税金(tax)とは、正しくは租税といい、政府や地方自治体が実施する制度である。
税金とは、政府や地方自治体がその統治領域内に居住する法人・個人に対して国籍を問わずに通貨を強制徴収する制度である。
徴税は、統治領域内に居住する個人・法人の全員に対して行われる。
国籍を問わないというのが特徴である。日本に住んでいるイタリア人サッカー選手は日本の税務署へ所得税を払うし、アメリカ合衆国に住んでいる日本の音楽家はアメリカ合衆国の税務署に所得税を払う。
日本人であっても、日本を脱出して税率の安い国に居住すれば、日本の税務署へ税金を払わずに済む。税金を安くして金持ちを熱心に誘致する国のことをタックスヘイブン(租税回避地)という。
人類の歴史のなかで、様々なものが徴税対象品となってきた。日本の奈良時代では租庸調の制度が実施され、米や絹や布が徴税された。また、奈良時代には銅でできた金属貨幣が流通し、金属貨幣を徴税することが行われた。物品と金属貨幣の両方を徴税する制度は江戸時代まで長々と続いた。明治時代になって、徴税対象が通貨に一本化した。
日本だけでなく、近代・現代の世界各国においては、通貨のみを徴税対象品とする例が極めて多い。
日本において、税金を徴収する機関は、国税庁である。国税庁は財務省の外局として設置されている。国税庁の下部組織が国税局で、国税局の下部組織が税務署である。
日本の国税局や税務署は、色々と優秀で、何事も手抜かりがなく、恐るべき組織として知られている。彼らの行う税務調査は、しばしば家宅捜索を伴うことがある。国税局や税務署の家宅捜索は徹底的で、家中のものをひっくり返しつつ、何もかも調べ尽くしていく。
納税の義務を怠っていると見られる者に対し、まずは税務署が相手する。税務署の手だけでは足らないとき、国税局の査察部の国税査察官(通称:マルサ)が応援に入り、裁判所の令状を得て家宅捜索する。さらに悪質な滞納がある場合、国税徴収官が出てきて、裁判所の令状なしで家宅捜索する。国税徴収官のなかでも特別国税徴収官(通称:トッカン)は、権限が強い。
脱税をすると、警察に逮捕され、検察に起訴され、裁判所で裁判が行われる。税金に関する法律は多く存在するが、「脱税したら10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金刑あるいはその併科(両方の刑が科されること)、ただし罰金額は脱税額を限度として増額される可能性がある」という罰則が規定されていることが多い。
有罪判決を受けて懲役刑を受けるときは、法務省が管理する刑務所に叩き込まれ、自由が奪われた生活を強制されることになる。ご飯は栄養満点のものが出てくるが、とにかく自由が少なくて、あまり楽しくない。
| 納税 | 政府や地方自治体に対して税金を納付すること |
| 徴税 | 政府や地方自治体が税金を徴収すること。課税ともいう。 |
| 税率 | 課税対象に対して徴税する割合・比率 |
| 増税 | 税金の税率を増やすこと。 |
| 減税 | 税金の税率を減らすこと |
| 節税 | 制度を利用したり制度の抜け穴をつついたりして、納税額を減らすこと。これを行っても犯罪にならない |
| 脱税 | 納税すべきなのに経理書類を不正操作するなどして納税の義務を果たさないこと。これを行うと犯罪になる |
| 税務 | 税金に関わる事務 |
租税を納める義務は、日本国憲法第30条において定められている。「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」という短い条規となっている。
憲法というものは、権力者の行動を規定して、権力を制限し、被統治者である国民の安心と自由を確保するために制定されている。つまり、憲法とは政府・公務員に対する命令の集積なのである。
ところが何事も例外があり、日本国憲法の中には国民に義務を課す条文が3つある。そのうちの1つが日本国憲法第30条である。
租税を徴収することで、国民生活に多大な影響が発生する。国民にとって、コロコロと税率を変えられては迷惑である。
権力者の都合でコロコロと税率が変わっていく現象を防ぐため、日本国憲法は「租税の制度を決めるとき、法律で定めねばならない」という原則を定めている。これを租税法律主義とか租税法定主義という。
日本国憲法第30条の「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」という条規と、日本国憲法第84条の「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」という条規に、租税法定主義が盛り込まれている。
ちなみに、法律というのは、作ったり変更したりするのに多大な労力が必要である。日本国憲法第41条で「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」と定められており、法律を通すためには必ず国会の議決を得なければならない。
租税を徴収することで、国民生活に多大な影響が発生する。それゆえ、租税の制度を決めるときは、影響を受ける国民の意見をよく受け取ることが重要とされている。
国民の意見をかき集めることが得意なのは、国会議員である。国民の選挙を経なければ国会議員になることができない(日本国憲法第43条)。
日本の自民党には、自由民主党税制調査会(自民税調)という審議機関がある。この自民税調は、租税に関する発言権を強く持っている。自民税調で決まった税制がそのまま採用される、と思っていいぐらいである。
内閣総理大臣の諮問機関として、政府税制調査会(政府税調)というものがある。ところが、長年にわたり、政府税調の意向よりも自民税調の意向の方が重んじられており、「党高政低」と言われてきた(天気予報でよく使われる東高西低という表現をもじっている)。
税金の一覧の記事を参照のこと。
税金を大別すると、負担者と納税者が一致する直接税と、負担者と納税者が一致しない間接税になる。直接税は所得税、法人税、相続税、贈与税など。間接税は消費税、たばこ税、酒税、ガソリン税など。
直接税の方が累進性が強く、間接税は逆進性が強いとされる。累進性が強いというのは高所得者に高負担を課して低所得者に低負担を課す税制であり、逆進性が強いというのは高所得者に低負担を課して低所得者に高負担を課す税制である。
機能的財政論という財政思想がある。政府には自国中央銀行が発行する通貨を自由に獲得できる巨大な権力があるので、税収を上回る政府支出を行ってよいのであり、経済に与える効果がどのようになるかを考えて政府の財政を決めるべきである、という考え方である。
機能的財政論から、「税金は罰金」という考え方が導かれる。税金は政府が望ましくないと思う行動に対する罰金であり、財源の確保を第一に考えて課するものでは無い、という考え方である。
機能的財政論の対義語は、健全財政論とか均衡財政論と呼ばれるものである。これは「税金は財源」という考え方である。
2020年現在の日本の官公庁や国会議員は、健全財政論(均衡財政論)と「税金は財源」という考え方を中心に動いている。増税するときに「増税分は、被災地復興の財源にします」「増税分は、社会保障の財源にします」と国会議員や大臣が述べることが、恒例となっている。
国定信用貨幣論(租税貨幣論)という通貨に関する理論がある。これは、「政府が徴税対象物と定めたものは自然と通貨になる。租税によって通貨がこの世に生まれる」といった理論である。
そして、「税務署の人員を増やすなどして徴税権力を強めると、みんなが税務署を恐れるようになり、通貨をありがたがるようになり、通貨価値が上がっていく。税務署の人員を減らすなどして徴税権力を弱めると、みんなが税務署をみくびるようになり、通貨価値が下がって通貨が紙切れのようになる」と論じていく。発展途上国の通貨が暴落して紙切れになるのは、その政府の徴税権力が弱くて税務署がナメられているからである、と論じるのである。
国定信用貨幣論(租税貨幣論)の思想は、2020年現在の世界各国で流通している不換銀行券(不換紙幣)を非常に上手く説明できるという長所を持っている。不換銀行券(不換紙幣)は金塊との交換が保証されていないただの紙切れなのに、なぜか流通している。国定信用貨幣論(租税貨幣論)なら、「政府が徴税するから、不換銀行券のような紙切れが通貨になるのだ」とごく簡単に説明できる。
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最終更新:2025/12/12(金) 01:00
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