カレンブラックヒルとは、2009年生まれの日本の元競走馬である。青鹿毛の牡馬。
馬名の由来は、冠名+ネパール原産の知的で勇敢な猟犬の一種から。
主な勝ち鞍
2012年:NHKマイルカップ(GI)
2012年:ニュージーランドトロフィー(GII)、毎日王冠(GII)
2014年:ダービー卿チャレンジトロフィー(GIII)
2015年:小倉大賞典(GIII)。
概要
デビューから秋の天皇賞まで
父ダイワメジャー、母チャールストンハーバー、母父Grindstoneという血統。
ちなみに、馬主さんはカレンチャンと同じである。
さて、同馬がデビューする前後のこと。
この馬の主戦となる秋山真一郎はカレンブラックヒルと同世代の馬でゴールドシップとグランデッツァという2頭に騎乗していた。
しかし、ゴールドシップとグランデッツァが同じレースに出ることとなり、秋山はグランデッツァを選択したのだが、ゴールドシップは秋山が降板後に重賞を勝つなど結果を残し、さらにグランデッツァもミルコ・デムーロに乗り替わることとなった。
グランデッツァから降ろされた後、秋山はこうつぶやいたという。
これを受け、平田厩舎サイドは「カレンブラックヒルは秋山で行こう」と決意し、秋山真一郎とカレンブラックヒルのコンビが結成されることとなった。
ダメだよ、グランデッツァもカレンブラックヒルと同じ厩舎じゃないかとか言ったら。
馬主さんが違うのだから。
さて、カレンブラックヒルであったが、デビュー戦では3番人気にすぎなかった。
しかし、そのレースを軽く逃げ切り初勝利を飾ると、続く500万下のこぶし賞も4コーナーで先頭に立つとそのまま押し切り、連勝をする。
そして、一息入れてGIIのニュージーランドトロフィーに挑むと、このレースも2番手から抜け出し快勝。
返す刀で、NHKマイルカップに挑むと、このレースでは先頭に押し出されながらも自らペースを作り、直線では他の馬を突き放し、後ろでマウントシャスタが斜行し、引っかかってしまったシゲルスダチが落馬したその裏でそのまま先頭でゴールし4連勝でGI制覇。
さらに、秋山騎手や管理する平田修調教師にとっても、ベッラレイアで逃したあのオークスから5年でのGI初制覇となったのである。
ちなみに、無敗でNHKマイルカップを制したのはエルコンドルパサー以来であった。
その後、夏を挟み、秋初戦には毎日王冠を選択。
毎日王冠は毎年ハイレベルな馬が集うレースだが、特にこの年はこの馬の他に2010年ダービー馬のエイシンフラッシュやマイルGIを勝利しているリアルインパクト、グランプリボス、エイシンアポロン、ストロングリターンを筆頭に出走16頭のうち13頭が重賞馬という超豪華メンツで、
レース開始前から競馬ファンの間ではサイレンススズカ・エルコンドルパサー・グラスワンダーが一同に会した1998年の毎日王冠以上の名勝負になるのではないかとも囁かれていた。
このレースではシルポートとグランプリボスがハイペースで前を引っ張り、単騎の3番手追走となったが、ここでも直線で前の馬をとらえると、後ろから追いこんできたジャスタウェイなども振り切って、5連勝を飾り、秋初戦も勝利で飾った。
ちなみに84年のグレード制導入以来、デビューから無敗で毎日王冠を制覇した馬はこの馬が初めてである。え、オグリキャップがいるって?オグリは笠松時代に2敗している。
そして、秋の目標である天皇賞(秋)に挑んだ。
レースでは8枠16番に入ったが、予想通りの大逃げを打ったシルポートの2番手を追走し、直線ではシルポートをかわしたものの、経験の差なのか距離の壁なのか、直線で伸びきれず、エイシンフラッシュの5着と敗れた。
また、この敗戦によってカレンブラックヒルの無敗記録は5でストップしてしまうこととなった。
その後は、香港カップへの出走も計画していたが馬に疲れが出たため、放牧に出された。
念のために言っておくが、この馬はまだデビューから1年も経っておらず(デビューは3歳の1月に入ってから)無理をさせる段階ではないという陣営の判断もあったのかもしれない。
勝ち方としては先行押し切りという基本に忠実なスタイルであり、派手なレースをしているわけではない。
また、騎手もどちらかといえば地味かもしれない。
でも、こんな王道のような競馬をする馬……と言われて筆者が真っ先に思い浮かんだのがテイエムオペラオーである。
距離適性は違うがレーススタイルはよく似ているのではないだろうか。
派手な勝ち方をするわけじゃない。
しかし、堅実にしっかり走り、レースが終わっていれば先頭にいる。
それが、この馬の強さでもあり魅力ではないだろうか。
秋山騎手と平田調教師のコンビで突き進むカレンブラックヒル。
そのレース中の秋山騎手の姿には5年前のベッラレイアの無念を晴らすかような気迫が見えているように感じる。
チーム・ベッラレイア、いやチーム・カレンブラックヒルの挑戦は始まったばかり。
その挑戦は、まだこれからも続く……と思われていたのだが。
狂った歯車
歯車が狂い始めたきっかけは4歳時に秋山のダート適性の訴えを受けてフェブラリーステークスに挑んだことであった。
実は、フェブラリーステークスには『芝からの転向初戦の馬は優勝はおろか馬券圏内すら入れない』というオカルトのようなデータがある。
このデータ、案外バカにできないもので過去に馬券圏内に入ったのは後にドバイワールドカップで牝馬としては史上最高の2着と健闘したトゥザヴィクトリーの3着のみで、GI勝ちのあるローレルゲレイロやグランプリボスですら惨敗というありさまであった。
そのジンクスを打破しようとフェブラリーステークスに挑んだカレンブラックヒル。
有力馬の回避もあり1番人気であったが、グレープブランデーの15着に惨敗してしまう。
その後挑んだマイラーズカップではグランプリボスで4着に健闘したものの、安田記念ではロードカナロアの14着と再び惨敗。
ここで、陣営は秋山を降板させ、岩田康誠を起用しマイルチャンピオンシップに挑んだ。
しかし、マイルチャンピオンシップでも輝きを取り戻すことはなかった。
トーセンラーが武豊騎手のGI100勝目となる末脚を見せた一方で、カレンブラックヒルは18着と終わった。
そして年が明け2014年、阪急杯には秋山で挑んだもののこちらも11着と惨敗。
次戦はハンデ戦のダービー卿チャレンジトロフィーにて57.5kgを背負い1年半振りに勝利するも、
その後安田記念・オールカマー・天皇賞(秋)・金鯱賞と惨敗。
翌2015年も諦めず現役続行。小倉大賞典で58kgを背負って勝利し、大阪杯と安田記念はそれぞれ松山弘平と武豊が騎乗するも惨敗。秋シーズンも勝利できず、マイルチャンピオンシップ13着を最後に引退となった。あのダート挑戦以降、カレンブラックヒルは完全に歯車が狂ってしまったとも言えるだろう。
引退後は種牡馬として優駿スタリオンステーションにスタッドインしており、2019年に産駒がデビューとなった。
子はそこそこの勝ち上がり率はあるものの、(2020年10月20日現在)まだJRA重賞勝利馬は出ていない。
血統表
ダイワメジャー 2001 栗毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
スカーレットブーケ 1988 栗毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victiria | |||
*スカーレットインク | Crimson Satan | ||
Consentida | |||
*チャールストンハーバー Charleston Harbor 1998 鹿毛 FNo.25 |
Grindstone 1993 黒鹿毛 |
Unbridled | Fappiano |
Gana Facil | |||
Buzz My Bell | Drone | ||
Chateaupavia | |||
Penny's Valentine 1989 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
Mrs. Penny | Great Nephew | ||
Tananarive | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)、Le Fabuleux 5×5(6.25%)
父ダイワメジャーは6歳まで走り1600m~2000mのGI5勝を挙げた名馬。産駒傾向もマイル中心の快速馬を多く輩出している。
母*チャールストンハーバーは6戦未勝利。
母父Grindstoneは1996年ケンタッキーダービーの優勝馬。種牡馬としては大物はベルモントステークス優勝馬のBirdstoneくらいで並の種牡馬といったところ。
関連動画
関連項目
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