『黒後家蜘蛛の会』とは、アイザック・アジモフによる短編ミステリー小説シリーズである。
原題は『The Black Widowers(ザ・ブラック・ウィドワーズ)』。
シリーズ最初の作品『会心の笑い』は、1972年2月の『EQMM』誌に掲載された。短編集が出版されており、日本では創元推理文庫から翻訳が出ている。
このシリーズの舞台は、ニューヨークの『ミラノ・レストラン』である。
そこで話題にのぼった謎をその場で解き明かす、いわゆる安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)ものである。
〈黒後家蜘蛛の会〉とは「女人禁制」「他言無用」というルールに基づき、開催される例会である。メンバーは何れも曲者揃いの6名で、彼らは月に一度集まり、会食と談論風発を楽しむ。
その際、ホスト役(メンバーが交代で務める)はゲスト1名を招待。会食後はホストが頃合いを見てスプーンでグラスを鳴らし、ゲストに対して「あなたは何をもって自身の存在を正当としますか?(How do you justify your existence?)」という定型の質問から「尋問」の時間が始まる。その時にゲストが謎を提示する、というのが基本的なパターンである。
〈黒後家蜘蛛の会〉のメンバーは提示された謎について推理し、議論する。しかし結論は出ずに行き詰まった所で、最後に謎を解くのは彼らではなく、傍らに控える給仕のヘンリーである。
『黒後家蜘蛛の会』で扱われる「謎」そのものは他愛ないものであることが多く、複雑な謎解きを期待して読むと拍子抜けする。だがこの作品の魅力は、そこに至るまでに交わされる会話にこそある。
なお〈黒後家蜘蛛の会〉という集まりは、作者のアジモフが実際に参加していたSF関係者の会食クラブ『戸立て蜘蛛の会(Trap Door Spiders)』がモデルになっている。登場人物のうち、ヘンリー以外のレギュラーおよび一部のゲストも、アジモフの友人たちがモデルになっている。
| 登場人物 | 職業 | 人柄等 |
|---|---|---|
| イマニュエル・ルービン | 作家 | 偏屈で多弁な、議論好きの減らず口。めんどくさい人。アイザック・アジモフの『友人』だが、アジモフのような『小物』と並べられるのを好まない。 モデルはレスター・デル・レイ(作家・編集者)。 |
| ジェフリー・アヴァロン | 特許弁護士 | 理知的な堅物。シリーズ開始当初は〈黒後家蜘蛛の会〉が謎解きの会になることに不満を漏らしていた。几帳面で、飲む酒の量はグラスに1杯半と決めている。古典文学や歴史への造詣が深い。 モデルはL・スプレイグ・ド・キャンプ(作家)。 |
| トーマス・トランブル | 暗号専門家 | 政府の情報機関に勤務。彼がいることで、些細な謎が実は国家規模の事件であったことが明らかになる事も。食前酒に遅れては「死にかけている男にスコッチのソーダ割りを頼む」とヘンリーに頼む。好物はペカン・パイ。 モデルはギルバート・キャント(ジャーナリスト)。 |
| ジェイムズ・ドレイク | 有機化学者 | メンバー唯一の博士号持ち。愛煙家だが、よく自分の煙草にむせている。三文小説のマニア。本職の化学よりも三文小説について語るときのほうが雄弁。 モデルはジョン・D・クラーク(科学者・作家)。 |
| ロジャー・ホルステッド | 数学教師 | 中学校で教師をしている。口数は少なくどもりがち。『イーリアス』『オデュッセイア』などをリメリック(諧謔五行詩)にしていじくり回すが、下手の部類。黙らせるには目の前に料理を置くのが一番。 モデルはドン・ベンスン(作家・編集者)。 |
| マリオ・ゴンザロ | 画家 | 他のメンバーが軒並み知性派で、常に論理的な言説を展開する(もしくは少なくとも論理的であることを装おうとする)中で、唯一、直観や好き嫌いだけで考えを述べる。ゲストの似顔絵を描く。ルービンとは対抗意識がある。 モデルはリン・カーター(作家)。 |
| ヘンリー | 給仕 | 「ミラノ・レストラン」の給仕。仕事には非の打ち所がなく、老齢だが顔には皺ひとつない。決して出しゃばらず、議論が袋小路に入った時に控えめに「皆様、ひとつ、よろしゅうございますか?」と声を上げ、それまでに出た情報を集めて謎を解く。 隅の老人、ネロ・ウルフ、ミス・マープルらと並ぶ代表的安楽椅子探偵の一人。 |
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最終更新:2025/12/06(土) 17:00
最終更新:2025/12/06(土) 17:00
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