ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナとは、アニメ『ハピネスチャージプリキュア!』の劇場アニメーション作品である。
2014年10月11日公開。映画プリキュアの第17作である(レギュラーシリーズ映画では第11作)。
今回の物語の舞台は人形の国ドール王国。バレリーナ人形のつむぎに導かれる形で異世界に向かっためぐみ達、ジーク王子に一目惚れしたひめの恋模様、そしてめぐみとつむぎの友情を中心に物語が描かれていく。
監督には今千秋を起用。2年ぶりとなる女性監督、そしてシリーズ初の東映アニメーション出身者ではない、外部からの監督起用となった。「いつかはプリキュアの監督をやってみたい」と思っていた今は柴田プロデューサーに頼み込んで『ドキドキ!プリキュア』から演出を手がけており(いなばちあき名義)、今回念願叶って監督就任となった。また、キャラクターデザイン・作画監督にはプリキュアシリーズでは『ハートキャッチプリキュア!』から変身シーンなどの原画で参加しており、他作品では『ぱにぽにだっしゅ!』『ネギま!?』などのキャラクターデザインを手がけている大田和寛が担当している。
また、ゲスト声優としてつむぎ役にシリーズ初参加の堀江由衣、またジーク王子役に小野大輔、ボスキャラのブラックファング役に森川智之とシリーズ出演経験のある2人が出演することで話題となった。それ以上に話題になったのが、船橋市の非公認キャラクター、ふなっしーが映画の応援隊長になっただけでなく、本人ならぬ本梨役で出演することである。その発言から結構プリキュアシリーズを見ているようで、劇中ではミラクルライトを思い切り振る模様。どのような登場の仕方をするのかも見所である。さすがにモブでにんじんの妖精紛れ込んでいたりしないよな・・・
さらにテレビ本編と連動し、第34話ではひめの妄想の中の白馬の王子としてジークが登場、第35話に登場したドレスのプリカードが映画でも使われ(鑑賞者プレゼントとしても配布)、これが各回の映画CMと繋がるというPR手法をとった。
この項目は、映画のネタバレ成分を含みます。 ここから下は自己責任でスクロールしてください。 |
本作の主題は「本当の幸せとは何か」「プリキュアによって他の人を幸せにできるのか」という、テレビシリーズをも含めた物語の根幹に対する疑問を直球で投げかけた物語だと言える。もちろんそれはテレビシリーズでも描かれており、今後も終盤に向けてクローズアップされる主題ではあるが、この映画ではそれをつむぎという少女を中心として描いている。
Yahoo!で先行公開され、映画公式サイトでも公開されている冒頭5分の映像を見てすぐに察した人は多いと思うが、つむぎはドール王国の人形ではなく、元々は普通の人間の少女だった。ブラックファングの奸計にはまったとは言え、足が突如動かなくなり、これまで習っていたバレエも踊れなくなり、友達も離れていき、不幸と絶望にたたき落とされてしまう。そのつむぎに対しブラックファングはドール王国という虚構の国を作り、そこでのみ足が動く、踊れるという仮初めの幸せを与えた。もちろんブラックファングが倒されれば王国は消えてしまい、つむぎは踊れなくなる。つむぎはその幸せを守るためにもブラックファングが倒されないためにもプリキュア達を罠にかけようとする。一方でブラックファングはつむぎを食い物にし、彼女が元々抱いている不幸を糧に力を蓄える。首領であるクイーンミラージュを越え、世界を不幸と絶望に包むために。
つむぎとしてはこのまま虚構の世界で踊れればいい。現実に戻っても踊ることはできないし、何より一人不幸の殻に閉じこもってしまう。めぐみとしてはつむぎを幸せにしたいと動こうとするが、逆につむぎから辛辣な言葉を突きつけられ、つむぎを幸せにするどころか、返ってつむぎの幸せを奪ってしまうことに気づかされてしまう。テレビでもめぐみが「他の人を幸せにしたい」という気持ちが空回りすることが描かれているが、本作ではそれがより強く強調された形となる。
しかしながら、失意のめぐみに対し仲間たちは支え鼓舞する。今できるのは、つむぎの「本当の幸せ」のために動くことだと。そうした思いはジークを始めとする人形たちにもあり、長らくつむぎと暮らしていた彼らとしてもつむぎの「本当の幸せ」を願って動いていた。「幸せとは、不幸に対して立ち向かう、自分自身の気持ちの持ちようだけでなく、誰かが支えてくれることで得られる物である、プリキュアは幸せを必ずしも叶えるわけではないがそうした支えの一助である」とスタッフは訴えているのかもしれない。
こうした物語の内容については、ラストバトルで流れる挿入歌の「勇気が生まれる場所」にも現れている。クライマックスを盛り上げ、初代における「☆SHINING STAR☆」、ハトプリにおける「HEART GOES ON」を想起させる熱い楽曲で、見た人から絶賛する声が多いが、歌詞を読むとこうした物語の本質を上手く表している。一度見た人はCDを買って聞き直し歌詞を読み直すことでより深く物語を味わえるだろう。カップリング曲の「見上げれば青い空」もラストバトル後のめぐみとつむぎの心情を描いているのでこちらも聴いてほしいところである。
何より今回ゲストとして出演した、堀江、小野、森川の3者の演技力の高さも相まって、より物語に没入できる内容となった。特に森川演じるブラックファングについては、脚本の成田良美自ら「殴りがいがある」いうほどにシリーズ屈指の悪辣さ外道さを見せ、それが森川の演技も相まってより際立っていた。また、作画面においても美麗なだけで無く、髪のほつれ具合や瞳の動きなど微細な所まで描いており、それが感情の機微や心理描写を表す上でより情報量が多くなっている。音楽も効果的な使われ方をしており、今による演出も合わせてこうした要素が絡み合って良作になったと言えよう。
こうしたメッセージ性の強さは『マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』での「過去の思い出、死による別れ」、『NewStage3』での「子供の自立と親の子離れ」同様に、大人が受け止めることができれば良作だと感じることができるだろう。しかし、メインターゲットである子供たちはそれを理解できたかとなると、疑問となってしまう。ネット上の評価でも「理解できずに飽き気味になっていた」という意見も見受けられる。とはいえ、子供がいかに受け止められたか、親は子供とそれについて考え話しあうことができるか、というのが一つのポイントではないだろうか。
もちろん、飽きさせないためにも、また深刻になりすぎないためにもコミカルな要素は含まれている。特にひめの一挙手一投足はえりかの後継者とも言わんばかりのものとなっており、笑いを誘う要素となっている。中でも失恋シーンの表情三段オチはそれを表す物となった。ふなっしーも作品にあまり影響を及ぼさない登場ながら、その動きから子供たちには好評のようである。もっとも、物語がシリアスな分、こうした要素は本当に必要なのか、という意見も見受けられるのも事実ではある。
一方で、作画が美麗な分、変身バンクや必殺技バンクがテレビで使っている物を基本的にそのまま流用しているため、作画レベルが急に変わってしまうという苦言もある。各自の技も多様にあるのに何度も同じのを使っており(もっともフォーチュンはNS3にでられなかった鬱憤を晴らすかのように新技をいくつか披露しているし、ラブリーのライジングソードも新バンクだったりするが)、本編の肝の一つであるフォームチェンジもマガダミアフラダンスがでただけで、映画オリジナルのスーパーハピネスラブリーは別にしても、プリンセス以外の3人が通常のフォームチェンジ技を出していないなど、こうした点を惜しむ評価も見られる。他にも物語の面では、ブラックファングがつむぎを選んだ理由が判然としない、冒頭の疑問に対する根本な解決が明示されておらず問題提示に留まっている、という意見も見受けられる。また、ラストシーンについてはご都合主義か否かを含め、評価が分かれているところだが、解釈や想像の余地を観客に与えた、と思うにとどめたい。
その他の点として、ミラクルライトの使い方にも工夫があり、恒例の冒頭解説では、公開された冒頭映像のように、いきなりの戦闘シーンで解説を交える形ですぐに使う形を取り、終盤で使ったときもシリーズで初めて一度その効果が阻まれるという捻った演出が取られている。エンディングのCGムービーも『マナ結婚!!?』の時のように1コーラス長くした特別版となっており、テレビのエンディングの舞台は実はこうなってたのか、と唸らせる物となっている。また、実はいおなの秋服はテレビとは形が少し異なっていたりするので、気になる方はチェックされたい。
つむぎは上述したように再び人間の女の子として自分の足で歩き、バレエを踊る道をたどっていく。そしてテレビシリーズ本編最終話でのこと。オレスキーの正体の警官が三ツ谷のおばあちゃんの荷物を持ってあげてるシーンで、一瞬頭をお団子状にした少女が手前を走って横切っていった。まさかの彼女のちょっとした登場に、映画を見た者から驚きと歓声が上がったのは言うまでもない。ファンサービスの一環ではあるのだろうけど、走れるまでに足が回復し、バレエの練習に励んでいるその姿は喜ばしいものと言えるだろう。
また、2015年3月14日公開の『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』でも、つむぎは挿入歌「39フェアリーズ」の映像内にて、他作品のプリキュアの協力者たち(ブルーとファンファン(TV本編の敵幹部であるファントムの正体)も含む)・他作品の単独映画に登場したキャラクターたち・NSシリーズのキャラクターたちと共にモブ登場し(同作ではドレス姿で登場)、ドール王国の住人は『春のカーニバル♪』の舞台である「ハルモニア」の観客としてモブ登場している(なお、本作の終盤で人形に戻ったはずだったが、詳細は不明)。
そして2016年放送の『魔法つかいプリキュア!』ではつむぎ役の堀江がリコ(キュアマジカル)役に起用され、驚きと共に「つむぎちゃんが(中の人的に)ついにプリキュアに!」と感激する声も見られる。
さて、今回はバレエが主題の一つとなっているため、高木洋氏編曲のクラシック音楽が使われている。一つはつむぎがバレエを披露するシーンでのチャイコフスキーの『くるみ割り人形』から「花のワルツ」(サントラでは「つむぎの踊り」)。もう一つは舞踏会で用いられたヨハン・シュトラウス2世の「ウィーン気質」(同じく「ドール城の舞踏会」)
で。ウィーン気質はウィンナ・ワルツの代表曲として知られており、よほど使い勝手がいいのか、以降のシリーズでも流用されている。
本作公開を記念し、公開前日の10月10日に新宿バルト9で行われる前夜祭での舞台挨拶の生中継と出演声優による特番、映画第1作の『映画ふたりはプリキュアMaxHeart』の無料上映を行う生放送が実施された。プリキュアシリーズとしては初のニコニコ生放送となる。
掲示板
41 ななしのよっしん
2015/03/18(水) 20:33:27 ID: EeXll5dyzN
世界からの自閉と黒い糸がキーワードで先に公開されたかの叛逆映画のカウンターかと邪知してしまった
TV版から受けるひたすら陽性なヒーロー像でも出来ないことはあるんじゃない?という切り口は興味深い
されどあなたの親愛なる隣人プリキュアということで
42 ななしのよっしん
2021/07/03(土) 14:53:46 ID: WD5bOjW82C
本編と違って映画は面白かったです(小学生並の感想)
スマプリの映画と同じく「どうして本編でこれが出来なかったんですか」と思った
あとどうでもいい部分だけど、いつもと違ってブルースカイ王国は地球上の国だから
ドール王国はめぐみ達にとって初の異世界だったわりに、ブルーが地球じゃないって言っただけで誰もぬいぐるみの国に不思議を感じてないのは謎
43 ななしのよっしん
2024/09/01(日) 02:26:41 ID: Dfy9b7m2S2
ニコニコが死んでる時に本家のDアニ契約したらあって今更見れたんだけど面白かった。ほぼ10年後の今見てもアニメ本編と映画のEDのCGは現在と遜色ないってかオーパーツだなこれ
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最終更新:2024/12/23(月) 06:00
最終更新:2024/12/23(月) 06:00
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