冬に薄い本が出るなとは、直面した事象に対する絶望と諦念と、その先にある遠くない未来への暗い希望である。
いわゆる、同人屋にとっておいしいと思わしきネタ、あるいはそれに群がる者達の香ばしい反応を見てそれを確信した時、我々はしばしばその腐った現実にあきれ、絶望する。
そして何より、他ならぬ自分がその腐った現実の一部分であることを理解し、その瞬間絶望は救いようの無いものとなる。
絶望の奥底でふと気付く。
救いようが無ければ、抗うことを諦め、受け入れれば良いのだ。
己もまた腐った現実に属する存在である認めたうえで、まず最初にすべきことは、遠くない未来に開かれる夏の祭典への希望である。
きっと次の祭典は盛り上がるだろう。それは非常に喜ばしいことだ。それゆえ、我々の心は暗い喜びに包まれる。
我々は予定調和に約束された希望の未来に対する期待を込めて無意識にこう呟くのだ。
冬に薄い本が出るな、と。
そして我々は手持ちの一万円札を無数の硬貨と千円札に換えるべく、銀行に向かうのだ。
いや、その前に、その元手となる一万円札を引き出すATMが正常に動いてくれることを祈るのである。
何、大丈夫だ。祭典までは時間がある。まだ慌てるような時間じゃない。
次の祭典も俺達と地獄につきあって貰う。おや?今度は夏に薄い本が出るな…
「冬に薄い本を出そうとしてるな」
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最終更新:2025/12/12(金) 00:00
最終更新:2025/12/11(木) 23:00
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