エレアのゼノン(紀元前490年頃~紀元前430年頃)とは、古代ギリシアの哲学者である。エレアに生まれたため、このように呼ばれる。
生涯
紀元前490年頃にエレアに生まれる。
テレウタゴラスという人の息子として生まれたが、後にパルメニデスの養子となった。ゼノンはパルメニデスと師弟関係でもあり、パルメニデスの思想に強い影響を受けた。
エレアの僭主を倒そうとして失敗、捕えられて刑死した。
ゼノンの思想
ゼノンのパラドックス
ゼノンは、師パルメニデスの「唯一不動」の思想に影響を受け、その考えを弁護するために、ある仮説を唱えた。これが有名な「ゼノンのパラドックス」である。
ゼノンのパラドックスは四つ存在する。
二分法
- ある地点Aからある地点B0へ移動することを考える。
- AからB0へ移動するためには、AとB0のちょうど半分の位置にある点B1に移動しなくてはならない。
- AからB1へ移動するためには、AとB1のちょうど半分の位置にある点B2に移動しなくてはならない。
- AからB2へ移動するためには、……(以下同様)
- 以上のように、AからB0へ移動するためには、無限の点を移動しなくてはならない。
- 無限の点を移動するためには、無限の時間が必要である。
- これは不可能である。よって、AからB0へ移動することはできない。
アキレスと亀
- アキレスと亀が競争することを考える。
- アキレスは亀よりも走るのが速いので、ハンディキャップとして、亀はアキレスの位置から少し進んだ地点Aから走ることにする。
- アキレスがAに到着したとき、亀はAよりも少し進んだ地点Bに移動している。
- アキレスがBに到着したとき、亀はAよりも少し進んだ地点Cに移動している。
- アキレスがCに到着したとき、……(以下同様)
- 以上のように、アキレスがある地点に到着したとき、亀はそれよりも少し進んだ地点に移動している。
- よって、アキレスが亀を追い越すことは不可能である。
飛ぶ矢
- 矢を放つと、矢は飛んでいるように見える。
- しかし、飛んでいる瞬間を捉えると、矢は常に静止している。
- よって矢が飛ぶことは不可能である。
競技場
- 競技場において、一瞬の間に1単位の距離を移動することのできる二台の馬車を考える。
- 二台の馬車は、それぞれ反対の方向に移動するものとする。
- 二台の馬車が一瞬の間に移動したとき、それぞれ1単位の距離を移動している。
- しかし、馬車に乗っている人間から見ると、自分の動いた分の1単位と、もう片方の馬車の動いた分の1単位で、2単位分の距離を移動したように見える。
- これは矛盾である。よって馬車が1単位の距離を移動することは不可能である。
弁証法
上記のような彼の考え方は、論駁する相手の考えを仮定し、そこから矛盾を導く「背理法」である。アリストテレスは、これをソクラテスの弁証法(問答法)に先立つものとして評価している。
関連商品

関連項目
- エレア派
- パルメニデス
- パラドックス
- キプロスのゼノン
- 弁証法