アメリカ合衆国中間選挙(midterm election)とは、米国において大統領選挙のない西暦偶数年に行なわれる選挙をいう。
4の倍数にならない西暦偶数年に行われる。下2桁が4の倍数である自然数は全て4の倍数なので、下2桁が4で割り切れない年が中間選挙の年になる。冬季オリンピックと同じ年に開催される。
11月第1月曜日の属する週の火曜日に投票が行われる。つまり、11月2日~8日のうちのどれかになる。これを米国では選挙の日(Election Day)と呼ぶ。
アメリカ合衆国上院の3分の1の約33議席が改選、アメリカ合衆国下院435議席の全てが改選される。州知事選挙の多くも同時に行われる。
中間選挙は、大統領の属する政党がいつも苦戦する。政権批判の選挙となりがちである。
上院は、各州から2名ずつ代表を出すので定員が必ず偶数になる。それゆえ、大統領の属する政党とそれに反する政党が全く同数になることがある。そういうときは、副大統領が大統領に属する政党に加わって1票を投じて決着を付けることになっている。副大統領は上院議長を兼任しているので、そういう措置をとることができる。
だから、大統領が属する政党は、上院で半数を確保すれば「過半数確保」ということになる。
| 大統領 | 大統領党 | 上院における大統領党 | 下院における大統領党 | |
| 1902年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 55→55 半数45 過半数確保 | 201→210 過半数194 過半数確保 |
| 1906年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 57→60 半数45 過半数確保 | 251→224 過半数196 過半数確保 |
| 1910年 | タフト | 共和党 | 59→50 半数46 過半数確保 | 219→163 過半数198 過半数割れ |
| 1914年 | ウィルソン | 民主党 | 50→53 半数48 過半数確保 | 291→230 過半数218 過半数確保 |
| 1918年 | ウィルソン | 民主党 | 52→48 半数48 過半数確保 | 214→192 過半数218 過半数割れ |
| 1922年 | ハーディング | 共和党 | 60→53 半数48 過半数確保 | 302→225 過半数218 過半数確保 |
| 1926年 | クーリッジ | 共和党 | 56→50 半数48 過半数確保 | 247→238 過半数218 過半数確保 |
| 1930年 | フーヴァー | 共和党 | 56→50 半数48 過半数確保 | 270→218 過半数218 過半数確保 |
| 1934年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 60→69 半数48 過半数確保 | 313→322 過半数218 過半数確保 |
| 1938年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 75→68 半数48 過半数確保 | 334→262 過半数218 過半数確保 |
| 1942年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 65→57 半数48 過半数確保 | 267→222 過半数218 過半数確保 |
| 1946年 | トルーマン | 民主党 | 56→46 半数48 過半数割れ | 242→188 過半数218 過半数割れ |
| 1950年 | トルーマン | 民主党 | 54→49 半数48 過半数確保 | 263→235 過半数218 過半数確保 |
| 1954年 | アイゼンハワー | 共和党 | 49→47 半数48 過半数割れ | 221→203 過半数218 過半数割れ |
| 1958年 | アイゼンハワー | 共和党 | 47→35 半数49 過半数割れ | 201→153 過半数219 過半数割れ |
| 1962年 | ケネディ | 民主党 | 64→68 半数50 過半数確保 | 262→258 過半数218 過半数確保 |
| 1966年 | ジョンソン | 民主党 | 67→64 半数50 過半数確保 | 295→248 過半数218 過半数確保 |
| 1970年 | ニクソン | 共和党 | 43→45 半数50 過半数割れ | 192→180 過半数218 過半数割れ |
| 1974年 | フォード | 共和党 | 42→38 半数50 過半数割れ | 192→144 過半数218 過半数割れ |
| 1978年 | カーター | 民主党 | 61→59 半数50 過半数確保 | 292→277 過半数218 過半数確保 |
| 1982年 | レーガン | 共和党 | 54→54 半数50 過半数確保 | 192→166 過半数218 過半数割れ |
| 1986年 | レーガン | 共和党 | 53→45 半数50 過半数割れ | 182→177 過半数218 過半数割れ |
| 1990年 | ブッシュ | 共和党 | 45→44 半数50 過半数割れ | 175→167 過半数218 過半数割れ |
| 1994年 | クリントン | 民主党 | 57→48 半数50 過半数割れ | 258→204 過半数218 過半数割れ |
| 1998年 | クリントン | 民主党 | 45→45 半数50 過半数割れ | 206→211 過半数218 過半数割れ |
| 2002年 | ブッシュJr. | 共和党 | 49→50 半数50 過半数確保 | 221→229 過半数218 過半数確保 |
| 2006年 | ブッシュJr. | 共和党 | 55→49 半数50 過半数割れ | 229→202 過半数218 過半数割れ |
| 2010年 | オバマ | 民主党 | 57→51 半数50 過半数確保 | 256→193 過半数218 過半数割れ |
| 2014年 | オバマ | 民主党 | 53→44 半数50 過半数割れ | 201→188 過半数218 過半数割れ |
| 2018年 | トランプ | 共和党 | 51→53 半数50 過半数確保 | 235→200 過半数218 過半数割れ |
大統領の属する政党の苦戦が目立つ。特に、第二次世界大戦が終わったあとの成績が悪い。
1946~2018年に限ると、大統領政党が両院で過半数を確保したのは19回中5回のみ。大統領政党が上院の過半数を確保したのは19回中8回。大統領政党が下院の過半数を確保したのは19回中5回。
2期目の大統領を擁する政党が中間選挙で敗北し、上院と下院の両方で野党に転落することが多い。1970年以降に限ると、1986年のレーガン、1998年のクリントン、2006年のブッシュJr.、2014年のオバマ、となり、全てのケースで大統領所属政党が上院と下院で野党に転落している。
| 大統領 | 大統領党 | 上院における大統領党 | 下院における大統領党 | |
| 1902年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 55→55 増減無し | 201→210 +9 |
| 1906年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 57→60 +3 | 251→224 -27 |
| 1910年 | タフト | 共和党 | 59→50 -9 | 219→163 -56 |
| 1914年 | ウィルソン | 民主党 | 50→53 +3 | 291→230 -61 |
| 1918年 | ウィルソン | 民主党 | 52→48 -4 | 214→192 -22 |
| 1922年 | ハーディング | 共和党 | 60→53 -7 | 302→225 -77 |
| 1926年 | クーリッジ | 共和党 | 56→50 -6 | 247→238 -9 |
| 1930年 | フーヴァー | 共和党 | 56→50 -6 | 270→218 -52 |
| 1934年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 60→69 +9 | 313→322 +9 |
| 1938年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 75→68 -7 | 334→262 -72 |
| 1942年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 65→57 -8 | 267→222 -45 |
| 1946年 | トルーマン | 民主党 | 56→46 -10 | 242→188 -54 |
| 1950年 | トルーマン | 民主党 | 54→49 -5 | 263→235 -28 |
| 1954年 | アイゼンハワー | 共和党 | 49→47 -2 | 221→203 -18 |
| 1958年 | アイゼンハワー | 共和党 | 47→35 -12 | 201→153 -48 |
| 1962年 | ケネディ | 民主党 | 64→68 +4 | 262→258 -4 |
| 1966年 | ジョンソン | 民主党 | 67→64 -3 | 295→248 -47 |
| 1970年 | ニクソン | 共和党 | 43→45 +2 | 192→180 -12 |
| 1974年 | フォード | 共和党 | 42→38 -4 | 192→144 -48 |
| 1978年 | カーター | 民主党 | 61→59 -2 | 292→277 -15 |
| 1982年 | レーガン | 共和党 | 54→54 増減無し | 192→166 -26 |
| 1986年 | レーガン | 共和党 | 53→45 -8 | 182→177 -5 |
| 1990年 | ブッシュ | 共和党 | 45→44 -1 | 175→167 -8 |
| 1994年 | クリントン | 民主党 | 57→48 -9 | 258→204 -54 |
| 1998年 | クリントン | 民主党 | 45→45 増減無し | 206→211 +5 |
| 2002年 | ブッシュJr. | 共和党 | 49→50 +1 | 221→229 +8 |
| 2006年 | ブッシュJr. | 共和党 | 55→49 -6 | 229→202 -27 |
| 2010年 | オバマ | 民主党 | 57→51 -6 | 256→193 -63 |
| 2014年 | オバマ | 民主党 | 53→44 -9 | 201→188 -13 |
| 2018年 | トランプ | 共和党 | 51→53 +2 | 235→200 -35 |
議席の増減で見てみると、大統領の属する政党の苦戦がはっきりと目立つ。第二次世界大戦の前も後も、同じ傾向である。
特に下院では大苦戦で、1902年から2018年までの30回中26回で大統領政党が議席を減らしている。確率にすると86%になる。
英語版Wikipediaを参考に作成した。
1994年中間選挙のデータを得る場合、こちらのページを見る。Seats beforeの数値を「選挙前議席」、Seats afterの数値を「選挙で得た議席」と扱った。
2010年中間選挙のデータを得る場合、こちらのページを見る。この年は独立系の候補が当選している。この候補は民主党寄りで、実質的に民主党の一員なのだが、やっぱり独立系なので「大統領の属する政党」の数には入れていない。
1994年中間選挙のデータを得る場合、こちらのページを見る。Last electionの数値を「選挙前議席」、Seats wonの数値を「選挙で得た議席」と扱った。
2006年中間選挙のデータを得る場合、こちらのページを見る。Last electionの数値だけでなく、Seats beforeの数値がある。実は、選挙が行われてから不祥事で議員辞職して補選が行われて共和党議席が民主党議席になる・・・といったことがある。前回選挙の議席数がLast election、選挙の直前の議席数がSeats beforeなのである。こういう場合は、Seats beforeの数値を「選挙前議席」として扱った。
Last electionの数値とSeats beforeの数値が併記してあるのは2006年、2010年、2018年である。
中間選挙の一環として、多くの州で州知事選挙が行われる。全米50州のうちの約7割の州で州知事選挙がある。2018年中間選挙では36州で州知事選挙が行われた。
ヴァーモント州とニューハンプシャー州の2州だけは州知事の任期が2年となっているが、他の48州では州知事の任期が4年となっている。
つまり、4年に1度の中間選挙で任期4年の州知事を決める州が多いということになる。
州知事選は、2年後の大統領選挙に向けて大きな意味合いがある。
大統領選挙において州知事はなにかと役に立つ存在である。大統領選挙の寄付金集めやボランティア募集などに大きな影響力がある。
また、州知事というのは大統領選挙の投票のために必要な有権者登録にも影響力があり、行政権限を使って規則を変更して、敵対する党の支持層の有権者登録を阻害することも不可能ではない。過去にこうした妨害行為はしばしば行われてきて、これを投票抑圧・投票妨害(voter suppression)という。
このため、大統領選挙を勝ちたいのなら州知事選挙を勝っておきたいところである。
スイング・ステートと呼ばれる激戦州の知事選を勝ち抜くと、2年後の大統領選挙に向けて大きな弾みとなる。
2018年の中間選挙において、共和党がフロリダ州知事選挙とオハイオ州知事選を勝ち、トランプ大統領再選に向けて幸先の良い結果となった。フロリダ州は2000年大統領選挙で最後の決戦地となった場所であり、オハイオ州は「オハイオ州を勝つものが大統領選挙を制す」というジンクスを保っている場所である。
一方、民主党はペンシルヴェニア州知事選とミシガン州知事選を勝った。この2州もかなりの激戦州で、2020年大統領選挙に向けて希望をつないだと言えるだろう。
中間選挙の結果によって、上下院の勢力図が塗り替わる。
どういうパターンが実現しやすいか、政局がどのように変化するか、考えてみよう。
こうなれば大統領にとって安泰であり、極めて安定した政権運営をすることができる。
しかし、現代においてこれが実現する可能性はとても低い。1982年から2018年までの間、上院・下院の両方を大統領所属の政党が制したのは2002年の一度だけ。このときは2001年9月11日の同時多発テロの直後であり、米国全体が緊急の異常事態に陥っていて、米国民の間に「大統領の足を引っ張るのはやめておこう」という雰囲気が広がっていた時期だった。
このパターンは、1902年から2018年までの期間で一度も発生していない。中間選挙が30回行われたが一度たりともこのパターンになっていない。
また、この30年間、中間選挙で大統領政党が下院を失うのが定番の光景になっている。1982年から2018年までの間、下院を大統領所属の政党が制したのは2002年の一度だけ。
このパターンはしばしば見られる。1982年から2018年までの10回の中で3回発生している。
下院を野党を占めることで、大統領に対して様々な攻撃をすることが可能である。2018年11月以降は、下院の民主党がロシア疑惑についての公聴会を開き、追及を強めることだろう。
ところが下院だけで大統領を追い詰めることは難しい。大統領を弾劾するには下院で過半数の議決を得て弾劾の訴追をして、上院で弾劾裁判を開いて出席者の3分の2の賛成を得ねばならない。上院で出席者の3分の2の賛成を得られないと分かっている場合は、下院で弾劾の訴追をする意味が無い。
また、なんといっても、下院の任期はたったの2年である。実際には2年のうち1年は選挙準備に追われるらしく、法案審議などに力を注げるのは1年のみという。その貴重な時間をわざわざ削って、大統領攻撃に乗り出すことに賛成する議員はそんなに多くない。
米国では法律や予算案を成立させるには上院と下院の両方の賛成が必要である。下院単独で法律や予算案をゴリ押しすることは不可能である。
まとめていうと、下院のみを野党に占められてもあまり脅威ではないというのが実情と言える。
このパターンは多い。1982年から2018年までの10回の中で6回も発生している。
日本は「国会こそが国権の最高機関」と憲法第41条で規定され、そのように政治も回っている。そういう国の政治を見慣れたあとに、議会と全面対決する米国大統領を見ると、「四面楚歌で周りが全て敵じゃないか・・・もはや辞任するしかない、お気の毒に」という気分になる。
ところがどっこい、上院と下院を敵に占められても、米国大統領は何とかやっていけるのである。
上院と下院を完全に敵に回したときに米国大統領がちらつかせる伝家の宝刀は、拒否権である。この拒否権というものは、日本の行政府には一切無いものなので、日本人にはいささか理解しづらい。しかしながら、拒否権の威力は強烈なので、これだけで議会と互角に渡り合える。
議員にとっては大統領にいつも「拒否権を行使するぞ」と脅されながら仕事しているので、なかなか大統領に対して強気で臨むことはできない。
まとめていうと、上院と下院の両方を野党に占められても絶体絶命のピンチではない、というのが実情と言える。
アメリカにも選挙用語があるのでいくつか紹介したい。
| 直訳 | 意味 | |
| landslide | 地滑り | 圧勝すること。選挙で票が流れる様が、土砂が流れる様子と似ているから |
| blue tsunami | 青い津波 | 民主党の圧勝。民主党のイメージカラーは青なので、海を連想する言葉を使う |
| blue wave | 青い波 | 民主党が多くの議席を奪うこと。 |
| blue ripple | 青いさざ波 | 民主党に勢いがあったがあまり戦果を得られなかった時にこう表現する。 |
| coattail | 上着のすそ | 人気のある大統領候補と同じ政党というだけで、まんまと当選した議員のこと |
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/14(日) 00:00
最終更新:2025/12/14(日) 00:00
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