ビホルダー(Beholder)は、2010年生まれのアメリカの競走馬・繁殖牝馬。
現在は日本にいる*ヘニーヒューズのアメリカにおける代表産駒であり、米国競馬史上初めて2~6歳の5年にわたってGI勝ちを挙げるなどの大活躍を挙げた2010年代アメリカ競馬の超名牝。
馬名は「見つめる者」という意味。D&Dに登場する一つ目とは(たぶん)関係ない。
父Henny Hughes(*ヘニーヒューズ)、母Leslie's Lady、母父Tricky Creekという血統のケンタッキー州産馬。
父*ヘニーヒューズは短距離GIを2勝した快速馬で、出遅れてシンガリ負けを喫したラストランのブリーダーズカップ・スプリント以外は9戦9連対という安定した成績を残した。しかし種牡馬としては現在でこそ日本でワイドファラオなどを出しているものの、当時は殆ど結果を残せていなかった。
母レスリーズレディは28戦5勝で、リステッド競走を1勝している。キャッシュコールフューチュリティ(2歳GI)を勝ち、本馬の活躍と前後して種牡馬として躍進していくInto Mischiefを既に産んでいた。
1歳9月にキーンランドセールに上場され、18万ドルでスペンドスリフトファームに落札されて、カリフォルニア州を拠点とするリチャード・マンデラ調教師に預託された。非常に神経質で「常軌を逸している」と評されたほどの気性難であったが、一方で物分かりは良かったので、マンデラ師が手を焼いて様々な工夫を凝らすと気性はある程度良化した。
本格化した後の本馬は、主戦を務めたゲイリー・スティーヴンス騎手が2015年のインタビューで「ポルシェのスピードとロケット開発者の頭脳を兼ね備えたトラックのような乗り心地」と答えたことに象徴されるような素晴らしいパワーとスピードを兼ね備えていた。
父*ヘニーヒューズが左遷のような形でオーストラリアに輸出されたのと前後する2012年6月にオールウェザー5.5ハロンの未勝利戦でデビューしたが、逃げ馬を交わそうとして先に失速し、断然の1番人気だった素質馬Executiveprivilegeに交わされ8馬身1/4差の4着に敗退した。その翌月に出走した同距離の未勝利戦を3馬身1/4差で勝利して勝ち上がった。
続く9月のデルマーデビュータントS(GI・オールウェザー7ハロン)では3戦全勝でGIII勝ちを収めたExecutiveprivilegeとの再戦となった。ここではスタートから逃げ、直線で他馬を突き放したが、本馬より4ポンド(約1.8kg)重い斤量を物ともせずに追い込んできたExecutiveprivilegeに並ばれ、ハナ差で惜敗した。
その後はブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズを大目標としたが、本馬には入れ込み癖があったので、競馬場に慣れさせるためにこの年のブリーダーズカップが開催される予定だったサンタアニタパーク競馬場の一般競走に出走。最初からハイペースで飛ばして他馬の追走を封じ、6ハロン戦の上にゴール前は馬なりで流したにも関わらず、デルマーデビュータントSで本馬から4馬身1/4差の3着だったMechayaを11馬身も突き放して圧勝した。
本番のBCジュヴェナイルフィリーズ(GI・8.5ハロン)では、シャンデリアSを勝ってGI連勝を挙げたExecutiveprivilegeが1番人気、ビホルダーが2番人気、3戦全勝でフリゼットS(GI)を勝ったDreaming of Juliaが3番人気で、計8頭立てとなった。レースでは途中で息を入れつつ軽快に逃げ、Executiveprivilegeを1馬身抑えて優勝した。
2歳時は5戦3勝・GI1勝だった。最も有力な対抗馬だったExecutiveprivilegeは6戦5勝・GI2勝だったが、Executiveprivilegeがブリーダーズカップの後に出走したハリウッドスターレットS(GI)で4着に敗れたことで評価を落としたのか、この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬は254票中225票を集めたビホルダーが獲得した。
3歳初戦はサンタイネスS(GII)に出走したが、本馬のハナを叩いたDawn's Charmに手を焼いている間に最後方から飛んできた*レネーズタイタンにあっさり交わされ、3/4馬身差の2着に敗れた。その後喉の炎症のため治療が行われた。
3月のラスヴァージネスS(GI・1マイル)ではスタートから逃げ、ハイペースの中で他馬は次々に脱落。最後まで残っていた2番人気のFiftyshadesofhayも直線入り口で突き放し、3馬身3/4差で完勝した。続くサンタアニタオークス(GI・8.5ハロン)でも、番手の馬が牽制している間にあっさり勝負を決め、ノーステッキのまま2着Iotapaに2馬身3/4差を付けて勝利した。
次のレースはケンタッキーオークス(GI・9ハロン)だったが、このレースはかなりの好メンバーとなった。前走ガルフストリームパークオークス(GII)を21馬身3/4差という大差で圧勝していたDreaming of Juliaが1番人気に推され、デビュー2戦とも圧勝していたミッドナイトラッキー、無敗の重賞馬の*アンリミテッドバジェットとClose Hatchesがその他の上位人気で、ビホルダーは10頭立ての5番人気であった。誘導馬に襲いかかろうとしたり、鞍上のギャレット・ゴメス騎手を振り落とそうとしたりと入れ込みを見せながら迎えたレースでは番手から3コーナー過ぎで抜け出して粘り込みを図ったが、*プリンセスオブシルマーにゴール寸前で差し切られて半馬身差の2着に終わった。
*プリンセスオブシルマーは2戦目の初勝利から4連勝していたが、初重賞出走だった前走ガゼルS(GII)でClose Hatchesの2着に敗れており、単勝39.8倍のブービー人気であった。
この後はニューヨーク牝馬三冠路線に出走せず、年末のブリーダーズカップ・ディスタフを目標にした。秋初戦として出走したリステッド競走のトーリーパインズSでは、これまで騎乗していたゴメス騎手に代わって、ゲイリー・スティーヴンス騎手[1]を新たな主戦として迎え、ノーステッキで2馬身3/4差をつけ逃げ切った。続くゼニヤッタS(GI・8.5ハロン)でも、1馬身1/4差で逃げ切って快勝した。
迎えたBCディスタフ(GI・9ハロン)は6頭立てだったが、ケンタッキーオークスを皮切りにGI4連勝を挙げていた*プリンセスオブシルマーやGIを2連勝していたClose Hatchesの3歳勢に加えて、前年・前々年のこのレース連覇を含むGI6勝を挙げていた5歳の強豪Royal Deltaも出走していた。しかしマンデラ師の尽力で前に馬を置いても折り合えるようになっていた本馬は、道中3番手から3コーナーで逃げ馬を抜き去ると、他馬を歯牙にかけることなく、2着Close Hatchesに4馬身1/4差を付けて優勝。Zenyatta以来となる「ブリーダーズカップ2競走制覇」を達成し、スティーヴンス騎手は2000年のBCマイル以来13年ぶりのBC制覇を挙げた。
3歳時は7戦5勝・GI4勝で、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬を受賞した。
4歳時はサンタルチアSというステークス競走から始動し、これを5馬身1/4差で勝利した。続けてニューヨーク州に遠征してオグデン・フィップスS(GI・8.5ハロン)に出走したが、途中から先頭に立ったClose Hatchesを捉えることが出来ず、レース中に脚を負傷した影響もあったのか僅差の4着に終わった。
脚の治療を経て、復帰は3ヶ月後のゼニヤッタSとなった。調整途上だったためか逃げたTiz Midnightに危うく差し返されかけたが、何とか3/4馬身差で勝利して連覇を達成した。
この後はBCディスタフで連覇を目指した後に引退して繁殖牝馬セールに上場されることが予定されていたが、不運にもブリーダーズカップの直前に熱発。セリへの上場もキャンセルとなり、翌年も現役を続行することとなった。結局4歳時は3戦2勝だった。
5歳時は前年と同じくサンタルチアSから始動し、これを3馬身3/4差で楽勝。続いては前年と異なり遠征せずにカリフォルニア州で続戦し、アドレーションS(GIII)を勝利した。更にクレメント・L.ハーシュS(GI・8.5ハロン)では、向こう正面で逃げ馬を交わして馬なりのまま差を広げるという競馬を披露し、7馬身差で圧勝。米国競馬史上初となる「2歳から4年連続でのGI制覇」を達成した。
続いて出走したのは、初の10ハロン・初の牡馬混合戦となるパシフィッククラシックS(GI)であった。前年のBCクラシックを勝利した(がスタート直後の斜行でかなり物議を醸した)Bayernなどの牡馬9頭が相手となったが、単勝3倍とはいえ1番人気に推された。そして番手の馬につつかれる形となったBayernのハイペースの大逃げを3角で捉えると、そのまま他馬に全く差を詰めさせることなく8馬身1/4差で圧勝。1991年にこのレースが創設されて初めてとなる牝馬の優勝馬となった。そしてこのレース後、陣営は37年ぶりの三冠馬American Pharoahが既に出走を表明していたBCクラシックへの参戦を表明した。
パシフィッククラシックSでの圧勝のため、次走のゼニヤッタSでは8頭立てで本馬が単勝1.1倍、残りの7頭は全て単勝10倍以上となった。そしてレースでも力の違いを見せつけ、途中で番手から抜け出すと殆ど追われることなく3馬身1/4差で完勝。レディーズシークレットS時代に3連覇したZenyatta以来2頭目の同競走3連覇を達成した。
そしてブリーダーズカップを目指し、American Pharoahとの対決の舞台となるケンタッキー州・キーンランド競馬場へ向かったビホルダーだったが、不運にも到着時に熱発した上、レース2日前に運動誘発性肺出血(EIPH)を発症。このまま激しいレースに送り出したらダメージが残るだろうというマンデラ師の判断により、無念の出走回避となった。
これにより、5歳時は5戦無敗でシーズンを終えた。また、エクリプス賞最優秀古馬牝馬を受賞した。
6歳時はアドレーションSから始動し、これを勝利。続くヴァニティマイルS(GI・1マイル)では前年の最優秀3歳牝馬Stellar Windとの対戦となったがこれを1馬身半退け楽勝した。これにより、自身が持っていた2歳からのGI連続勝利年数記録を「5」に更新し、単純なGI連続勝利年数記録でもJohn Henry(5~9歳でGI勝ち)に並ぶこととなった。
ところが次走のクレメント・L.ハーシュSでは、前走で破ったStellar Windとの叩き合いで半馬身差遅れて2着に敗れ、前々年のゼニヤッタSから続いていた連勝は8でストップ。更にパシフィッククラシックSでは*カリフォルニアクロームの5馬身差2着、史上初の4連覇がかかったゼニヤッタSもStellar Windのクビ差2着と、これまで対戦していなかった強豪に苦杯を嘗めさせられる競馬が続いた。
引退レースとなったBCディスタフ、舞台は地元カリフォルニア・サンタアニタパークであった。ここまでBCジュヴェナイルフィリーズなどGI7勝を含む11戦無敗の3歳馬Songbirdが単勝2.1倍、Stellar Windが単勝3.5倍で、ビホルダーは単勝4.3倍の3番人気であった。
スタートが切られるとSongbirdがハナを主張し、ビホルダーはこれをマークするように追走。最終コーナーで並びかけるとSongbirdとの叩き合いに持ち込んだ。後方から追走してきたForever Unbridledもこれに加わるには至らず、2頭のマッチレースはゴールまで続き、最後まで並んだままゴール板を通過。写真判定の結果、ハナ差先んじていたのはビホルダーであった。
これにより、ビホルダーはマイルで3連覇したGoldikova以来となるブリーダーズカップの平地競走3勝を達成。この年6戦3勝、通算26戦18勝2着6回(うちGI11勝)で現役を引退し、この年のエクリプス賞最優秀古馬となった。
引退後はスペンドスリフトファームで繁殖入りした。なお、本馬の功績を讃えて、ヴァニティマイルSが2017年から「ビホルダーマイルS」に改称された。
2023年、War Frontとの間に産まれた3番仔の牝馬Teena EllaがセニョリータS(米GIII)を勝利して産駒初の重賞勝利を挙げた。同年、Bolt d'Oroとの間に産まれた4番仔の牝馬TamaraがデルマーデビュータントSを勝ち、産駒初のGI勝利を達成した。
*ヘニーヒューズ Henny Hughes 2003 栗毛 |
Hennessy 1993 栗毛 |
Storm Cat | Storm Bird |
Terlingua | |||
Island Kitty | Hawaii | ||
T.C. Kitten | |||
Meadow Flyer 1989 鹿毛 |
Meadowlake | Hold Your Peace | |
Suspicious Native | |||
Shortley | Hagley | ||
Short Winded | |||
Leslie's Lady 1996 鹿毛 FNo.23-b |
Tricky Creek 1986 鹿毛 |
Clever Trick | Icecapade |
Kankakee Miss | |||
Battle Creek Girl | His Majesty | ||
Far Beyond | |||
Crystal Lady 1990 鹿毛 |
Stop the Music | Hail to Reason | |
Bebopper | |||
One Last Bird | One for All | ||
Last Bird |
クロス:Northern Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2025/07/30(水) 18:00
最終更新:2025/07/30(水) 18:00
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