アロゲート(Arrogate)とは、2013年生まれのアメリカの競走馬である。芦毛の牡馬。馬名は英語で「僭称する」という意味。
父Unbridled's Song、母Bubbler、母父Distorted Humor。父、母父ともにアメリカで種牡馬として大成した馬。一方牝系は、曾祖母がエクリプス賞2歳牝馬チャンピオンのGⅠ6勝馬Meadow Starだが、繁殖牝馬としては大物が出ておらず地味である。
1歳9月のセリで超名門ジュドモントファームに56万ドルで落札され、ボブ・バファート厩舎に入ったが、疾患などのためデビューは遅れに遅れ3歳4月。しかも3着。当然三冠競走には間に合わない。
2戦目で勝ち上がると、一般競走を楽々2連勝。「真夏のダービー」ことGⅠトラヴァーズSに駒を進める。
トラヴァーズSでは8番人気。まあ今まで戦ってきた相手がかなり弱かったし、相手にプリークネスS馬Exaggerator、ベルモントS馬*クリエイターもいたから仕方ない。
しかしこのレースがとにかくヤバかった。1コーナーでさっさとハナを奪うと、かなりのペースで飛ばす。それでもバテない……どころか、直線に入るとその差が開き始める。後続はあっという間に置き去り。結局この馬、なんと13馬身半の着差をつけて圧勝。しかもコースレコード。そのタイムは驚くなかれ1分59秒36(それまでのレースレコードは1979年に記録された2分ジャスト)。ついでに言うと、かのセクレタリアトが同距離のケンタッキーダービーで記録したタイムが公式で1分59秒40。要するに、米競馬史上最強の怪物とタイム上並んじゃったのである。ありえん。
この1戦で米競馬の主役に成り上がったアロゲートは、次戦にBCクラシックを選んだ。ここに待ち構えていたのは完全復活した*カリフォルニアクローム。キャリアが少なく古馬初挑戦だったアロゲートは2番人気での出走となった。大外枠から発進したアロゲートは、逃げたカリクロを見るように3番手を追走。3、4角でインコースから加速してカリクロに馬体を併せていく。そのまま直線に入り、後続を置き去りにしたデッドヒートを展開。アロゲートは半馬身余りの差を詰められず、カリクロ逃げ切りかと思われた。ところが残り1ハロンを過ぎた瞬間アロゲートが急加速。ゴール寸前でカリクロを捉え、半馬身差をつけて優勝。わずか6戦目にして米競馬の頂点に上り詰めた。3着は10馬身以上後ろに離されており、まさに2強決戦となった。
シーズン終了後、この年の世界1位となるレーティング134と、エクリプス賞3歳牡馬チャンピオンのタイトルを獲得した。
この後予定していたGⅡを馬場悪化で回避し、世界最高賞金の新設GⅠペガサスワールドカップに直行。引退レースとなったカリクロと再戦するが、カリクロがレース中に故障を発生し9着に沈むのを尻目に4馬身余りの差をつけレコードで大楽勝。賞金700万ドル(約8億円)を獲得した。
続いてはドバイWCに出走。ぶっちゃけそんなに強いメンバーもいないし、圧倒的人気に推された。本番、ゲートを出たところで他馬に接触し、ラニより後ろの最後方に押し込まれてしまい、経験のない後方からのレースを余儀なくされる。急いで馬群に取り付くが、終始大外を走らされる嫌な展開。しかし3コーナーで鞍上マイク・スミスが仕掛けると、大外がなんだと言わんばかりの迫力満点のマクりを見せ3番手で直線を向く。あとは前2頭を捕まえる簡単なお仕事。残り300m余りでもう一段ギアを入れてあっさり先頭に立ち、そのまま2馬身半差をつけて完勝。もはや呆然とするしかない強さを見せつけた。これで賞金600万ドル(約6億6000万円)を獲得し、通算賞金は1700万ドルを超えて北米競馬における記録を更新。また、この時のレートで換算すると日本円で約19億円を獲得したことになり、テイエムオペラオーを超えて獲得賞金の世界記録をも塗り替えることになった。高額賞金のレースに出まくってるからちょっとズルい気もするが、あれだけ圧倒的な勝ち方されたら文句のつけようもない。
なんというか、カリクロやアメリカンファラオすら相手にならんのではないかと思うほどの強さを見せつつあるアロゲート。彼はこれからどれだけの勝利を積み上げるのだろう……。
しかし、その凄まじい輝きはあっという間に失せてしまった。帰国初戦のGⅡでトップハンデとはいえ57㎏と極端に重いハンデでもないのに4着に敗退。
「こういうことが起きるから自分は白髪なんだ」とバファート師がジョークを言ったまでは良かったが、夏の大レース・パシフィッククラシックでは前走よりいい走りを見せ復活の兆しを見せたものの、同厩舎のCollectedに逃げ切られ2着に敗退する。
この後は現役最終戦BCクラシックに直行するものの、ドバイで圧倒的競馬で負かしたGun Runnerの戴冠を後方から見届ける形の5着、同厩舎のCollected(2着)にも連敗し引退となった。
父の産駒は脚があまり強くなく故障引退が多い傾向にあり、ピークもそう長くないタイプが多かったので、もしかするとドバイでの無茶苦茶な走りが競走寿命を大幅に縮めたりしたのかもしれない。
2018年からは種牡馬として天与の才を伝える役目を担う。一見するとミスプロが多重に入っており、今アメリカで旬のUnbridiedの系統なので狭い範囲にしか付けられないように見えるが
エーピーインディやストームキャットは一滴も入っていないので、その系統でUnbridledが遠い牝馬には人気になるだろう。
上手く牝系から頑健さを引き継げれば種牡馬としても大物になるかもしれない。
2020年6月2日、繋養先で原因不明の体調不良が続き、回復の見込みがないことから安楽死になったと発表された。産駒はわずか3世代で、これからの活躍が期待された矢先の出来事だった。
そして2022年、初年度産駒の1頭であるSecret Oathがケンタッキーオークスを制し、産駒初のGI馬となった。翌年にはArcangeloがベルモントステークスとトラヴァーズステークスを制して種牡馬入りとなり後継種牡馬も獲得。残された産駒たちの更なる活躍を願ってやまない。
Unbridled's Song 1993 芦毛 |
Unbridled 1987 鹿毛 |
Fappiano | Mr. Prospector |
Killaloe | |||
Gana Facil | Le Fabuleux | ||
Charedi | |||
Trolley Song 1983 芦毛 |
Caro | *フォルティノ | |
Chambord | |||
Lucky Spell | Lucky Mel | ||
Incantation | |||
Bubbler 2006 黒鹿毛 FNo.16-g |
Distorted Humor 1993 栗毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
File | |||
Danzig's Beauty | Danzig | ||
Sweetest Chant | |||
Grechelle 1995 黒鹿毛 |
Deputy Minister | Vice Regent | |
Mint Copy | |||
Meadow Star | Meadowlake | ||
Inreality Star |
クロス:Mr. Prospector 4×4(12.5%)、In Reality 5×5(6.25%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
43 ななしのよっしん
2023/11/01(水) 17:01:39 ID: vsQRRb7ktZ
44 ななしのよっしん
2023/11/02(木) 16:48:53 ID: llxfrczBf4
ケイヴロック早逝でドバイミレニアムにとってのドバウィ状態となってたししゃーない
ただ今年のブリーダーズカップについてはここに来て別の馬が急死したりと何か雲行き怪しくなってきてるの何なんだろう…
45 ななしのよっしん
2024/05/21(火) 10:54:43 ID: jTRhz3KL+3
早熟早仕上がり小粒が多い自身の縮小再生産みたいな後継ばっかりのアンブライドルズソング後継で
ほぼ唯一の大物狙い出来そうな種牡馬だったのに早世したのはあまりにも惜しまれるな
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/24(月) 13:00
最終更新:2025/03/24(月) 13:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。