浦和レッズ・埼玉スタジアム2002指定管理者非指名問題 単語

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浦和レッズ・埼玉スタジアム2002指定管理者非指名問題とは、2020年度から埼玉スタジアム2002の管理運営に初めて参画した浦和レッズが、任期満了に伴う次期(2025年度から)の指定管理者選定において非指名(落選)となった問題である。

概要

2023年10月13日、埼玉県は埼玉スタジアム2002公園の次期指定管理者(指定期間:2025年4月1日~2030年3月31日)の候補に、公益財団法人埼玉県公園緑地協会を代表企業とする共同事業体「埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク」を選定したことを発表した。
この結果、現行(2020年度~2024年度)の指定管理者の構成団体であり、今回の募集に新たな事業体で応募していた浦和レッドダイヤモンズ株式会社は、2025年度からの指定管理業務から外れることとなった。

経緯

埼玉スタジアムでは2020年度に初めて指定管理者制度が導入され、浦和レッズは「埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク」の構成団体として、クラブ史上初めて公式にスタジアムの管理運営に携わった。

【2020年度~2024年度の体制(初代指定管理者)】

  • 指定管理者名: 埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク
  • 代表法人: 公益財団法人埼玉県公園緑地協会
  • 構成法人: 浦和レッドダイヤモンズ(株)、埼玉ビルメンテナンス協同組合、(一社)埼玉県造園業協会

この5年間の任期満了を前に、次期(2025年度から)の指定管理者選定が行われた。浦和レッズは、この期間の経験を踏まえ、それまでの「埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク」とは袂を分かち、主体的な運営を目指して独自に応募した。しかし審査の結果、浦和レッズ側は選定されず、現行の代表法人である埼玉県公園緑地協会らのグループが引き続き選定されるに至った。

浦和レッズの声明

今回の非指名という結果を受け、浦和レッズはクラブ公式サイトを通じて声明を発表。「この様な結果となり大変遺憾に存じております」と、率直な思いを表明した。

声明文では、2020年度からの指定管理者としての取り組みを振り返っている。

【主な取り組み事例】

  • 埼スタトイレ向上プロジェクト:来場者アンケートを基に計38ヶ所のトイレを改修。
  • LEDリボンボード設置:バックスタンド壁面に動画看板を設置し、事業性を向上。
  • 飲食の充実:「埼スタカレープロジェクト」や「埼スタ横丁」など地産地消や地域連携を推進。
  • 非試合日の賑わい創出:「パンのフェス」やクリスマスイベントなどを開催。

非指名の理由(クラブ側の分析)

浦和レッズは声明の中で、指定管理者であった期間の課題についても言及しており、これが非指名に繋がった要因であるとクラブ側が分析していることが読み取れる。

【クラブが挙げた主な課題】

  1. 収益目標の未達:
    新型コロナウイルス感染症拡大の影響で試合やイベントの開催が制限され、目標として設定した収益額を確保することができなかった。
  2. 構成団体との連携不足:
    現行の指定管理者を構成する4団体間での連携について、「団体ごとの方針や価値観の隔たりが大きく」「相乗効果という点においては十分な成果を出すことができなかった」と吐露。内部での意思疎通が円滑でなかったことを示唆した。

非指名の理由(埼玉県側の審査結果)

埼玉県が公開した選定結果に関する資料では、応募した2つの団体の評価点や、選定委員からの意見が示されている。審査結果は以下の通りであった。

【審査結果(1次・2次審査合計:135点満点)】

  • 浦和レッズ側: 110.4点
  • 公園緑地協会側: 113.9点

僅差ではあるが、浦和レッズ側の提案は評価点で及ばなかった。資料から、選定された公園緑地協会側の提案が評価された点と、浦和レッズ側の提案に対する懸念点が読み取れる。

【選定された公園緑地協会側の評価ポイント】

  • 音楽ライブ(コンサート)でのスタジアム利用や、オリジナルグッズ販売など、新たな収益源確保に向けた具体的な提案。
  • 長年にわたる公園管理運営実績があり、安定した管理運営が期待できる点。

【浦和レッズ側への主な意見・懸念点】

  • 「管理運営にあたり、使用者・利用者に対して公平な対応が確立されているのか、指定管理者と利用者が明確に区分できているとは言い難い」という指摘があった。これは、浦和レッズ自身が最大の利用者(テナント)でもあるため、他の利用者との公平性に懸念が示されたものとみられる。

これらの審査結果から、埼玉県側は浦和レッズの当事者性(最大の利用者であること)をリスクと捉え、より中立的で多角的な収益事業を提案した公園緑地協会側を評価した、という構図が浮かび上がる。

各所の反応

この決定は、クラブやサポーターのみならず、サッカー関係者や地方議会などにも波紋を広げた。

サポーターの反応
SNSなどでは、「最大の利用者であるレッズが運営から外れるのはおかしい」「ピッチコンディションが悪化しないか心配」といった、県の決定に対する不満や今後のスタジアム運営への不安の声が多数上がった。

サッカー関係者の反応
サンフレッチェ広島の元社長など、他クラブの関係者からも「理解できない」といった疑問の声が上がった。特に、クラブが指定管理者となって成功を収めているとサッカー関係者が考えているエディオンピースウイング広島の事例と比較し、埼玉県の決定を批判的に見る向きも多い。

諸井真英県議の指摘と論点

一部の埼玉県議会議員からは、県の選定プロセスや公園緑地協会の管理能力に疑問を呈する声が上がった。特に諸井真英県議はSNSで積極的に発信し、県の決定を強く批判している。

問題点は色々あるが、水着撮影会やクルド祭りの対応を見る限り、公園緑地協会が管理者としては全く相応しいとは思えない。

浦和レッズに問題がないわけではないが、最終的には浦和レッズが管理者となるのがレッズにとってもファンにとっても埼玉県にとってもプラスとなることが明らか。
しかし公園緑地協会の既得権を優先した結果浦和レッズを管理者から排除することとなった。

埼玉県のスタンスとすると埼スタは浦和レッズのためだけにあるわけではないそうだが、6万収容の埼スタをコンスタントに埋めることができるのは浦和レッズ以外ない。
この姿勢を続ければ将来的には日本ハムと札幌ドームとの間に起きたようなことになる可能性も懸念している。


諸井真英/Masahide Moroi (@moronojapan) 2025年1月8日 20:48のTweet , 2025/01/13閲覧

諸井県議の主張は、①選定された公園緑地協会の管理能力への疑問、②県の決定が既得権益を優先した結果であるという批判、③札幌ドーム化への懸念、という3点に集約される。これは「浦和レッズが指定管理者であるべき」という立場の主要な論拠となっている。

諸井真英県議の主張への批判的考察

諸井県議の主張は「レッズが選ばれるべき」という意見の代表的なものだが、その論拠には多角的な検討を要する点が複数含まれている。

  • 水着撮影会問題の論点:
    公園緑地協会の管理能力を問う材料として挙げられているが、この件は協会側が最終的に判断の不備を認めて謝罪している。解決済みの問題を蒸し返すことで、論点を不必要に拡散させているとの批判がある。
  • スタジアムの多角的利用について:
    クルド人コミュニティの祭り(ネウロズ)開催を問題視しているが、これはむしろ公園緑地協会がサッカー以外の多様な利用方法を模索している一例とも言える。県の審査で評価された「新たな収益源の確保」という方針に沿った試みを一方的に批判している、という見方も可能である。
  • 稼働率と芝生の養生の問題:
    「レッズが6万人を満席にできる」という主張は、試合が行われる月2回程度の話であり、それ以外の期間はJ1ライセンス基準の高品質なピッチを維持するため、天然芝の養生が不可欠という現実がある。稼働率の最大化だけを追求すれば、サッカーの聖地としての根幹が揺らぎかねない。
  • 天然芝ピッチの必須要件:
    諸井は「埼玉スタジアム2002が人工芝化すればいい」という提案に対して

    それを拒絶しているのは埼玉県であり、指定管理者である公園緑地協会です。


    諸井真英/Masahide Moroi (@moronojapan) 2025年1月12日 7:42のTweet

    とスタジアムがイベント活用しにくい天然芝であることを公園緑地協会の責任かのように示唆しているが、Jリーグのクラブライセンス交付規則ではJ1クラブのスタジアムに天然芝は必須条件である。埼玉県議会サッカー振興議員連盟会長、及び浦和レッズ後援会理事という立場上、この基準を知らないはずはなく、意図的に論点をずらしているとの批判を招きかねない。

「レッズが選ばれるべき」という主張への批判的視点

サポーターや一部関係者から上がる「レッズが選ばれて当然」という主張自体に、問題の本質を見る向きもある。これは、「公の施設」のあり方を問う視点である。

  • 利益相反の懸念:
    埼玉県側の審査結果が示す通り、最大の利用者である浦和レッズが指定管理者となることには、構造的な利益相反の問題がつきまとう。「他のイベントや利用者を締め出し、クラブの都合を優先するのではないか」という懸念は、公共施設の管理者を選定する上で無視できない論点である。
  • 公共財産としてのスタジアム:
    埼玉スタジアムは浦和レッズの私有物ではなく、県民の税金で建設・維持されている公共財産である。したがって、特定の団体(たとえそれが最大の利用者であっても)の利益だけを最大化するのではなく、県民全体の利益に資する運営が求められる、という考え方である。
  • 「札幌ドーム化」論への疑問:
    「レッズがいなければ埼スタは立ち行かなくなる」という主張は、札幌ドームの事例を引き合いに出し、クラブの優位性を強調するロジックである。しかし、プロ野球とJリーグのビジネス構造の違いや、移転の現実性などを考慮すると、安易な比較はできないという反論もある。

この視点に立てば、今回の埼玉県の決定は「特定の団体との癒着を避け、公共施設の公平性を保とうとした結果」と解釈することも可能であり、問題は単純な「レッズ外し」という構図だけでは語れない複雑さを帯びている。

今後の影響

2025年度以降、浦和レッズは再び単なる利用者(テナント)という立場に戻ることになる。これにより、以下のような影響が懸念されている。

  • スタジアム使用料:指定管理者の構成団体ではなくなることで、スタジアム使用料の負担が増加し、クラブ経営を圧迫する可能性が指摘されている。
  • 運営への発言権低下:ピッチコンディションの維持や、サポーターのニーズを反映したスタジアム改修など、クラブ側の意向が運営に反映されにくくなる恐れがある。
  • 関係性の悪化:今回の件で、クラブと県との間に溝が生まれたと見る向きもあり、今後のスタジアム活用において協力関係が築きにくくなる可能性も懸念される。

類似事例との比較とサッカースタジアム特有の課題

今回の件は、ホームスタジアムとクラブ・自治体の関係性を考える上で、他のスポーツビジネスの事例と比較されることが多い。

チーム主導の成功事例(野球):エスコンフィールドHOKKAIDO
北海道日本ハムファイターズが自前で建設・運営する球場。野球の試合日以外も楽しめる商業施設やホテルを併設し、球場を核とした街づくり「ボールパーク」構想を実現。チームが主体となることで、自由な発想で大きな収益を上げることに成功している代表例である。

自治体主導の失敗事例:札幌ドーム
上記のファイターズがかつて本拠地としていたが、高額な使用料や運営の不自由さから移転。主要なテナントを失った札幌ドームは大幅な赤字に陥り、自治体とホームチームの関係悪化が招く「負の遺産」の象徴的な事例とされている。今回の件を「札幌ドーム化の始まり」と危惧する声は、この事例に基づいている。

サッカースタジアム運営の構造的課題
ただし、野球とサッカーではビジネスモデルが大きく異なる。プロ野球が年間約70試合のホームゲームを開催するのに対し、Jリーグはリーグ戦だけで見れば約20試合と、収益機会に3倍以上の差がある。そのため、サッカースタジアムはサッカーの試合だけで運営費を賄うのが極めて難しく、いかに試合のない日にコンサート等のイベントを誘致し、稼働率を上げるかが経営の鍵となる。この点が、県の審査で「音楽ライブ」等の提案が評価された背景にある。

関連リンク

関連項目

  • Jリーグ
  • Jリーグ百年構想
  • 浦和レッドダイヤモンズ
  • 埼玉スタジアム2002
  • 指定管理者制度
  • 札幌ドーム
  • 埼玉県
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