現実主義者のこの僕がですよ!? 単語


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現実主義者のこの僕がですよ!?とは、2000年7月13日発売のノベルゲーム『稲川淳二 真夜中のタクシー』に登場するセリフである。

概要

夜道を流すタクシードライバーの主人公は、歩道で手を挙げる若い男を乗せる。

指定された繁華街にある喫茶店に向かう道中、男は「聞いてほしい話がある」と言うと、真剣な口調で過去に自分が体験した出来事を話し始めた。

 

 

高校時代、ワンダーフォーゲル部に入った僕は、夏合宿の終わりごろ、部のキャプテンで評判が悪い先輩の山田に呼び出されました。

練習態度にいちゃもんでもつけられるのかと、浮かない気持ちで山田のもとへ向かうと、そこには自分と同じ一年生のマサヒコとミツルがすでに正座で待機していて、山田は僕らの顔を見渡すと、有無を言わせない口ぶりで「今晩、坂上の性根を叩き直してやるからお前ら協力しろ」と強要してきたのです。

坂上は、これまた僕と同じ学年で、普段は物静かなくせに妙に頑固で融通の利かないところがあり、山田先輩から目をつけられていました。

気が進まない僕らでしたが、山田先輩に逆らうと後が面倒なため、しぶしぶ従うことに。

山田先輩の計画は、僕らが泊っている山の家からそう遠くない場所にある小さな無人の小屋に、心霊実験をすると称して坂上を呼び出し怖がらせるという、今から考えるとバカバカしいものだった。

その晩、僕らによって連れ出された坂上に、山田先輩は、雪山で遭難した四人の男が、凍死しないよう、それぞれ暗い小屋の中を時計回りに他のメンツを起こしていき夜を明かすという有名な話をし、その話と同じことをこの小屋で実験しようと持ち掛けました。意固地な坂上はこの提案を断れないと踏んだうえで。

実験をするのは、僕と山田先輩、マサヒコ、坂上の四人。

この実験には、暗闇に紛れてあらかじめミツルが潜んでいるというトリックがありました。ミツルの存在を知らされていない坂上は、不意にリレーに参加した五人目の存在に驚愕し、大声をあげて小屋から逃亡。

自分の考案した計画が予想以上にうまくいった山田先輩はたいそうご満悦だったのですが、いつまでたっても坂上は見つかりません。

事情を知らない他の部員や先生は騒ぎ出しても、当事者である僕らは坂上をからかったことを言い出すことが出来ませんでした。

翌朝、坂上は近くの崖の下で遺体となって発見され、その死は事故死として処理されました。

三年後、僕は大学に進学し、山岳部に入部。

同じ大学に進んでいた山田先輩もやはり山岳部に所属していたけど、高校時代の傍若無人ぶりは鳴りを潜め、どちらかというと影の薄い上級生になっていました。

夏になって、山岳部は山のコテージを借り切って、夏合宿をすることに。

三年前の坂上の事件が心に重くのしかかっていた僕は、怪談なんか話すのも聞くのもまっぴらごめんでしが、合宿初日の晩、山岳部恒例の怪談大会が行われることとなりました。ふと山田先輩を見ると、彼も浮かない顔をしていたので、心のどこかであの事件のことが引っかかっていたのかもしれません。

怪談大会では様々な怖い話が飛び出したけど、僕は早く終わることだけを考えていました。

何番目かに、同期の田中という、物静かでどこか坂上を思い起こさせる男が怪談をはじめました。奇しくもその話は、三年前山田先輩が坂上に話した、雪山で遭難した四人の話だったのです。お調子者の上級生が、今からその階段と同じ実験をこの小屋でやろうじゃないかと提案した時、僕と山田先輩は思わず顔を見合わせてしまいました。

そして、じゃんけんの末、山田先輩と田中、他に二人の上級生が実験をすることに。

実験は光が入らないように目張りしたコテージで行われ、残りの部員は隣の医務室で耳を澄ませてそれを見守りました。

しかし、いくら経過しても霊が現れる気配はなく、時期に、実験をしていたメンバーも馬鹿らしくなったのか、次々目張りした部屋から出てきました。ところが、山田先輩だけはいつまでたっても出て来ません。気配からすると、先輩は一人になっても壁に沿って歩き続けているようでした。

上級生の一人が隣室に行き、「山田、もういいよ」といって、部屋の明かりのスイッチを入れました。ところが、部屋は真っ暗のまま。

薄気味悪い空気が充満する中、誰かが持っていた懐中電灯を点けるけど、急に灯に照らされてもなお、山田先輩は全然気が付かない様子で黙々と壁際を歩き、角に行くとそこに存在しない誰かの肩をたたくという行為を繰り返していました。

僕にはそれが三年前亡くなった坂上に憑りつかれたように思えました。

現実主義者のこの僕がですよ!?

それだけ、山田先輩の様子は常軌を逸していたのです。

山田先輩は複数の上級生によって無理やり部屋から連れ出され、布団に寝かしつけられました。

その時、僕はハッキリと耳にしました。山田先輩が「坂上、すまない」とつぶやいたのを。僕の心境を察してください。まさかという気持ちとやっぱりという気持ちが綯交ぜになって、何も考えられなくなりました。

山田先輩はその晩から高熱を出して寝込んでしまいました。僕はと言えば、その次の日、適当な理由をつけて下山し、そのまま山岳部を退部しました。

それから、夏休みが終わり、大学が再開した時、山田先輩の姿はキャンパスにはありませんでした。一身上の都合で大学を辞め出家したと風の噂で耳にしました。

今でも時々大学一年の夏合宿のことを思い出しては考えてしまうんです。あの晩、暗闇で山田先輩と一緒にリレーゲームをしていた坂上の霊は、いつの日か僕の前にも現れるのではないか、と……

でも、この世に霊なんかが存在するわけはないんです。そうですよね?運転手さん?嘘でもいいからそうだと言って下さい……

 

 

目的地に着くと、若い男はどこか悲痛な面持ちで車から降りていった。

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関連項目

  • 現実主義者
  • 知らんがな
  • 稲川淳二 真夜中のタクシー
  • コンピューターゲーム作品の台詞の一覧
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