種痘とは (シュトウとは) [単語記事]

種痘とは、天然痘ワクチンのことである。

概要

天然痘ウイルス（ポックスウイルス科のバリオラウイルス）に対する免疫をつけるために接種するワクチンである。

他の一般的な予防接種の注射器（一本針）と異なり、先端が2つに分かれた二又針の形状をしている。

同じポックスウイルス科のワクシニアウイルス（ワクチニアウイルス）を原料として作られているため、天然痘ウイルスだけでなく他のポックスウイルス（エムポックスウイルス、牛痘ウイルス、ラクダ痘ウイルスなど）に対しても有効とされる。

いずれのポックスウイルスによる感染症も高熱（発熱）と特徴的な発疹を主な症状としており、中でも天然痘とエムポックス（サル痘）は重症化しやすく致死率が高い（特に天然痘は感染力が非常に強く危険なため、日本の感染症法ではエボラ出血熱やペスト等と同格の一類感染症とされている）。ただし、この2つ以外のポックスウイルスはヒト（人間）に感染しても軽症で済むことが多い。

感染経路は接触感染や飛沫感染が多く、ヒトや動物の体液に触れることで感染するが、天然痘ウイルスは感染力が非常に強いので空気感染もあり得る。

天然痘ウイルスは種痘が有効であることだけでなく、

ヒトにしか感染しない。
- ちなみに他のポックスウイルス、例えばエムポックスウイルスは猿や齧歯類（プレーリードッグ等）などの動物も感染源となり得る。
ポックスウイルスは全てDNAウイルスなので、変異しにくく新型のウイルスが誕生しにくい。
- ちなみにインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどのRNAウイルスは変異しやすいため、新型のウイルスが誕生しやすく免疫ができにくい。

などの特徴があったことから、少なくとも自然界からは根絶されたとされる。（ただし、アメリカ合衆国とロシア連邦の一部の研究所には今でも天然痘ウイルスが保管されている。また、炭疽菌などと同様に生物兵器として利用される可能性もあることから警戒されている。）

現在、種痘は一般人に対しては実施されていないが、（バイオテロ対策として）自衛隊や米軍などでは今でも種痘が実施されることがある。