蒸気が勢いよく噴き出して
鉄の車輪が回り始める
最初はゆっくりと
やがて豪快に
アジアエクスプレス(Asia Express)とは、2011年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。
グレード制以降で史上初となる「芝初挑戦でGI勝利」を達成した2013年の2歳王者。
主な勝ち鞍
2013年:朝日杯フューチュリティステークス(GI)
2014年:レパードステークス(GIII)
父*ヘニーヒューズ、母*ランニングボブキャッツ、母父Running Stagという血統のアメリカ産馬。
父はアメリカでG1を2勝。持込馬として日本に来た産駒の活躍で優駿スタリオンステーションに輸入され、ダート系種牡馬として2023年現在も活躍している。アジアエクスプレスは輸入前の産駒。
母もアメリカの馬。芝・ダートで短距離のリステッド競走を3勝するなど31戦9勝。
母父ランニングスタッグはCozzene産駒で重賞4勝、1999年の香港カップ2着などの実績がある。種牡馬としてはランニングボブキャッツが代表産駒になる程度の実績しかない。
2011年2月9日、フロリダ州のOcala Studで誕生。2013年のOBSマーチセールでノーザンファームに23万ドルで落札され、ベストウォーリアを所有する馬場幸夫(本業は広島の眼科医)がオーナーとなった。
馬名意味は「アジアの超特急」。南満州鉄道の超特急「あじあ号」が由来だそうである。
美浦・手塚貴久厩舎に入厩。2013年11月3日、東京・ダート1400mの新馬戦で、短期免許で来日していたウンベルト・リスポリを鞍上にデビュー。単勝1.6倍の断然人気に応え、中団から直線で大外を一気に突き抜けて5馬身差の楽勝デビューを飾る。
続いて中2週で東京・ダート1600mの500万下・オキザリス賞へ。鞍上はライアン・ムーア。ここは積極的に逃げ馬を2番手で追いかけ、直線で抜け出すとあとは後続を突き放し7馬身差で圧勝。
ムーア騎手は「馬がまだ子供すぎる」とコメントしつつも、手塚師に「芝でも問題ない」と伝え、手塚師はこれを受けて「全日本2歳優駿と朝日杯FSの両睨みで行きます」とコメントした。
とはいえ目標はあくまでダートの全日本2歳優駿の方だったのだが、中央の出走枠は5枠しかないレース。収得賞金900万円のラインで抽選となり、あえなく除外となってしまう。
仕方ないので一緒に登録していた朝日杯フューチュリティステークス(GI)に向かうことになったアジアエクスプレス。鞍上は引き続きムーア。
最後の中山開催となったこの年の朝日杯FSは、東スポ杯2歳Sを2歳レコード勝ちしたイスラボニータや、超良血トゥザワールドなどの注目株が回避したため混戦ムード。というかぶっちゃけハープスターとホウライアキコを筆頭に重賞馬5頭の阪神JFの方がハイレベルという評価だった。
何しろ1番人気はデイリー杯2歳Sでそのホウライアキコに敗れたアトム、2番人気は門別から来て東スポ杯2着のプレイアンドリアル、3番人気はJRAGI完全制覇のかかる武豊が乗る牝馬ベルカント。そんな面子なのでアジアエクスプレスは芝初挑戦ながら、ダート2走の圧勝ぶりから8.7倍の4番人気に支持される。
サクセスブロッケンなどの例を引くまでもなく、GIで芝初挑戦の馬が人気していたら普通は「危険な人気馬」の筆頭だが……アジアエクスプレスはそんな常識を覆す。
スタートでは中団後方に構えたアジアエクスプレスは、外を通って徐々に押し上げていくと、直線で大外から末脚一閃。先行集団をまとめて撫で切って突き抜け、1と1/4馬身差をつけて完勝。
「芝初勝利がGI」はイナリワン、サンドピアリス、アグネスデジタルなど10頭以上の前例があった[1]が、「芝初挑戦でGI制覇」はグレード制導入以降、史上初の記録。馬場オーナーは所有馬の中央GI初出走がそのまま初制覇となった。手塚師は2011年朝日杯FSのアルフレード、この年の桜花賞のアユサンに続くGI3勝目。もちろんこの年のJRA賞最優秀2歳牡馬を受賞した。
ダートデビューから無敗で一気に芝GI制覇へ、という経歴から「エルコンドルパサーを想起させる」という記事も出るほどであったのだが……。
明けて3歳はクラシックを目指しスプリングステークス(GII)へ。鞍上は戸崎圭太に乗り替わりとなり、以降は戸崎が主戦となる。2.3倍の1番人気に支持され、中団からレースを進め直線追い込んだものの、3・4コーナーでの反応が鈍く、先に抜け出したロサギガンティアに届かず2着。初黒星を喫する。
陣営も距離不安を懸念しつつも皐月賞(GI)へ。混戦ムードの中7.5倍の5番人気に支持され、積極的に2番手でレースを進めたが、直線で伸びを欠き、最後は失速して6着。
この結果で陣営はダート再転向を決め、6月のユニコーンステークス(GIII)に向かう。1.3倍の断然の1番人気に支持されたが、馬群に埋もれたまま全く伸びず12着に撃沈。手塚師も首を捻る惨敗だった。
引き続き8月のレパードステークス(GIII)へ。オッズは3.3倍になったものの今回も1番人気。今度は好スタートから3番手で先行し、直線で抜け出して3馬身半差で圧勝。ラジオNIKKEIも「昨年の2歳チャンピオン、この新潟の地で輝きを取り戻しました!」と実況する強い勝ち方で改めて素質を示し、アドマイヤドンのように2歳王者からダート王への道を進む……はずだったのだが……。
レース後、右トウ骨遠位端骨折が発覚。目標としていたチャンピオンズカップは断念せざるを得なくなり、秋はそのまま全休となる。そしてここから、アジアエクスプレスは故障との戦いとなった。
半年以上休み、明けて4歳、3月の名古屋大賞典(JpnIII)で復帰。単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持されたが、逃げたメイショウコロンボとのマッチレースとの末、最後までかわせず2着。
続いてのアンタレスステークス(GIII)では自ら逃げの手に出たが、2番手で追ってきたクリノスターオーとの追い比べに競り負けて2着。
平安ステークス(GIII)もクリノスターオーとインカンテーションと3頭で先行するも、直線で振り切られて5着。
なんとか勝利を挙げたい陣営は、レパードSを勝った新潟のBSN賞(OP)に向かったが、トップハンデ57.5kgを背負って逃げたものの直線で捕まり4着。
そしてこの後、脚部不安で1年3ヶ月にわたり休養となってしまう。5歳となった2016年、11月の福島民友カップ(OP)で復帰したものの、もはや見る影もなく直線で沈んでいき最下位15着。
結局、このレースを最後に現役引退となった。通算12戦4勝。
故障で大成することはできなかったアジアエクスプレスだが、3歳までの輝きと、日本の主流血統が全く入っておらず配合相手を選ばない血統背景とが評価され、2017年から父と同じ優駿スタリオンステーションで種牡馬入りを果たす。初年度の種付け料は60万円。
父ヘニーヒューズの種付け料が値上がりしていることもあり、手頃な価格の後継として、初年度は175頭、2年目は社台SS以外で唯一の200頭超えとなる205頭に種付け。120万円に値上がりした3年目も171頭、4年目も162頭と人気を集めた。
産駒は2020年からデビュー。産駒の全体的な傾向は完全なダートの短距離馬のようで、地方では初年度産駒のソロユニットが交流重賞のエーデルワイス賞を勝利するなど地方での重賞馬はそこそこ出した一方、中央での活躍馬はなかなか出なかった。2024年、ピューロマジックが葵ステークスを勝利し、芝で産駒中央重賞初制覇を飾った。
種付け料は5年目から150万円になったが、値上がりに比して中央実績が伸び悩んだことなどもあってか、7年目の2023年は種付け数が66頭まで減ってしまった。幸い2024年は90頭まで盛り返したようで、ピューロマジックなどの活躍でここからV字回復となるだろうか。
*ヘニーヒューズ 2003 栗毛 |
*ヘネシー 1993 栗毛 |
Storm Cat | Storm Bird |
Terlingua | |||
Island Kitty | Hawaii | ||
T.C. Kitten | |||
Meadow Flyer 1989 鹿毛 |
Meadowlake | Hold Your Peace | |
Suspicious Native | |||
Shortley | Hagley | ||
Short Winded | |||
*ランニングボブキャッツ 2002 鹿毛 FNo.4-m |
Running Stag 1994 鹿毛 |
Cozzene | Caro |
Ride the Trails | |||
Fruhlingstag | Orsini | ||
Revada | |||
Backatem 1997 鹿毛 |
Notebook | Well Decorated | |
Mobcap | |||
Deputy's Mistress | Deputy Minister | ||
River Crossing |
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最終更新:2025/03/24(月) 03:00
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