田中角栄とは (タナカカクエイとは) [単語記事]

田中角栄(1918年～1993年)とは、第64代・65代内閣総理大臣である。娘は衆議院議員の田中真紀子。

概要

新潟県旧西山町(現・柏崎市)の貧しい農家に生まれた。小学生時代の通信簿は全て「甲」(当時は「甲＞乙＞丙＞丁」の順に成績が良かった。現在の「オール5」に相当する)だったが家計の都合で、大学はおろか高校も進めず、苦労の人だった。とにかく勉強第一とし、英和辞典を片っ端から暗記した。覚えたページは食べていたという伝説もある。また、政治家になって忙しくなってからも、1日4時間の政治学、経済学などの勉強は欠かさなかった。

中央工学校(専門学校)卒。高等教育を受けていないのに、首相まで上り詰めたことから「今太閤」と呼ばれた。情けに厚く、涙もろい人だった。一方、「コンピュータ付きブルドーザー」と形容される知識量・実行力や、巧みな官僚操縦術を見せつけるなど、党人政治家と官僚政治家の長所を併せ持っていた。

「ハト派」の急先鋒で、とにかく「人を雇ってください。仕事を作って下さい。」と述べていた(結果、バラマキが生じて逮捕される羽目に)。対極にあるのは森喜朗や小泉純一郎、福田康夫といった「タカ派(ここでは、「仕事がないなら、無いなりに自分でなんとかすれば」という考え)」である。記憶力も抜群で人海戦術が得意だった。官僚の出身地、誕生日、提案した法律などを一晩で全て覚え、実行したほどの行動力もあった。議員立法を提出した数は角栄がナンバーワン。(今の議員は官僚を使っているというか、頼りっぱなしの状態。)ただ、金権政治を作り上げたのもこの人である。

地方分権を唱え、「都会より田舎に税金を振りまけるべきだ」と主張。その時に使ったのが「羊羹資本主義」の理論である。その内容とは…

｢子供が十人いるから羊かんを均等に切る、ってのは共産主義。自由主義は別だよ。羊かんをチョンチョンと切ってね、一番年少の奴にね、一番でっかい羊かんをやる。そこが違う。分配のやり方が違うんだ。大きな奴には、『少し我慢してくれ』といえるけどね。生まれて3、4才のはおさまらんよ、そうでしょう。それが自由経済というものだ｣

平行して「日本列島改造論」を唱え、日本中がゼネコン・土建屋だらけになった。ただ、高度経済成長期の当時の状況では、ゼネコンがいくらあっても足りないくらいだった。問題なのは、不況の今も利権屋政治を引きずろうとする政治家たちである。

昭和32年に「暫定税率」を作ったのもこの人。やはりこれも時代の流れというもので、 「暫定税率ができた昭和30年代、地方の道路状況はすこぶる悪かった」ため、「暫定」という名目で地方の道路を整備するために作った税金。「あくまで「暫定」だから、このまま引きずっていくと未来の日本は歪んでいくだろう。(死ぬ間際に)嫌な予感しかしない。」と発言したのはなんと、角栄自身だった。結局、予感は的中してしまったのだった。

首相在任中、日中国交正常化、金大中事件、第一次石油危機などの政治課題を次々と乗り切った。しかし、金脈問題への批判によって首相を辞職。さらにアメリカの航空機会社のロッキード社による全日空への航空機売込みに絡む収賄事件である「ロッキード事件」で逮捕された。その後も最大派閥となった田中派（木曜クラブ）を背景に政局に対する発言力を保ち続け、マスコミは「闇将軍」の異名を付けた。

道路・港湾・空港などの整備を行う各々の特別会計法や日本列島改造論によるグリーンピアなど、戦後の日本の社会基盤整備に良くも悪くも大きな影響を残した。

政治家としては、大平正芳、竹下登、河野洋平と仲が良かったほか、弟子として橋本龍太郎、小沢一郎、渡部恒三などがいる。一方の福田赳夫とは犬猿の仲で、田中が首相のときの国会の採決では、福田派の議員が欠席するなどの逸話もあった。この二人の抗争は当時、「角福戦争」とも呼ばれた。ただ、これは「喧嘩するほど仲が良い」状態で、赳夫の母親が死去した際には、誰よりも早く花束を届けさせた、という。

※同様の例では、鈴木貫太郎首相がいる。彼の就任中は太平洋戦争中で「鬼畜米英」状態だったにも関わらず、ルーズベルト大統領が死亡した際、アメリカに向けて弔電を送ったほど。「敵に塩を贈る」精神が垣間見える。

また、政教分離問題も熱心で、創価学会(公明党)の池田大作会長を「ありゃ法華経を唱えるヒトラーだ」と批判したほど。角栄の死後、まさか自民党と公明党が連立を組むなど、夢にも思っていなかっただろう。

ちなみに、田中角栄の娘は国会議員の田中真紀子。福田赳夫の息子は国会議員の福田康夫。2007年に康夫が首相に就任したとき、「第二次角福戦争」再来か、と囁かれた。

現在、上越新幹線・上越線浦佐駅の前に銅像が建てられている。