SARS-CoV-2/COVID-19関連のデマ・陰謀論の一覧 単語

サーズシーオーブイツーコヴィッドナインティーンカンレンノデマインボウロンノイチラン

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特に、根拠を外部リンクで示していない記述は信頼しないでください
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あえて「デマ/陰謀論」と言う強い言葉を用いていますが、正確には「確たる根拠が示されていない情報」であることにも注意してください。「根拠は示せていなかったが実は正しい情報だった」という可能性も(ちょっぴりは)残されています。

この記事について

この記事では、2020年現在は「新型コロナウイルス」と呼ばれることが多いウイルス「SARS-CoV-2」、およびそのウイルスによって引き起こされる疾患「COVID-19」に関するデマや陰謀論を紹介し、それらの根拠が曖昧である事を示す。

なお、この記事における「デマ」や「陰謀論」とは「根拠が曖昧であるもの」「確かな根拠が示されていないもの」を指す。この場合「どの程度の根拠をもって確かだと判断するのか」についてが問題となるが、ひとまず「匿名の人物や不明な情報源からの伝聞」を根源としたものは疑わしいとする。

そのため、この記事には「本当は正しい情報であるのに、誤ってデマ/陰謀論だと見なしている可能性」は付いてまわる。実際、匿名の人物がSNSで流した情報が正しかったという実例はわずかながらある(「ある企業のある事業所で感染者が出たそうだ」という情報。翌日にはその企業が公式発表した)。可能な限りそのような事態が生じそうな情報は避けるが、確たる根拠が新たに登場した情報については訂正を願う。

「なんで確たる根拠が無ければデマ/陰謀論扱いなんだよ。確たる根拠が無くても、疑う理由があるのならデマ/陰謀論ではないだろ……」という考え方の人からすると受け入れがたい記事になっているかもしれない。そういった方はここから下には目を通さず、信じたいことを信じて生きていくことをお勧めする。

ちなみに、このウイルスについてのデマ・陰謀論は本当にウンザリするほど多いので、すべてを網羅することは最初から諦めている。例えば有名なAFP通信のファクトチェックウェブサイト「AFP Fact Check」で「coronavirus」で検索してみよう。やたら多いぞ。日本のファクトチェックウェブサイト「ファクトチェック・イニシアティブ」では「新型コロナウイルス特設サイト」を設けているほどだ。

「イギリスのエリザベス女王が新型コロナウイルス検査で陽性となった」とするデマ

アメリカ合衆国のニュースサイト「UCR World News」が2020年3月27日に記事を掲載したことで広まったデマ。

UNITED KINGDOM- Queen Elizabeth II has tested positive for the novel coronavirus, Buckingham Palace confirmed in a shocking release a few minutes after Prime Minister Boris Johnson revealed he tested positive for coronavirus.

(和訳例「英国 - エリザベス2世女王は新型コロナウイルス検査で陽性であった。バッキンガム宮殿は、首相のボリス・ジョンソンがコロナウイルス陽性であったと表明した数分後に、この衝撃的な情報を公開した。」)

という書き出しから始まる記事であった。

3日前の3月25日にはエリザベス女王の息子であるチャールズ皇太子の陽性が英王室から発表されており、さらにこの当日の3月27日にはイギリスの首相ボリス・ジョンソンや保健相のマット・ハンコックなど政府首脳の陽性も判明していたこともあって、一部で信じてしまった人が拡散したようだ。

しかし、そのボリス・ジョンソンの陽性を伝えるBBCニュースでは「バッキンガム宮殿によると、93歳のエリザベス女王は3月11日にジョンソン首相と会っているが、体調は良好だという。」と伝えられており[1]、上記の「UCR World News」の記事の書き出しとは明らかに矛盾している。

この「UCR World News」は記事の署名も無く、サイトの「About Us」のところに運営企業や人物の情報は皆無で、連絡先としての記載はメールアドレス一つのみ……というあからさまに怪しいサイトである。2017年には既に「フェイクニュースサイトのリスト」[2]の中で名前が挙げられている。さらにこのサイトは3月13日には「アメリカの民主党大統領候補者のジョー・バイデンが新型コロナウイルス陽性だった」というフェイクニュースを報じた上にその後も掲載し続けている。信じるに値するサイトではない。

上記のように英王室の一員や英政府重鎮からもこのウイルスの陽性者が出てきている以上、今後エリザベス女王が陽性となってもおかしくはないが、この情報が広められた2020年3月27日~28日時点ではデマである。

「武漢の火葬場から流出した、携帯電話の山が出来ている動画」と称するデマ動画

「大量のスマートフォン端末が武漢の火葬場で発見された、それがこの動画だ」というデマ動画が2020年3月下旬にTwiiter上などで広まった。「中国ではスマートフォンの1440万回線以上が解約された」という話と共に広められており、「つまり中国はそんなにスマートフォン回線が解約されるほどの大量の死者が出ているのにそれを隠蔽している。死者の端末は火葬場で処分しているのだ」とほのめかすものだったようだ。

このデマ動画が広まった経緯を辿ると、2020年2月1日に台湾人のTwitterユーザーが「武漢の病院が火葬した人の携帯電話を片付けている様子らしい、怖すぎる。これマジ?」という文章とともにこの動画をツイートした。

そして2020年3月21日にアメリカ合衆国の政治家「Solomon Yue」氏が上記のツイートを引用しつつ「1450万個の携帯電話のうちいくらかは、武漢の1ヶ所の火葬場で見つかった。武漢コロナウイルスに殺された中国の人々は、世を去るときに彼らの携帯電話を一緒に持って行けない。私は彼ら亡くなった中国人犠牲者の方々の魂に祈りを捧げるが、「80967人が感染し3248人が死亡した」という中国の公式発表に疑念を抱く」とツイート。

このツイートを数名の日本人が引用したり和訳したりして広め、

さらに有名なまとめサイト「保守速報」がそういったツイートの紹介記事を書き、その記事をツイートで告知(投稿して1日で5000回以上リツイートされ、1万回近く「いいね」された)。その影響で日本でも拡散した。

しかし、この動画は少なくとも2019年9月から(すなわちCOVID-19が蔓延し始める前から)存在していたものであることが確認され、「武漢の動画だ」という情報はデマだったことが判明した。

なお、「1440万台」あるいは「1450万台」が解約された、という情報の元はアメリカ合衆国に本社を置く、中国に関するニュースを扱うメディア「大紀元」からの以下のニュース。

このニュースでは「大量の死亡者が出ているのを隠蔽しているのでは」という憶測も確かに紹介しているが、「COVID-19の蔓延のために経済不況となり、倒産企業が解約したり、複数の回線を契約していた個人が予備の回線を解約した」という別の憶測も合わせて紹介している。

「このウイルスが空気感染する、と『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された」というデマ

ニュースサイト「JBpress(Japan Business Press)」が2020年3月14日に掲載した以下の記事が元となり、「空気感染する」「世界で最も権威ある医学誌」「衝撃のリポート」という扇情的なタイトルもあってTwitterなどで拡散された。「JBpress」上だけでなく、その転載記事としてYahoo!ニュースにも掲載されたので多くの人が目にした。

この記事では、3月9日にアメリカの権威ある医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に載った論文である、として「新型コロナウイルスは空気感染する」といった内容を伝えていた。

しかし『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』にそのような論文がまだ掲載されておらず、プレプリントサーバー「mediRxiv」に掲載された以下の記事であったことが指摘された。これは3月9日ではないものの、3月10日にバージョン1が掲載されている

ただし3月17日には上記のプレプリントを元にしたと思われる査読後の文書が『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載されているため、誤りではあったもののこちらは致命的なデマというわけではない。

しかし内容について誤りがあり、「空気感染」ではなく「エアロゾル」となったり「物質に付着」したウイルスの生存時間に関するものだった。エアロゾルは医学的に言う「空気感染」(飛沫核感染)とは異なるものである。

誤りの指摘が多くなされた結果、上記の「JBpress」の記事は同日中に削除された。その後同URL上にて編集長とライターの双方の名義による訂正と謝罪の文が掲載され、また「JBpress」の公式Twitterでもアナウンスされた。

ちなみに2020年2月上旬に類似の話がまとめサイト「アノニマスポスト」のTwitterなどを介して拡散されたことがあったが、

その際に「エアロゾル感染」について専門家に確認した記事があり、詳しく記載されているため参照されたい。

「WHOの幹部が中国のコロナウイルス関連の会合で女性を撫でていた」というデマ動画

2020年3月上旬ごろに拡散されたデマ動画。

とあるTwitterアカウントが、「何らかの会合で説明を聞いている男性が横に座っている女性の背中を撫でている」という内容の動画に「WHOの高級幹部が、中国で新型コロナウイルスの感染状況の説明を聞いているところ。WHOの堕落がわかる」といった趣旨の説明文を付けてTwitterに投稿した。

このツイートは数日で1万数千回「いいね」が押され、9000回以上リツイートされて拡散された。「ハニートラップだ」「この女性は中国の貢物かな」「WHOの幹部はこう言った手口で中国に篭絡されているんだな」と言った反応があったようだ。

しかし、動画内に映っている「緑色の看板」?の文面から、どの集会であったのかを調べた人が現れ、その集会の様子を報じたニュースサイトも提示された。

このニュースサイトの3枚目の写真で、奥にこの緑色の看板があることがわかる。そして、このニュースサイト記事は2018年のもの。集会も2018年のビジネスに関する会合のものであった。

つまり、この集会はこのウイルス関連のものではないし、男性もWHOの幹部ではないと考えられるのである。それ以外に「動画に映っている人の中に半袖の人が居る」「動画内で誰もマスクを付けていない」などの点も、このウイルス関連の会合としては説明が付けづらい点である。

その点についてこの動画をツイートしたユーザーに質問した人も居たようだが、「よくわからないです」との回答が返ってきている。

「WHO幹部じゃないなら、この男女は誰なのか」については、「ノーベル物理学賞を受賞したことがある物理学者の人と、そのビジネスパートナーの人じゃない?」という説が有力なようだ。

「トイレットペーパーは中国からの輸入に頼っているので、今回のウイルスの流行のせいで不足する。急いで確保しなくてはならない」というデマ

2020年2月末ごろに流布されたデマ。

「どのような根拠からデマと言えるのか」という点も含めて、詳細は「トイレットペーパー騒動」の記事に詳しいのでそちらを参照されたい。

「中国が『日本肺炎』という蔑称を拡めている」というデマ

DHCテレビの報道番組「虎ノ門ニュース」の2020年2月28日放映回で、坂東忠信氏が紹介したことで広まった。詳細は単語記事「日本肺炎 」を参照。

「PCR検査が進まないのは国立感染症研究所のOBが邪魔していたからだ」と言うデマ

テレビ朝日のワイドショー「羽鳥慎一モーニングショー」の2020年2月28日放映回内にて、白鴎大学教育学部特任教授であり以前国立感染症研究所第3部の研究員でもあった人物が、あまりPCR検査が行われてこなかったことの理由について、自分が聞かされた伝聞として以下のように感情をこめて訴えた。なお、その伝聞元については具体的な情報を挙げなかった。

(前略)
『これは、テリトリー争いなんだ』と。
『このデーターはすごい貴重なんだ』と。
で、『衛生研から上がってきたデーターは全部感染研が掌握する』と。
で、『このデーターを感染研が自分で持っていたいということを言っている専門家の、まあ、感染研のOBが居る』と。
で、『そこらへんがネックだったんだ』と、いうことを、おっしゃっておられて。
まああの、私はその時に思ったのは、是非そういうことはやめて頂きたいと!
(後略)

この発言を受けて、国立感染症研究所に対するバッシングが巷で加熱した。

「デマじゃないじゃん、証言があるんじゃん。そんなテリトリー争いでPCR検査を邪魔するとか本当に許せないよ!」などと思っただろうか?

しかし、上記の「証言」だけでは、この話は本記事の冒頭で定義した「デマ」でしかない。「デマ」という言葉がひっかかるなら、「根拠が薄弱な噂話」と言いかえてもよい。なぜなら、この話の出元が「この特任教授にこの話を伝えた人物が語るところによると」という、匿名で正体不明の人物が根拠も示さずに提示したストーリーでしかないためだ。

この特任教授は、聞かされたストーリーが真実であると信じているからこそテレビでこの話をしたのだろう。だが、仮にその情報源の人物が

「うわぁ、この前話したときはその場の世間話が盛り上がると思って話を創っちゃったんだけど、本当はそういう話を聞いたりはしてないんだよなあ。まさかテレビで言っちゃうとは思ってなかった」

というつもりであったなら、この話の信憑性は雲散霧消してしまう。「匿名の人物からの証言にしか基づかない話」というものは、そういった蜃気楼のようなものでしかないのだ。

もちろん「匿名だが複数の人物から、同じ証言が続々出てくる」とか、「メールの文面などの証拠が残っていた」などの進展があればただのデマではなく「信頼性がある疑惑」にも変わりうる。しかしそういったなんらかの追加の根拠が無ければ、この話は真偽不明の噂話の域を出ない。

真偽不明の話を元にバッシングすることは、「いわれのないバッシングをしてしまった加害者になりうる」という危険をはらんでいるため注意されたい。

「このウイルスに再感染すると心不全を起こして突然死する」というデマ

というわけで、再感染を起こすと、コロナウイルスね、免疫がやっつけることができなくて、そして、ACE-2が障害されてね、で、心不全を起こす。心不全を起こして、突然死する。

一旦良くなって良かったねって皆にこれ思われて退院して、何でもないと思ってると、また次ね、感染すると、その時、死亡、突然死してしまうと。そういう。

これね、風邪なんてもんじゃないですので。もうほんとにね、風邪ってね、風邪のようなふりをしているだけですので。なんともない、他のようなね、他のウイルスと同じようなものですよってね、それ騙しですので、皆さん、絶対に、このウイルスには騙されないでください。

(※動画「新型コロナウイルスの再燃は抗体依存性感染増強現象(ADE)にて致死的 - YouTube」の終盤、まとめ部分より書き起こし。一部の言い淀み、繰り返しなどは省いた)

東京都町田市のクリニックの院長である医師が上記のような内容を語る動画「新型コロナウイルスの再燃は抗体依存性感染増強現象(ADE)にて致死的」。同クリニックのアカウントから2020年2月24日にYouTubeに投稿された。同クリニックの公式サイトに動画を紹介するページもあるので間違いないようだ。

上記のような内容を「医師が専門用語も交えて語っている」ということで信じてしまう人も多く、SNS上で拡散された。その結果、この動画は2020年3月1日までの時点で数万回再生されており、かなりの恐怖が煽られていた。

この動画はniconicoユーザーによってニコニコ動画にも転載され、こちらも数万回再生されている。なお転載したのは雑多な内容の動画をニコニコ動画に転載しているユーザーであり、おそらく同クリニックとは無関係のようだ。

しかしこの動画で語られた内容は、SARS-CoV-2/COVID-19についてこれまで科学論文などで示された内容を元にしてはいるようだが、ありていに言えば「それらの内容をごちゃごちゃに組み合わせた上で独自の見解を付加して恐怖を煽る最悪のストーリーを組み上げてみました」程度のレベルのものであり、要するにデマである。

この動画でも同クリニックのサイトでも、語っている内容の根拠となる文献などは一切示していない。だが、語っている内容から「ネタ元」は推測することが出来る。

動画内で「新型コロナウイルスは抗体依存性感染増強現象(antibody-dependent enhancement: ADE)を起こす」(要約)と断定調で語っている。しかし、SARS-CoV-2/COVID-19とADEを組み合わせた医学文献は、医学・生物学分野の学術文献検索サイト「PubMed」で検索すると2020年3月1日現在で1件しか存在しない。この論文を参照したのではないかと推測できる。

その1件の論文は『Is COVID-19 Receiving ADE From Other Coronaviruses?』(タイトル和訳例『COVID-19は他のコロナウイルスらからのADEを受けているのか?』)というもの。しかしこの論文はタイトルが疑問形である事からもわかるように何も断定していない。「かつてのSARSの原因ウイルスであったSARSウイルス(「-2」と付かない方)においてin vitroでは(生体外での実験的には)ADEらしき現象が確認された」という過去の報告を示しつつ「SARS-CoV-2でもADEが起きていると仮定すると、COVID-19の重症度に地域差があることの説明のひとつになりうるのでは?」という仮定の内容に過ぎない。もちろん「心不全を起こして突然死」等と言った内容は全く含まない。

動画内では「ACE2という細胞表面の受容体があり、これが働くと心不全などを予防するが、タバコやこのウイルスはACE2を止める働きがあるらしくて、どんどん心臓の傷害を起こしていって心不全を起こす」(要約)とも語っている。確かにかつてのSARSウイルスは「標的細胞表面のACE2受容体に結合してから細胞内に取り込まれる」という過程を取って細胞内侵入することが知られており、それを元に当然「SARS-CoV-2もそうではないか?」と調査されて、同じくACE2受容体に結合することで細胞内に侵入することが明らかとなってはいる。だが、だからといって「SARS-CoV-2でADEが起きると心不全をどんどん起こしていく」といった内容の報告は全く見つからない。

一応、中国の病院で「SARS-CoV-2に感染していると確認された有症状の入院患者41名のうち5名(12%)で、血液検査や心電図検査での急性心障害を確認した」という論文はある[3]が、この論文の著者は過去にインフルエンザの患者で同じ手法での急性心障害の調査をしており、インフルエンザ患者では321患者中で203名(63.2%)で急性心障害を確認している[4]。細かい患者の条件が違う可能性もある(COVID-19なら大事を取って軽症患者でも入院させたが、インフルエンザ患者は重症患者のみ入院させたとか)ので単純な比較はできないが、この材料からは「COVID-19はインフルエンザよりも心障害性は弱い」とも受け取れてしまう。

総合して、この医師が語る「このウイルスに再感染するとADEによって重症化して心不全を起こして突然死する」という話には根拠が著しく欠けている。もちろん「検索では根拠が見つからなかっただけで、この院長は本当に十分な根拠を有しておりまだ提示していないだけ」という可能性もあるかもしれない。この医師が根拠を提示したらこの記事のこの節は取り下げる。

なお、感染症の専門家である神戸大学教授の岩田健太郎医師もこの動画については厳しく批判している。

上記のバズフィードジャパンの記事からこの動画の問題点は周知され、ニコニコ動画でも上記のニコニコ動画に転載された動画について「ニコ動の検索などリスティングからは除外する措置」を取るとアナウンスされた。[5]

「このウイルスは熱にとても弱いのでお湯を飲むと防げる」というデマ

SNS上やチェーンメールにおいて2020年2月下旬に広まった。

「○○から教えてもらった情報です!このウイルスは熱にとても弱く○℃の熱で死滅するそうです!そのため、感染しないためにはお湯を飲むのがいいらしいです!」といった内容で流布された。

「教えてくれた人」は「海外/国内の専門家/医療関係者」であったりバリエーションがある。「○℃」の部分もバリエーションがあったようだが、「26-27℃」または「36-37℃」であったりしたようだ。

人間の体内で増殖できるウイルスがそんな温度で死滅するのは常識的にありえないが、一応報道機関が複数の専門家に確認している。みなさん「ありえない」で一致している。

医学的には「専門家の意見」は意外とエビデンスとしてのレベルは低いのだが、これはそういう問題は通り越しているだろう。防ぎたいなら素直に厚生労働省や日本感染症学会のページで勧める予防法を守ろう。

ちなみに派生した話題として「26~27℃とか36~37℃って、それって「お湯」か?」という議論も生じたようだ。割とどうでもいいな!

80 degree を80°Fと解釈した結果、26.66℃と誤訳していったという説もある。もし効果があるとしても80℃のお湯じゃ火傷の方が酷いわ!

「○○駅でコロナウイルス患者の中国人が血を吐いて痙攣してぶっ倒れた」というデマ

2020年2月下旬に、TwitterなどのSNSで流布された。「○○駅」は様々だが、京都駅という投稿が特によく出回ったようだ。実は日本国外でも、血を吐いて倒れている人の画像に「コロナウイルス罹患者だ」という説明を付けてSNSで流す例は少なくないらしい。

割と初歩的な問題点として「血を吐いて痙攣してぶっ倒れた人がいたとしよう。その人がコロナウイルスの罹患者だとなぜわかったのだ?」という点がある。あなたはぶっ倒れた人を見たとして、瞬時にその人がぶっ倒れた原因ウイルスを把握できるだろうか?その点を説明せずに「コロナウイルスだ!」と断定する調子でSNSに流す投稿は、全てデマ(すなわち、根拠無し)と言ってよい。

なおCOVID-19で口から血を出す可能性は無くはないのだが、吐血ではなく喀血であろう。食道の方から血が出てくるのが吐血で、気道の方から咳と共に血が出てくるのが喀血。ちなみにCOVID-19の多彩な症状の中において、喀血はさほど頻度が高い症状ではないようだ[6]

「武漢人が移動した経路を集計した地図」だとするデマ画像

アウトブレイク後に武漢市民が移動した痕跡を元にマップ化」という説明文が付けられたり、「武漢人が移動した経路を集計した地図 2019コロナウイルス地図」という説明文が重ねられた、海岸線の一部が見えなくなるほど膨大な本数の赤い線が世界地図に引かれた画像。2月の中旬から下旬頃に、日本語圏の掲示板やまとめサイト、Twitterなどで流布された。

これは英語版が先にあり、イギリスの有名なタブロイド誌「サン」[7]や「デイリーメール」[8]も2020年2月10日~11日にオンライン版の記事にこの地図を「武漢が封鎖される前に、数万人の武漢市民が逃げ出した経路を図にしたものだ」などと称して掲載していた。さらに前にはオーストラリアのメディアも紹介していたようだ。

これらの英語の情報から、海外情報を翻訳して紹介するブログ「劇訳表示。」などが和訳して紹介。そして日本語圏でも2月中旬から盛んに拡散されたという流れのようだ。

しかしこの画像は「武漢人が移動した経路の地図」などではなく、単に2011年時点の、世界中の3632の空港を結ぶ航空航路を画像化したものでしかない。以下の論文は2014年8月14日付けのものだが、「Figure 1」(画像1)の「b)」に全く同じ画像が示されているのがわかるだろう。

この画像が「武漢人が移動した経路の地図」などとして広まってしまった詳細は、根拠付きで以下のサイトに示されているため参照されたい。

「武漢で大量の遺体を焼却した結果、二酸化硫黄が大量に放出」とするデマ画像

「武漢で大量の遺体を焼却した結果、二酸化硫黄が大量に放出している」とする画像が2020年2月上旬にTwitterで流布された。

広まった大元は、下記の英語ツイートであるらしい。さらなる転載元がある可能性は否定できないが。

その一部を和訳した以下のような引用リツイートが日本語圏でも拡散された。

また、上記の英語ツイートは英語圏の複数のタブロイド誌のサイトに転載されたので、それらを海外ニュース翻訳サイトが和訳して転載。その他いわゆる扇情的なまとめサイトも転載。そういった記事のツイートを日本の有名な医師がリツイートするなどしたためにさらに拡散された。

しかし、この「遺体を焼却した結果二酸化硫黄が大量に出ている」というこの説明は全くのデマであった。

まず、この画像はWindy.comという気象予報関連のサイトが提供する二酸化硫黄予測地図からトリミングしたものだった。だがこのWindy.comのサービスは、NASAのGEOS-5(Goddard Earth Observing System, Version 5)が提供するデータを引用して未来予報画像を構築している。

そしてNASAの担当者は、この画像についてのファクトチェックを行ったAFP通信の取材に答えて「我々の予報データは過去の二酸化硫黄の排出データと気象情報から算出されているものでしかない。日々の二酸化硫黄の変化を把握してなどいないし、人間の活動による突然の変化など把握できない」と解答している。

「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」ことを発見した。よってこのウイルスは人工のものだ」というデマ/陰謀論

ニュースサイトなどでも取り上げられたので知名度が高いと思われるこのデマ。2020年2月初めに出回った。このデマは後に訂正されたのだが、訂正の方のニュースはさほど出回らなかったので、訂正前の情報だけ聞いたという人も少なくないと思われる。

まずややこしいことに、「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」と示唆する論文を発表した」と言うところまでは事実である。以下のリンク先で、2020年1月31日にウェブ上で公開された。

「じゃあデマじゃないじゃん」と思うかもしれない。しかし、この論文には瑕疵があり、発表したサイトのコメント欄は他の専門家たちからの多数の突っ込みで溢れた。その後、著者たちはこの論文を取り下げている(リンク先に本文が無いのはそのため。上部にある赤い小囲み「This article has been withdrawn.」は「この記事は取り下げられました」という意味である)。つまり、正確には「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」と示唆する論文を発表したが、誤りを指摘されて論文を取り下げた」というのが正確な情報になる。

「そんなことあるゥー?」と思うかもしれないが、あるある。査読有りの学術雑誌に掲載された論文でも訂正が入ることはままある。

さらに、ここで注意したいのはこの論文が投稿されたサイトは「bioRxiv」(bioRχiv)と言うのだが、これはいわゆる「プレプリントサーバー」なのだ。科学論文は多くの場合、査読付きの学術雑誌に送られて、査読担当の専門家が内容をチェックして、問題が無ければ学術雑誌に掲載される、という段階を踏む。しかしその査読に時間がかかるので、スピーディーに発表するために「これ、私たちが書いた論文なんだけど見てくれや」とウェブに掲載するのが「プレプリントサーバー」である。まともな論文も少なくないのだが、査読というチェック機能が働かない分、今回のように重大な瑕疵がある論文が掲載されていることもある。

日本の国立国会図書館の「カレントアウェアネス・ポータル」も、プレプリントの信頼性に絡めてこの件を報じた記事を掲載しているので参照されたい。

ちなみに「瑕疵って、どういう瑕疵だったんや?」と思うじゃん?素早くこの論文の瑕疵を主題として論文を仕上げ、査読付きの学術雑誌に送って査読を通過させて掲載させた研究者がいるので、その論文を読めばどんな瑕疵だったのか丸わかり。これは「晒し上げ」みたいなもんで、やられたインド人研究者は結構ぐぬぬだ。まあ結果的に世界的にデマが流れる原因になっちまったんだから手厳しい仕打ちをうけても仕方ないかもしれないが。しかもその内容が「こうして、誰でもアクセスできるデータベースで検索してチェックすれば、ほらこんな風に初歩的な瑕疵がわかりますね」というとても易しい方法だったので、余計恥ずかしいぞ!

その「晒し上げ」的な論文はタダ(オープンアクセスという)で全文が読めるので、興味があるなら以下のリンクからどうぞ。

このデマの関連動画

「ウイルスはアルコールで消毒できない、よってこのウイルスにはアルコールが無効という判断が確実」というデマ

2020年1月末にTwitterで流布されたデマ。

元看護師の漫画家が自らのTwitterアカウントに「基本ウイルスにはアルコール消毒が無効」という趣旨の内容を含む「ウイルス感染症対処法」と称する画像や、「ウイルスがアルコールで除菌できないというのが医療現場での通説。このウイルスも未検証なのだからアルコール消毒は無効という判断が確実」という趣旨のツイートを投稿した。

「元看護師」という経歴があることや、一部の界隈で人気がある漫画家であったことから信用する人もおり、数百回の「いいね」「リツイート」が行われて小規模ながら拡散した。

しかし、実際にはこのウイルスはエンベロープを有するためアルコール消毒が有効である。

新型コロナウイルス感染症の原因病原体であるSARS-CoV-2は、エンべロープを有するためアルコールに感受性を有します。

高頻度接触部位、聴診器や体温計、血圧計等の器材などは、アルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤含有のクロスでの清拭消毒を行います。

(※日本環境感染学会『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド』より。上記引用文は2020年3月2日付けの第2版から。)

2020年2月6日には、厚生労働省のTwitterからこのデマに対する注意喚起も行われた。

同日ニュースサイト「J-CASTニュース」は、この件について記事を掲載している。

「関西空港に発熱と咳の症状がある武漢から来た観光客が居たが、逃走した」というデマ

2020年1月下旬に、主にTwitterで流布されたデマ。

遡れる限りの発端は、とあるTwitterユーザーが投稿した画像ツイート(Twitterアカウントが凍結されているため、インターネットアーカイブ)。このツイートは中国のマイクロブログサービス(すなわち、ツイッターみたいなもの)である「微博」の投稿をトリミングして投稿主の情報がわからないようにモザイクをかけたものだった。そしてその画像内の投稿文の内容は

关西机场发现从武汉来的中国游客发热咳嗽,送到医院检查人家跑了。说我还得去环球影城和京都呢。这他妈得传染多少人要是携带者。
住大阪的都小心吧,真他妈缺德。

関西空港は発熱と咳の症状がある武漢から来た観光客を発見し、検査のため病院に送ったがこの人は逃げ去ってしまった。それどころか「私はユニバーサルスタジオと京都に行かなくてはいけない」とさえ語った。もしキャリアだったらこのファック野郎はいくらかの人に伝染させてしまう。
大阪の街に住んでる人は気を付けよう、本当にけしからんファック野郎だ。

というものだった。ちなみに原文に現れる「他妈」という単語(直訳すると「彼のお母さん」?)の意味が今一つわからなかったが、調べたところ「ファック」に近いようだ。詳しくは「他妈的」の記事を作成したのでそちらを参照されたい

この画像ツイートについて、2020年1月23日に日本で活動する中国人漫画家のTwitterアカウントに引用リプライで知らせたユーザーが現れ、そしてその漫画家はそのリプライを送られてすぐにこのリプライに「症状がある中国人が関西空港から逃走した」という和訳を付けて引用リツイートし、さらに「この中国人は武漢から来ており、京都とユニバーサルスタジオジャパンに行くらしい」という追加情報もツイートした。漫画家と言う注目を集める立場の人物がツイートで知らせたことで、この情報がかなり拡散されたようだ。

だが、元をたどればこの情報のソースは「モザイクで誰かもわからないようにされた、一人のネットユーザーの書き込みと称される画像」という非常に不確かなものでしかない。しかしソースの確実性などはあまり顧みられることないままに拡散されてしまったようだ。複数のまとめサイトでも「こんな噂がある」と紹介されていた。

そしてその後1月24日、吉村洋文大阪府知事の公式ツイッターにて、上記のようなまとめブログを示しつつ「この情報はデマです。」と断言するツイートがなされた。

さらに関西空港の公式Twitterは「このような事実はございません」と否定し、さらに「関係機関からの正式な発表に基づかない不確かな情報にはご注意ください。」という注意文もツイートした。

「このウイルスは日本の731部隊由来だ」というデマ/陰謀論

「731部隊」「コロナウイルス」でSNS上で検索すると、2020年1月下旬ごろから出回り始めているようだ。

しかし、戦後に米軍が731部隊関係者を尋問して得た情報をまとめた機密文書「ヒル・レポート」には731部隊で研究されていた複数の疾患が掲載されており、その中にはインフルエンザや天然痘などウイルスが原因である疾患も混じってはいるが、コロナウイルスは含まれていない[9]

それもそのはずで、731部隊が活動したのは1930~40年代だが人に感染するコロナウイルスが発見されたのは1960年代であり[10]、つまり731部隊の時代にはコロナウイルスは発見すらされていない。

どうもこのデマ/陰謀論を日本語圏で信じて流しているのは、安倍晋三総理大臣に批判的な人が多いようで、「731部隊には岸信介が深く関わっていた」というデマ(「731部隊」の記事の「731部隊に関するデマ」の節を参照)を組み合わせて信じているらしい人も多い。これは安倍晋三総理大臣の祖父が岸信介であるためかと思われる。

「「このウイルスは日本の731部隊由来だ」というデマを中国の軍人が言っている」というデマ

上の派生版で、「デマを流している人物に関するデマ」というなんだか複雑なデマ。

軍服らしき服装の男性が、中国語と日本語で「台湾と、日本の731部隊が、中国に新型コロナウイルスを放流したのだ」と糾弾調に話している動画が中国・台湾・日本のSNSで出回ったのだが、日本語圏のTwitterでは「中国の軍人」と説明する2020年2月中旬の投稿が特に多くのリツイートを集めた。

上記のように「731部隊由来だ」などというこの男性が話している内容は確かにデマである。それはそれとして、この人物の動画は軍人としては何だか妙であることに気付くだろうか。軍服?にバッジを付けているが、そのバッジに「新四軍」と書いてある。「新四軍」とは1930年代~1940年代に存在した軍事組織である。現在の中国の軍隊に「新四軍」という組織が絶対に無いとは言えないものの、本物の軍人ではなく「軍服コスプレ」をしているだけの変な人なのではないかという疑惑が生じる。

よく見るとこの動画の下方には「@刘恕恩」という文字が薄く映っている。この「刘恕恩」という氏名から探ってみると、どうやらこの人物は「刘恕恩」(別名義「刘强」)と言う人物で、2011年に靖国神社に放火し、2012年に韓国の日本大使館に火炎瓶を投げ込んだ犯人であるらしい。

中国におけるWikipedia的なサイト「百度百科」には「刘恕恩」の記事が写真付きで存在しており、動画の男性と同一人物に見える。記事本文によれば、スピリチュアルセラピストのような職業を自称しているようだ。他にも、上記の放火事件なども含めてこの人物について解説した中国語のサイトもあるのだが、ストレートに「奇人」と表現されている。そしてこの2つのサイトのどちらにおいても、軍人であるという情報は記載されていない。

よって現在入手できる情報からは、この人物は「軍人」というわけではなく民間の奇人であるようだ。調べるのに時間がかかった割にウイルスとあまり関係ない話だったが、かかった手間がもったいないので一応この記事に載せておく。

関連リンク

関連項目

  • SARS-CoV-2
  • パスタの棚が完全に空になっているよ
  • トイレットペーパー騒動
  • 日本肺炎
  • 買占め
  • デマ
  • 陰謀論
  • フェイクニュース
  • ネットde真実
  • インフォデミック

脚注

  1. *ジョンソン英首相、新型コロナウイルス陽性 保健相も - BBCニュース
  2. *List of Known Fake News Sites in South Africa (and beyond) | MyBroadband Forum
  3. *Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China - The Lancet
  4. *Association Between Cardiac Injury and Mortality in Hospital... : Critical Care Medicine
  5. *ドワンゴ専務取締役でniconicoの代表である「栗田穣崇」氏のツイートより
  6. *Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China - The Lancet
  7. *Horrifying new data reveals no country safe from coronavirus’ deadly tentacles – The Sun(その後、誤りを認めて記事を訂正済)
  8. *Coronavirus death toll surpasses 1,000 as more than 100 people died in the China in one day | Daily Mail Online
  9. *松村高夫, 金平茂紀 『ヒル・レポート』(上) : 731部隊の人体実験に関するアメリカ側調査報告(1947年) 三田学会雑誌 (Keio journal of economics). vol84, no.2 (1991.7), p.508(206)-526(304). 慶應義塾経済学会
  10. *Viruses | Free Full-Text | Human Coronaviruses: Insights into Environmental Resistance and Its Influence on the Development of New Antiseptic Strategies
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