代後半からである。ひょっとすると所得税がフラット化したことが、日本の管理職のワーカホリックを増やして、その部下たちの長時間労働問題が深刻化したのかもしれない。
※『競争と公平感』182~183ページ
所得税の累進課税を弱体化すると、仕事中毒の蔓延をもたらすことになる。
所得税累進課税を弱体化して、「働けば働くほど、稼いだお金が自分の懐に転がり込んでくる」という状況にすれば、誰もが「仕事に人生のすべてを捧げよう。家庭だとか趣味だとか、そういう私生活に時間を割くのは、もったいない」と思うようになって労働意欲が過剰に強まる。その結果として、仕事中毒の人が世の中に大量発生するようになる。
仕事中毒の蔓延は、長時間労働の恒常化をもたらし、過労死、家庭の崩壊、離婚、子どもの不良化、非婚化、独身世帯の増加、少子化、人口減少といった諸現象を引き起こす。
「累進課税が仕事中毒を抑制し、累進課税の弱体化が仕事中毒の蔓延をもたらす」という考え方には、反論の意見もある。
「日本の1980年代(昭和55年~昭和64年、平成元年)は累進課税が強い状態で維持されていたが、その時代においても会社に人生を捧げる企業戦士が存在した。休日も家族とのふれあいをせずに仕事仲間とゴルフ場に出かけるタイプの会社人間がいた。それゆえ、累進課税が仕事中毒を抑制できるとは限らない」というものである。
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最終更新:2025/12/13(土) 11:00
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