自己言及のパラドックス 単語


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ジコゲンキュウノパラドックス

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自己言及のパラドックスとは、論理上の矛盾の一つである。

概要

このパラドックスは「クレタ人のパラドックス」として古くから知られている。

クレタ人はうそつきである。(byクレタ人)

  • この文には大きく分けて4つの意味があると思われるので分けて考えてみたい。
    • ①全てのクレタ人は常に嘘をつく。
    • ②あるクレタ人は常に嘘をつく。
    • ③全てのクレタ人は嘘をつく事がある。
    • ④あるクレタ人は嘘をつく事がある。

    背理法で証明すると、①の否定は「全てクレタ人は常に嘘をつく。」訳ではない、つまりあるクレタ人は本当の事を言う事がある。これ自体は納得出来る所でしょう。また同じく②の否定、全てのクレタ人は嘘をつく事がある。これ自体も論理的にはパラドクスとも呼べないもので、ある時点・定義さえ定めれば「全てのクレタ人」が嘘をつくか否かは判別可能である。③も同様、あるクレタ人が常に本当の事を言うというのを遡るにしろ今後確かめるかすれば良いし(ひとつでも立証出来れば十分)、④も③と同様である。本来パラドクスとも呼べない物(嘘をつくか否かは偶然の物でこの文自体は何ら自己言及らしき物が無い為)がパラドクスの代表格に押し上げられたのは<、隠された前提がある為と思われる。以下少し横道にそれながら説明していく。

    では次の例はどうだろうか。

    このページに書かれていることはすべて嘘である。

    もちろんこのページに書かれたことが全て嘘なら「このページに書かれていることはすべて嘘」という命題は正しくなってしまい、矛盾が生じる。しかし、少しでも正しいことがあれば「すべて嘘」は嘘になる(真実ではない)が、矛盾は生じない。

    では自己言及文をもっと範囲を狭めてみよう。

    私のこの発言は嘘である。(これはつまり最初の発言のクレタ人なる者が発話者一人に限られる場合である)

    この文を真と仮定すると明らかに矛盾するので、少なくとも真ではない。一方偽だと仮定すると「私のこの発言は嘘である。」真実通りの事を述べている事になる、よって少なくとも偽ではない。結論は真でもなく偽でもない。解説によってはこれで「パラドックス」とするのもあるが、真偽の定まらない文だからといって端的に「パラドックス」とは言えない。というのも多少抜け穴的だが真偽の定まる文、平叙文というのだが、それについて真か偽か言うのが通常であって真偽の定まらない文、つまり命令文(~してくれ)や感嘆文(ああ、なんて○○なんだ!)、意味不明な文(天国は車に比べて凶暴)という部類のその他の文の範疇に収めれば解決するからである。

    そろそろ冗長になってきたので、一応のパラドックスはというと

    私のこの発言は本当ではない。

    これは真と仮定すると「本当ではない」というのが真なので真ではなくなる、また偽だと仮定すると「本当ではない」という本当の事を言っているので偽でもない。つまり「真でも偽でもない」という事になる、と仮定出来る。が初めに「本当ではない」と 言っているのでこの仮定も成り立たない。(この文が嘘というだけではなくその中間の状態ですらないという事なので)つまり正真正銘のパラドックスといえる。だがこれが実際問題になるかというと矛盾した文自体は「明日北緯135°東経35°地点に雨が降るか降らない」というように不思議な感じには受け止められず単なる矛盾した文という位置づけと一緒である。どのような文もそれが平叙文ならば言外には「この文は真である。」という一句を含んでいるので「私のこの発言は本当でありかつ本当ではない。」と言った文であるのが最後の例文の簡単な説明である。

    嘘つきのパラドックスは自己言及のパラドックスの一種ではあるが比較的簡単に理解出来る物の一つである。以下別の形をした物をいくつか例示する。(中にははっきりとパラドックスと言えない物もある)

  • グレリングのパラドックス(「短い」という語はそれ自体短い、「長い」という語はそれ自体は短い。前者は自叙的、後者は非自叙的と言える。では「非自叙的」という形容詞は自叙的か、非自叙的か)
  • ベリーのパラドックス(「三十字以内の日本語では記述出来ない最小の自然数」は何だろうか、いかなる自然数だったとしても「三十字以内の日本語では記述出来ない最小の自然数」で記述出来てしまうのだが)
  • ラッセルのパラドックス
  • 床屋のパラドックス
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    関連項目

    • 矛盾律
    • 矛盾
    • 自己言及
    • メタ
    • メタ発言
    • 論理学
    • <哲学>

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