M4中戦車 単語


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エムヨンチュウセンシャ

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M4中戦車とは、第二次世界大戦期のアメリカ軍の主力戦車である。
通称シャーマン(sherman)。いわゆる呪術師・祈祷師のシャーマン(shaman)ではない。

概要

工業大国アメリカの傑作戦車。当時量産か質かの二極に分かれていた戦車界において、信頼性と生産性の両方を確立し、5万両という空前の生産数を誇った。WW2前まで戦車後進国だったアメリカ戦車を一躍世界水準まで押し上げ、第二次大戦においても連合軍の勝利に少なからず寄与し、「偉大なる凡作」と称された。
アメリカ陸軍の他に海兵隊、さらに連合諸国にも大量に供給され、戦後も様々な国で使われ続けている。

開発・発展

WW2開戦時、戦車をあくまで歩兵支援兵器として見ていたアメリカ陸軍は、ナチス・ドイツ軍の機甲部隊による電撃侵攻を目の当たりにして本格的な戦車部隊の発足を決断。既に時代遅れになっていたM2中戦車の後継として中継ぎになるM3中戦車を開発し、1941年にはその高車体を継いだ試作型のT6が開発され、1942年からM4中戦車として量産が開始された。

主砲には初期の75mm砲に対戦車用の長口径76.2mm砲、歩兵支援用の105mm榴弾砲、火炎放射器、ロケットランチャー搭載型と様々な形式が作られた。イギリス軍の17ポンド対戦車砲搭載型はシャーマン・ファイアフライと名付けられ、その火力はドイツ軍戦車に恐れられた。

特徴

一見すると平凡極まりなく、ともするとその能力の低さゆえ安かろう悪かろうと見られがちな本車だが、その本領は数字で表せないところにある。シャーマンのコンポーネントには民間メーカーの部材が大量に使われ、エンジンも航空機用の星型空冷エンジンからトラック用の水冷ディーゼルエンジン、果てはバス用の水冷ガソリンエンジンを搭載、M4A3でようやく戦車用の水冷エンジンが積まれたほどであった。M4~M4A6までの型式はおおよそエンジンによって区分されているが、そのほとんどが民間のエンジンである。エンジン製造元に近いところで組み立てが平行で行われたこともあり、基本的には製造工場単位で異なる型式となる。後年、装甲、内部の装備も製造単位で微妙に異なるだけでなくその後の改良も独自で行われるなど、その生産台数に応じたバリエーションを見せており、すべてを把握するのが困難なほどである。

まぁわかりやすくいうと、現代の組み立てPCと同じで、規格さえ合致していればメーカーが違うエンジンでも搭載できるという工業製品として優れていたお陰で機関部分の故障は少なく整備も容易で、未熟な乗員だけでも運用することができた。この機械的信頼性と整備性の良さがシャーマンの最大の長所である。

(これを可能にしたのは当時のアメリカのモータリゼーションの発達に伴う豊かな工業力の素地があったため。同じ工場で作っていてもロット単位でしか部品の交換性が無かった当時の極東の国とは雲泥の差である)

また設計も走攻守がバランス良くまとめられ、独特の背の高さで車内スペースにもゆとりがあったので乗員への負担が少なかった。シャーマンはカタログスペック上、決して高性能の戦車ではなかったが、高い運用性と平均的な性能を併せ持った、一つの完成した兵器だと言える。

欠点

上述のように生産性を重視したモデルであったため、本戦車は能力上においては、特にドイツのIV号戦車とはほぼ互角か若干の劣位、V号戦車(パンター)以降には明らかに劣位にあった、そのため「五台で一台を囲う」いわゆる物量作戦がこの戦車の主戦法だった。

特にエンジン馬力の余力が少なく、そのために重量のある装甲を堅牢にすることができなかった。装甲は溶接・鋳造・ハイブリッドがあったが、いずれにせよ防御力は不足気味だった。さらに弾薬庫を左右袖部に設けていた前期型車体が側面を攻撃され誘爆炎上するケースが多発したため、後期型車体は弾薬庫を床に移 し、誘爆を防ぐ湿式弾薬庫を搭載して対処した。

戦歴

戦時中は「米軍の在るところにシャーマン在り」で北アフリカ戦線、西部戦線、太平洋戦線とあらゆる戦場に投入された。ソ連軍にも数千両がレンドリースされたため、東部戦線や満州でもその姿を拝むことができた。

一方、ドイツのIV号以降の重戦車に単体で対抗するのは困難極まりなく、数機で連携して当たることが多かった本車であったが、軍上層部も単車性能でドイツの猛獣に勝つつもりはハナからなかったので、前途有望な若者を I want you でジャンジャン前線に送り込み自慢の物量でドイツ戦車を擦り減らした。矢面に立たされる戦車兵にとってはたまったものではないが仕方がない、
これが戦争なのである。

まぁ、アメリカ軍は基本的には対戦車対策としてM4ではなくM36のような駆逐戦車に相手をさせるか、あるいは戦闘爆撃機などの航空支援で対応する気がまんまんだった。というのもあるのだが。
後年タングステン弾頭砲弾などを使えば朝鮮戦争でT-34も撃破したという記録も残されているのだか、戦時中、この弾頭は駆逐戦車やM26パーシングに優先的に割り当てられたものの、その当のM26もまともに戦争に参加したわけではないとなると、何がなにやら…。さぞや戦中、M4の大量生産を決定して改造処置を考えなかった上層部(AGF)の人は戦後恨まれたんではないだろうか。
英国ではさすがにM4の武装に危機感を抱いて主砲を交換、シャーマン・ファイアフライとして導入しており、こちらはドイツ軍戦車狩りに成果をあげていることは特筆すべきだろう。

 転じて太平洋戦線ではまともな戦車を開発できなかった日本にとって最高の戦車とは鹵獲したM3軽戦車という泣くに泣けない日本陸軍が相手のために無敵の重戦車ぷりを誇ったものの、クレイジーな日本兵の肉薄攻撃でやられた車両も少なくない。
同時に一式47mm機動砲(対戦車砲)による(極々至近距離での)待ち伏せ戦術も、硫黄島や沖縄戦などでM4にかなりの出血を強要している…まぁ、真正面から装甲を貫徹させるのは難しく、M4の側面、あるいはやり過ごしてからの後方からの攻撃が主だった戦果ではあるのだが…。
日本の架空戦記では三式中戦車や五式中戦車にバカスカやられているが、そこは戦勝国の余裕で許して欲しい。実際の算式、五式中戦車がどのような完成度、工業製品、戦車であったかはお察しください。

朝鮮戦争では前述したようにタングステン砲弾を持ちいればT-34を撃破しえたが、あくまで主力はM26が担っている。

その後、大量に生産されたM4は各国の軍に配備されたあと各地でスクラップとなって終了…とはならなかった。建国間もないイスラエルがM4を世界中アチコチから、あの手のこの手でかき集め(女の子使ってかっぱらう、映画に使う大道具として、スクラップ化されたもの二束三文で買い叩くなどなど)独自改良を施すことになった。
これが、スーパーシャーマン(M1)の誕生である。このスーパーシャーマンも年代がたつたびにその改造っぷりははげしく、M50スーパーシャーマンでは長砲身75mmを搭載した。この主砲フランスのAMX-13戦車に使われたものの改良・転用だが、元々はドイツのV号戦車(パンター)に使われた主砲のベースだから、回りまわってM4に搭載されるという皮肉なことに。
最後のM51スーパーシャーマンではT-55を撃破するため、105mm砲を搭載するにいたっている。
この他にも大量に手に入れたM4のシャーシを使って各種バリエーションに満ちた…何しろ、歩兵戦闘車両ならまだしも、自走砲、迫撃砲、ロケットランチャー搭載となんでもありで、キルヒョン対レーダーミサイル搭載車両という、ゲテモノ車両まで誕生している。

陸上自衛隊に於いてもM24、M41軽戦車と並んで、国産戦車配備までの戦車戦力を支え続けた。聖地の国で魔改造を施された物には未だに現役でこき使われている不運な車両もある。国内では陸上自衛隊土浦武器学校、富士学校などの一般公開で目にすることが出来る。靖国神社等に展示されている九七式中戦車とは、余りに工業製品としてのレベルが違うのは、あえて目を瞑るべきなのだろうか。

余談

アメリカ発の有名なRPG「Wizardry」(のマニュアル)において、本作の防御力に当たる「アーマークラス(AC)」が最硬の-10(LO)に達すると、そのキャラクターは「シャーマン戦車の装甲に匹敵する」防御力を得ていると表現されていた。

「戦車」のイメージから硬そうに見えるが、実際は上述の通りなので実際どこまで硬いのか怪しいものである。

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関連項目

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  • アメリカ合衆国
  • 第二次世界大戦
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