高機動型ザクⅡ(高機動型ザク、ザクR型、ザクR-1型)とは、ガンダムシリーズの書籍『ガンダムセンチュリー』およびメカニックデザイン企画『MSV』に登場するモビルスーツである。
ザクⅡR型とは
R型の設定はムック『ガンダムセンチュリー』に初めて掲載され、その後『MSV』にて細分化、ザクⅡからゲルググへ移行する時期の橋渡し的な機体として再構成された。
また、MSVシリーズの第1弾として発売された記念すべき機体でもある(ただしMSVの中では、TV版没案のデザインをクリーンナップした、俗に言うジオン水泳部の機体がこれに先駆けて商品化していた)。
南極条約締結後、汎用性の高い機体ではなく純粋に空間戦闘に特化したモビルスーツとして、ザクⅡF型をベースに改修を行った次期主力機候補。名称の通りザクⅡの高機動型で宇宙専用機である。R型の系譜はジオン系MSVの花形的な立場であり、「黒い三連星」をはじめ「真紅の稲妻」ジョニー・ライデンや「白狼」シン・マツナガなど、名だたるエースパイロット達が一度は本機に命を預けたとされている。
資料によって呼称が統一されておらず「高機動型ザク」「高機動型ザクⅡR-1型」と記載した資料もあるが、ニコニコ大百科の記事タイトルではひとまず「高機動型ザクⅡ」と呼称する。
R-1型/専用機 → RP(試製R型) → R-1A型/専用機の順に解説。
高機動型ザクⅡR-1型
ZAKUⅡ HIGH MOBILLTY TYPE 高機動型ザクⅡ |
|
型番 | MS-06R-1(RP、R-1A) |
頭頂高 | 18.0m |
重量 | 61.8t(本体) / 76.8t(全備) |
出力 推力 |
1,012kw 52,000kg |
装甲 | 超硬スチール合金 |
搭乗者 | 黒い三連星(ガイア、マッシュ、オルテガ) シン・マツナガ ブレニフ・オグス ノルディット・バウアー エリック・マンスフィールド アナベル・ガトー ユーマ・ライトニング 他 |
武器 |
後述のRPを経て開発された初期量産モデルのR型。
エースパイロット達からは高い支持を得た一方で、機体自体に癖が強すぎるのと簡易性・当時の生産ラインのgdgdから本格的な量産には至らなかった。
F型との相違点に背部の新型メインロケット二基、ベクタードノズルとなる両脚部・増速ブースターユニット、大型化したインテグラルタンクが挙がる。
ランドセルは全体を一回り大きなタイプに再設計しており、スラスターを下部、プロペラントタンクを上部に配置。メイン・スラスター2基は220t(220tはセンチュリー設定。MSV設定は218t)もの推力を誇り、F型の105t2基とは二倍以上の差がある。
脚部はスラスターを備えた推進ユニットであり噴射方向を自由に変更することも可能なベクタード・ノズルでもある。このスラスターを稼動させる為のプロペラント・タンクを内蔵した事によって大型化し、重量も嵩んでしまった。
太腿部にもタンクは内装されているものの、関節の稼動域を狭めるという結果を招いた。機体の特性と構造上の問題で地上での運用は不向きであり、宙間戦闘に特化させた初の宇宙用ザクⅡとなっている。
しかし何もウィークポイントはこの限りではなかった。とりわけR型は推進材の燃費が悪く、稼働時間がベース機のF型よりも短いと伝えられている。それを助長してしまっているのが「パイロットの低質化」であった。これは開戦当時から多くの熟練パイロットが失われたのが原因とされている。
これほどまでに推進材の消費に気を回してもパイロットの練度の差燃料の配分問題が生じるなど、当初から既に問題が浮上しており、スペックの高さと現場での評価が釣り合わなかった。
汎用性以外の全性能でF型を上回りながらもスラスターの生産効率が悪く、さらにはスラスター自体にも不良品があったようだ(初期配備の機体はこれが原因で多くが撃破された、とする資料もあった)。
この時点のR型は改善の余地が見られた。22機がロールアウトした時点でR-1Aへの改良・移行が行われている。このため初期量産仕様は便宜的に先行量産型とも呼ばれる。
R-1型の専用・カスタマイズ機
- 「ブレニフ・オグス専用機」
- 書籍『戦略戦術大図鑑』に登場。
連邦・ジオン両軍を通じて堂々の撃墜数一位を記録したブレニフ中佐の専用機(MS:193機・艦船:8隻)。搭乗した期間はルウム戦役後の数ヶ月間とされている。色は通常のザクⅡと同じ。彼は他のエースパイロットと違いペイントを好まなかったからである。 - なお、同書籍の撃墜数ランキングにおいて、何故かR-1型に乗ったとする記述が無い。他のパイロットにも同じ事が言える事から、単にハボクック予備役中将殿の編纂ミスか何かだろう。
- 「ノルディット・バウアー機」
- 書籍『戦略戦術大図鑑』に登場。連邦・ジオン通して撃墜数2位をマークしたノルディット・バウアー中佐の機体(MS:191機・艦船4隻)。
- 「エリック・マンスフィールド専用機」
- ジオン軍撃墜数4位のエリック・マンスフィールド大佐専用機(MS:156機・艦船:3隻)。
- エリックと言えば『MSV』のR-1A型の搭乗者でパーソナルカラーもグレーのはずだが、何故か『戦略戦術大図鑑』ではRPと同色(赤)のR-1型が描かれた。しかしブレードセンサーが側頭部に装備されている点は専用のR-1A型と同じであった。
- 「シン・マツナガ専用機」
- 『MSV』でジョニー・ライデンと並んで知名度の高いドズルの忠臣“白狼”シン・マツナガ大尉の専用機。ただ、大尉の機体は後述のR-1A型だったとする見方も強い(というよりR-1Aがマツナガの代名詞的な機体)。
プロトタイプ高機動型ザクⅡ
プロトタイプ高機動型ザクⅡ、あるいは試製高機動型ザクⅡとも呼ばれるR-1型のテストベッド。
開戦一ヶ月後、F型から2機がRPへと改修。グラナダ基地にてテスト飛行を行った。テストパイロット担当はジオニック社のザクひいてはモビルスーツというカテゴリーの発展にも大きく貢献したエリオット・レム少佐(あるいは中佐。当時のエリオットの階級は資料毎に異なる)。
R型の燃費の悪さは2週間に及ぶ試験から既に判明していた。それでも開発部と首脳部はポテンシャルに期待し、次期主力機候補として量産の決定を下したのである。
武装は420mmバズーカとジャイアントバズを試験に持たされた。
漫画『MSV-R 虹霓のシン・マツナガ』では、黒い三連星とマツナガの“喧嘩”をエリオットが利用し、マツナガの乗機に試製R型を選び、機体テストを兼ねて戦闘を行った。この際重大な不具合も見つかっている。
高機動型ザクⅡR-1A型
R-1型に燃料対策を処した改造機。対外的にR-1型と言えばこちらを指していると見ていい。
これまでのR型は母艦の専用補給ベッドを介して補給が行われていたが、R-1A型では補給のサイクルを考慮して燃料タンクをカートリッジ化した。よって隊の随伴機にでも補給用の予備カートリッジを装備させておけば自由に交換ができるのだが、推進剤の消費が激しい点や生産性は改善されていない。
R-1A型から脱出機能が追加されており、緊急時にスライドデッキ部の射出が可能となった(推進機、太陽電池、生命維持機能も付いている)。
生産デッキ上にあったR-1型も11機(※10機とする資料の方が多い)がR-1A型に改造された。R-1型、R-1A型の合計生産数も諸説あるが、資料の一つで78機であったと言われる。
R-1A型の専用・カスタマイズ機
- 「シン・マツナガ専用機」
- 『MSV』に登場する白いR-1A型。先述した“白狼”マツナガ大尉の代名詞的機体で、MSV設定によると彼が最後に乗った機体とされる(後発の作品ではゲルググなど色々設定が増えている)。
- 左肩スパイクアーマー部に彼のパーソナルマークである白い狼が刻まれている。耐衝撃性の向上の為、シールド、スパイク自体にも改装が施された。マツナガはドズルからの信頼も厚く、ドズルの戦場視察の折には必ずつき従っている姿が確認されたという。
- 彼のR-1A型はソロモン攻防戦のソーラレイ照射によって消失している。が、実はこれ以前に本国からの召喚命令が出ており、ソロモンから離れていたマツナガは無事であった。
- 「黒い三連星専用機」
- 『ガンダムセンチュリー』『MSV』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に登場。
- 黒を基調としたR-1A型。現在の『MSV』設定では彼等の機体はグラナダ製であり、他の機体と細部が異なるとの事。『THE ORIGIN』公式ガイドvol2ではルウム戦役に参加したのはR-1A型とされており、本機はORIGINのアニメにも出演を果たした。
- 「エリック・マンスフィールド専用機」
- 『MSV』に登場。先述通りブレードセンサーを側頭部に装備し、灰色を基調としている専用機。
- 「マサヤ・ナカガワ専用機」
- 『MSV』に登場。ア・バオア・クーに駐屯しているEフィールド防空大隊所属のマサヤ・ナカガワ専用機。色は茶色。
- 「アナベル・ガトー専用機」
- 『MSV-R』で設定された機体。ソロモンの悪夢と呼ばれる前のガトー専用機。
- 「ユーマ・ライトニング専用機」
- 『MSV-R』に登場。キマイラ隊の若きエース、ユーマ・ライトニング少尉が高機動型ゲルググの前に乗っていた機体。色はブルー、ホワイト、グレー。
- ロバート・ギリアム少佐の「高機動型ザクⅡR-2型」と色が多少似ている事から誤認されたとか。彼が敬愛するジョニーと同じ事になっていたのは何の因果か…。
他にもあるかもしれないが、とりあえずMSV~MSV-RのR-1型はこれが全てである。
高機動型ザクⅡR-2型
一般的には「真紅の稲妻」ことジョニー・ライデン専用の高機動型ザクⅡと認識されている機体。
→詳細は「高機動型ザクⅡR-2型」を参照。
このタイプは当初ビーム兵器の携行を目的としていたが、技術不足により一旦諦めている。ただしビーム兵器採用機の名残からジェネレーター出力が高く、既に性能はザクとはかけ離れていた。その性能を見初められてこれまで通り実弾メインに扱う量産機として再設計しコンペティションに臨んだが、結局はリック・ドムが採用される事となる。
サイコ・ザク
漫画&アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場するジオン側の主役モビルスーツ。
正式には高機動型ザク リユース・P・デバイス装備という。
→詳細は「サイコ・ザク」を参照。
パイロットの脳が送る電気信号を駆動系に伝達させ、搭乗機と一体化するという新たな操縦系統を採用している。ただし現時点では技術が未成熟でパイロットの義肢化を行わければいけない。だが、これが上手くいけば高機動型ザクのパイロット問題、機種転換、未熟な学徒兵に頼らなければならないパイロット不足なども即時解決出来る。…まぁ既にコンペティションの結果リック・ドムが正式採用されている為、R型の採用の方は手遅れかもしれないが。
なお、本機はガンダム(フルアーマーガンダム)の破壊に成功したザクである。
高機動型ザクの系譜
詳細は各個別記事を参照。
- 「高機動型ザクⅡR-1型」←今ここ
初期量産モデルのR-1型、改良量産型のR-1A型、R型の試作モデルであるRPの計3機種。 - 「高機動型ザクⅡR-2型」
開発が遅れていた第2次主力機(後のゲルググ)の穴埋め目的の機種。リック・ドムと競合していた。
携行ビーム兵器(ビーム・ライフル)を扱うべくR型のジェネレーターを強化したR-2P(ただし、実戦レベルには至らなかった)と、その改修機であるR-2型が存在する。
非公式寄りだがこれにフルバレットザクを加えた計3機種。 - 「高機動型ザクⅡR-3S型」
先行量産型ゲルググの開発母体となった、初めてビーム・ライフルを装備したジオンの機体。 - 「宇宙用高機動試験型ザクⅡ」
08小隊の第一話でアイナが乗っていた黒いザクⅡ。リック・ドムの試験機である。ドムは別企業のMSだが、リックドムの開発は軍部主導のため、母体にザクが使われた。R型ではなくF型とする説もある。
ザクⅡの高機動型は他にも陸戦高機動型ザクⅡ(G型)や、サイコミュ高機動試験型ザクⅡという機種もある。これらはR型とは関係ないが、強いて言うならG型の脚部アウトラインにR型の面影が見られる。
関連項目
- MSV
- 高機動型ザクⅡR-1型
- 高機動型ザクⅡR-2型
- 高機動型ザクⅡR-3S型
- 宇宙用高機動試験型ザクⅡ
- 陸戦高機動型ザクⅡ
- サイコミュ高機動試験型ザクⅡ
- サイコ・ザク
- フルバレット・ザク
- ガンダムシリーズのMS・MAの一覧
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