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インフレーション

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インフレーション(inflation)とは、経済学の用語で物価水準が上昇することである。インフレ。対義語はデフレーション(デフレとも)。

もともとの意味は膨張する、膨らませるという意味。「すさまじい勢いでの膨張」という意味で別の分野でも使われる→宇宙ヤバイ。またスラングとして、「無駄に増え過ぎ」「増やせばいいってもんじゃねーぞ!」という意味でも使われる。

概要

市場にある通貨の量が市場にある商品(財貨やサービス)に対して多くなり、その結果持続的に物価の水準が上昇することである。極端なものはハイパー・インフレーションという。

発生過程としては、需給のバランスが崩れて供給不足になったとき、また市場に出回る貨幣の量(マネー・サプライ)が過剰になったことによって発生する。前者は国の荒廃によって物資が不足した場合などに、後者は貨幣の増発や政情不安などによって貨幣の信用が失われた場合などに発生するようである。

最古では、紀元前三世紀からインフレが確認されている。

インフレーションの影響

インフレーションは、実物資産の名目価値を高め、債務者の負担を軽くする一方で、金融資産や貯蓄の目減りをもたらす。そのため、インフレーションは実物資産や借金のある者にとってはプラスとなり、預貯金や債権を有する者にとってはマイナスとなる。

また、インフレーションでは、物価の上昇に伴い賃金も上昇するが、物価の上昇に比べると賃金の上昇は遅れ、また上昇幅も少ないため、労働者の実質賃金は低下する。一方、労働者の実質賃金が低下するため雇用側としては人を雇いやすくなり、失業率は低下する。この失業率が下がることによって利益の分配先が増えることも、賃金の上昇が物価の上昇に比べて抑えられることの原因の一つになっている。結果、インフレーションは現在失業中の者や不安定な雇用者にとってはプラスとなり、既に安定した職についている者にとってはマイナスとなる。

インフレーションの防止

インフレーションの防止には、以下のようなものがある。

  • 生産性の向上による供給の増大
  • 金融・財政の引き締め政策(政策金利・公定歩合の引き上げ、日銀が公開市場操作をして銀行に保有国債を売る、財政支出の削減、増税)

インフレーションの種類

速度による分類

  • クリーピング・インフレ…緩やかに進むインフレ。マイルドなインフレとも言われる。好景気に見られるが他のインフレと異なり健全な発展であり、(原則として)国全体が金持ちになっていると見て良い。ゆえに、一般にはあまりインフレとは言わない。年間インフレ率2~3%程度を指すとされる。2019年現在、世界中でインフレターゲット政策が導入されているが、その多くが2%程度に設定されている。
     
  • ギャロッピング・インフレ…早足に進むインフレ。年間インフレ率10%を超えると、こう呼ばれることが多い。日本では第1次オイルショックのとき経験した。
     
  • ハイパー・インフレ…インフレ率が極端に上昇していくインフレーション。毎月50%上昇など。猛烈かつ予測不能な勢いで進行するインフレ。最近の例として、ジンバブエではインフレ率が年率約2億3000万%に達したとされる。下記参照。
     

要因別の種類

  • ディマンド・プル・インフレーション…需要量の増加に対して生産量が追いつかないために生じる
     
  • コスト・プッシュ・インフレーション…賃金や原材料費・燃料費のコスト(費用)上昇率が、労働生産性の増加率を上回ることによっておこる
     

ハイパー・インフレーション

ハイパー・インフレは、外国に占領されるんじゃないかとか革命が発生するんじゃないかといったように通貨発行主体の継続性が疑われた場合に発生しやすい。同時に、戦争などで国土が荒廃して市場に供給される物資そのものが決定的に不足している場合が多い。

このような状態では政府発行貨幣の信用がほとんど消失し、天文学的額面の紙幣が発行されたり紙幣の重量を測って取引を行うような事態が出来する。これは同時に政府の統治能力が極端に低下していることを意味しており、社会全体が荒廃する結果さらに経済の荒廃が進行する。このような状態ではヤミ経済が横行し物価統計自体が推測に頼らざるを得なくなるようなことも多い。

ハイパーインフレの例としては第一次世界大戦後のドイツや、最近ではジンバブエが有名。第一次世界大戦後のドイツでは、戦争で荒廃し国土の一部を失った上に支払い不能な巨額の賠償金を課されたために極端な財政赤字となったことが発端である。パン一個が1兆マルクに達した、本を買うのに札束をスーツケースにつめていったなどと逸話には事欠かない。

史上最も激烈なハイパーインフレに見舞われたのは第二次世界大戦後のハンガリーであるとされており、このときには10垓ペンゲー紙幣が印刷されている(発行はされていない。発行されたのは1垓まで)。


ハイパーインフレの正式な定義は、アメリカの経済学者フィリップ・ケーガンによると「月率50%」となる。それが1年間続くと年率で1万2975%になるので「年率1万3千%」といわれることが多い。

また、国際会計基準ではハイパーインフレを「3年間で累積100%」と定義している。例えば、年率26%のインフレが3年続くと、(1×1.26×1.26×1.26=2.000となるので)累積100%となる。ある年が年間15%、次の年が年間20%、その次の年が年間45%となると、(1×1.15×1.20×1.45=2.001となるので)累積100%となる。「年率26%程度のインフレが3年」と憶えておいても良いだろう。
 

日本が経験してきたインフレーション

近代化以前の日本において、しばしばインフレーションが発生した記録が残っている。有名なものは江戸時代に荻原重秀が貨幣を改鋳して起こした「元禄・宝永のインフレ」である。

近代化してからもしばしばインフレとなった。この記事1902年以降の日本のインフレ率が掲載されているので、それに基づいて表を作成する。
 

年間インフレ率 解説
1946年 289.2% 敗戦直後のインフレ。空襲で生産設備に打撃が与えられ、需要に対して供給が追いつかない状況だった。それに加え、円建てで発行された戦時国債を新規通貨発行で返済していったため、これだけのインフレとなった。
1918年 33.2% 第一次世界大戦の好景気に伴うインフレ。ヨーロッパ各国から日本に軍需物資の注文が殺到し、需要に対して供給が追いつかなくなってインフレになった。米価も上昇し、大正米騒動が勃発した。
1974年 23.1% 第1次オイルショックのインフレ。石油価格が急上昇し、世の中の生産力に打撃が与えられた。
1951年 17.2% 朝鮮特需のインフレ。1950年に朝鮮戦争が勃発し、朝鮮半島で戦うアメリカ軍からの発注が急増し、需要に対して供給が追いつかなくなった。
1980年 7.8% 第2次オイルショックのインフレ。産油国イランで革命が起こって原油輸出が止まり、石油価格が急上昇して、世の中の生産力に打撃が与えられた。


主なインフレは以上の通りである。「ハイパーインフレは年間インフレ率1万3千%」と米国経済学者のフィリップ・ケーガンにより定義されているが、その定義に該当するインフレは起きていない。「ハイパーインフレは年間26%が3年続くなどして3年で累積100%になった状態」と国際会計基準が定義しており、それによると敗戦直後のインフレのみが唯一ハイパーインフレに該当する。

高度経済成長期のインフレ率は5~7%の範囲に収まっている。昭和末のバブル景気のインフレ率は2~3%と、極めて穏当な水準で推移していた。

2013年3月に日本銀行総裁に黒田東彦が就任して異次元金融緩和を行ったら2014年のインフレ率が2.6%にまで上昇したが、2014年4月に消費税が8%に引き上げられたからか2015年以降のインフレ率が伸び悩んでいる。
 

貨幣以外では

世の中は貨幣以外にも様々なインフレに包まれている。

  • 宇宙の初期にあったとされる現象。宇宙のインフレーション。インフレーション理論。
  • 某レッドカーペット番組の「大笑」(初期の中笑相当)
  • 某ボードゲーム連盟の「アマチュア免状」(買う感覚)
  • バトル漫画の「戦闘力」(初期のままでは通用しない)

要するに、「ありがたみがどんどん減っていく」と言うこと全般を指す。

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関連Wikipedia記事

関連項目

  • デフレーション
  • 経済学
  • ジンバブエ / ジンバブエ・ドル
  • デノミネーション
  • インフレターゲット
  • スタグフレーション
  • インフレ恐怖症

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