日本人のための芸術祭 あいちトリカエナハーレ2019 「表現の自由展」とは、2019年10月27日に愛知県女性総合センター「ウィルあいち」で開かれた、表現の自由をテーマにした芸術祭である。
政治団体「日本第一党」がこのイベントを主催した。この「日本第一党」は、かつて「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会長を務めており、「行動する保守」運動などを行っている「桜井誠」氏が党首を務めている。
2019年度のあいちトリエンナーレで開かれていた「表現の不自由展・その後」に対する意趣返しを行うことを目的の一つにしているとみられる。「表現の不自由展・その後」では、天皇の肖像をコラージュとして使用した芸術作品が焼却されるシーンが含まれる映像作品「遠近を抱えてPartII」や、韓国の従軍慰安婦を題材とした像「平和の少女像」などの展示内容が物議を醸した。詳細は「表現の不自由展・その後」の記事中「特に批判を集めた展示」の節を参照されたい。
これらの展示内容について「日本人に対するヘイトスピーチ」ではないかとの批判が主に右派から上がっていた。ただし、「表現の不自由展・その後」の展示物の作者らはヘイトの意図は否定している。
しかし、作者らの主張はともかく上記のような展示は「ヘイトスピーチ」であると見なす立場からは、普段は「ヘイトスピーチ」を批判しながらも上記のような「表現の不自由展・その後」の展示内容を擁護する左派が「偽善的」「ダブルスタンダード」であると映った。
その観点に基づく主張を行う目的で、「日本第一党」は右派にとっての「表現の自由展」を開催することを計画したとみられる。そのため「日本人のための芸術祭」では、以下に挙げるように「犯罪はいつも朝鮮人」と記されたカルタなど、いわゆる典型的な「ヘイトスピーチ」としてイメージされるような非常に挑発的なメッセージを刻んだ作品も含まれていたという。
開催期間が短かったことや、詳細な内容を伝えるニュースが少なかったこと、またこのイベント独自の公式サイトも存在しないことから、「表現の不自由展・その後」と比べて展示内容の具体的な情報に乏しい。
本邦においては、民族や性別を理由に差別的な言説を述べるいわゆるヘイトスピーチに罰則は科されていない。
日本が1995年に加入した「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(いわゆる「人種差別撤廃条約」)の理念に基づいて2016年に公布されたいわゆる「ヘイトスピーチ解消法」(正式名称「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)では「このような不当な差別的言動は許されないことを宣言する」[2]と謳われてはいるが、これは国民や国や地方公共団体にヘイトスピーチの解消に取り組むよう促すものであり、ヘイトスピーチの主体に罰則を規定するものではない。
東京都や大阪市など幾つかの地方公共団体は反ヘイトスピーチを目的とした条例を制定しているが、こちらも氏名の公表などにとどまり、それ以上の罰則規定はない。
これはヘイトスピーチを許容するためのものではなく、表現の自由との兼ね合いが懸念されるためである。「欧米ではヘイトスピーチが禁止されている」と言われることもあるが、こういった状況にあるのは日本だけではなく、「ヘイトクライム」には厳しいアメリカ合衆国も同様に、表現の自由を定めた憲法との整合性を重要視してヘイトスピーチ自体を犯罪として規制することには慎重な態度を取っている。
アメリカ合衆国連邦最高裁判所は表現の自由を重んじる長い伝統があり、ブランデンバーグ対オハイオ州事件(1969年)、R.A.V.対セントポール市事件(1992年)などでヘイトスピーチを規制する法律に対して違憲無効判決を出している。直近の判例でも、2017年に下されたマタル対タム事件において、ヘイトスピーチは罪に問えず、それどころかヘイトスピーチを正式な商標にすることさえ出来ることが連邦最高裁判所によって再確認された。
一方、ヨーロッパでは様相がまた異なり、ドイツの「民衆扇動罪」(Volksverhetzung)など、反ヘイトスピーチを目的とした法律に懲役を含む罰則規定を設けている国もある。
「表現の不自由展・その後」を含む「あいちトリエンナーレ2019」が開催された愛知県の知事であり運営にも関わっていた愛知県知事の「大村秀章」氏は、「日本人のための芸術祭」の上記のような展示内容に対し、「内容からして明確にヘイトに当たると言わざるを得ない」と記者会見にてコメントした[3]。
この記者会見によると、会場の愛知県女性総合センター「ウィルあいち」を含む県の各施設の利用要領には「不当な差別的言動が行われるおそれ」がある場合には利用を不許可とする条項があるものの、施設側の事前の確認に対し開催団体が「ヘイトスピーチは行わない」と答えたため、県が施設使用を許可していたとのこと。そのため開催団体への法的措置も視野に対応を考える方針と話した。
この大村秀章氏の反応に対しては、「「表現の不自由展・その後」の展示内容も日本に対するヘイトスピーチだった」と考える人々からは「ダブルスタンダードである」と激しい批判が殺到した。
こういった批判に対して、「表現の不自由展・その後」で芸術監督を務めていた津田大介氏は「表現の不自由展・その後」の展示作品が作品意図などからしてヘイトスピーチにはあたらなかったと主張し、ダブルスタンダードではないとして大村知事の見解を擁護したともいう。
またこれとは一風変わった主張として、上記のような日本のヘイトスピーチ関連法法規やアメリカの法律上で罰則規定が無いことに注目し「たとえヘイトスピーチだったとしても表現の自由の観点から容認すべきだ」といった言説もなされた。要するに「仮に「表現の不自由展・その後」が日本人へのヘイトスピーチであっても容認するべきであるが、逆に「日本人のための芸術祭」で朝鮮人へのヘイトスピーチがあったとしても容認するべきである」ということになる。ただしこの言説は「人種差別撤廃条約」や「ヘイトスピーチ解消法」の理念とは矛盾が生じるものでもある。
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最終更新:2025/12/14(日) 22:00
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