「あきづき」とは平成23年11月現在、進水と艤装を完結した上で公試を進めている、海上自衛隊最新の護衛艦である。建造は三菱重工業長崎造船所で行われ、平成24年3月に就役。海上自衛隊へ引渡し予定となっている。
「むらさめ」型、「たかなみ」型に連なる汎用護衛艦であり、命名されるまでは「5,000トン型護衛艦」。もしくは予算成立年度をとって「19DD」と呼ばれていた。名称のとおり基準排水量は5,000トン。満載排水量は7,000トンに迫り、最早米国以外のDDG(ミサイル駆逐艦)に匹敵する。あるいは一部で凌駕するサイズである。
なお、「あきづき(秋月)」の名前を冠する水上戦闘艦は三代目である。初代は帝国海軍駆逐艦「秋月」。二代目は海上自衛隊の初代護衛艦「あきづき」である。何れも対空戦闘能力に優れた艦であるのは縁を感じさせる。2番艦名称が公募の上とは言え、往時の秋月型駆逐艦2番艦「照月」に因んでいるあたり、その点を海自が意識している節もある。
「あきづき」型には当初、二つの建造案が存在していた。一つは現在の「たかなみ」型護衛艦の拡大改良案。もう一つはSea-RAMをCIWSに採用。上構造物と船体のステルス化を徹底した先進案である。
当初は先進案も有力であったが、折からの防衛予算圧縮の状況を受け、一説によれば財務省や内局等々との折衝の末、保守案が採用された。英海軍のデアリング級駆逐艦のように、コスト高騰で建造数が削減されてしまうよりは、妥当な選択とも言える。調達価額は750億円前後であり、装備や船体規模を考えれば相当に抑制されている。
それ故か最衛艦らしいスマートな船体であるが、随所に「たかなみ」型からの連なりを感じさせるラインが残っている。
船体構造こそ保守的であるが、搭載されている電子装備と誘導武器は、世界水準からしても最新鋭のものである。
特に「ひゅうが」にも搭載され、このクラスにも搭載された多機能レーダー。「FCS-3」は元来が優れた多機能アクティブフェイズドアレイレーダであり、「あきづき」には更なる改善型「FCS-3A」が搭載されている。改良型はアンテナ素子にガリウム砒素などを用い、大幅に先端出力を強化したと言われる。
戦闘指揮システムも、対潜情報処理まで統合した「OYQ-11」という全自動の最新型が搭載された。基本的には「ひゅうが」型の「OYQ-10」ACDSと同系統であるが、こちらは速射砲やSSMの射撃管制能力も付与されている。嘗てのミルスペックシステムではなく、安価かつ高性能となった民生電子製品が多用されているのも特徴である。
余談ではあるが海上自衛隊の国産ACDS(発達型戦術情報処理装置)は、多分に「あたご」型イージス護衛艦のそれを参考に開発されている。特に対潜情報処理装置の統合化などは、その側面が非常に強い。ASWシステムは「こんごう」型の段階では開示されず、国産システムで代替せざるを得なかった。
搭載している誘導武器(ミサイル)も、発達型シースパロー(ESSM)と垂直発射型アスロックと最新鋭。ないしそれに準ずるものを、前部甲板VLS32セルに満載している。ESSMは最大射程が50kmにまで伸びており、限定的な広域防空も可能である。水上目標への対処には、船体中央部に搭載された90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が使用される。
なお、些か残念な話ではあるが、予算不足によりASWに用いる対潜ロケットは、最新の07式ではなく既存の垂直発射型アスロック。CIWSである高性能20mm機関砲(ファランクス)も一世代前のBlock1Aである。07式アスロックの運用は2番艦「てるづき」以降に順延された。欠点というほどではないが、このあたりに海上自衛隊の予算窮乏も伺える。
海上自衛隊としては「あきづき」型を用い、BMD任務に専念しているイージス護衛艦の護衛を行うことも想定している。建造数が4隻とされたのは、19DD建造開始当時にBMD対応改修を受けるイージス護衛艦が「こんごう」型4隻であったことが影響している。「あたご」型もBMD改修を受けることが決定した現在、今後のDD建造動向も注目されている。
機関はCOGAG方式であり、ロールスロイス「SM-1C」ガスタービンを川崎重工業がライセンスしたものを、シフト配置4基2軸で搭載している。従来、異なる系統のガスタービンを混載した「むらさめ」「たかなみ」に比して、運用性と整備維持性の向上も図られていると思われる(当初はGE製「LM2500」の搭載も検討された)。ってかDDにLM2500を搭載
外見こそ若干保守的であるが、その内実はコストと性能をよく見極めた、高性能な護衛艦として完成することが期待されている。同時に既に発達型として「5400トン型護衛艦」というプランが存在し、こちらは省電力化された多機能FCS、ECM/ESM、衛星通信などのアンテナを一元化し、コンフォーマル方式で装備する。
現在、一番艦「あきづき」は三菱重工業長崎造船所にて公試中。去る9月には2番艦が「てるづき」(DD116)と命名の上で同じく三菱長崎で無事の進水を果たした。本年度より3番艦、4番艦も建造が開始されている。
| 艦名 | 艦番号 | 所属 | 進水 | 建造 | 艦名の由来 | |
| 就役 | ||||||
| 1番艦 (19DD) |
あきづき | DD-115 | 第1護衛隊群 第5護衛隊 |
2010年10月13日 | 三菱重工 長崎造船所 |
旧海軍の秋月型防空駆逐艦1番艦秋月より。海上自衛隊護衛艦隊旗艦を務めた伝統ある名称で知名度も高いことから。 |
| 2012年3月14日 | ||||||
| 2番艦 (20DD) |
てるづき | DD-116 | ― | 2011年9月15日 | 三菱重工 長崎造船所 |
旧海軍の秋月型防空駆逐艦2番艦照月より。海上自衛隊護衛艦隊旗艦を務めた伝統ある名称で知名度も高いことから。 |
| 2013年3月予定 | ||||||
| 3番艦 (21DD) |
すずつき | DD-117 | ― | 2012年10月17日 | 三菱重工 長崎造船所 |
旧海軍の秋月型防空駆逐艦3番艦涼月より。 |
| 2014年3月予定 | ||||||
| 4番艦 (21DD) |
ふゆづき | DD-118 | ― | 2012年8月22日 | 三井造船 玉野事業所 |
旧海軍の秋月型防空駆逐艦8番艦冬月より。天一号作戦(戦艦大和の沖縄特攻)に参加し無事帰投しており、冬の空を連想させ身の引き締まる印象を与える語感があきづき型4番艦として適当であることから。 |
| 2014年3月予定 |
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最終更新:2025/12/09(火) 07:00
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