偵察衛星とは宇宙空間から地上を偵察する衛星の事である。
ほとんどの人がGoogleMap、GoogleEarthなどに代表される地図情報サービスを介して衛星から撮影された画像の恩恵を受けている。撮影を行う衛星の中で国家などにより軍事・情報目的に使われているのが偵察衛星である。
民間用よりも高精度で柔軟な撮影が可能とされているが、もちろん詳細は極秘となっている。そのため、滅多に偵察衛星から撮影された画像を目にする事は無く、例えあったとしても、それは解像度等に加工が入れられた後のものである。運用国はアメリカ合衆国を筆頭にロシア、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、中国、日本、韓国、インド、ブラジルがあり偵察能力を維持するため定期的に衛星を打ち上げている。
極々一般に偵察衛星と呼ばれる衛星の中でも搭載した観測機器によって違いが多々あり、赤外線等を含む光学機器を搭載しているものと合成開口レーダー(SAR)を搭載したものなどがある。また電子的情報を取得するための情報偵察衛星、弾道ミサイルの発射、軌道を確認するためのDSP衛星など多岐にわたる。
通常の衛星と違って地球を周回する軌道は低く(低軌道)、そのため大気圏上層の影響を受けるほか、必要に応じて軌道変更する場合などがあり軌道維持に必要な燃料を消費するケースも多い、そのため総じて衛星そのものの寿命は短い。アメリカが運用している偵察衛星は巨大で高度の変更も可能と、色々至れり尽くせりのものもあるが、当然のごとくコストはかかる。
また後述されるように、衛星軌道は頻繁に変えられないため、天測などによって観測ルートを知られることがある。ましてや毎日一回~数回のみ目的地上空を飛行するだけなので手に入る情報も限られる。
もちろん偵察衛星の仕様、性能はその国のトップシークレットである。ただ、伝わってくる性能などから仕様の予想はできるし、打ち上げに使用されるロケットと投入された軌道から衛星のサイズ、重量を推定することができる。
また、冷戦時代に使われた初期の偵察衛星に関しては、技術的に時代遅れということもあって情報が公開されたものもある。当時の衛星は撮影したフィルムを巻きとってカプセルの中に入れて地球に向け投下、地球では待ち受けていた回収専用飛行機が鼻先のフックでカプセルのパラシュートを引っ掛けて持ち帰るという手段をとっていた。当然、回収、現像、解析に多大な手間と時間を要していた。現在では傍受、妨害がしにくいデジタル無線とデジタル暗号の登場で大型のCCDで撮影した画像を直接地球(中継用の衛星を介することもできる)に送信することができるようになっている。
また、合成開口レーダーを搭載した米国のラクロス衛星なども一部情報が公開されているが、こちらは民間の地球観測衛星と性能があまり大差ないからだと考えられる。
さて画像偵察衛星の例として米国で最近まで運用されていたKH(キーホール、鍵穴)-12と通称される衛星シリーズについて述べてみよう。KH-12は大きさも形もほぼハッブル宇宙望遠鏡と同一と考えられている。内部にベリリウム製の直径3mの反射鏡があり、解像度は5cm。民間人と軍人の区別が可能とされている。重量は20tという衛星としてはヘビー級。その大半は軌道維持、変更用の燃料とされる。初期のタイプはスペースシャトルによる燃料補給が可能だったとされるが、実際に行われたかどうかは不明(多分行われていなかった)。最近のタイプはステルス性を持たされていたとも言われる。
また変わり種の偵察衛星として電波通信を傍受する情報偵察衛星が挙げられる。米国は楕円軌道に「トランペット」、静止軌道に「メンター」と通称される衛星を打ち上げているが、その正体は直径150mもの超巨大パラボラアンテナ! 国際宇宙ステーションを上回る宇宙最大の構造物である(ただし折りたたみ式なので重量は5t程度)。メンターはパラボラが細いワイヤーでできていて、さらに黒く塗装されているので目立たないとされるが、地上からは8等星の明るさで大型の望遠鏡なら観測可能である。
米ロの偵察衛星は、両国間の軍備削減条約の順守を監視する手段としても使われている。例えばミサイル原潜が退役すれば、搭載ミサイルを外して、ミサイル・ハッチを開けたまま二ヶ月間埠頭に係留しておく。ICBMであればサイロから出した後に切断してサイロの脇に横たえ、サイロの蓋を開けたまま二ヶ月放置する。その間に相手国の偵察衛星に撮影させ、兵器を廃棄したことを確認させる。[1]
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最終更新:2025/12/13(土) 11:00
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