高速増殖炉もんじゅ 単語


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高速増殖炉もんじゅとは、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の発電実験プラントで、高速中性子増殖炉(高速増殖炉)の原型炉のことである。

名称の由来は知恵の象徴である文殊菩薩。

高速増殖炉とは

何が高速?

現在、日本で稼動している商業用原子炉はすべて軽水炉という種類で、中性子を減速させる減速材と熱エネルギーを取り出す冷却材に水(軽水)を使用している。減速した中性子(熱中性子)を用いて核分裂を行う。

これに対して高速増殖炉は減速材を使用せず、冷却材に液体ナトリウムを使用している点が異なる。
減速しない中性子、つまり高速中性子を用いた核分裂を行っている。

何が増殖?

軽水炉では核燃料にウランを用いる。
ウランには分裂しやすいウラン235と分裂しにくいウラン238があり、天然ウランにはウラン235は0.7%しか含まれていない。軽水炉ではウラン235の濃度を2~5%まで高めた濃縮ウランを使用する必要がある。
ちなみに、核爆弾はウラン235の濃度を90%以上まで濃縮したものを使用する。

これに対して高速増殖炉では、主にプルトニウムとウラン238からなるMOX(Mixed Oxide:ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を用いる。
希少なウラン235を起動時にしか必要とせず、またプルトニウムは軽水炉で使用した使用済み核燃料から取り出すことができる。その上、核分裂を起こしたプルトニウムから放たれた高速中性子はウラン238に吸収され、ウラン238をプルトニウム239に変化させる。プルトニウムが消費される以上のペースでウラン238がプルトニウム239に変化するため、ウラン資源を事実上数十倍に増殖して燃やすことができる。

利点

現在主流の軽水炉と比較した場合、以下のような利点がある。

  • ウラン資源の有効活用      
    利用方式 利用効率 利用可能年数
    軽水炉(一回で使い捨て) 0.5% 約85年
    軽水炉(プルサーマル) 0.75% 約100年
    高速増殖炉 60% 数千年
    利用されなかったウラン資源は放射性廃棄物として、処理されることになる。
    この数値からわかるように、軽水炉はウラン資源の利用効率が悪く、99%以上が無駄になる。
    高速増殖炉が実用化されれば、エネルギー資源枯渇の問題から当面解放されることになる。

  • 原子炉の小型化、高効率発電
    高速炉は出力密度が高いため、同出力の軽水炉に比べて炉心を小型化できる。 また、軽水炉に比べ高い蒸気温度で運転できるため、発電効率自体も軽水炉より高い。

  • ECCSや電力がなくとも除熱が可能
    軽水炉では高温高圧の水を冷却材として利用する。そのため、配管などには耐圧性が求められ、分厚くなる。また、配管に損傷が発生した場合、圧力差による噴出と急激な減圧に伴う蒸発で冷却材が急速に失われる。失われた冷却材を補充するためには、ECCSと呼ばれる非常用冷却装置が必要になる。
    対して高速炉では液体金属を冷却材として利用する。液体金属は沸点が高いため、常圧のまま利用できる。従って、配管に損傷が発生したとしても、緩やかに漏れるだけである。そこで、漏れた冷却材を二重の容器で受け止めておけば、十分な冷却材を確保することができる。 よって、冷却材が失われることもないため、ECCSも必要ない。
    また、液体金属は熱伝導性が水よりも高く、効率の良い除熱が可能である。
    冷却材の喪失が起こらないことと、効率の良い除熱が可能なことから 全電源喪失が発生しても、自然対流と空冷による除熱が可能である。(電源が使えるに越したことはないが)

問題点

そんな都合のいいことばっかりではもちろんなく、高速増殖炉は何十年にもわたって研究されているにもかかわらず、いまだ実証炉は存在しない。技術的な困難はもちろん、経済的・行政的な問題もあるためである。

  • 技術的な障壁
    最大の問題として、冷却材に用いられる液体ナトリウムの管理が非常に難しいことが挙げられる。液体ナトリウムは空気中で火災を生じる可能性がある。このため一次系では窒素ガスによる空気の置換と酸素濃度の抑制、二次系においては窒素注入による消化などの対策が講じられている。また、ナトリウムと水は激しく化学反応を起こすため、二次冷却系(液体ナトリウム)と三次冷却系(水)を隔てる蒸気発生器の破損事故については、ナトリウム・水反応生成物収納設備による対策がとられている。
    95年に発生した火災は、二次系ナトリウムの漏出によるものだった。

  • 経済的な障壁
    使用済み核燃料再処理施設や増殖炉の建設、またそこから排出される低レベル放射性廃棄物の処理費用が予定より多くかかった。また、当初の予測よりウラン鉱石の値段が高騰せず、ウラン資源のリサイクルの意義が薄まったことも理由のひとつである。

  • 行政的な障壁
    95年に起きた事故は放射性物質の漏洩等は無く、国際原子力事象評価尺度でも最低のレベル1であった。しかし、事故自体よりも運転員の事故対応や動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の隠蔽工作が問題視され、マスコミも大々的に報道した。この結果「もんじゅ停止」の世論が形成され、長期間の操業停止を余儀なくされた。

もんじゅの現在

2005年に改良工事が福井県に認可され、2010年5月に運転を再開したものの、8月26日の炉内中継装置落下事故により運転停止。修理費として9億4千万円が必要になり、また2011年秋の操業再開を目指していると報道された。

よくわからん。3行で

原発で使った燃えカスから燃料を作ることができる
資源の無い日本には喉から手が出るほど欲しい技術
でもなんやかんやであんまりうまく行ってない

その他

早口言葉の言いにくい単語として有名。フジテレビ系列27局のアナウンサー336人にアンケート調査した結果、75票獲得し1位に輝いた(「トリビアの種」より)

仕様

原子炉の形式 ナトリウム冷却高速中性子型増殖炉
熱出力 71.4万kW
電気出力 28万kW
燃料の種類 プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX燃料)
製造メーカー 日立製作所・東芝・三菱重工業・富士電機

関連動画

 

関連項目

  • 原子力
  • 核分裂
  • プルサーマル
  • ウラン
  • プルトニウム
  • 原発事故

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