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モルヒネ(Morphine)とは、アヘンから抽出される麻薬性鎮痛薬である。
モルヒネは、ケシの未熟果実から採取される乳液を凝固させて作られるアヘンに含まれるアルカロイドで、オピオイドおよびオピエートの一種である。モルフィン、モーフィーン、モヒとも呼ばれる。1804年、ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナーによって、天然有機化合物としては世界で初めて単離された。名称の由来は、ギリシア神話の夢の神モーフィアス(Morpheus)。
強い鎮痛作用があり多幸感をもたらすため、戦争で負傷した兵士の鎮痛や薬物中毒の治療を目的に多用された。しかし、耐性(反復投与による効力低下)を形成するため次第に用量が増えてしまう。また、薬物がないと不安になり薬物を強く求める精神的依存や、薬物の投与を中断すると退薬症候(禁断症状)を生じる身体的依存を形成するため、「麻薬に関する単一条約」「麻薬・向精神薬取締法」のもと、生産や流通が厳しく管理されている。
モルヒネの構造を右に示した。この絶対構造決定には単離から実に150年の歳月を必要としている。モルヒネの構造の決定には有機化学の発展が不可欠であり、逆に言えば、“有機化学の発展はモルヒネによって牽引された”[1]といえる。
今日、医薬品として用いられている。アヘン末、アヘンチンキ、モルヒネ塩酸塩およびモルヒネ硫酸塩の錠剤や注射剤などが日本薬局方に収載されており、劇薬・麻薬・処方箋医薬品に指定されている。モルヒネ塩酸塩とモルヒネ硫酸塩で効果や薬物動態に違いはないが、モルヒネ硫酸塩は徐放性製剤のみが上市されている。モルヒネの作用を下に示す。
臨床では、鎮痛作用や鎮咳作用を目的として投与する。鎮痛作用は、ほぼすべての型の疼痛に有効である。鎮痛・鎮咳作用以外はすべて副作用に関連する。臨床上、催吐作用(悪心・嘔吐)や止瀉作用(便秘)が問題となるため、制吐薬(吐き気止め)や瀉下薬(下剤)を併用する。もし、モルヒネの過量投与や濫用により急性中毒に陥った場合、呼吸抑制作用によって呼吸麻痺となり死に至る。
術後疼痛、末期がんの疼痛、心筋梗塞の疼痛に適応。疼痛下の投与では耐性や依存性は形成されにくい。また、心拍数や呼吸数を低下させ心負荷を軽減させる目的で、急性肺浮腫の患者に使用される。ただし、気管支ぜん息の患者や妊婦には禁忌。[2]
モルヒネは、ほかの薬では効果が不十分であるときに選択される。また、モルヒネの投与の決定は、患者の死期の近さではなく、痛みの強さによってなされる。基本的には4時間ごとに経口投与される。急に投与を中止すると退薬症候(禁断症状)が生じるおそれがあるので、中止する際は徐々に使用量を減らしていく。退薬症候は、不安感、不快感、発汗、流涙、鼻漏、嘔吐、下痢、睡眠障害などがある。
モルヒネに代表されるオピオイド(アヘンの成分やその類縁物質)は、神経系に存在するオピオイド受容体に作用する。このオピオイド受容体は、δ受容体、κ受容体、μ受容体の3つに大別される。モルヒネはいずれも刺激するが、とくにμ受容体への作用が強く、モルヒネの作用の多くがμ受容体刺激によるものである。ちなみに、“μ”はアルファベットの“m”に相当する文字で、モルヒネ(Morphine)が作用することからμ受容体と名付けられた。“δ”は“d”に相当する文字で、精管(Vas deferens)から発見されたことにちなむ。“κ”は“k”に相当する文字で、ケトシクラゾシン(Ketocyclazocine)が選択的作動薬であることにちなむ。
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最終更新:2025/03/26(水) 18:00
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