米機の新型爆弾に依る攻撃に対する抗議文とは、広島原爆に対し、翌々日に日本政府からスイス加瀨公使経由で米国政府宛て発された抗議文である。この抗議文は戦後70年を経て、安倍総理米議会演説に併せて発表された日米共同声明の「広島及び長崎の被爆70年において、我々は核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こす」[1][2][3] に結実する。以下、原文[4] 。旧字体や難読漢字等は新字体等に変換してある。
米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文
昭和20年8月8日
本月6日 米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を潰滅せしめたり。広島市は何ら特殊の軍事的防備ないし施設を施しおらざる普通の一地方都市にして同市全体として一の軍事目標たるの性質を有するものにあらず。本件爆撃に関する声明において米国大統領「トルーマン」は 我らは船渠、工場および交通施設を破壊すべし と言いおるも本件爆弾は落下傘を附して投下せられ空中において炸裂し極めて広き範囲に破壊的効力を及ぼすものなるを以て これによる攻撃の効果を右のごとき特定目標に限定することは技術的に全然不可能なこと明瞭にして右のごとき本件爆弾の性能については米国側においても既に承知しおる所なり。また実際の被害状況に徴するも被害地域は広範囲にわたり右地域内にあるものは交戦者非交戦者の別なく又男女老幼を問わず すべて爆風および輻射熱により無差別に殺傷せられ その被害範囲の一般的にしてかつ甚大なるのみならず個々の傷害状況より見るも いまだ見ざる残虐なるものと言うべきなり。
そもそも交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものにあらざること及び不必要の苦痛を与うべき兵器、投射物その他の物質を使用すべからざることは戦時国際法の根本原則にして それぞれ陸戦の法規慣例に関する条約附属書陸戦の法規慣例に関する規則第22条および第23条(ホ)号に明定せらるる所なり。米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガスないしその他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の世論により不法とせられおれりとし対手国側において まずこれを使用せざる限りこれを使用することなかるべき旨声明したるが 米国が今回使用したる本件爆弾はその性能の無差別かつ残虐性において従来斯る性能を有するがゆえに使用を禁止せられおる毒ガスその他の兵器を遥かに凌駕しおれり。
米国は国際法および人道の根本原則を無視して既に広範囲にわたり帝国の諸都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社、仏閣、学校、病院、一般民家等を倒壊または焼失せしめたり。而して今や新規にして かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性、残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪悪なり。
帝国政府はここに自らの名において かつまた全人類および文明の名において米国政府を糺弾すると共に即時斯る非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す。
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最終更新:2025/12/06(土) 18:00
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