シュネルマイスター(Schnell Meister) とは、2018年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
ドイツ生まれ。美浦・手塚貴久厩舎所属
馬主はサンデーレーシング(赤バッテンでお馴染みの一口クラブ。活躍馬は書き切れない程居る)
主な勝ち鞍
2021年:NHKマイルカップ(GⅠ)、毎日王冠(GⅡ)
2023年:マイラーズカップ(GⅡ)
父Kingman、母*セリエンホルデ、母父Soldier Hollowという血統。
父のKingman(キングマン)は現役時代に英愛仏のマイルGⅠを4勝し、特に英仏の最高峰マイル競走であるサセックスステークスとジャック・ル・マロワ賞を同一年に制覇した史上初の快速馬。2015年から種牡馬入りし初年度からマイルGⅠを制したPersian KingやPalace Pierを送り出している。
母の*セリエンホルデ(Serienholde)はディアナ賞(独オークス)馬であり、母父のSoldier Hollow(ソルジャーホロウ)は現役時代に独伊でGⅠを4勝し、ドイツで種牡馬入りした後GⅠ馬、重賞馬を多数出している。
独国産で母方は「S」から始まる名前を持つ馬がズラっと並ぶ。近親にはディアナ賞(独オークス)馬である*サロミナがおり、その子供であるサラキア、サリオス姉弟は日本で活躍。更に遡ればビワハイジやマンハッタンカフェなども見られる「ドイツのSライン」出身である。とはいえ、血統全体で見れば、ドイツ産馬とはいえドイツ血統の割合はさほど大きくない。
ドイツで生まれた後に日本へ輸入され、サンデーレーシングで総額5000万円(1口125万×40口)で募集された。2歳になり美浦の手塚貴久厩舎へと入厩した。
9月の札幌芝1500mでデビュー戦となり、鞍上に横山武史を迎え、レースでは道中中段からまくり上げ、直線入口を2番手から前の馬を差し切って1番人気に応える新馬勝ちを収める。
続く12月に中山のマイル戦ひいらぎ賞に出走。鞍上にクリストフ・ルメールを新たに迎えると、中団からじっと脚を溜めると直線ではインから一気に抜け出し3馬身差と快勝。
年が明けて3月に弥生賞ディープインパクト記念から始動。ここには前年のホープフルステークス勝ち馬ダノンザキッドが出走して断然人気を背負い、こちらは前走快勝したが血統面からくる距離不安からか単勝4.9倍の2番人気となる。レースでは逃げるタイトルホルダーを見ながら2番手を追走し、緩やかな流れに乗っていたが直線で前のタイトルホルダーとの差が縮まらず2着となった。のちにタイトルホルダーが菊花賞を制したため、馬券内の三頭すべてがG1ホースとなるハイレベルなレースであった。
優先出走権を取ったものの皐月賞へは進まずにNHKマイルカップへと出走。昨年の朝日杯勝ち馬で前走2着も微差であったグレナディアガーズが単勝3.4倍の1番人気。それに続く2番人気が本馬であったが単勝3.7倍と非常に差の無い人気。3番人気が前走NZTを圧勝したバスラットレオンも単勝4.6倍とこの3頭のみ単勝10倍を切っていた。「Kingmanとドイツ血統の子が府中の高速決着に対応できるか?」という声も少なからずあった。
レースに入りゲートが開くと早速波乱発生。バスラットレオンがスタートで大きく躓いた結果鞍上の藤岡佑介が落馬。逃げると目されていた馬が競走中止となってしまった。その後大外からピクシーナイトがハナを主張して逃げ、シュネルマイスターは中団を追走し徐々に外目に出す。直線に入って残り400mからグレナディアガーズが先頭に立ち、それをマークしていたソングラインが残り200mで抜け出し先頭に立つ。ソングラインが完全に抜け出た所に更に一頭が強襲。シュネルマイスターである。2頭がぴったり並んだ所がゴール線。結果は写真判定に委ねられたがシュネルマイスターがハナ差差し切って1着。重賞初制覇はGⅠ初制覇となった。
この勝利によりKingman産駒は日本でのGⅠ初制覇となり、ドイツ産馬の日本国内GⅠ制覇は1995年、Landoのジャパンカップ以来となる26年ぶりのものとなった。クロフネ以来20年ぶりの外国産馬によるNHKマイルカップ制覇となり、かつてこのレースが「マル外ダービー」と呼ばれていた事を思い出す人もいただろう。
続いて安田記念へ出走。安田記念に3歳馬が出走するのは2014年ミッキーアイル(16着)以来となる。ここではグランアレグリアが安田記念連覇を賭けて出走してきており、他にもインディチャンプなども出走。ルメールがグランアレグリアに騎乗する為、新たに横山武史に乗り替わった本馬は4番人気となった。
レースではダイワキャグニーがハナを主張し、本馬は外枠から発馬を決め中団の外目を追走。直線に入って手応えよく脚を伸ばし、ダノンキングリーと一緒に伸びていたが向こうの勢いが勝り、馬群をこじ開けてきたグランアレグリアに僅か届かず3着となった。
安田記念の後、休養を挟んで伝統のGⅡ毎日王冠から始動。ここでは前々年の同レース覇者で安田記念にて復活したダノンキングリーと人気を分け合い、最終的にはシュネルマイスターが単勝2.6倍の1番人気になった。戦前の不安要素として3歳で毎日王冠を制したダノンキングリー、サリオス共に斤量54kgであったのに対し、本馬は3歳GⅠを制した分56kgとなっていた。
先月亡くなったすぎやまこういち氏の追悼をかねて、グレード・エクウス・マーチと関東GⅠファンファーレが鳴り響く府中競馬場。レースが始まってシュネルマイスターは若干出負けし、道中は後方2番手を追走。比較的縦長の展開となり、向こう正面でポジションを上げたダノンキングリーが直線で外から抜け出しを図ろうとする中、シュネルマイスターはまだ後方4番手。だが残り200m辺りからストライドを伸ばして加速。一気に先頭集団へ肉薄し、ゴール前で測ったように差し切り、重賞2勝目を挙げた。上がり3F33.0は2位に0.5秒差をつける最速であった。
毎日王冠後にマイルチャンピオンシップへ出走。出走前のパドックでは最もよく躾けられ、最も美しく手入れされた出走馬を担当する厩務員に送られるベストターンドアウト賞を担当の名畑厩務員が受賞。
ここでは引退レースとして乗り込んできたグランアレグリアに1番人気を譲るも、2番人気は他に譲らず本馬となる。ルメールがグランアレグリアに乗る為、安田記念同様横山武史に乗り替わった。
レースでは2枠3番と内目の枠からスタート。スタートを決めてインの中団でじっと脚を溜めていたが、ホウオウアマゾンが作るペースは緩く、3, 4コーナーではかなりの団子となる。外回りコースだが大して馬群はばらけず、シュネルマイスターは前のサリオスやインディチャンプに進路を塞がれ、残り250mでようやく外に出して一気呵成に脚を伸ばすが、大外からスムーズに運んだグランアレグリアに3/4馬身届かず2着となった。
グランアレグリアのラストランに先着こそならなかったが、負けて強しの競馬を見せたシュネルマイスター。ドバイ遠征をダービー馬シャフリヤールと共に敢行し、ドバイターフへ出走。得意のマイルに加え、前年に毎日王冠で下したダノンキングリーが得意とした中距離1800m路線との両睨みでキャリアを積む方針であることが伺える。
ドバイターフでは前年勝馬Lord Northや米芝GⅠ馬Colonel Liamなどが出走し、日本からは本馬とパンサラッサ、ヴァンドギャルドの3頭が参戦。鞍上はクリストフ・ルメールが続投。
レースでは大方の想定通りパンサラッサが逃げ、シュネルマイスターは中団から進めるが、パンサラッサの引っ張るペースはかなり速く、シュネルマイスター自身も11秒台が連発する高速前傾ラップに巻き込まれて脚が溜まらず、直線に入って今ひとつ伸びを欠いて8着に敗れた。
次走は安田記念。香港最強マイラー・ゴールデンシックスティとの対決は流れたものの、高松宮記念を勝ったナランフレグや、フェブラリーステークスを連覇しソダシに続く芝・ダートの二刀流で勝利を目指すカフェファラオとの対決となった。道中中団やや後方に位置し、4コーナー時点でソングラインと並んで10番手。シュネルマイスターは内から、ソングラインは外から差し切りにかかる。ゴールを先に駆け抜けたのはソングラインだった。シュネルマイスターは2着、3着はサリオスであった。ソングラインにはNHKマイルカップの借りを返された形となる。
夏の休養を挟み、秋初戦はスプリンターズステークスを選択。初の短距離・距離短縮とあって、メイケイエール、ナムラクレアのミッキーアイル産駒の牝馬2頭から離れた3番人気に。8枠15番で中団後方でレースを進めるも短距離のスピードについていけず9着惨敗。
次戦のマイルチャンピオンシップでは得意距離とあって1番人気に支持されるも、中団外目で囲まれたまま最終直線へ。抜け出そうとするも外の武豊鞍上のエアロロノアにブロックされ、更には外からセリフォスが先に前へ抜け出しており、懸命に脱出を図ったが5着が精一杯。勝った3歳勢のセリフォスだけでなく、ソダシやダノンザキッド、ソウルラッシュといった同年代の馬達にも先着を許す格好となった。
秋最終戦は香港マイル。復活したゴールデンシックスティが君臨する香港のマイルレースへの挑戦となる。しかし後方からレースを進めるも結果はカリフォルニアスパングルがゴールデンシックスティからクビ差で勝った地点から14馬身以上も離される9着シンガリ負け。管理する手塚調教師は「出遅れたにしてもここまで伸びなかったのは初めて。体調を考えると不可解で敗因を探りたい。この時計なら走れないことはないのに…」と話した。[1]後に名畑助手の話によれば「海外だと競馬の前に燃え尽きてしまう」とも語っている。[2]
2022年は未勝利に終わったシュネルマイスター。GⅠ馬として復活を期すべく挑んだ初戦は弥生賞以来の1600m越えの中山記念。鞍上は初騎乗のテオ・バシュロ。前年の秋華賞馬スタニングローズやダノンザキッドといったGⅠ馬2頭も参戦する中で4番人気で出走した。
レースではドーブネが逃げる中、中団待機から直線で最内の狭いスペースからの差し切りを狙うが狭すぎて抜け出せないまま、外から差し切ったヒシイグアスの復活勝利を眺める4着。鞍上のバシュロは「いい馬ですし、状態はすごく良かったです。最後は残念でしたが、前が開いていれば、もう少し上の着順にこれたと思います。中山の小回りは少しきつくて、東京の1800メートルぐらいがベストかもしれません」[3]と話し、次走に期待感を寄せた。
気がつけば最後にGⅠを勝ったNHKマイルCから2年、最後に勝利した毎日王冠から1年半もの歳月が過ぎていた。モヤモヤするレースが続く中、ルメールを鞍上に戻し次走はマイラーズカップ。前年の菊花賞で人気を集めたがマイルへ転戦してきたガイアフォースが目立つも、GⅠ馬はシュネルマイスターだけとあって1番人気。
今回はかなり後方からレースを進めるも、最終直線で外に持ち出すと内から伸びてくるガイアフォースを制し、先頭でゴール板を通過。久しぶりの重賞勝利を上げGⅠ馬の貫禄を見せつけた。
復活を果たしたマイルマイスターのシュネルマイスターは、前々年、前年と惜敗と続けてきた安田記念に出走。ソダシ、セリフォス、ソングライン、ジャックドールなどGⅠ馬10頭が集結する超豪華メンバーとなったが、僅差で本馬が1番人気に支持された。
7枠14番からスタートしたシュネルマイスターは前走同様に控え、後方4番手からの競馬。そのまま外を回って後方で直線を向いたがしばらく後方になり、残り300mあまりでようやく末脚が着火。上がり最速の末脚で追い上げはしたが、内を完璧に立ち回ったセリフォス、自身の一列前から一足早く突き抜けたソングラインを捕まえるには至らず3着。3年連続で惜敗という悔しい結果に終わった。
2023年の秋シーズンは毎日王冠より始動。ここでは前走で敗れたソングラインに次ぐ2番人気に支持される。引き続き中団後方を追走する競馬となるが、直線では進路がなくなり、残り300mで遅れて大外に持ち出すロスとなる。そこから鋭い脚で怒涛の追い上げを開始し、ゴール直前で伏兵アドマイヤハダルをかわすも中団前方から内を突いて伸びだした4番人気の3歳馬エルトンバローズ、先に抜け出したソングラインをわずかに捕えきれず3着。ソングラインとはこれで1勝3敗となったが、ラストの猛追は現役屈指のマイラーたる意地を見せるものであり、負けて強しと言える結果であった。
続くマイルチャンピオンシップ、アメリカ遠征を選択したソングラインが不在となったため1番人気に支持される。しかし前走500kg(+10)でやや太め残りを危惧された馬体重はさらに+4kgされており、またスタート前にゲートで立ち上がるなどこの日のシュネルマイスターは精神的にも乱調。スタート直後にヨレた隣のソーヴァリアントと接触したこともあってか出脚が鈍り最後方からの競馬となってしまう。直線に入っても反応が遅れ、後方シュネルマイスターの内を追走したナミュールが馬群を縫って外目を一気に追い込み勝利したところから0.4秒遅れての7着敗戦となった。
11月22日、同期にしてマイル戦線で激しく鎬を削ったソングラインと共に現役引退が発表され、種牡馬入りすることとなった。日本では希少なKingmanの血を継ぐ種牡馬として第2の活躍にも期待したい。
Kingman 2011 鹿毛 |
Invincible Spirit 1997 鹿毛 |
Green Desert | Danzig |
Foreign Courier | |||
Rafha | Kris | ||
Eljazzi | |||
Zenda 1999 鹿毛 |
Zamindar | Gone West | |
Zaizafon | |||
Hope | *ダンシングブレーヴ | ||
Bahamian | |||
*セリエンホルデ 2013 鹿毛 FNo.16-c |
Soldier Hollow 2000 鹿毛 |
In the Wings | Sadler's Wells |
High Hawk | |||
Island Race | Common Grounds | ||
*レイクアイル | |||
Saldenehre 2000 芦毛 |
Highest Honor | Kenmare | |
High River | |||
Salde | Alkalde | ||
Saite |
5代内クロス:Kris 4×5(9.38%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
ドイツ生産馬には「登録馬名の頭文字を必ず母親と同じにする」というルールがあり、実際Serienholde←Saldenehre←Salde←Saite←Salesiana←Suleika←Schwarzblaurot……
というようにSから始まる名前が続いている。
前述のように近親には*サロミナとその子達であるサラキア・サリオス姉弟、更に遡ればビワハイジやマンハッタンカフェなどが名を連ねる名牝系である。
掲示板
254 ななしのよっしん
2023/12/24(日) 19:46:42 ID: +cpk7duaWD
>>248
ちょっと前までみたいなスローペースの差し勝負だったらもっと勝ててたと思う
面白い上に強い逃げ馬どもがぞろぞろ出てくる時代だったのが不運だったというか……
255 ななしのよっしん
2024/02/15(木) 02:32:12 ID: JH1dpDqTvy
>>253
内国産の流行りの種牡馬だとことごとくインブリードが激しくなるラヴズオンリーユー相手にアウトブリードできる数少ない種牡馬だからねぇ
256 ななしのよっしん
2024/03/13(水) 20:05:54 ID: xjA+60plZO
>>251
元々この馬もクラシック出すかどうかの判断で弥生賞出て2着だったし、その気になれば秋天くらいは走れた馬だった気がする。
まぁこの馬の現役時代の秋天馬ってエフフォーリア、イクイノックス、イクイノックスなんで走れたところで勝ててはないだろうけど、ちゃんと適正自体はあったんじゃないかな。
産駒もマイルだけじゃなく色々走ってみてほしいね。
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最終更新:2024/11/25(月) 23:00
最終更新:2024/11/25(月) 23:00
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