橋とは、人や物が交差物・障害物を乗り越えるための建造物である。橋梁(きょうりょう)とも呼ばれる。乗り越える対象となるのは主に川・海・湖・道路・線路などであるが、谷状の地形をショートカットする目的で建造されることもある。
古来より、「こと座のベガ星に恋するわし座のアルタイル星」や「向こう岸の竜の魔王を倒したい伝説の勇者の血を引く青年」などが川や海を渡れずぐぬぬ状態であったが、不思議な力を駆使して橋を架けることに成功し、己の野望を達成したと言われている。また、「サメを騙して海を渡ろうとして酷い目に逢った兎の逸話」や「愛の力で海を泳いで渡ったはいいが映画化までに相手の犬が死んでしまい撮影のためだけにやっぱり泳いで海を渡ってしまった犬の悲劇」など、橋が無かったことだけに起因する悲劇も数え上げれば枚挙に暇が無い。
そう、世間にはとかく障害物が多いものなのである。目的地までまっすぐたどり着ければ楽なのに、さまざまな阻害要因が我々の往来を邪魔しようとする。そのような困難に立ち向かうべく人類が発明した「会いたい」をカタチにしたもの、それが橋である。つまり橋は愛であると言うことができる。
この世で唯一「愛」を具現化した存在であるといっても過言でない橋であるが、当然そのフォルムは美しさに溢れている。いや、正確には「愛であるがゆえに美しくなった」と言うべきであろう。
水害や地震で簡単に壊れてしまったり、耐用年数が短かったり、建設にお金や時間がかかりすぎてしまっては、とても愛を語ることなどできはしない。古来より人類はそう考え、多大な努力を橋のために捧げ、物理学という学問を発展させた。物理学の発展により、橋を造る技術は飛躍的に向上したのである。
優れた橋は力学的なアプローチがそのまま構造に表れるため、きわめてシンプルな幾何学模様と重なることが多い。シンプルな幾何学模様は美しい。故に、橋には「優れた設計のものほど美しい」という基本的な法則がある。また、優れた橋は「その橋を造った人物が何を目的としたのか」がひと目で分かるデザインとなりやすい。これも橋の美しさを知る重要な手がかりと言うことができる。
このように、橋を知ることで我々は本当の愛を知ることができる。残念ながら、そのことを知っている者は決して多くないのが実情ではある。しかし、本当の愛を知るため、日本中・世界中の橋を追い求める探求者はまあそれなりにぼちぼちちょこっと気持ち程度は存在している。
ところで、あなたは「レインボーブリッジはなぜ吊り橋なのか」を考えたことがあるだろうか?レインボーブリッジの東側の長いスロープ・西側のループ、橋桁のトラス構造、わりかし低めの主塔、これら全てにちゃんとした意味があることをご存知だろうか?
橋について学ぶと、レインボーブリッジがなぜあのデザインとなったのかが理解できるようになる。すると他の橋についても見え方が変わる。この橋はなぜこの形なのか、この形によって掛け渡される愛は何であるのか。このような見方ができるようになれば、あなたの退屈な生活は一変するであろう。
我々橋の探求者は、あなたが愛に目覚める日を待ち望んでいる。
川や海、湖などを渡ることを目的としない橋を陸橋と呼ぶ。なお、川などを渡ることを目的とした橋について特別な呼称は特に存在しない。
道路を越える目的の橋のこと。もっともポピュラーなものは横断歩道橋であろう。
線路を越える目的の橋のこと。鉄道マニアには絶好の撮影ポイントとなることが多い。
地上に連続して架けられた橋のこと。特定の道路や線路を越えるためではなく、交差点や踏切の数を少なくすることを主な目的とすることが多い。地域の断絶を防ぐ効果もある他、騒音・振動対策としても有効。
主に自動車用の道路を渡すことを目的とした橋。
鉄道を走らせるための橋。無道床のデッキガーダー橋など鉄道橋特有の構造も見られる。鉄道道路併用橋と呼ばれる鉄道橋と道路橋の両方を合わせたものも存在する。
水道が橋の上を通るもの。日本でよく見られる水道管だけが渡されたものを水管橋と呼んだりもする。ちなみに世界最大の吊り橋である明石海峡大橋は世界最長の水道橋でもある。
水路を渡すためのもの。特に運河を通すものを運河橋と呼ぶことがある。橋の上を船が通る様は圧巻。
橋脚と橋桁で構成される、もっとも標準的な機構の橋である。曲げモーメントによる応力が大きいため支間(橋脚の間の長さ)を大きくすることが難しく、橋脚が多くなってしまうことが多い。大きな船舶が下をくぐることのないような、幅の広い河川などによく架けられる。道路橋の場合、橋桁の支えである「支承(ししょう)」の上部の路面に伸縮対策のしくみがなされていることが多く、車で通行すると「ゴトンゴトン」と音がする。
力学的な工夫の余地はあまりない(というより工夫を施したものがトラス橋だったりアーチ橋だったりする)ため、構造的な見所は少ない。せいぜい支間(橋脚と橋脚の間の距離のこと)を長くするために橋桁の中央を薄くする程度である。非常にシンプルなスタイルであることもあり、欄干や街頭の美しさを語るにはもってこいの橋でもある。
橋脚と橋桁が完全に一体化している橋のこと、と考えて差し支えない。コンクリートで作られることが多い。桁橋が「橋脚を作って橋桁を乗せたもの」なのに対し、ラーメン橋は「ウルトラマンよりも大きな巨人がコンクリートでおもちゃの橋を作り、川の上に置いたもの」のような特性をもつと考えてほしい。剛性が強く地震などに強いと言われている。物理特性は桁橋と大きくは変わらないが、橋脚を斜めにしたり橋桁にヒンジを使用するなどの工夫ができ、構造によっては支間距離が200mを超えるような大きな橋を造ることも可能である。
山間部の高速道路を越えるための連絡路として採用されている例が多い(桁橋も多いが)。橋脚が斜めだったりVの字だったりするとマニアは「ほう・・・」と満足げな顔を浮かべる。また、支間が極端に広いラーメン橋を見ただけで突然指をさして笑い出したりすることもある。
なお、ラーメンはドイツ語で鋼節骨組という意味であり、おなかを空かせる必要はない。
トラス構造を橋桁に利用したもの。トラス構造とは三角形を基本単位とし、その組み合わせで構成される構造である。三角形を基本構造としているため、変形に強い。また、三角形の各辺はピン接合(つまり各接点で各辺が自由に回転できるということ)であると考える場合、各辺には圧縮・引張力のみがはたらくことから、力学的にも強度が保障されている(実際には剛接合されることが多いためこの限りではない)。単純な桁橋よりも支間を長くとることができる利点がある。
よく分からないという人はダンボールを思い出してほしい。ダンボールの断面構造こそ一番身近なトラス構造である。トラス橋がダンボールでできているわけではない。
トラス橋には種類が多く、大阪の港大橋に代表されるカンチレバートラスなどという馬鹿デカいものもある。トラス橋は特に鉄道橋などでおなじみの橋であり、標準的なものはあまり橋マニアには好まれないが、ただの桁橋の橋桁の下をトラス補強した安っぽい上路トラスなどを見るとニヤニヤできたりする。鉄道模型Nゲージなどで下路トラス鉄橋製品を上路トラスに改造して使うなどは日常茶飯事である。
なお、吊り橋などの橋桁にトラスが使われることもあるが、この場合はトラス橋と呼ぶことは少ない。また、旧余部橋梁のように橋脚のみがトラス構造である場合もトラス橋と呼ぶことはない。
アーチ構造を基本とした橋。アーチ構造を形成することで曲げモーメントを小さく、圧縮力を大きくすることができる。支間を長くするための基本的なアプローチであり、形状もいろいろなものが存在する。
もっとも理解しやすいのは、錦帯橋に代表されるような橋桁そのものがアーチを描いているものである。日本以外でも伝統的な橋梁技術によく見られる形である(ただし、一般的に錦帯橋のような複数の橋脚をもつものは桁橋に分類することが多い)。現代では橋桁自体がアーチ状でないものが一般的である。橋の下部にアーチ状のアーチリブをもつ上路アーチや、橋の上部にアーチ構造をもつ下路アーチ、トラス構造を有するブレースドリブアーチなどがある。
長大な支間に虹を架けたような雄大なアーチ橋は景観にも優れ、それ自体が観光名所となることもある。水面上に上路アーチが2つ並ぶとメガネ橋などと呼ばれることも。トラスを有する下路アーチなどは、素人にはトラス橋と勘違いされてしまうケースが多いが(それが間違っているわけではないが)、アーチを中心とした吊り下げ型の力学バランスをとっていることは理解しておきたいところである。
支間を長くしたい場合の決定的な手法。メインケーブルと呼ばれる丈夫なケーブルを2点間に垂らすようにつなげ、その引張応力で橋桁を支える構造となっている。特に長大な吊り橋の場合は、メインケーブルの支点に主塔と呼ばれる巨大な塔とアンカレイジなどと呼ばれる巨大な重りを用いる。橋桁の保持にはハンガーロープと呼ばれるケーブルをメインケーブルから垂直に降ろすことが多い。メインケーブルとハンガーロープの接合をピンとすることにより、橋全体の応力をほぼ全てメインケーブルの引張力に変換できるところが最大のポイントである。このため、他の方式では到底不可能な1キロ以上にも及ぶ支間距離を確保することが可能である。
吊り橋はマニアでなくとも憧れる橋界隈の大スターであり、大きいものもボロいものも愛されやすい傾向にある。吊り橋構造の素晴らしさに感極まってドキドキしてしまい、一緒にいる異性に恋しているとうっかり勘違いしてしまう「吊り橋理論」なるものがその象徴といえるだろう。
吊り橋は特に「橋脚を作ることができない(難しい)」「橋の下を大きな船がくぐるため橋桁を高くする必要がある」このどちらかのケースに該当し、かつ橋を長くする必要がある場合に選択されることが多い。マニアは巨大な吊り橋を見ると、その橋がデザインされた経緯について悶々と妄想をはじめるものである。余談であるが、筆者は巨大なアンカレイジを見るだけで性的興奮をおぼえる。
吊り橋の一種とも、また吊り橋の構造を簡素化したともいえる橋。メインケーブルを廃し、塔から直接ケーブルで橋桁を支える構造である。このためケーブルは斜めに配置される。吊り橋ほどではないが、500mクラスの支間距離を実現でき、かつ(支間距離に対して)塔の高さも抑えられることが特徴。塔の数は何本であっても構わないところもポイント。ケーブルの張り方として放射型・ファン型・ハープ型などがある。
近年の日本では一大勢力になっており、大小さまざまな斜張橋が登場している。もはや食傷気味とも言えるが、それでも好きなんだから仕方がない。ハープ型が一番美しいという意見に賛同しつつも、並行でないケーブルを間近で見てファン型もいいなあなどとハアハア息を荒げたりする。最近はデザインの凝ったものも増えてきている。
見た目は「塔の低い斜張橋」であるが、特性的には桁橋に近い。斜張橋よりも支間がさらに短くなるが、ケーブルの疲労強度が大きく、コストダウンをはかりやすい。支間距離200m程度までであれば斜張橋よりコスト的に有利になると言われている。これは斜張橋と比較して橋脚が多くなることを意味するが、橋桁を高くする必要がないのであれば塔の高さも大幅に抑えることができ、コストにも景観にも有利に働く可能性が高い。
現在もっともホットな橋の一つであり、さまざまな応用技巧が吟味・実行されている。撮り鉄の聖地、余部橋梁の新しい橋にも採用され、鉄道ファンにも認知されるようになった。今後、特に河川や湖水の横断橋としての採用が進むであろう。わくわく。
日本は島国で、雨も多いことから川も多く、古来より多くの橋が架けられてきた。また、地震大国・台風天国でもあることから、架橋技術は世界でも有数のものとなっている。世界最大の吊り橋である明石海峡大橋をはじめとして、巨大で壊れにくい橋を量産している。日本の建築業界そのものに言えることであるが、リフトアップ工法やスライド工法などユニークで効率的な建築方法にも定評がある。
ただし、橋マニアからすると「日本の橋は地味」とする声もある。そもそも日本は国土が狭いため、ダイナミックな橋を造る必然性に乏しいという理由もあるが、海外の橋の大胆なデザイン、シンプルでないデザインにも学ぶものはあるだろう。また、海外の橋の建設に日本の技術が使われることが多々あることも忘れないようにしたい。
オススメの橋があれば追記をお願いしたい。
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最終更新:2025/12/22(月) 20:00
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