大沢啓二とは (オオサワケイジとは) [単語記事]

大沢啓二とは、日本中から愛された親分である。

概要

1956年、立教大学から南海ホークスに入団。大学の2年後輩に長嶋茂雄と杉浦忠がいた（南海は大沢を通じて栄養費を渡していた）。
プロでは外野手として頭脳的な守備で鳴らし、「打者の打球傾向ごとに守備位置を変える」というプレーを日本プロ野球に広めた。59年、杉浦の4連投4連勝で巨人を破った日本シリーズではその好守で巨人の攻撃を断ち切り、影のMVPとも言われた。だが年々出場機会は減少し、64年シーズン終了後にスカウト転身を打診され拒否し、東京オリオンズに移籍。65年限りで現役を退いた。

引退後はオリオンズの打撃コーチに就任し、球団名がロッテ・オリオンズとなった69年（正式な球団譲渡は71年）からは二軍監督に就任する。71年7月24日に濃人渉監督との交換（放棄試合が原因）で一軍監督に就任し、2位の成績を守り抜いてその年のオフに5年間の長期契約を結んだ。オフには同年の首位打者江藤慎一らを放出する大型トレードを断行したが投手陣が崩壊し、5位に低迷した72年限りで解任された。

その後は解説者となるが、76年より日本ハムファイターズの監督として招聘される。日本ハムは前身球団である東映フライヤーズの色を消そうとしており、初年度（74年）終了後には張本勲を除く主力打者（大杉勝男ら）を放出していた。大沢は張本残留を監督就任の条件としていたが、大社義規オーナーの説得を受け入れて放出に同意。巨人の長嶋茂雄監督との直談判で高橋一三投手＋富田勝内野手を交換要員として獲得した。

主力打者放出による戦力の低下に苦しんだが、島田誠、古屋英夫ら若手や南海から獲得した柏原純一の成長、クルーズ、ソレイタといった大型外国人選手の獲得で得点力を伸ばし、81年には広島東洋カープから獲得した江夏豊の活躍もあってファイターズとしての初優勝を果たした。83年シーズン終了後に、3年目から6年連続Aクラスという好成績を残して勇退した。

ところが、大沢の推挙で84年から監督に就任した植村義信が成績不振を理由に突如辞任してしまう。大沢は責任を取る形で後任監督に就任し、シーズン終了まで務めて退任した。

この後の日ハムは高田繁（85～88年）、近藤貞雄（89～91年）が監督を務めるが、92年より監督に就任した土橋正幸が選手との関係悪化を理由にわずか一年で解任され、球団常務の座にあった大沢が三度監督を務める事態となった。前年故障で欠場した田中幸雄の復帰や広瀬哲朗の抜擢などで93年は2位に躍進するが、翌94年は投手陣が崩壊して最下位に転落、今度こそ本当にユニフォーム脱いだ。シーズン最終戦の東京ドームのマウンドでの土下座は大きな話題となった。
なお、日本ハムにおいて背番号86を背負ったのは後にも先にも大沢ただひとりである。

監督時代は通算7回の退場記録（マーティ・レオ・ブラウンに抜かれるまでの最多記録）を持つ。べらんめえ口調とどう見てもそのスジの人な風貌（と、退団した選手の就職先を見つける面倒見の良さ）から「親分」と呼ばれた。

日本ハム監督退任後はフリーの評論家、解説者などを務めた。近年はTBSの「サンデーモーニング」にて張本勲とともに球界の御意見番として出演。「喝！」で親しまれていた。

2010年10月7日、胆嚢癌により死去。享年78。大沢親分亡き後、その席にレギュラー解説者は置かれず、各スポーツ界の解説者が助っ人として座っている。もういないと思うと悲しいかもしれない。しかし実は親分が亡くなって以後、毎週出てくるフリップの「あんな事こんな事」は親分の書いた字が使用されており、今でもスタッフから愛され続けている。