地球防衛軍3の兵器 単語


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チキュウボウエイグンスリーノヘイキ

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 『地球防衛軍3の兵器』とは、Xbox360専用ゲーム「地球防衛軍3」で使用可能な兵器である。

 ・ゲーム本編については→「地球防衛軍3」を参照とする。
 ・敵である巨大生物については→「巨大生物(フォーリナー)」を参照とする。

 ここでは「E551ギガンテス」「EF24バゼラート」「SDL2」「ベガルタ」「EJ24戦闘機決戦要塞X3」について記述する。また武器についても「アサルトライフル」「ショットガン」「スナイパーライフルロケットランチャー」「ミサイル」「グレネード」「特殊兵器」の各カテゴリーから一部を紹介する。

 

『注意』この記事はネタを多分に含みます。『注意』
≪CAUTIONThis Article is a JOKE.≪CAUTION



  なお本記事の記載内容は以下の書籍の情報に基づく。

「EDF戦史2020年刊」
 出版元:EDF 発行年:2020年 価格:18US$
 EDFが毎年の戦勝記念日に合わせて公式に制作している刊行物であり、各地の関連施設で購入することができる。
 内容は主に大戦時の作戦や兵器の紹介と解説、退役隊員のインタビューなどが記載されている。
 なおチャリティーを兼ねた刊行物であり、全額が戦災遺児基金に寄付されている。

「月刊・軍事探究 2018年1月号~2020年5月号」
 出版元:ワールド・ミリタリー・レビュー 発行年:2019年~2020年(バックナンバー有) 価格:1050円(税込)
 長年に渡って刊行されているミリタリー雑誌。大戦中は戦災によって休刊を余儀なくされたが、2018年に復活した。
 記者によって記事の内容にバラつきがあるのもの、写真が多く、比較的読みやすい軍事書籍である。
 強引な取材で機密情報らしきものを載せることもあるが、大半はダミーなので注意が必要である。

兵器紹介

  • 戦闘車両 E551ギガンテス
     EDFの主力戦車。EDFによる開発とあるが、米国ジェネラル・ダイナミクス社製MBT「M1エイブラムス」が原型であり、一部からはM1A2Eの型番で呼ばれている。
     兵装は120ミリ滑腔砲。外装を見るとスモーク・ディスチャージャーも搭載されているが、鋭敏な感覚器官を備える巨大生物に効果は薄く、物資の不足もあって使用することはできなかった。
     GD社の協力によって砲弾装填も含めて高度に自動化されているため1人で操縦可能だが、センサーと火器管制装置については安全保障上の理由から米国上院議会の合意が得られず、EDFによる独自開発も間に合わなかったため、最低限の機能しかない装置が搭載されている。この貧弱なセンサーとFCSは微弱なジャミングにすら対抗できず、対フォーリナー戦ではマニュアルでの目視照準が必要とされた。
     当時で世界最高水準のMBTをワン・マン・タンク化することに成功していながら、モンキーモデル化されてしまったことについては遺憾としか言いようがなく、ギガンテスの不運は誕生から始まっていると言っても過言ではない。
    (中略)
     初戦では歩兵と連携し、多数の巨大生物を掃討する目的で通常の徹甲弾ではなく榴弾が搭載されたが、戦線では巨大生物の予想外の突進力によって肉薄され、自爆の危険性から発射できない状況が多々あった。随伴歩兵の弾幕による牽制や後退射撃で善戦した部隊もあったが、リアクティブ・アーマーを搭載した複合装甲も黒蟻が雨と降らせる強酸液には無力であり、その後の制空権喪失とガンシップの襲来によって多くの戦車隊が壊滅したと言われている。
     フォーリナーによる全世界的な攻撃で人類社会の工業生産力が低下したこともあり、終戦まで大規模な戦車隊が再建されることはなく、とくに日本列島戦線では破壊を免れた数少ない車輛がEDF陸戦隊の支援火力として1輌単位で戦場に送られ、自走砲として運用された。
     それでも敵の二足歩行ロボットが投入され始めると装弾筒付き翼安定徹甲弾の支給や同軸機銃の搭載を望む声が高まったが、限られた工業生産力はフォーリナーの技術を転用した個人携帯火器の生産に優先的に振り分けれた。事実、名銃ライサンダーシリーズの威力は大戦末期には滑腔砲のそれに匹敵したのだが、生身で戦う陸戦兵にとって楯となる戦車の存在は無視できず、砲塔上面にセントリーガンを載せようとするなど現地改造を試みた兵士も少なくない。
     本来、貴重な戦力となる筈であった主力戦車が、満足な兵装を施されなかったがために大戦を通して活躍できなかったことは多くの兵士にとって極めて遺憾な事態であった。とくに初戦で対巨大生物戦に対応できなかったこと、そのための準備が開戦前にほとんど行われていなかったことに批判が集中した。
     EDFが戦前にどのような対フォーリナー戦を想定していたかは不明だが、世界的にフォーリナーを友好歓迎する方針だったこと、ファーストコンタクトにおい て市民が避難してなかったことなどから、EDF内で実戦的な軍事計画が練られていたとは考え難い。
     そもそも当時、巨大生物の大群を相手にすることを誰が予想できたであろうか。

  • 戦闘ヘリ EF24バゼラート
     EDFが開発した戦闘ヘリだが、これも米国ボーイング社製の「AH-64Dロングボウ・アパッチ」を原型としている。
     (ギガンテスともどもEDFの正式採用兵器に米国製が多い件については、北米総司令部と米国軍需産業との癒着が囁かれているが、国際連合軍であるEDFの主戦力の大半を米国が担っているので不自然なことではない)
     バゼラートもギガンテスと同じく原型機からモンキーモデル化された兵器であるが、戦闘ヘリは巨大生物掃討作戦における有効戦力として注目され、EDFは早急に独自改造による改善を試みた。飛行時間の短い素人でも操縦可能なように自動化と簡略化を施し、武装も強化された。左右のペイロードにはガンポッド(30ミリUT機関砲)が搭載され、誘導ミサイルにも破壊力に優れた対地攻撃用の大型弾頭タイプが採用されている。このミサイルは発射後に対巨大生物用バイオセンサー、あるいは赤外線画像による形状認識で目標を設定・誘導されるため、撃ちっ放しが可能である。
     以上から強力な近接航空支援を期待されていたのだが、残念ながら、機動力で圧倒的に勝る敵ガンシップには対抗できず、制空権を喪失した状態で厳しい戦いをしいられた。
     また肝心の対地戦では黒蟻の強酸液が思いのほか高く投射された上、同じく強酸性で粘着性もある蜘蛛の糸がローターに絡んだ場合には致命的損傷を受けるなど被撃墜率は高く、予想以上の損害が発生した。赤蟻だけには一方的な攻撃が可能であったが、優勢が保たれのはガンシップが飛来するまでの極めて短い時間に限られた。 
     例外として、極東の日本列島戦線で爬虫類型の超巨大生物を攻撃する際、陸戦隊員の操縦する単機のバゼラートが多大な戦果を残したと言われている。

  • エアーバイク SDL2
     ホバー走行によって道を選ばない高速移動が可能なパーナソナル・ヴィークルである。7.6ミリ機銃を2門搭載。
     EDFの独自開発と発表されているが、その走行性能と近未来的デザインから日本のモーターメーカーが秘密裏に協力したと言われている。
     偵察用として開発されたが、前線では通信妨害下での伝令の他、その機動力を活かして単機で巨大生物の大群を翻弄し、仕掛け爆弾の罠に誘い込んで殲滅するなど幅広く活用された。
     オート・スタビライザー搭載で転倒することはなく、衝撃吸収機構によってライダーが負傷することも稀だが、あまりに高い加速性から訓練および実戦で事故が後を絶たず、破損率が高い整備士泣かせの兵器である。

  • バトルマシン ベガルタ
     EDFの兵器研究開発チームが総力を上げて開発した二足歩行型兵器。
     速射性の高い極低反動ロケットランチャー、濃密な弾幕を張ることのできるバルカン砲、そして火炎放射器と強力な武装を備え、耐衝撃・耐強酸特殊塗装によって可動部分の多さにも関わらず戦車並みの耐久力を誇り、さらに背中にブースターを搭載し、あらゆる戦場を駆け巡る。
     ……と宣伝されていたが、実際は対フォーリナー戦が始まった混乱の中で急造された兵器であり、戦場からは「機動力について重大かつ致命的な欠陥がある!」というクレーム報告が寄せられている。
     実際のところ「移動砲台」と呼ぶべき兵器なのだが、その火力については申し分なく、然るべき歩兵との連携が得られれば巨大生物の大群を一匹も寄せ付けずに殲滅することも可能である。
     ・下は終戦後に一部地域で放送されて好評を博したベガルタが活躍する戦意高揚映像である

     あまりにも映像の出来がよかったため「ベガルター(※語尾を伸ばす)に乗りたい!」とEDFに志願する者が各地で後を絶たず、世界各地からも「あんな秘密兵器をどこに隠していた!!!」「我々のベガルタはモンキーモデルだったのか!?」「また日本人に魔改造された(´;ω;`) 」と公式非公式の批判が殺到した。
     もちろん映像中の機動性能についてはあくまでもイメージであり、EDF総司令部も公式に否定しているが、秘密裏に開発されているベガルタMk-Ⅱのリーク映像ではないかという噂もある。

  • EJ24戦闘機
     EDFの正式採用戦闘航空機。
     連合空軍の編成については各国の経済事情、既存の運用・整備体制が問題となり、フォーリナー襲来の直前まで統一装備の採用が遅れ、EJ24を一度も見ることなく開戦を迎えた地域もあった。  
     北米総司令部の壊滅によって資料は焼失したが、EDFの性質上一機であらゆる任務をこなすマルチロールファイターが望まれていたらしく、原型機の候補として米国ロッキード・マーティン社製の「F-35ライトニングⅡ」と独・伊・英・西の共同開発機「ユーロファイター・タイフーン」が競合していたと推測される。
     極東方面に配備されていたEJ24も初戦の「マザーシップ及び円盤群攻撃作戦」に参加したが、失速域での高速鋭角機動が可能な敵ガンシップに翻弄され、一方的に撃墜されていったと記録に残っている。
     なおこの航空作戦はEDF連合空軍と各国空軍の総力をもって世界規模で行われたが、逆に航空兵力の壊滅という結果に終わり、直後のフォーリナー側の逆襲によって基地施設や工場が破壊され、空軍の再建は絶望的となった。

  • 決戦要塞X3
     EDF北米総司令部と米国軍需産業が秘密裏に開発し、北米での対マザーシップ戦に投入した兵器である。
     詳細は不明だが、フォーリナーのオーバーテクノロジーを転用した飛行要塞で、戦艦並みの装甲と火力を有すると噂されていた。日本の怪獣映画に登場する大型機動兵器を参考にしたと言われているが、定かではない。
     大戦末期、欧州へと侵攻したフォーリナーは破壊の限りを尽くし、さらに大西洋を渡って北米へと迫った。
     マザーシップと無数の空母型円盤からなる船団に対し、イギリス王立海軍の生き残りとアメリカ海軍からなる混成機動艦隊は水際での迎撃を試みるが失敗、戦力温存のために撤退した。
     上陸したフォーリナーは都市への攻撃を開始。東海岸が焦土と化していく中、どうにか戦線を維持していたEDF北米方面軍とアメリカ本土防衛軍は全戦力を投入する決戦を宣言。残存する艦隊と北米全域の航空兵力が集結、決戦要塞X3も出撃し、ニューヨーク上空のマザーシップに対して陸海空の総力戦を展開した。
     絶え間なく撃ち込まれる砲弾、豪雨となって降り注ぐ強酸液。ガンシップとミサイルが乱れ飛び、灼熱のプラズマが夜の海を沸騰させる。闇に沈んだ大都市は炎と血で赤く染まり、故郷を失った兵士が銃撃とともに叫ぶ、
    「悪魔め! 宇宙に帰れぇーッ!」
    (中略) 
     大都市そのものを囮とした包囲殲滅戦は成功するかに思われたが、マザーシップはジェノサイドキャノンを使用、NY市周辺に包囲線を展開していた陸軍は壊滅し、海上の艦艇も9割が大破轟沈した。
     X3は対光学鏡面装甲を展開、特攻に近い接近戦を挑むが、マザーシップからジェノサイドキャノンの連射を受ける。あまりの熱量に鏡面装甲が耐えきれずに熔解、X3は炎を噴いて墜落し、自由の女神像に激突して爆発四散した。
     摩天楼は炎に呑み込まれ、数時間後にはEDF北米総司令部が文字通り消滅し、北米戦線は瓦解した。
     総司令部とともに米国首脳部が全滅したことから北米における組織的抵抗は困難となり、残存部隊は民間人を護衛しつつ南米への避難を開始した。部隊はフォーリナーの追撃に戦力を削られながらもEDF南米方面軍と合流、逃げ遅れた民衆を救出するためにパナマ運河防衛戦を敢行する。避難民の渡河には成功したものの、正規軍はほぼ壊滅。以後は民間人によるレジスタンスが絶望的な後退戦と抵抗を続けた。

武器紹介

アサルトライフル

  • アサルトライフルの概要
     EDFが陸戦隊用に採用している主力装備であり、米国アーマライト社のM16A4を原型としている。
     当初は新開発したAR-21の提案を予定していた同社だが、ロシア政府が後押しするイジェマッシ社の新型ライフルAK-111との競合に敗れることを恐れ、M16の現行モデルを提案、EDFの上層部に太いパイプを持つアメリカ国防総省の助力を得て正式採用を勝ち取った。なおEDFの“現場”からは米国コルト・ファイヤーアームズ社のM4カービンを望む声が多かったとも言われている。
     アサルトライフルに限らずEDFの統一装備プログラムは世界規模の超大口契約であり、またフォーリナー到着後は世界統一政府が発足して国家間戦争はもちろん低烈度紛争すら根絶されるというユートピア論(宇宙人から授けられる叡智によって自然破壊も貧困も解決される筈というアレである)が世間を賑わせていたため、株価暴落に始まる部門売却や買収合併で混乱の極みに達していた軍需産業界は、まるで世界大戦前夜のごとき様相を呈した。各兵器メーカーは空前絶後のプレゼンテーションを頻繁に行い、贈収賄で起訴される者が後を絶たず、採用トライアルの舞台裏はさながら冷戦時代の諜報戦を思わせる有様であった。
     正式配備されたEDF仕様のアサルトライフルはAFモデルと呼ばれており、EDF先進技術開発研究所(あの功名と悪名を兼ね備えたEDF兵器研究開発チームの根城である)による改良によってM16の欠点(欠陥ではない)をほぼ克服している。とくに新素材の採用による内部構造の小型最適化は素晴らしく、整備性と拡張性が大幅に向上。初期のAF14こそ有効射程や集弾性などでオリジナルに劣ったが、すぐに改善され、大戦中の劣悪な環境においても様々な派生型を生み出した。

  • AF20ST
     ST(Strong)シリーズの系譜はAF14の改良型である14STに始まったが、「狙撃銃に劣らない高精度・高威力の突撃銃」とテーマが明確であったことから、専用弾薬によって弾速の遅さを改善した15STが速やかに登場し、後継の19STでほぼ完成を見ることになる。
     EDF陸戦隊員からの揺るぎない信頼を獲得したSTシリーズの開発責任者は、「アサルトライフルの高性能化によって大半のスナイパーライフルは不要になる」という理論を信奉しており、永遠のライバルと名指しで公言していたMMFスナイパーライフルの打倒(本当にそう発言している)のために、STシリーズの真の完成形となる次世代モデルの研究を始めた。
     通常はAFの基礎モデルが完成した後に、改良という形でRA(Rapid)型やB(burst)型が派生開発されるのだが、彼は慣例を平然と無視して19STを独自に改良発展させたAF20STを発表した。
     同時期に開発されたMMF100の単発火力評価値が820、前モデルのAF19STが230であるのに対して、AF20STは1200という圧倒的な威力を見せつけ、評価試験に参加した関係者の度肝を抜いた。
     これほどの威力でありながら最高評価であるS+級の精度と、毎秒4発という19STと同等の発射速度を備えており、反動を相殺する緩衝装置の出来も言うことなく、まさしく既存のスナイパーライフルを陳腐化する性能であった。
     ただし専用弾薬に使用されている炸薬があまりにも強力であり、6発以上連続射撃すると銃身が加熱・破損するという致命的な弱点があった。このため装弾数は5発に限られており、また弾倉交換時に銃身と緩衝装置の強制冷却に5秒間の時間を必要とする。銃本体も大変デリケートであり、粗雑に扱うと寿命は極端に短くなる。然るに作戦後の分解清掃と整備には非常に手間がかかり、部品の交換も頻繁に行わなければならない(もっとも射撃性能については“5連射可能なスナイパーライフル”と考えれば充分過ぎる程の威力であり、MMF100よりもAF20STを選ぶ兵士が多かったと言われる)。
     これらの点を改良した99STの方が兵器としては総合的には優れているが、開発者は宿敵(本当にそう発言している)であるMMFを打ち負かしたAF20STを溺愛しており、公式に「フロイライン(Fräulein:未婚の令嬢)」という愛称を付加するようEDF上層部に申し出ている。
     99ST の信奉者と異なってあまり表には出ないが、開発者以外にも20STを「愛娘」と呼んで愛用する兵士は多い。これは「突出して高い威力(魅力)を誇りながら、リロードや整備などで世話を焼かせる」というアンバランスさが一種の“可愛らしさ”となって彼らを魅了していると考えられており、生産数の少ない専用部品の価格が高騰するなど一部のスポーツカーに近い様相を呈している。

  • AF20RAR
     RA(Rapid)シリーズの中でも最高クラスの連射性能を誇るライフルであり、レボリューション(Revolution)の名を冠している。
     その名に恥じず、AFモデルの原型であるM16A4の発射速度が毎秒15発、前モデルのAF19RAですら毎秒30発であるのに対して、AF20RARは毎秒60発を誇っている。これは米国ゼネラル・エレクトリック社製の電動式ガトリングガンに匹敵し、個人用の小型火器としては……もはや現実離れした性能である。
     EDFの公式データによれば専用弾倉の装填弾数は900発であるが、銃本体と同じく弾倉も外見上は他のAFモデルと変わったところは見られない。そればかりか、重量はAFモデルの中で最も軽いと言われている。もちろん弾倉装填時の重さである。発射時に大量の空薬莢が滝のごとく排出されることから実弾が使用されているのは間違いなく、質量保存の法則を前に、この銃を持つ兵士自身も首を傾げたと言う。
     大戦末期にEDF兵器研究開発チームが生み出した武器はフォーリナーの技術が転用されており、AF20RARもそれら“神器”の一つに数えられる。重量と弾数の秘密は、あの“無尽蔵に巨大生物を投下する”空母型円盤のオーバーテクノロジーに基づくものだと言われているが、定かではない。

  • AF99ST
     ST(Strong)タイプの最高峰であり、高威力・高初速・低反動という黄金条件を成し遂げた名銃として名高い。
     撃ち手にもよるが、疾走中の速射で実効射程480メートルという極めて安定した性能から「狙撃銃を駆逐する突撃銃」と呼ばれている。
     大戦末期の北米決戦と日本列島戦線にのみ配備されたが、赤蟻を撃退できる火力とガンシップを狙える弾速、それでいて従来のライフルにさほど劣らない連射性から絶賛された。
     現役退役を問わず、現在でもEDF内に熱烈な信奉者が多い銃としても有名であり、大戦後にこの銃の愛称を公募したところ、選考会が紛糾して結局決まらなかったという逸話がある。なおAF100の登場によってAF99が廃れてしまったため、「ダブルナイン」や「九十九式」と言えばAF99STを指す(もしも君がこの名銃の愛称を尋ねられたなら、大人しく型番を略して答えることをお勧めする。うっかり女性名を口にした日には、それが神話の女神であろうと女王陛下の御名であろうと、大戦を生き抜いた戦士から紳士的に“警告”される羽目になるだろう)。
     唯一の欠点は銃本体と使用する専用弾薬のどちらもが製造工程が複雑であり、コストが非常に高いことである。このためEDFではAF100の速やかな量産化による装備の再統一プログラムを計画しているが、「そんなことよりもダブルナインの製造ラインを改良すべき」という主張も根強く、計画は難航している。
     なおAF99STの信奉者と、前モデルのAF20STの愛好家は折り合いが悪いことで有名である。表だって衝突はしていないが、EDF基地近辺の酒場では「最強のライフルは……」などの軽率な話題は慎むのが暗黙の了解となっており、時折“礼儀”を知らない新兵が口を滑らして、古参兵から紳士としての“作法”をレクチャーされている。ちなみに新兵同士が論争を起こした場合は「最強はAF100だってママンが言ってたぜ!」というヤジを飛ばすのが恒例になっている。

  • AF100
     現行最強のアサルトライフルであり、圧倒的な総合性能を有している。
     AF99の改良発展モデルであるが、フォーリナーの技術が使用されており、基本性能の底上げに加えて弾速が飛躍的に向上している。
     また「弾薬を選ばない」という他に類を見ない性能を有している。これは各国で使用されている口径5.45mmから7.62mmクラスの弾薬なら、その種別に関わらず装填・発砲が可能であり、さらに一定の威力を保証するというものである。軍事機密のため詳細は不明だが、銃内部で弾薬を分解・再構築していると考えられており、発射機構のメカニズムも異質であるらしく、厳密にはライフルとは呼べない可能性がある。
     このように使用技術の機密性の高さが唯一の問題であり、AF100より製造コストが150%も高いAF 99STの信奉者に反論の余地を与えている。
     軍事評論家からも「あまりに高性能過ぎて可愛げがない」と評されているが、ブラックボックスの塊であるという点を除けば、性能には欠点らしい欠点が無く、維持コストも低いことから、今後のEDFのスタンダード・ウェポンとして注目されている。

ショットガン

  • ショットガンの概要
     ショットガンも兵器メーカーの売り込み合戦と採用トライアルが過熱した部門であり、EDF陸戦隊の現場からも「アレがいい」「コレがいい」と限りない注文が出たため、一時は統一装備の設定を見送って兵士に“私物”として持ち込みを許可する動きさえあった。
     そんな中で採用を勝ち取ったのは、イタリアの名門銃器メーカーであるフランキ社であった。ベレッタ・グループからの自立を考えていた同社は、EDFでの採用に社運を賭けてSPAS(Special Purpose Automatic Shotgun)シリーズの最新型スパス17を採算度外視で開発、発表したのである。
     実際にEDFで使用されるのは、トライアルで採用された武器そのものではなく、それを原型としてEDFが独自開発した武器なのだが、原型の直系となる発展型をEDFが使用している間は……つまり大幅な設計変更をしない限りは、原型とその技術を提供した企業にはライセンス料が支払われることになっている。
     この「大幅な設計変更」の規定内容が非常に曖昧であり、事実上、原型に採用されてしまえば長期間に渡るライセンス料を見込める上、必然的に製造も請け負えることから、企業にもたらされる利益は計り知れない。
     このような“市場性”を充分に理解していたフランキ社は、EDFが“長期間に渡って”独自開発しやすいように、拡張性に優れた余裕のある設計を行ったのである。またセミオートとポンプ・アクションを切り替え可能なコンバーティブル・ショットガンであったことも、部品点数の削減と故障リスクの軽減を達成したことで、多様な派生型を生み出す土壌として優れていると好意的に受け取られた。
     外見も、かつて人気を博しながらも故障率の高さで生産中止したスパス12を再現している。ただし装填方式をスパス15のカートリッジ式の箱型弾倉からチューブ型弾倉に戻したのは錯誤としか言いようがなく、EDF陸戦隊はリロードの手間に泣かされる羽目になった。

  • バッファローGSS
     標準型であるバッファローシリーズの最新モデルである。
     ショットガンは重金属の散弾による高い威力と阻止効果、単純な構造による強度と信頼性の高さから対巨大生物戦で重宝された武器であり、大戦末期に登場した各モデルは射程距離も長く、対ガンシップ戦においても有効であった。
     反面、リロードに時間がかかるため、耐久力の高い赤蟻の大群に肉薄されると苦戦を強いられるという欠点があった。このことから遠距離制圧能力に優れたロケットランチャーなどを装備した部隊の近接装備として補助的に用いられることが多く、面制圧後の掃討戦で威力を発揮した。
     なお型番にあるGSSとはグレイザー・セフティー・スラッグ弾の略であり、本来は拳銃で撃てる口径のショットシェルのことを指す。バッファローGSSの専用ショットシェルは内部に15発の弾丸を包んでいるが、それら全てが超小型の特殊GSS弾である。
     15発のマイクロGSS弾は巨大生物の外皮に着弾した瞬間に弾頭を起爆、成形炸薬砲弾と同じモンロー・ノイマン効果で外皮を焼き貫き、ほぼ同時に起る第二次起爆で粒弾の詰まった弾体を体内へと撃ち込む。そして弾体の第三次起爆によって内包する無数の極小粒弾を撒き散らし、細胞組織をズタズタに引き裂くのである。
     巨大生物を駆逐するには有効であったが、人間に対してはあまりにも非人道的な殺傷効果を有するため、大戦後に規制を受けた。

  • ガバナー100     
     型番の通り、100発もの弾丸(粒弾ではない)を広範囲に撒き散らす“超”散弾銃であり、全弾が集中する至近距離での威力は筆舌に尽くし難く、支配者(Governor)の名を体現する武器である。
     このガバナー100に限らず、大戦中に開発されたショットガンは巨大生物を迅速に駆逐する絶大な瞬間火力を求めて開発された武器である。しかし実戦においては有効射程がフォーリナーのそれと重なっており、威力を発揮するために接近すれば「敵に与える以上の損害を被る危険がある」というジレンマを抱えていた。ましてや数で圧倒的に勝る敵との接近戦において、リロードの長さは致命的であった。
     よってヘクトルや宇宙生物ヴァラク、女王体との戦いではスナイパーライフルやロケットランチャーに功績を譲る形となり、同状況においてショットガンには「接近されてやむを得ない場合にのみ、距離を取るための阻止攻撃に用いる」という規程が課せられた。
     真価を発揮したのは対ガンシップ戦であり、数挺のガバナー100が作り出す絶対弾幕の壁は、セントリーガンと並んで人類に残された数少ない対空攻撃手段であった。

  • スパローショットMX
     スズメ(スパロー:Sparrow)撃ちの名のごとく、高い連射力を誇るモデルである。
     中でもMX(Maximum)と名付けられたモデルは威力が高く、単位時間当りの火力はAF100さえも上回る。集弾性が高いため、対空戦よりも巣穴などの優先度の高い固定目標への攻撃に用いられた。また取り回しの良さから優秀なクローズ・アサルト・ウェポンとしても評価されており、地底進攻作戦でも活躍している。
     バッファローGSSのような専用弾薬を用いず、少ない部品と単純な機構で高速連射を可能としていることから「最も信頼性の高いショットガン」との評価を受けた。原型を提供したフランキ社も欧州復興後の2020年からスパス18の名で生産しており、世界各地のEDFや軍隊で使用されている。

  • ワイドショットA1
     大戦初期に考案された対巨大生物戦術では「部隊で阻止線を構築し、水平弾幕の形成によって巨大生物を寄せ付けない」という戦法が指示されていた。しかし戦いが激しさを増すにつれて戦闘要員の補充が追い付かず、戦術の研究と並行して、携帯火器の高性能化が急ピッチで推し進められた。
     ワイドショット・シリーズもその流れで生まれた武器の一つであり、個人でも充分な水平弾幕を展開できることを目的に開発された。
     通常、ショットシェルの内部は多段構造であるが、この銃の専用弾は粒弾が並行二重螺旋状に配置されている。銃身内部にはライフリングが刻まれており、専用弾は回転しながら撃ち出される。回転する専用弾から、螺旋状に並んだ粒弾が順番に撃ち出されることで、水平方向に広がる扇状の弾幕を実現している……と言われている。
     スマートウェポンと思われがちだが、銃本体はもちろん、専用弾にも高度な電子機器は一切使用されていない。粒弾の並び方、回転速度を左右する炸薬の燃焼効率(を決める火薬の形状や量)など、全てはEDF兵器研究開発チームの有り余る情熱と抑え切れぬ好奇心、そして日本の花火職人が代々受け継いだ伝統と匠の技が結集した結果であり……つまり予想以上の労力が費やされたのである。
     それにも関わらず、実戦では味方を誤射する危険性が高く、また弾幕があまりにも薄く広がるため、群で押し寄せる巨大生物のほぼ全てに当たるものの、ダメージ効率の低さから阻止効果は劣るという散々な結果となった。
     なお、散弾の広がり方を垂直方向にしたワイドショットA1VR(Vertical)という姉妹銃も存在する。
     対空および対ヘクトル戦を想定して開発されたものだが、縦に“長細い”弾幕でガンシップを狙うのは至難の業であり、上空の敵を目で追うために味方誤射の危険だけが増し、おまけにヘクトルと至近距離で撃ち合うには火力が足りないという有様であった。
      一説には、水平散弾と垂直散弾を交互に撃ち出すワイドショットA1CR(Cross)も開発されていたと言われるが……残念なことに資料は発見されていない。

スナイパーライフル

  •  スナイパーライフルの概要
     狙撃銃の採用トライアルと審査に関しては、兵器メーカー間の競合以上に、EDF内で複数の主張が対立していたことで有名である。
     念のために明記しておくと、それらの主張はある種の宗教的信念に基づくものであり、利益を求める企業との非合法な関係は全くなかったと断言できる。
     彼らにとって狙撃銃とはただの銃ではなかった。大気、重力、エネルギーといった自然界の物理法則と人間の精神が調和することで完全に機能する……言うなれば楽器に近い性質の装置であり、ただスイッチを押せばいいという単純な機械ではない。狙撃とは、その目的と結果が破壊であれ殺人であれ、行為そのものは芸術なのである。
     そして「弘法、筆を選ばず」とは言うものの、彼らにとって狙撃銃とは自らの半身、あるいは精神の器に等しい存在であり、自らが愛用するスナイパーライフルへの信頼は絶対無二のものであった。
     故に審査会議の議題は、例えればキリスト教徒とイスラム教徒に「新しい共通の神を選べ」と言うに等しかった。EDF北米総司令部の円卓会議室は重苦しい沈黙と信仰を賭けた議論の応酬に支配され、23回の休憩と4回の中断、睡眠不足と過労で3名が昏倒するという犠牲を経て、ようやく候補を二つに絞り込むことに成功したのである。
     米国レミントン・アームズ社製のボルトアクション狙撃銃M24A3と、独国ヘッケラー&コッホ社製のセミオートマチック狙撃銃PSG-1であった。
     安価で信頼性が高く構造的に命中精度も優れているが、手動装填を伴うために総合的な狙撃性能では劣るボルトアクション式と、高い火力を保証するが構造が複雑で価格も高価なセミオートマチック式。この違いが論争の焦点であり、一長一短である以上、早期の決着は期待できなかった。
     それでも出席者全員が栄養剤を摂取しながら議論を重ねた結果、EDF陸戦隊の編成と戦術方針にまで話が及んだ末に、一挺7,000US$と高価なPSG-1の配備が現実的でないことが認められ、EDFが両社から技術提供を受けて独自に新しいスナイパーライフルを制作することで決着した。
     そもそも既存の狙撃銃は改造の余地がないほど突き詰めた設計が為されているため、派生型のベースとしては新型を作る他になかったのである。
     EDF製スナイパーライフルはPSG-1の廉価版である同H&K社のMSG-90A1をベースに制作され、銃身などの細部にRA社M24A3の特徴が見られる物となった。装填方式に関しては後述のMMF思想の導入によってパーツが共通規格化されており、発射機構ユニットの交換によってボルトアクションとセミオートマチックのどちらにも変更可能である。

  • MMF200
     EDF製スナイパーライフルの原型と言えるこのモデルの設計者は「あらゆる状況下で使用できる多様性に富んだ狙撃銃が必要である」と考え、前線の劣悪な環境下でも容易に分解・組立できるようにユニット化され、発射機構ユニットを入れ替えることで機能を変更できるMMF(Multi Mode Firearms:多機能火器)システムを考案した。
     この思想を徹底したMMFシリーズは全パーツの完全互換性を実現しており、初期型であろうとRA型であろうとユニット交換によって簡単に威力や連射性を向上させることができる。またパーツユニット間のクリアランスが大きい設計であるため「泥や砂の中に埋まっても軽く水洗いすれば、撃てる」「パーツが多少変形しても装填可能なら、撃てる」という驚異的な信頼性を誇っている。
     このような性質から、一挺を分解した部品で数挺のMMFを修理する通称“共食い”整備の効率も良く、突出した性能はないものの、使い勝手の良さから多くの戦場で使われた。
     最新型のMMF200はAF99STのような重アサルトライフルとの違いが曖昧であるとの指摘を受けているが、確かに単位時間当たりの総合火力こそ劣るものの、AF99STの実効射程が480メートルであるのに対してMMF200は770メートルを有しており、単発での火力も上回っているため、地形を防御に利用する遠距離狙撃戦ではMMF200の方が有効であると言われている。
     またMMF200の製造および維持コストはAF99STの僅か8%(AF99STが高過ぎるのである)であり、スコープも標準装備されているため、EDF陸戦隊の偵察チームに数多く配備されている。

  • ファイブカードXB
     MMFスナイパーライフルを原型として派生した狙撃銃の一つであり、銃本体は9割以上がMMFと同じ部品構成である。異なるのは弾薬に特殊徹甲散弾を使用し、ライフリングのない滑腔銃身であり、専用の緩衝装置を備えている点である。
     ファイブガードという名は、この特殊徹甲散弾「XA」が5発の小型徹甲弾体を束ねる形で内包していることに由来する。
     発射後、銃身内を進む間にXA弾は炸薬の燃焼によって弾殻が後方から燃え始め、燃焼ガスを増幅させて徹甲弾体群をより加速させる。また弾頭は銃身を出ると同時に燃え尽きて燃焼ガスとともに銃口周囲の大気を加熱し、後続する徹甲弾体群の空気抵抗値を軽減する役目を果たしている。強烈な反動は緩衝装置が吸収するとは言え、高速散弾を撃ち出すための無理のある設計であった。
     強化改良型である「XB」弾では炸薬の改良によって射程距離を劇的に伸ばすとともに、弾体にフォーリナーの……巨大生物の外皮を加工したバウンド素材を使用している。
     バウンド素材はその名の通り驚異的な弾力伸縮性を有した物質であり、アーマーの耐弾素材としても使われている。
     高弾力伸縮性の正体は、運動エネルギーの大半を熱エネルギーに変換して吸収するという素材の働きである。運動エネルギーの大きさに比例して熱エネルギーへの変換効率は上昇するが、熱エネルギーの蓄積が素材の膨張という形で行われるため、限界に達すると素材の反動収縮作用によって熱エネルギーが再び運動エネルギーへと変換される(このためアーマーの素材にする場合はハニカム構造の吸熱材に組み入れられている)。
     以上の働きから、高初速で撃ち出されたバウンド弾は衝突による運動エネルギーを瞬時に熱エネルギーに変換して吸収、一瞬で膨張限界に達して反動収縮による再変換が起こり、その急激な反作用によって加速する。
     つまり障害物に当たると、ほぼそのままの速度で跳ね返るのである。
     もちろんXB弾の衝突時の運動エネルギーを跳ね返せる物体は限られており、巨大生物に当たった場合は運動エネルギーで引き裂き、さらに体内に留まって急速に熱を放出することで細胞を死滅させる。
     このような性質から曲がりくねった洞窟や深い縦穴など、複雑な地形の奥にいる敵を攻撃可能である。ただし予期せぬ跳弾によって味方に損害が出る危険もあるため、この弾薬の使用には一定の権限と資格が必要である。

  • ストリンガーJ2
     MMFを原型にして専用弾の使用による威力向上が試みられた狙撃銃であり、ファイブガードやライサンダーの雛型とも言える。
     そのテーマは「貫通」であり、高初速を得るために多段燃焼化(ロケット化)を施された専用弾が開発された。当初は巨大生物を貫通できればよしとされていたが、後にマザーシップ撃墜を目的とした「次世代先進兵器開発計画」に基づき、高性能化が研究された。
     ほとんど開発者の知的好奇心を満たすための研究であったが、ガンシップの残骸から回収されたフォースフィールド(斥力場)発生装置の原理を解明するなど、成果は認めざるを得ない。
     開発された「J2」弾は特殊弾頭弾に区分されているが、特別な爆薬を搭載している訳ではない。弾頭にあるのは、超小型のフォースフィールド発生装置である。一発の弾丸に搭載するにはあまりにも高価な装置ではあったが、出力される斥力作用が「面」ではなく「点」であったため、当時はこれ以外に利用価値はなかったと言われている(原型となるガンシップのフォースフィールド発生装置自体が、空気抵抗軽減用の微弱なものであった)。
     この斥力場発生式特殊徹甲弾は、巨大生物はもちろんフォースフィールドさえ貫通可能であり、四足要塞への攻撃作戦で実戦テストされた際には、肉眼で確認できる程の強力なフォースフィールドを見事貫いた。
     その様子を見た関係者は歓喜し、そして落胆した。
     確かに斥力場は貫通したが、四足要塞や空母型円盤、そしてマザーシップの船体表面を覆っている白銀の特殊物理甲殻は破壊できなかったのである。
     また高初速を実現するために超高温度の燃焼ガスにさらされる銃身は、一回の射撃ごとに最短で3.5秒の冷却が必要であり、対巨大生物戦での実用は見込めなかった。そもそも1発の製造コストがMMF42狙撃銃2挺分という専用弾自体が量産できるものではなく、ストリンガー・シリーズの開発は凍結された。
     とは言え、フォースフィールドの発生原理が解明された他、高初速化技術の研究はライサンダー・シリーズの開発を促した。なおJ2弾の開発者は、後にライザンダーFの強化発展計画「Z-Plan」に参加している。

  • ライサンダーZ
     最強かつ最後のEDF製スナイパーライフル、それがライサンダーZ(ズィー)である。
     ライサンダー・シリーズはMMF思想のパーツ互換性を廃し、弾速と威力の向上を至上命題として開発が進められたモデルであり、完全に再設計されたライサンダー2、そしてフォーリナーの技術を転用したライサンダーF(ForeignerではなくFutureである)が開発されていた。
     当時、日本列島戦線でマザーシップのジェノサイドキャノンの威力を目の当たりにしたEDFは、マザーシップ撃墜を目的とした「次世代先進兵器開発計画」をスタート。迫りくる欧州、そして北米での決戦に備えて、あらゆる武器の強化と新兵器の開発を推進した(移動司令船に過ぎなかったX3が決戦要塞に改造されたのもの、この計画の一環である)。
     携帯火器部門においても各スナイパーライフルの開発責任者が結集し、ライザンダーFの強化発展計画「Z-Plan」が発動された。
     開発チームは北米ロスアラモスのEDF先進技術開発研究所を後にし、かいりゅう型高速ディーゼル潜水艦“かいおう”に乗って来日した。この護衛に就いていた4隻のロサンゼルス級原子力潜水艦の内“アナポリス”と“シャイアン”は、途中、陽動のために既に陥落したハワイ諸島とグアム島へと向かった。トマホーク巡航ミサイルで攻撃を行った両艦はガンシップと空母型円盤の執拗な追撃を受け、消息を絶った。
     大きな犠牲を払ってでも開発チームが来日した理由は、空母型円盤やガンシップの撃墜数が世界でもトップクラスであり、かつ四足要塞を撃破したEDF日本支部陸戦隊から直接データを収集し、現地でライサンダーFの改良を試みるためであった。
     そこで彼らは一人の戦士に出会う。
     ストーム1。
     ヴァラクを単身で撃破し、四足要塞を沈め、数週間後にはマザーシップを撃墜する伝説の男は、とくに目立ったところのない寡黙な人物であったと言われている。
     開発チームの手記にも、彼の人格を想像させるような記述は見当たらず、ほとんどは戦闘技能についての記録で占められていた。それ以外は、せいぜいが「日本支部の食堂で出された奇妙なシチュー(日付から献立を推測するに海軍カレーであったと思われる)が彼の好物らしい」程度のものである。
     ただ一つ「Action is eloquence.(行動は雄弁である)」という記述が、寡黙な戦士の決意を我々に教えている。
     日本支部内に大量の機材を持ち込んだ開発チームは、ストーム1の戦闘データを基に「究極のスナイパーライフル」の研究と開発に取りかかった。
     最大の難点はライサンダーFが抱えるブラックボックス……フォーリナーのオーバーテクノロジーの完全な解明と完璧な制御であった。一般には通常型や普及型と呼ばれるライサンダーFだが、各装置の機能干渉によって潜在性能が抑圧されており、心臓部である発射機構内部ではエネルギーロスが確認されていた。真の威力を発揮するためには原因を究明し、各装置はもちろん、再設計に等しい内部機構全体の調整を行わなければならない。
     欧州陥落の報が届くと、開発チームの面々は不眠不休で作業を進めた。マッドサイエンティストと仇名されていた彼らも故郷の危機を前に冷静ではいられなかったのか、遅々として進まない研究に苛立ち、戦場での実戦テストに同行するなど危険を省みることなく開発に取り組んでいた。
     無限に近いトライ&エラーを重ねた結果、遂に機能干渉の原因は突き止められた。
     そしてその日の午後、「北米陥落ス」の一文が届いた。
    「All over……」
     ともに来日していたアメリカ軍兵士達が膝を着く中、開発チームの面々は顔を見合わせた後、何事もなかったかのように淡々と声で斥力場を用いた空間圧縮機構の制御について議論し始めた。
     若い兵士が彼らの態度を咎めた。祖国が滅びたのに、何も感じないのかと。
     メンバーの一人が答える。
    「My work is not over yet」
     その双眸が赤く充血しているのは、睡眠不足と疲労のためだけではない。
     彼らも戦っていたのだ。彼らの戦場で。
     コードネームZと呼ばれていた狙撃銃が完成したのは、それから数日後のことだった。
     誕生のその日、開発チームはストーム1に試射を依頼した。快諾した彼は感触を確かめるように一発ずつ撃ち、弾倉交換の際に感想を訊かれて一言、こう答えた。
    「――Beautiful」
     寡黙な戦士の賛辞に違わず、それは美しい銃だった。
     外見はライサンダーFと変わらないが、内部構造は芸術的なまでに洗練されており、気迫とでも言うべきオーラを……歴史上、ひと握りの高性能な武器のみが許された妖しいまでの威風をまとっていた。
     他のEDF隊員も「まるで日本刀だ」と感想を述べている。
     全ての装置は一寸の狂いもなく調和しており、ボルトアクションが奏でる音は楽器のそれを思わせる程であった。そして絶大な破壊力を生み出す空間圧縮式射出機構はエネルギー収束率99.999999998%という最高精度を記録。単発火力評価測定でもライサンダーFの3800を大きく上回る5500を達成し、その後の実戦テストで空母型円盤のハッチ内部を超長距離狙撃して4発で撃沈することに成功している。
     残念ながら材料と設備、そして人類に残された時間の関係から大戦中に製造されたのは僅か2挺のみであった。この「伝説の2挺」は開発チームによってほとんど手作業で造られており、職人技と言うべき調整が細部に渡って施されているため、大戦後に再設計されて量産された所謂「ノーマル」とは全く別の銃と言っても過言ではない。
     開発チームはかねてからの決定に従い、その狙撃銃に「最終・最高・究極」の意味を込めて「Z」の名を授けた。
     ライサンダーZ。マザーシップを堕とした銃である。

  • 零式レーザーライフル
     日本列島戦線においてEDF日本支部陸戦隊の最精鋭「オメガチーム」が装備していた光学兵器であり、ライサンダーZ開発のために来日していたEDF兵器研究開発チームが、日本陸上自衛隊の試作兵器に改良を加えて製造した秘密兵器である。日本列島戦線では他にもALレーザー銃という光学兵器が対ヴァラク戦に投入されたと記録されている。
     零式レーザーライフルの威力については3秒間の照射で18000という火力評価値が測定されていることからも出力が極めて高く、粉塵の舞い上がる乱戦や雨天でも使用できたため、ガンシップはもちろん、あのヘクトルをも容易く撃破できたと言われている。
     ただし、その3秒間の照射で全エネルギーを使い切ってしまう上、プラズマ砲と同じくエネルギーの充填には大電力を有した専用の施設が必要となるため、あくまでも支援火力として用いられたと言われている。
     ちなみにEDF日本支部はエネルギーパックの実用化に成功し、オメガチームは連射可能なレーザーライフルを有していたと噂されているが、EDFの広報に問い合わせたところ、そのような事実は確認できなかった。
     エネルギーパックの研究は終戦直後から各国の研究機関や企業で行われており、実現した暁には中近距離戦の様相を一変させると言われている。

ロケットランチャー

  •  ロケットランチャーの概要
     当初はRPG-29の採用がほぼ決定していたが、幾つかの製造国(ロシアから正規のライセンスを取得していない国も含む)とロシア連邦が利益配分について対立したため、トライアルにおいて次席に着いていたスウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクス社製AT-4 が採用された。
     数週間後、EDF先進技術開発研究所がAT-4 を原型にして開発したのは、あらゆるロケット弾を使用可能な多目的ランチャーであった。弾倉の交換によって繰り返し使用可能な発射器は大型化しているが、巻き付けたような形の弾倉はコンパクトであり、かつてのM20スーパーバズーカを彷彿させるスマートな外見に仕上がっている。
     開発にあたっては市街戦での使用が重視され、また多様なロケット弾を使用可能という条件から、発射時のバックブラスト(発射時の反動を相殺するために後方に噴出される燃焼ガス)を解消する必要があった。
     一時は電磁投射機構も検討されたが、複雑化を避けるためにAT-4 のCS型で使用されている塩水飛散型の発射筒(後部に封入した塩水を飛散させる方式)を改良、発射する度に発射筒後部に速やかに塩水を充填する機構が開発された。使用される塩水は弾倉内のタンクに装填数分の容量が充填されているため、ランチャー本体に水を足す必要はない。
     これによって市街地はもちろん巣内部の洞窟においても発射できるが、誤射や自爆、そして酸欠誘発の恐れがあるため、訓練を受けた隊員のみが使用を許されている(この規定がロケットランチャー専門の巣穴攻略部隊モールチームの結成に繋がった)。
     EDFのロケットランチャーのカテゴリーは、一部を除いて発射器はこの塩水充填式ランチャーで統一されており、使用ロケット弾の違いとオプション装置の有無によって名称で区別されている。
     新たに開発された専用ロケット弾は種類によって威力効果や爆発範囲に違いがあるものの、基本的に徹甲・破砕・焼夷の三効果を兼ね備えている。これは成形炸薬弾頭のモンロー・ノイマン効果によって装甲を貫徹し、弾頭の余剰爆発力を利用して破片と粒弾を飛び散らせ、同時に焼夷剤を発火して周囲を焼き尽くす多目的噴推榴弾であり、バトルマシン“ベガルタ”の極低反動ロケット砲にも採用されている。

  • スティングレイMF
     最も生産数が多く、名実ともに標準モデルと言えるスティングレイ・シリーズの最終形態が、このスティングレイMFである。
     スティングレイM99と比較すると、先に撃ち出されたM99のロケット弾をMFのロケット弾が追い越す程の高弾速性を有しており、遠距離のガンシップを狙うことも不可能ではない。一説にはオプション装置としてフォーリナーの技術を転用した空間圧縮式加速装置が取り付けられているとも言われているが、M99との外見上の差異は確認できず、実際にMFの発射器を分解してみないことには不明である。
     単発火力評価値は1500と控え目な印象を受けるが、発射速度は毎秒1発と速く、弾倉交換も2秒とかからないため総合的な制圧能力は高い。またモールチームの貴重な戦闘経験(主に自爆事故)が反映された結果、殺傷効果範囲は15メートルに抑えられており、乱戦においても使い勝手は良い。

  • カスケード2
     スティングレイの改良型として開発されたカスケードとボルケーノの両シリーズは、結論から述べると、どちらも満足な結果を残すことができなかった。
     とくに連射性能を特化させたカスケード・シリーズは二種類しか制作されておらず、大戦後に発行された書籍では試作兵器に分類されていることも少なくない。
     事実、生産数は少なく、日本列島戦線におけるカスケード2の配備数は20基に満たなかったと言われている。実戦での評価も「洞窟内でも比較的安全に使用できる」点を除けば、毎秒6発の発射速度をもってしても如何ともし難い威力の低さが問題視された。
     反面、技術面では、特別に設計された塩水充填機構と弾倉、そして故障率の低い高速装填機構が他のシリーズに与えた影響は大きく、近年は評価を見直す動きがある。

  • ボルケーノ6W
     カスケード2とは別の形でスティングレイの性能を高めようとした派生モデルであり、その名の通り火山の噴火を思わせる同時発射数を誇っている。
     これは発射器の多連装化ではなく、多弾頭ロケット弾の使用によって為されており、カスケードに比べて使用される場面は多かったものの、コストの高さからスティングレイに取って代わることはなかった。
     とくに最終モデルであるボルケーノ6W(way)は、開発時は強力な面制圧能力を期待されていたが、分裂後に水平扇状に広がることを実現しようとする余り、設計に無理を強いたことで破壊力の低下を招いた。多弾頭ロケット弾から放たれる小型ロケット弾は弾速も威力も低く、数を揃えようにもコストが高かったため、量産化には至らなかったのである。
     同様の問題作としてはボルケーノB(burst)10が挙げられている。これはカスケード2を越える高連射性を実現するために開発されたもので、毎秒10発近い発射速度を誇るが、それを実現した高速装填機構の機能上の特質によって、発射すると弾倉にある10発全てが強制的に発射されてしまう。
     遠距離では大きな問題にはならなかったが、近距離では突発的な自爆事故に発展するケースが後を絶たず、ほどなく一部の隊員を除いて使用が禁止された。

  • ゴリアスZ
     単発で高い威力を誇るゴリアス・シリーズだが、グレネードランチャーの高性能化もあって、カタログスペック上の評価は分かれている。
     もっとも安定した直射弾道を有しており、新兵でも正確な長距離砲撃が行えるため、ゴリアスを装備する部隊は多かった。また弾倉式ではなく一発ごとの装填式であるため故障リスクはほとんどゼロであり、発射器もロケット弾も最低限の機能で事足りるので他のシリーズに比べて非常に安価であった。
     最終形のZ型においては高威力・低コストというコンセプトを築いてスティングレイとの明確な差別化に成功している。複数の射手による波状攻撃で真に高い威力を発揮するため、大戦末期のEDFが人員の払底から精鋭主義に傾いていなければ、主力ロケットランチャーの地位を獲得していたと言われている。

  • A3プラズマランチャー
     残骸の研究によってフォーリナーの超技術を獲得しよういう試みは早い段階から各国で行われたが、人類社会そのものを脅かす巨大生物の攻勢を前に大半の研究機関は壊滅し、成果を得られたのは極一部に限られた。
     米国ロスアラモスのEDF先進技術開発研究所もその一つであり、世界各地から集められたサンプルを基に、非常にユニークに富んだ才能の持ち主達が研究を重ね「一に実践、二に実戦、三、四がなくて、五に配備」と揶揄される程のペースで開発を行っていたと言われている。
     もっとも、それらは空間圧縮などの新技術やバウンド素材のような新素材によって性能を高めた既存兵器の強化型であり、純粋かつ画期的な新兵器として注目されていたエネルギー兵器の開発は難航した。
     プラズマランチャーもその一つであり、ヘクトルのプラズマキャノンの模倣によって比較的容易に開発可能だと考えられていたが、EDF上層部から発せられた「個人で携帯可能なサイズで」というオーダーに加え、開発チームが「できなければ別にいい」という言葉(小型化が不可能なら車輛への搭載も考えるという意味だったと関係者は答えている)を“挑戦”と受け取ったために開発計画は複雑化し、混迷を深めることとなった。
     電磁収束などの技術を完全に解明することなく強行された全長20メートル近いプラズマキャノンの小型化は、ほとんど開発チームの意地で成し遂げられ、3段階に渡って試作兵器が完成した。
     最初に登場したA1型は小型化に成功、着弾点から範囲40メートルを焼き尽くす威力を有していたが、超高熱プラズマを収束保持して撃ち出すのがやっとであり、遠距離で使うには着弾に時間がかかり、近距離で使えば爆発に巻き込まれるという代物であった。
     そもそも個人携帯が可能なサイズと重量の装置で、電磁収束したプラズマを安定状態のまま加速して撃ち出すこと自体が容易ではなく、A1型を改良したA2型は意図せずして拡散型となるなど開発は困難を極めた。
     最終型であるA3型で、ようやくヘクトルのプラズマキャノンとほぼ同様の物(曲射弾道を再現しようとして急角度の放物線を描く結果となった)が完成したが……レーザーライフルと同じく専用の大規模エネルギー充填施設が必要であり、製造コストの高さもあってEDF上層部は量産化を断念した。
     幾つかの試作品は陸戦隊に供与され、実戦で使用された。再装填ができないものの、圧倒的な火力を活かした初期制圧兵器に徹すれば実用の範囲内であり、低コスト化できなかったことが悔やまれる兵器である。
     エネルギー兵器に関しては大戦後も各方面で研究が続けており、EDF内部でもオメガチームのような専門性の高い精鋭部隊の設立が計画されていると言われている。一部では飛行装置を備えた強化兵士の存在も囁かれているが、超能力兵器の噂と同じく、想像の域を出ないものである。

  • ジェノサイドガン
     ≪WARNING
     ・該当項目はEDF機密情報S-3-9クラスに分類されています。
     ・該当項目の閲覧にはレベル7以上の資格と生体認証が必要です。
     ・正規の手段に基づかない該当項目の閲覧は重大な犯罪行為として処罰されます。
     ・30秒以内に全ての認証を完了してください。カウントダウン開始。
     Password-A[**-**-**]……Clear
     Password-B[***-**-***-***] ……Clear
     Password-C[********] ……Clear
     Biometrics- Ready……Set-Start…………All clear
     ・認証を完了。
     ・該当項目<Genocide-Gun>を開示します。

     ・・・
     AD2018.■■■■. 12. PM23:30
     ID:■■■■■■■■■
     Name:■■■■■■
    「究極の兵器である理由は光と熱で全てを焼き尽くす悪魔の力としか思えないこの威力は誰も想像できないから悪魔の力は絶対に人間には生み出せない力を私だけのものにするためには誰にも教えないためにはどうすればいいのかは分かっているから実行に移すだけだからまずはあいつとこいつを消してしまわなければ計画がばれてしまっては悪魔の力は絶対でなくってしまわないためには私だけのものにしなければ私だけのものではなくなってしまう悪魔の力は何もかも焼き尽くす光と熱は私だけのものだ」
     ■■■は拘束されるまで喚き散らしていた。
     試射実験の地獄のような光景よりも、私にとっては衝撃的だった。■■■ が発狂したということは、私や他の同僚も、同じように狂ってしまう可能性があるということだ。
     あの銃にはそういう力があり、私たちはそれに触れてしまっている。
     やはり使ってはならなかったのだ。マザーシップから回収したあの部品を使ってはならなかったのだ。あの箱には邪悪な意思が宿っている。間違い無い。あの銃の中枢部に組み込んだあの箱には悪魔が封じ込められている。
     壊さなければならない。あれは存在してはないものだ。
     誰か、誰に相談すればいいだろう。わからない。頭が痛い。今朝から続いているが、治る気配がない。ドクターに薬を貰わなければ。
     ・・・
     AD2019.■■■■■. 7. AM10:43
     ID:■■■■■■■■■■■
     Name:■■■■■■■
     先ほどジェノサイドガン開発計画の凍結と研究班の解散が正式に決定された。
     幸い死者こそ出なかったが、優秀な科学者を何人も失ったことは大きな損失だ。フォーリナーが残した超技術の解明は遅々として進んでないというのに。
     いや、問題は試作品をどうするかだ。■■■の連中は■■■■■■の地下倉庫に移せと言っているが、他のサンプルにどんな影響を及ぼすか分かったものではない。あの銃に汚染されてしまうだろう。
     破壊が不可能な以上、宇宙に捨てるか、海溝に沈めるか、考えなければならない。
     あるいは、誰かに託すべきだろうか。マザーシップの怨念に負けない者に。
     それは――
    Alert
    ・警報。非正規接続を確認。強制遮断実行-完了。隔壁閉鎖実行-完了。
    ・警備班出動確認。室内への鎮静ガス噴射実行………完了。

ミサイル

  • ミサイルの概要
     おそらく「投石」から始まった投射兵器の進化は、兵器の歴史と言い換えても過言ではない。始祖となる装置がどのようなものだったのかは分からないが、人力に代わって物理力学で殺傷物を遠投する「弓」が誕生して以後、破壊力と射程距離という二つの思想に基づく終わりなき進化が始まったのである。
     大型化の末に投石機と長弓に到達した後、最初の転機が訪れた。火薬の爆発力の利用である。原始的な「砲」は瞬く間に高性能化し、大砲を小型化して携帯可能にした「銃」も同様に威力を高めていった。
     やがて砲が大型化を極めた頃、火器の黎明期において砲よりも早く考案されていた飛翔兵器が技術的な成熟を迎えた。銃や砲では発射時に外部から加えられる推進力を……その発生機構を砲弾そのものに内蔵させた「ロケット」は瞬く間に高性能化し、機械および電子工学の急速な発達はロケットに誘導機能を付加した「ミサイル」を生み出した。
     2017年当時、ミサイルという兵器は、遠隔破壊のためのハードウェアとしては人類史上最も進化した装置だったと言える。
     とくに米国ヒューズ社製の空対空ミサイルAIM-120Hi-Max、通称「ハイ・アラーム」はトリプルエー(Triple-Anti:対機動、対欺瞞、対迎撃)機能……理論上どの戦闘機よりも高い機動性と、能動性ステルス機にも惑わされない誘導機構、CIWSの弾幕や迎撃レーザーを回避する運動性(が可能な強剛構造)を備えており、その圧倒的な性能から「撃墜できないのは味方と人工衛星だけ」と言われていた。
     もっともそれは、あくまでも人類同士の戦争で、人類が培ってきた戦略戦術思想に基づいて、人類が作った戦闘機同士が戦うために作られたものに過ぎなかった。
     故にフォーリナーのガンシップの空力や重力を無視した動きには追従できず、たとえ撃破できたとしても一基50万USドルという価格のミサイルでは、空を覆うガンシップの大群に立ち向かうにはコストが見合わなかった。
     つまり従来の高価格な高性能ミサイルは、中世の騎士や日本の侍が用いた武具と同じく、人類間戦争という限定された戦闘様式の中で先鋭化していた兵器と言わざるを得ず、人類の軍事常識を根本から覆す程の圧倒的な物量を最大の武器とする異星体フォーリナーとの戦いには向かなかったのである。
     無論、撃ちっ放しの可能な誘導兵器そのものは有効な戦術であり、初戦の航空作戦失敗の後、EDFは戦前に採用していた携帯ミサイルシステムを破棄、巨大生物やガンシップの「数の暴力」に対抗するため、安価かつ省資源な新型ミサイルの開発に着手した。
    ・・・
     戦前、EDFは米国レイセオン社の開発した高性能携帯ミサイルFIM-92Gスティンガー・マスターを原型として採用していたが、圧倒的な「数」で防衛線を突破する巨大生物群に対して高価格なミサイルシステムは不適切だと判断、EDF先進技術開発研究所に「AKライフルのように簡便な構造で信頼性が高く、大量生産が可能で低価格」という条件で新型ミサイルシステムの開発を命じた。
     広義のミサイルが高精度電子部品の塊であることを考えれば、EDF上層部の要求は困難を通り越して不可能と言わざるを得なかった。事実、技術協力のために出向していたレイセオン社の技術者は真顔で「Nice joke」と呟いたという。
     もちろん冗談ではなく、EDF上層部以上に常識外れで知られていたEDF兵器研究開発チームは僅か数日で試作品を製作した。
     完成した発射器はMIM-104パトリオット・ミサイル・システムのランチャーを小型化したような……急造品の誹りを免れない外見であった。発射機構以外の探査装置などもオプション扱いとなっていたが、これは後に多種多様なミサイルを運用するための設計であり、現在まで基本設計が継承されていることを考えれば、拡張性と経済性に関しては傑作というべきランチャーである。
     なお開発されたミサイルはその種別に応じて「EMERAUDE」「Air Tortoise」「MLRA」「FORK」「PROMINENCE」の5つに分類されている。

  • MEXエメロード
     世界規模での航空作戦が行われた日のことは、今でもよく憶えている。
     当時、まだ幼かった私にとってフォーリナーとの戦争はモニターの向こう側の出来事に過ぎなかった。巨大生物の出現は大都市の出来事であったし、報道管制下で知ることのできる情報は限られていた。
     ネットワークの利用が制限されたことへの不満を除けば、他の多くの子供と同じように無期限の休校を喜び、「宇宙人の侵略」という非日常の訪れに冒険心をくすぐられ、まるで台風の到来を待つかのように、胸を躍らせながら母や姉の後を追って非常食を買いに出かけたものだ。いつものようにカートに菓子をしのばせた私を叱った姉の焦燥も、それを悲しい目で穏やかにいさめた母の悲哀も理解することなく……。
     2017年のあの日、午前中にも関わらず職場から帰って来た父は自室に私を呼んで椅子に座らせ、自らは床に膝を着いて向かい合った。いつも見上げていた父に真正面から見詰められ、その厳しい眼差しに、指一本動かすことができなかった。
    「どんなことがあっても諦めるな。お前が二人を守れ」
     それだけを言って父は立ち上がり、部屋を出て行った。
     戸惑いを引きずりながら後を追った私は、玄関で抱き合う父と母の姿を見て呆然と立ち尽くした。二人の傍で自らの細い肩を抱いてうつむく姉の姿も、混乱に拍車をかけた。
     目に映る光景を、理解できなかった。
     どうして母さんは……お姉ちゃんも…………二人とも、どうして泣いているんだろう。
    「いってくる」
     深緑の軍服に身を包んだ父が背を向け、ドアを開けて白い逆光の中へと消えていく。
     おかしい。
     基地に出勤する父を、家族で見送るのは見慣れた光景の筈だ。
     なのに、どうして――
    「父さん!」
    「……」
     無言で振り返った父は、優しい目をしていた。
     ドアの閉まる音が一際大きく響いた。
     背後のリビングから……点けたままのTVからヒステリックな女の声が流れていた。
    『一方的です! EJ24戦闘機が次々と撃墜されていきます!』
     あの日、マザーシップや空母型円盤に対して行われた一斉攻撃はガンシップの登場で失敗。瞬く間に攻撃隊を撃ち破ったガンシップはそのまま飛散し、各地の防空施設や空軍基地を襲撃しに向かった。
     私の故郷にも空軍の基地があった。父が勤めていた基地が。
     要撃機のパイロットだった父が数分間でも帰宅できたのは、攻撃隊全滅の報を受けながらも出撃を命じた基地司令官から特別の許可があったからだと後に聞いた。
     父が出て行ってすぐ、私は母と姉に連れられて家を出た。最低限の荷物を持って、避難所に指定されていた学校の体育館を目指した。
     故郷の様相は一変していた。見慣れた街路は人で溢れ、徒歩避難の通達を無視した車が渋滞を作り、交差点で事故を起こしていた。警察官が拡声器で何かを喚き、複数のサイレンが鳴り響いている。あちこちから子供の泣き声が聞こえた。
     喧騒に圧倒されて足元のおぼつかない私の手を、姉は痛いくらい握りしめていた。
    「はやく、はやく歩いて……!」
     苛立つ声に混じって、鼻先で揺れる長い黒髪から流れてくる甘い香りに、私は現実感を失いつつあった。
     十数分で着く筈が、群衆の動きに流されて一時間以上も歩き続けていた。やっと辿り着いた別の避難所は既に人で溢れ返り、我先に助かろうとする人々の醜い争いも起こっていた。乱れた列がどこに向かっているのか……どこに行けば助かるのか……何も分からないまま歩くことに誰もが不安と疲労に苛まれていた。
    「お姉ちゃん……家に帰ろうよ……」
    「馬鹿言わないでよ!」
    「だって……!」
    「大丈夫よ。二人とも、はぐれないで…………あ!」
     母が声をあげてから間を置かず、一際大きなサイレンが鳴り響いた。
     毎年、夏になるとTVに映る戦争番組。
     何十年も前の戦いの記録。
     白黒映像の中で何度も聞いた、あの音。
     ――空襲警報。
     群衆が凍りつき、老若男女を問わず誰もが空を見上げた。
     次の瞬間、すぐ頭上を白い影が飛び過ぎ、強烈な風圧で人々が倒れた。将棋倒しで下敷きになった者が悲鳴をあげるが、もっと大きく、身の毛のよだつような叫び声に掻き消された。
     離れた場所で何かが燃えていた。
    「あ、ああっ……!」
     姉が声にならない悲鳴を洩らす。
     人が燃えていた。
     何人もの人間が、燃やされていた。
     その頭上に、数十人の髪の毛と皮膚と衣服が燃える炎の照り返しを受けて、白銀の怪鳥が浮かんでいた。
     それがフォーリナーのガンシップだと認識する前に、人々は逃げだした。本能と恐怖に突き動かされて。
     ガンシップの鋭い双眸を備えた機首から赤い熱線が走り、群衆を引き裂く。灼熱の粒子ビームに撃ち貫かれた部分は即座に炭化したが、その周囲の肉が焼け、服は燃えた。燃料タンクを撃たれた車が爆発し、周りにいた十数人を巻き込む。歪んだ車体から出られずに生きたまま焼かれていく者の叫び声は、まるで獣のようだった。
     目の前にいた男の頭部が消し飛ぶのを目撃した姉は、糸が切れたようにその場に腰を落とした。地面に広がった失禁の染みを眺めても、私は無感動だった。
     倒れたまま群衆に踏み潰される者の悲鳴……全身に火傷を負って男とも女とも判らなくなった者の呻き声……愛する者の無残な姿を見て半狂乱になった者の叫び。
     なぜ、どうして、こんな光景が、こんな事が起こっているのだろうという疑問で思考が飽和しつつあった。答えを求めて空を見上げると、蟲のように飛び回る無数のガンシップに混じって、黒煙を引いて落ちていく飛行機の姿が見えた。
     空軍の戦闘機だ。
     既に操縦不能に陥った機体が、幾筋ものパルス・ビームに貫かれて爆散する。青い空を背景に、砕け散った戦闘機の破片が煌めいた。
     あれは……父さんだ。
     なぜか、疑いようのない直感があった。
     もう一度地面を見ると、足元に母が倒れていた。見てすぐには母だと分からなかった。母は白い服を着ていたのに、真っ赤だったからだ。背中から生えている黒く焼け焦げた何かが、心臓を貫いた破片だと理解できるまで時間がかかった。
     座り込んだ姉は虚空を見つめたまま涙を流している。
     もう、何も感じなかった。夢見よりも遠い現実。
     私と姉の頭上で、一機のガンシップが停止する。くるりと回転して真下を向いた凶鳥は、まるで観察するかのように私たちを眺めた。東洋の仮面を思わせる細い目で、間違い無く、“そいつ”は見ていた。
     ――死滅セヨ。
     譬えがたい悪意が伝わってきた。これが機械なのだとしたら、作った奴は悪魔に違いない。
     苛めっ子や野良犬とは次元が違う。絶対に相容れない存在。
     それを何と呼ぶのか、言葉だけは知っていた。
     敵だ。
     そうとしか呼べない。生まれて初めてその実感を与えてくる存在が、目の前にいた。
    「……!」
     私の胸に湧いた感情は、恐れではなく、怒りだった。
     父母の仇を討つとか、姉を助けるといった考えはなかった。あまりにも異質な存在に対する拒絶反応と言ってもいいだろう。私は目の前の死神を心の底から、純粋に、憎んだ。
     縛めが解けた。
    「――宇宙に、帰れッ!」
     考える間もなく罵倒が口を出て、次の瞬間には足元の瓦礫片を拾って投げつけていた。
     小さなコンクリート片はガンシップの顔――機首にぶつかった。反応は無い。私は今でも、あの時ガンシップに嘲笑されたのだと思う。そういう間があった。
     力が欲しい!
     目の前の悪魔を打ち倒す! 絶対的な力が欲しい!
     身を焦がす程の憎悪が別の悪魔に聞き入れられたのか、耳を突き刺す鋭い金属音とともにガンシップが姿勢を崩した。連続する金属音とともに小突かれるように跳ね上げられたガンシップのもとへ白煙を引いて何かが飛び込み、爆発する。破片が雨のように降り注ぎ、私の頬を浅く切り裂いた。
    「馬鹿野郎!」
     怒声とともに突き飛ばされる。
    「突っ立てんじゃない! 死にたいのか!」
     無数の銃声と力強い足音が周囲で響いた。
    「確保!」
     別の誰かに首根っこを掴まれ、倒れたまま乱暴に物陰へと引きずり込まれる。爆竹が弾けるような音とともに空薬莢が降り注いだ。その中の一つが触れたのか、頬に火傷の痛みを憶えた。痛みが意識を鮮明にしていく。
    「本部! こちらレンジャー2-5! 民間人1名を保護した! 敵の攻撃は苛烈! 救援を要請する!」
    「駄目だ、敵の数が多過ぎる!」
    「弾をくれ! 弾をッ!」
     黒いヘルメットに赤いアーマーベスト……EDFの陸戦隊だった。普通の軍隊とは異なる派手な戦闘服姿はニュース映像の中では現実感の乏しいものだったが、目の前に現れた煤で顔を黒く汚した男達は全く別の存在に見えた。歯を食い縛り、ライフルやミサイルで果敢にガンシップに応戦する姿は、まるで――。
    「おいっ! この娘も生きてるぞ!」
     声の方を見ると、姉も物陰に運び込まれていた。
    「た、隊長! 敵が速過ぎる! こんなミサイルじゃ――」
     言いかけた若い隊員の胸に穴が開き、倒れた。焼け焦げた貫通痕は血を流さない。
    「ジョニーがやられた!」
    「潮時だな……軍曹! 後退するぞ! こんな地獄で子供2人なら上等だ!」
    「イエッサー! 野郎ども後退だ! 現陣形を維持しろ! 弾幕を絶やすな!」
    「後退! 後退!」
     私は軍曹と呼ばれた黒人の大男の小脇に抱えられた。胴に回された太い腕は重機のそれのようだった。もう片方の腕でミサイルランチャーを軽々と持っている。視界の隅に、同じように運ばれる姉の姿を見た。
    「走るぞ! 祈ってろよ小僧!」
     直後、風圧を感じた。
    「くそがっ……!」
     悪態を吐きながら大男が倒れ、私は放り出された。すぐ近くをビームが擦過したのか、オゾン臭が鼻を突く。
    「軍曹ッ!」
     近くで後退りながらライフルを撃っていた隊員が駆け寄るが、頭上に滞空するガンシップに狙い撃たれた。「畜生!」と怒鳴った大男は、物影から出てこようとした他の隊員に「来るな!」と命じる。
    「お前らは先に行け!」
    「しかし!」
    「俺とガキを餌に誘き出す気だ! その娘だけでも助けろ!」
     言われた隊員は無言で敬礼し、姉を抱えて瓦礫の影へと入っていった。
    「……おいっ!」
     ゆっくりと起き上った私に、倒れたままの大男は苦痛に歪んだ顔で呼びかけてきた。
    「それを……押してくれ!」
     彼が腕を伸ばした先――私の目の前にはミサイルランチャーが転がっていた。箱型の発射器に「ME1-EMERAUDE」と白く印字されている。言われた通り、両手を当ててランチャーを大男の方へと押し出そうとするが、重い。
     無理だと言おうと顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、目を見開いて絶命している大男の姿だった。よく見ると、こちらへ向けていた腕が肩から無くなっていた。
    「おまえが……おまえがやったんだな!」
     見上げて叫ぶ私を、ガンシップの冷たい眼が見据える。
    「おまえなんか…………おまえなんかに!」
     目の前の敵に負けたくない一心で、私はミサイルランチャーを抱え起こした。子供にとっては丸太のような重さだったが、なんとか背負うようにして肩に載せようとした。
     支えるためにグリップを握った際に、指がトリガーに触れたのは全くの偶然だった。
     ランチャーの発射口が開き、中に納まっていたミサイルのシーカーが作動。自動認識型汎用ミサイルは目前のガンシップを目標として赤外線画像認識。形状をデータ照合――Unknown――敵味方識別信号の有無を確認――味方識別信号無し――目標を敵性と判断して安全装置を解除した。
     僅かな爆発音とともに発射器からミサイルが投射され、その衝撃に私はバランスを崩して倒れた。すぐさまミサイルのロケットモーターが点火、ガンシップに向かって突っ込む。ガンシップは上昇して避けようとしたが、完全静止状態からの機動は鈍いのか、逃れられなかった。機首の先端にミサイルが直撃する。
     ガンシップの動きが緩慢だったことが幸いし、ミサイルは対高機動体近接破砕モードではなく、通常の対機甲貫徹モードのままガンシップの片目に突き刺さって弾頭を起爆――怪鳥の首を丸ごと吹き飛ばした。
     機種を失ったガンシップは独楽のように回転しながら墜落し、民家を押し潰して瓦礫の一部と化した。
     煤に汚れた私の口許に、自然と笑みが浮かんだ。
    「……ざまぁみろ」
     その後、どこをどう歩いたのか、私は地獄を抜け出すができた。
     避難民の一団に合流した後のことも、よく憶えていない。ただ毎日を生きることに必死で、母を弔うことも、父や姉の消息を知ることもできなかった。
     大戦後は自警団に少年兵として参加し、戦災遺児基金の奨学金を受けて教育を受け、EDFに入隊した。孤児として生きる道が限られていたのは事実だが、あの日、私や姉を助けようと奮戦した男達のことを忘れてはいなかった。
     陸戦隊に配属された私の手にはミサイルランチャーがある。MEX-EMERAUDE。あの日、私がガンシップに向けて撃ったミサイルの最新バージョンだ。数奇な運命を感じないではない。
     まだ訓練以外で使った経験はないが、いつか、その日が来るのかもしれない。
     あの大戦で、何も守れない無力な子供だった私に代わって銃を取り、命を賭して戦い、世界を救ってくれた人々がいた。
     だから私も、ここにいる。
     ようやく授かった息子に、この青い空を残すために。

  • エアトータスME
     空母型円盤の撃墜のために、標準型のエメロード・タイプに弾頭破壊力の強化を施したのがエアトータス・シリーズであり、その名からも容易に推測できる通りミサイルとは思えない「低速」が特徴である。
     空母型円盤の飛行ルート上に発射し、着弾までの間に射手が安全圏まで退避するという運用概念は、瓦礫の散乱する不整地でも時速80キロ以上で進行可能という黒蟻型巨大生物の踏破能力を考えれば頷けるものだが……実際は安価で粗悪な推進剤を用いたために(弾頭重量の増加もあって)低速化してしまったところ、それを逆手にとって前述の戦術が考案され、短噴射推進機構とスタビライザーの付加によって実用化されたと言われている。
     実戦ではプロミネンス・シリーズに活躍の場を譲ることが多かったが、最終型のME型は威力も高く、状況と戦術によっては「着弾までの時間の長さ」は有効であった。竪穴など大規模な洞窟内での使用にも適していたと言われているが、自動認識装置の対巨大生物用バイオセンサーがあまりにも鋭敏であったため、隠れていた巨大生物に反応して思わぬ方向へ誘導され、自爆事故に繋がったケースも少なくない。
     時限式のグレネードや仕掛け爆弾に近い使い方をされた武器であり、他のミサイルとは区別されている。

  • MLRA-3
     Multiple Launch Rocket Armsの略称であり、EDF上層部からの「多連装ロケットシステム(MLRS)の個人版があれば便利だ」という曖昧な指示で開発されたと、半ば冗談染みた経緯が語られていたが、近年になって北米総司令部跡から発見された当時の命令書にそのような旨が記載されており、上層部の単なる思い付きを忠実かつ迅速に実現した開発チームの能力には驚きを禁じ得ない。
     ロケットと名称されているが、発射されるのは誘導性能を備えた小型ミサイルであり、MLRSとは運用方法が大きく異なる。
     ペンシルロケットの愛称を持つ小型ミサイルは軽量で機動性に優れる反面、威力で劣り、装弾数の多さをもってしても火力の不足は否めなかった。ただし生産コストが低く、大量に発射できる使い勝手の良さから評判は悪くなかったと言われている。
     一度に2方向へ発射するTW型に続いて威力向上型のMLRA-4も研究されていたが、低コストとは言え、大戦末期において大量の小型ミサイルを製造する工業生産力は人類には残されておらず、FORKシリーズと同じく開発は中止された。
  • FORK-X20
     ドッグファイトに譬えられる程の激しい位置取りが行われる対ガンシップ戦……つまり頻繁に回避を行う状況下で一定の火力を確保するためには、連射タイプよりも単射タイプの火器の方が使い勝手が良いと言われており、ミサイル分野においても、MLRAシリーズで使用されている小型の高機動ミサイルの一斉発射が研究された。
     当初は多弾頭ミサイルの新規開発が予定されていたが、戦闘の激化によって残された資源と時間は限られていた。出来上がったのは小型ミサイル20基を強化プラスチック製の簡易弾倉に納めたものであったが、ミサイルを横並びに装填した板型の簡易弾倉は円柱状に丸められてパッケージされており、ランチャーから投射された直後に展開し、ミサイルを一斉に水平状に撃ち出すことが可能である(この技術を転用して開発されたのがMLRA-TWである)。
     一度に面となって飛来することから命中率と瞬間火力の高さを期待されたが、使用される小型ミサイルの威力不足を補うには至らず、戦災の拡大によって小型ミサイルの大量生産も困難となったため、AタイプとXタイプの2種のみで開発は打ち切られた。
     なおホーク(Hawk:鷹)と誤認されがちだが、フォーク(Fork:分岐の意)が正式な名称である。

  • プロミネンスM2
     エメロードの威力強化型であるエアトータスの(速度の遅さに起因する)汎用性の低さに、EDF陸戦隊では「エメロードの正当な強化型」を欲する声が日増しに高まっていた。
     特に大口径プラズマランチャーを備えた砲戦型ヘクトルの登場によって自走砲などの長距離実弾砲兵器群の運用が困難となった後は、市街地や山岳部で障害物越しに正確な間接砲爆撃が可能な大型ミサイルが必要であった。
     グレネードランチャーの高性能化も進んではいたが、実効性が使用者の技量と経験に大きく左右される上、例えば高層ビルを挟んで位置するヘクトルを攻撃するなど、多用な状況に対応することは不可能であった(バウンド榴弾を用いたスプラッシュグレネードも開発されていたが、精密攻撃は望めず、自爆事故の危険性から使いこなせる者は限られていた)。
     開発された大型ミサイルPROMINENCE:M-1は、発射後5秒間は直進するように設定されており、垂直に打ち上げることで前述のように障害物越しに攻撃することが可能である。この仕様は、従来のミサイルのようにレーダーやGPS誘導装置などの高価な電子機器を用いず、簡素な赤外線画像認識とバイオセンサー(巨大生物のモーターセルやヘクトルの駆動装置が発する磁気パターンを信号化して認識する単純な装置)によって誘導されるEDF製ミサイルの戦術の幅を大きく広げることとなった。
     弾頭の大型化による速度低下をロケットの大型化と推進剤の増量という単純な方法で解決したため、コストは増大したが生産は容易であり、大戦末期においても他の小型ミサイルよりも優先して生産され、より威力を強化したM2型も開発された。
     
  • プロミネンスMA
     M1型の完成後に北米で研究されていた超大型ミサイルであり、M2型よりも遅れて完成した。M2型以上の大型化によってC70 爆弾を超える程の弾頭破壊力の大幅な強化と、射程距離の桁違いの長大化を達成している。
     このPROMINENCE-M-A(Ambition:野心)と命名されたミサイルは、カタログスペック上は成層圏まで到達可能な大陸間弾道ミサイルであり、大西洋を挟んでユーラシア大陸に存在する巣や女王体を北米から直接攻撃して撃破することを目的としていた。
     当初はギガンテスを改良した車輌からの発射を予定していたが、システムの複雑化を嫌ったEDF上層部は「個人で運用可能なように」と仕様を変更した。
    「すぐには無理だ」
     さすがのEDF兵器研究開発チームも苦言を呈したが、あくまでも“すぐには”という期限の問題に過ぎず、2週間後には発射実験が行われた。
     他のシリーズと変わらないサイズのランチャーを見て関係者は疑問符を顔に浮かべたが、発射の直後、それらは驚愕の表情に変わった。
     長さ1メートル強のランチャーから、10メートル近いミサイルが出現したのである(フォーリナーの空母型円盤の残骸から回収して研究、再現した空間圧縮装置を使用していると言われているが、詳細は不明である)。
     猛烈な噴煙を残して飛び去った超大型ミサイルは空の彼方に消えた後、巨大生物の感知圏外から高速で落下、着弾すると巨大な火球と化して全てを焼き尽くすため、巨大生物の群れに対する初期制圧兵器として優秀である。なお移動する女王体への命中率を高めるため、再突入後、終末誘導時に減速する仕様になっている。
     さすがに1基あたりのコストが高いため、生産数は少なく、大戦末期の北米と日本列島戦線で数える程しか使用されていない。
     また大戦後は大量破壊兵器拡散防止条約に基づき、EDFでも一部の部隊のみ配備され、厳重に管理されている。

グレネード

  • グレネードの概要
     古代のカタパルトの直系とも言える迫撃砲はシンプルな構造ながら高度に発達した兵器であり、各国の軍隊は初戦の巨大生物掃討戦で近接支援火力として多数の迫撃砲を投入した(巨大生物の大半が大都市に出現していたため、自走砲などの大火力では付随被害が大き過ぎると判断されたためである)。
     多くの戦場がそうだったが……最初の面制圧で、密集していた黒蟻型巨大生物の群れを粉砕することには成功した。だが、立ち込める粉塵から飛び出した無数の黒蟻は恐るべき速さで瞬く間に阻止線に接近、弾幕をもろともせず突進し、ライフルを乱射する兵士の胴を食い破り、あるいはそのまま踏み潰して後方の砲兵に殺到したのである。
     いかに迫撃砲が展開の容易な兵器であったとしても、尋常ならざる速さで突進し、数でもって全てを圧殺する巨大生物の――単純だが、それ故に強力な――戦術に対抗するには不向きであり、またEDF陸戦隊員用のアーマースーツなどの第二世代ボディスーツ(第一世代の通信機能など加え、より高い防弾性と人工筋繊維による強化機能を備えた多機能戦闘服であり、全身に人工筋繊維が編み込まれているため、跳躍力など使用者の筋力を飛躍的に向上させる)の投射能力をもってすれば手榴弾でも十分な射程を有したため、EDFでは迫撃砲は採用されなかった。
     一時はAFアサルトライフルにアンダーバレル・グレネードランチャーを装着することが検討されたが、各ライフルの開発者の反対により、AFアサルトライフルのパーツを流用したEDF独自のグレネードランチャーが開発された。

     EDF製手榴弾は破砕効果と焼夷効果を兼ね備えており、然るべき距離で起爆すれば巨大生物を確実に殺傷することができる。接触式と時限式の二つの起爆方式が存在するが、どちらも外見はかつての  マークII手榴弾に似ている。 
     安全ピンに続いて安全レバーを開放した後、接触式は手に持っている限り信頼性の高い機械的感圧装置によって起爆しないが、時限式は安全レバーが外れた時点で信管に点火されるため、速やかに投擲しなければならない。ちなみに時限式は警告用の着色煙を発する。
     
  • MG13
     事の発端は、2人の人物の映話での何気ない会話であった。

     EDF兵器研究開発チームの中でも特に「ネジが飛んでいる」と評判の研究員と、無茶な戦術指揮(とそれに応じる優秀な陸戦隊)が有名となりつつあった極東の某地域支部の司令官である。
     新兵器開発のヒントが得られるだろうとEDF上層部が特別に設けた機会だったが、突然映話を繋がれた当事者にとってはいい迷惑でしかなく、研究員の非社交性もあって、秘匿回線を伝わるのは沈黙のみであった。
     煙草を咥えたまま頬杖を着き、眠たそうな目で画面の外を見詰める女研究員の態度に、司令官は反抗期に入った一人娘のことを思い出さずにはいられなかった。こういう時はあれこれ口にせず、必要なことだけを言うのが一番だ――という悲しい経験則から、彼は「そう言えば」と口を開いた。
    「先日配備されたが、MG12もMG11からあまり威力が上がってないな」
     ネガティブな話題が適さないということは、未だ学んでいなかった。
     当然のように反応はないが、彼は続ける。
    「破壊力の向上を望む声は多い。どうにかできないものだろうか」
    「……」
    「ううむ…………お! そうだ!」
    「……?」
     重そうな瞼の下で、碧い瞳がちらりと動いた。
    「手榴弾を強化するのではなく、高威力の砲弾を手榴弾に改造してはどうだろう! それならすぐに……いや、しかし重過ぎて無――」
    「自走砲用の榴弾が余ってるから、やってみる」
    「え?」
     映話は切られた。
     司令官は傍らの女性オペレーターに「どういうことだ?」と尋ねたが、彼女も首を傾げる他になかった。

     数日後、数少ない輸送手段の一つである大陸間弾道輸送機(元々は月面開発のために試作された無人ロケットであり、再突入後に地表寸前で減速、分離されたカーゴユニットがエアバックを展開して着地する)で、極東の某支部に荷物が送られて来た。
     カーゴユニットに群がる赤蟻を掃討して陸戦隊が回収してきたのは、一つの木箱であった。「MG13」と印字されたその中には、幾つかのEDF製手榴弾が納められていた。
    「なんだ、普通の手榴弾じゃないですか」
    「やれやれ……本部宛ての荷物だと言うから期待したのに」

    「何個入ってるんだ? やけに重かったぞ」
    「まったく、これでは輸送費の無駄遣いも――うおおお!? なんじゃこりゃぁあ!!!
     何気なく手に取ろうとした陸戦隊員が驚愕の声をあげる。
    「重いッ! 重いぞぉ!!!」
    「おい、手紙が入ってるぞ」
    「どれどれ……お、日本語だな。しかも女の字だ」
    ・・・
     拝啓
     北半球は日々暑さが増し、蜘蛛型巨大生物の糸の粘度も18%ほど増す季節となりました。陸戦隊の皆様、如何お過ごしでしょうか。さて先日、映話にて伺ったご意見を参考にし、新兵器を開発しましたので送ります。
     MG13。
     戦前に私が試作していた203mm榴弾砲の砲弾を小型化した手榴弾で、火力評価測定ではMG12の5倍である2500と認められました。重量は110キログラムありますが、アーマースーツの筋力補強機能があれば投げられると思います。皆様のご武運をお祈りしております。
     草々

     追伸
     この手榴弾には新型の焼夷剤を使用しています。黒蟻や蜘蛛に対する殺傷効果を確認したいので、外皮のサンプルを必ず数日中に送ってください。
    ・・・
    ……また一つ、仕事が増えたな」
     手紙を丁寧に折りたたんで、赤いヘルメットの隊長が無感動に呟く。
     当然のことながら、スーツの補助があっても110キロの手榴弾をまともに扱える者はなく、送られてきた試作品はバゼラート戦闘ヘリのペイロードに固定され、爆弾として投下された。

  • MG29SJ
     外郭にバウンド素材を用いた特殊グレネードであり、投擲後10秒で爆発する。威力が高く、投げ方によってはビルなどの障害物の背後や通路状の洞窟の奥にいる巨大生物を攻撃可能なため、使用者によっては強力な武器となる(現在でもEDF基地近くの酒場に行けば、北米でレジスタンスに参加していた大リーグ選手など“魔球”で幾多の巨大生物を葬った猛者の逸話を聞くことができる)。
     当然のことながら、逆に練度の低い新兵が用いると深刻な自爆事故に繋がる危険性が高く、他のバウンド素材採用兵器と同じく使用は一部の熟練者に限定されている。

  • スプラッシュグレネードα
     FORKミサイルと同様の簡易弾倉にはMG29SJを小型化したバウンド・グレネード20発が格納されており、投射直後に開放されて前方広範囲にばら撒かれたバウンド・グレネードは跳ね回り、あらゆる方向に散って広範囲に被害を与える。
     問題は、その被害の中に味方が含まれることである。
     とくに市街地で使用した場合、いかなる熟練者であっても20発全ての行く先を予測することは困難であり、巨大生物との乱戦の最中ともなれば、なおさらである。
     そのため市街地での使用は制限されており(禁止はされていない)、主に巣の攻略において竪穴(大規模垂直昇降路)の制圧に用いられる。それでも自爆事故の危険性はゼロではなく、実際に一発のバウンド・グレネードが壁面の窪みに嵌まって跳ね返り、陸戦隊の周りを跳ね回った事例が報告されている。幸いグレネードは離脱して事なきを得たが、歴戦の猛者達も固唾を呑んで小さな悪魔の行方を目で追う他になく、生きた心地がしなかったと言われている。
     以上のことから当初より癖が強い局地戦用の武器と認識されていたが、日本列島戦線において、ある遊撃隊員(αというコードネーム以外、詳細は不明である)がガンシップへの対空戦闘に用いたことで、一部で有名となった。
     具体的は、開けた地形においてスプラッシュグレネードをほぼ直上に向けて発射、高所から落下したバウンド・グレネードは垂直に跳ね上がり、ガンシップの匍匐飛行高度で起爆――紅蓮の爆炎が一斉に咲き乱れ、ガンシップの大群を一網打尽にしたのである。対地攻撃において低空を飛ぶガンシップの習性を逆手に取った戦術であり、戦果を聞いたスプラッシュグレネードの開発者も目を丸くしたと言われている。

  • スティッキーグレネードα
     レンジャー隊のゲリラ戦やスカウト隊の威力偵察のために開発された高威力の特殊グレネードであり、蜘蛛型巨大生物の糸を分析・合成した粘着剤によって極めて高い吸着性を有している。
     様々な戦術に応用可能であり、例えば後退戦においては、巨大生物の猛攻によって仕掛け爆弾を設置できない状況であっても、充分な距離を保ったまま足止めのための爆発物を正確に設置することができる。
     他にも、市街地や山岳地においてパルス・ビーム・マシンガンやビームブラスターを有する突撃型ヘクトルと戦う場合に、ビルや丘陵などの障害物を盾として利用しながら後退しつつ障害物の影――つまりヘクトルの進行上に投射・設置することで、正面対決を避けながらダメージを与えることが可能である。
     なお巨大生物に対して使用する場合、巨大生物そのもの吸着させると接近によって爆発に巻き込まれる危険があるため、注意が必要である。

  • スタンピードXM
     巨大生物との戦いと、従来の人類間戦争との違いは、極言すれば戦況を制御できないという点に尽きる。奴らには季節も天候も、ラマダンもクリスマスも、昼夜さえ関係なく、教会も病院も学校も、文化財も区別せず、軍属と民間人で扱いが異なることもない。
     すなわち火山や地震などの自然災害に等しいのだ。故に巨大生物との戦いの場となった都市に対する付随被害の抑制は、各国政府はもちろん、EDFも断念せざるを得なかった。
     少なくても数百体、多ければ数万体の群で行動する巨大生物に対して、高価な精密誘導兵器の威力などタカが知れていた。
     核兵器全廃を心の底から後悔した軍人は、私だけではない筈だ。そうだろう?
     あの大戦に比べれば、それまで人類が行ってきた戦争など児戯に等しかった。ナチやコミュニスト、我々白色人種の蛮行でさえ、奴らの微塵の容赦もない徹底的な破壊の前には可愛らしいものだった。
     残忍なチャイニーズでさえ、黒蟻や蜘蛛の悪食さを目の当たりにして黄色い顔を青くしていた程だ。衛星から見た北京の惨状は酷いものだった。まぁ、中国の人口が10分の1以下に激減していたのは大戦後の食糧難を考えれば……。
     話を戻そう。
     とにかく、奴らとの戦いには道理も糞もなかった。
     我々が……私が欲していたのは、奴らを地獄に叩き込むための圧倒的な火力だけだった。そのためなら悪魔と取引してもいいと思った程だ。
     ……確かにそうだ。そういう意味で、スタンピードXMは実にいい武器だったと言える。
     ビルに難民が隠れていようが、瓦礫の下に子供が埋まっていようが、グレネード30発を一斉に撒き散らして圧倒的かつ徹底的な面制圧が可能だった。たった一人の兵士で、だ。ケチなクラスター爆弾ではない。高威力の爆裂焼夷榴弾が30発。手慣れていれば1分間で300発。弾薬があれば10分で3000発だ。
     難民キャンプや小さな町なら、瞬く間に一掃できた。
     誰が何と言おうと、巨大生物の殲滅にはあれが最も確実だったのだ。焦土戦術が。
     もちろん法廷でも同じことを言うつもりだ。
     良心の呵責はない。そもそも私の判断と行動について正邪を問うのは無意味だ。必要があったから、力を行使した。それ以上でも、それ以下でもない。その結果が絞首刑なら、甘んじて受けよう。
     私を批判し、私に後悔の念を抱かせることができるのは、一人だけだ。
     ストーム1。
     彼なら私よりも上手く、よりスマートに奴らを殺し尽くしただろう。
     彼こそが英雄だ。彼だけが……。
     
  • グレネードランチャーUMAX
     航空優勢を喪失した状態で、さらにガンシップや砲戦型ヘクトルが登場したことでMBTなどの戦闘車両の運用は困難となり、とくに即応性の低い大型自走砲や多連装ロケットシステムは戦場から姿を消すことになった。
     対策としてロケットランチャーやミサイルの高威力化が推進され、グレネードランチャーについても高性能化が研究された。
     UMシリーズの最終型であるAX(Assault-Experiment)は長射程と高精度を維持しつつ毎秒1発の連射性を実現、その優秀さから実験段階にも関わらず実戦に投入された。
     熟練者による投射と着弾点観測によって、巨大生物の知覚範囲外からの正確な長距離曲射砲撃が可能であり、山岳地の多い地域で活躍した。
     とくに日本列島戦線では、UMAXとスナイパーライフルを装備した陸戦隊員によって巨大生物の群が一方的に攻撃され、黒蟻の速力をもってしても近寄ることもできずに殲滅されたと言われている。  

特殊武器

  • 特殊武器の概要
     なぜEDFに勤めているのかと、未だに訊かれることがある。

     企業の方が環境も報酬もいいだろうと、面と向かって言われたことさえあった。
    「同じ技術なら、平和利用された方がいいと思うがね」
     その様に揶揄を含んだ問いも少なくはなかった。戦後だから、ではない。大戦の前から、そうだった。
     EDFは西暦2015年に“宇宙規模の有事”に備えて結成されたが、当時から世間の風当りは厳しいものだった。
     あの頃は大手メディアが――有象無象の商業主義者どもが、やがてやって来るフォーリナーを「思慮と博愛にあふれた賢者である」と根拠もなく宣伝し、それに沿った内容である「未知との遭遇」や「E.T.」といった20世紀のSF映画をリメイクし、商売に明け暮れていた。
     大衆もそれに流され、愛好家から蛇蠍のごとく嫌われたリメイク作品群は、世間一般では好評を博していた。
     そして同時に「インディペンデンス・デイ」や「プレデター」など彼らが言うところの“好戦的な映画”は批判され、映像ソフトを焼却する様子をパフォーマンスとして喧伝する輩が現れる始末だった(稚拙な二元論を振りかざしておきながら「2001年宇宙の旅」を無視したことに、つまり宇宙人は“友”ではあっても“神”であってはならないというところに、彼らの宗教的、あるいは心理的限界が見てとれたものだ)。
     そこには、ある種の狂気さえ漂っていたように思える。
     現実に目を向ければ、世界は文字通りの病巣と化していた。
     中国を中心として致命的となりつつあった自然環境の破壊。終わりなき民族衝突とそれに付け込んだ経済戦争。大国の中枢は多国籍企業の傀儡と化し、装いや飾りを変えるばかりで旧態依然としたままの経済原理は格差を拡大し続けていた。情報産業の発達は無知を救いようのない混沌へと陥れ、世界を征服した筈の民主主義とその政治体制は崩壊寸前だった。さらにエネルギーや食糧といった文明の根幹に関わる問題も、解決の糸口すら掴めないでいた。
     誰もが救済を、メシアの到来を待ち望んでいた。己が罪人であることを忘れ、その罪業にすら気付かない人々が、歩くことを止めて膝を着いて拝んでいた。
     ――救済を。
     ――人類に免罪を。有史以来の負債を全て……。
     そのような迷妄(無神論者の私でも、自らを省みず、利益を求めるだけのそれを祈りと呼ぶことは憚られる)に惑わされて現実から逃避する人々の目と耳にとって、EDFとそこに集った人々が発する冷厳とした意思はあまりにも眩しく、そして鋭かったのだろう。
    「War Dog!」
     火薬の臭いに狂った犬だと、戦士たちは罵られた。戦争病の末期患者。古い人類とも。
     確かに、太古から軍備は示威の根拠として政治の場で折衝に利用され、兵器は殺人と破壊のための効率を追求して進化し、使用されてきた。それは何のためだったのか。世界各地で幾度となく繰り返された虐殺と略奪の歴史は、しかし、それが全ての目的だったのだろうか。敵を殺し、異民族の女を犯し、文明を破壊する。その先に人間は何を求めていたのだろう。
     そして未知の相手と対等の立場で交渉の席に着くために、無礼は決して許さないという意思の顕れとして傍らに剣を置く。話し合うか、殺し合うか、その境界を定めた厳しい掟は、疑心暗鬼を捨てられない野蛮人の愚かしい習慣だったのだろうか。
     大戦前にEDFを否定していた人々の根拠は、好意的に表現しても「夢想」に過ぎなかった。曖昧で何の証しもない世迷い言に、己や血族の生命を預けられるだろうか。
     私には無理だ。今でも。
     EDF構想の真の意味を理解し、参加した人々は、虐殺も略奪も望んではいなかった。
     ただ、日々の平穏な暮らしを守りたいと願い、行動した。それだけだ。
     あの大戦で、我々は宇宙の現実を知った。
     人類が築いた文明は泡のように小さく脆いものであり、広大な宇宙は弱肉強食の原理が支配する荒野に過ぎないのだと。
     近年は、その荒野を征服し、ルールを敷かなければならないと主張する人々も少なくない。希少鉱物や石油といった資源のためではなく、自らの生命を守るために、である。それは地球上で繰り返してきた種族の内輪揉めとは違う、より厳しい生存競争と言うべきものだ。
     おそらく、遠からず人類は宇宙へと進出し、フォーリナー以外にも数多くの脅威と戦うだろう。正しいことなのか、それとも過ちなのか……それすら考える間もなく、戦い続けるだろう。
     その果てに、滅ぶことなく突き進んだ最果ての刻に至らなければ、我々は答えを知ることも、救済を得ることもできないのだろうか。
     それは……誰にも分からない。人間には知り得ないことなのだろう。
     あの男のように、歩み続けるしかないのだ。泣きごとを言わず、歯を食い縛って。
     そうするための意思と勇気を、あの男の――英雄の背中が教えてくれた。他にも多くの戦士たちが、命の灯をもって示してくれた。
     同じ人間として、EDFの旗の下で戦った者として、彼らを裏切ることはできない。
     私はEDF先進技術開発研究所で武器の開発に携わっている。私や同僚をマッドサイエンティストと呼ぶ者もいるが、誰が何と言おうと、これからも研究を続けるつもりだ。フォーリナーの再来に備えて、厳しい眼差しで宇宙を見詰める戦士たちがいる限り。
    ・・・
     2017年当時、政治的要因によってEDFの戦力は全世界でたった30万人余りであり、空軍の壊滅によって陸戦隊によるゲリラ戦を強いられたことで、人員不足は深刻な事態に陥った。
     第2世代アーマースーツに度重なる改良が施されようとも、巨大生物との戦いにおいては攻撃こそが最大の防御策であり、EDF上層部は限られた予算に悩まされながらも、より強力な武器を求め続けた。
     米国ロスアラモスのEDF先進技術開発研究所では既存装備の強化に加えて新兵器の開発も積極的に行われ、それまでの常識を覆す数々の試作兵器が生み出された。中には珍兵器としか言いようのない奇妙奇天烈な代物もあったが、多くは有効な装備として陸戦隊の活躍を後押しした。
     

  • アシッド・ショット 
     巨大生物の死骸は生物学者の知的好奇心を満たすばかりではなく、新しい“資源”としても価値のあるものだった。掃討作戦によって生じた膨大な数の死骸(環境の汚染など衛生上の問題があった)を効率的に処理できないかと試みられた資源化であったが、バウンド素材の実用化によるアーマーの強化や新兵器の開発など、予想以上の成果をもたらしたのである。
     黒蟻型巨大生物の強酸性体液の兵器利用も、その中の一つであった。
     当初は黒蟻への効果を疑問視する声(奴らは誤射を気にする様子がなく、実際に同胞から強酸液をかけられても平然としていたためである)もあったが、ある薬品の添加によって黒蟻の表皮をも溶かす強酸液が完成した。
     成分の変化に伴い赤から緑へと変色した強酸液はガンシップやヘクトルに対しても有効であり、高い指向性をもって噴射可能なアシッド兵器は改良を重ね、アサルトライフルの代用品として使える程の威力を有するに至った。
     この武器の最大の利点は、戦場において黒蟻や赤蟻の死骸から直接、強酸液の補給が可能ということである。方法も簡単であり、弾倉となるボトルに薬品を乾燥成型した錠剤を一つ入れ、噴射銃に装着、搾液モードに変更して巨大生物の腹部に突き刺すだけでよい。
     鉱物資源の不足によって実弾が貴重となった地域では代用装備として活躍しており、一気に噴射するショットガンタイプも存在する。
     なお白色の錠剤は人体に有害であり、EDF戦闘食のBタイプ(内容は真空パックされた植物性合成タンパク質のハンバーガーとチキンナゲット、ポテトスナック、ニンジンを使ったアップルパイ風の菓子、粉末ジュースである)の粉末コーク用の発泡剤に酷似しているため、誤飲しないよう注意が必要である。

  • バーナー
     民間でも農業や除雪に用いられる火炎放射器であるが、軍用装備としては「著しい苦痛と悲惨な死を撒き散らす忌むべき武器」として一部で非難の対象となっており、国によってはゲリラ攻撃への牽制として茂みを焼き払うといった工兵任務や、病原媒介物を焼却する衛生処理に使用が限定されていた。

     EDFも世論への配慮から採用を見送っていたが、開戦直後の、
    「化物を相手にする時の得物と言えば火炎放射器だ!」
     というEDF上層部からの通達に従い、採用が決定した。ただしフォーリナーの大攻勢による混乱のため採用トライアルは実施されず、北米総司令部直轄のEDF先進技術開発研究所での独自開発となった。
     火炎放射器自体は技術的には成熟しており、開発に支障はないと思われたが……予想外の問題が発覚した。全ての研究チームがライフルなど既存兵器の強化作業に没頭しており、どこも引き受けようとしなかったのである。
     突き返された仕様書を前に、担当の女性士官は「Oh……」と呟いて肩を竦めた。アメリカ統合軍(EDF発足に伴い各国との安全保障条約を解消したアメリカは2016年に全軍の再編制を行った。これは世界各国に駐留していた戦力をEDFの各方面軍に提供したことで従来の管轄地域別の編制が消滅し――各方面軍内の米軍人員を通じてアメリカがEDF内部に独自の組織網を構築しようとしていた事についての是非は、この場では語らないことにする――合わせて機能別の編制も最適化する必要が生じたためである。これによって陸軍、海軍、空軍、さらに2012年に海兵隊と沿岸警備隊の統合によって誕生していた即応軍、一時的に独自組織となっていた宇宙軍、核兵器の破棄によって空軍と海軍に分割吸収されようとしていた戦略軍が加わり、従来の体制的意味ではない完全な統合軍が誕生した。なお戦闘の激化によって後に米国本土防衛軍に名称を変更している)から出向して来た彼女は、爆撃機のノーズアートに描かれていそうな容姿の持ち主であったが、実務に長けた人物でもあった。
     彼女は休憩中だった研究員から“差し出された”火炎放射器の試作モデルを持って総司令部に帰還し、格納庫へ出向いて整備班から“プレゼントされた”ガスバーナーを火炎放射器に組み込んでもらって、各部署で数人の担当者に会った後、上司に提出した。
     突然、完成品を目の前に置かれた上司は書類に目を通したが、まったく不備はなかった。
    「Mister……」
     赤い唇が囁く。
    「OK?」
    「No problem!」
     おそらく現代兵器史上、最も短期間で実戦配備が決まった瞬間である。
     その火炎放射器はそのまま工廠の自動組み立てラインに送られてスキャンされ、生産された初期ロット品は各地のEDF陸戦隊に最新鋭装備として支給された。
    「やけに……軽いな」
     手に取って最初の感想が、それであった。
     誰もが「まさか」と思いながらも「いやぁ新技術はすごいな」と希望にすがり。
     誰もが「もしや」と思いながらも「本部が確認した筈だよな」と救いを求めた。
     世界各地で、この火炎放射器を装備した兵士の全員が、トリガーを引いた後に叫んだ。
     心の底から。
     なんだ、これは、と。

     噴射口の先端から出た炎は不完全燃焼らしく低温のオレンジ色で、僅か十数センチにも満たなかったのである。
    「火力が予想と違いすぎる!」
     故障か――罠か――考える間もなく兵士たちは火炎放射器を投げ捨て、確信に近い予感に従って用意しておいたサブウェポンで戦った。
    「本部! 思った通り劣勢だ……! このままではまずい!」
    「よく聞こえないぞ。繰り返せ!」
    「状況不利! 撤退の許可を!」
    「通信機の不調とは……なんということだ!」
    「畜生! 本部にやられた!」
     通信記録を聞くに、少なくとも戦意は燃えあがっていたように思われる。
     彼らが命からがら退却して火炎放射器を分解したところ、タンクの大部分は空洞であり、中に組み込まれていたのは一本の細いボンベであった。しかも軍用ガスバーナーではなく、おそらくは北米総司令部の整備班がバーベキュー用(大戦の初期においては、資産である家畜が巨大生物の餌となること嫌った畜産家によって大量の食肉が出荷されており、穀物や野菜に比べて容易に手に入ったと言われている)に購入していた市販のガスバーナーだったと思われる。
     当然、各地の陸戦隊からは猛烈な抗議が殺到して内部調査も行われたが、処分に抵触する人員が多岐に渡ったため、EDF北米総司令部は自動組み立てラインにおける「事故」という結果を発表。火炎砲の速やかな開発によって事態の収拾を図ろうとした。

     
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