トラックシミュレーターシリーズ 単語


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トラックシミュレーターシリーズ

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トラックシミュレーターシリーズとは、チェコのSCS Softwareが製作・販売しているPC用トラックシミュレーターゲームの総称である。但し一般的に使われているそういう用語があるわけでもなく、記事作るために記事主が便宜的にデッチ上げた単語なのだが、そんなに的外れな言葉でもないだろう。

この記事ではニコニコ動画でお馴染みのEuro Truck Simulator 2やAmerican Truck Simulatorはもちろんの事、その源流である18 Wheels of Steelシリーズなどもトラックシミュレーターとして一括して扱う。

シリーズ概要

トラックシミュレーターシリーズは、2002年に発売されたHard Truck:18 Wheels of Steelから始まり、以後多数の作品を重ねる人気トラックシミュレーターである。プレイヤーはトラック(トラクター)の運転手兼運送会社経営者となり、お客さんから預かった荷物が搭載されたトレーラーを預かり、これを牽引して目的地まで運んでいってお金を稼いでいくというのが共通する趣旨。また仕様から降車はできないものの、ワールドの中を車で自由に移動できるという点に置いて、オープンワールドの要素を持っている。

舞台となる地域は主にアメリカとヨーロッパ。アメリカが舞台になるのは18 Wheels of Steel(以下18Wos)と、2016年発売のAmerican Truck Simulator。ヨーロッパが舞台なのはEuro Truck Simulator 1及び2、UK Truck Simulator、German Truck Simulatorなどである。

パブリッシャー及び販売について

パブリッシャーは18WoS時代はアメリカのValu Softが行っており、日本ではマイクロマウスが日本語マニュアル付き英語版を販売していたことがある。

今日ではイギリスのExcalibur Publishing、独のRondomediaなどがパッケージ版の販売を行っており、Amazonなどネット通販サイトでは、世界各地で販売件を持つ業者がダウンロード版の販売を行っている。またSteamでも、独立系開発会社作品としてダウンロード販売が行われている。日本ではズーがETS2の販売権を得て、Amazon.jpや楽天などでダウンロード版の販売を行っている。

日本在住ユーザーの購入に当たっては、日本で販売権を持つ業者のものしか買えないという訳ではない。クレジットカードやPaypalアカウントがあれば、Steamを含む国外のダウンロード版を買うことができる。また並行輸入業者が輸入した海外で売られているパッケージ版も同様。PCゲームなので、その辺は制約がない。

シリーズ各作品

ここではシリーズ各作品について簡単に紹介していく。Hard Truck:18WoS以降は毎年のように新作が出ており、基本システムは使い回ししながらも細部を変えたり、グラフィックを変えたりし、何らかの新しい試みや改良が行われている。

序章:シリーズ開始前夜

前述・後述のとおり、シリーズそのものはHard Truck:18WoSから始まっている。だがHard Truckという名称のゲームはそれ以前からあった。ロシアの会社が制作したHard Truckである。パブリッシャーはSCSソフトのものと同じくValu Soft。youtubeにうpされていた動画によると、どうやら荷物を積んだトラックでレースをするゲームのようだ。狙いどころとしてはBig Rigs爆走デコトラ伝説のようなものなのか。さらに続編としてHard Truck2:King of the Roadというものも販売された。
実はこの作品には実名のトラックが出ているのだが、ちゃんとライセンスを取ったかは不明である。

初代も二作目もレースゲームであり、今からすると派手だが荒っぽいゲームに思える。ここからレース要素を完全に排除し、純粋にトラックのドライビング及び運送会社経営シミュレーションとなったのが初代にあたるHard Truck:18WoSである。

沿革

大まかな沿革を以下に記す

第一世代【18 Wheels of Steel】

"18 Wheels of Steel" (18 WoS、鋼鉄の18輪)がタイトルに使われた、2002年~2007年頃の作品。アメリカを舞台にしたトラックシミュレーターゲーム。一作目のHard Truckは全米を網羅する広大なマップはなく、3種類の区域に分かれたマップが用意され、また初期資金により難易度も分かれていた。2作目のAcross Americaでは文字通りの全米マップとなり、東西両海岸を駆け抜けるプレイが可能となった。グラフィックも作品を重ねるごとに改良されていった。

第二世代【Euro Truck Simulator】

初代Euro Truck Simulatorから始まる、2008年~2010年或いは2011年頃の作品。舞台がヨーロッパに移された。プレイヤー側から見た感覚的には、システムは18 WoSとあまり変わらない思われる。第二世代までは実名のトラックは登場せず、見た目からモデルとなった実車が分かる架空の車種となっていた。

第三世代【Euro Truck Simulator 2, American Truck Simulator】

2012年以降の作品。システム、UI、グラフィック、すべてが一新され現代的なゲームとして生まれ変わった。この世代からDLCが販売されるようになり、拡張マップやトラックの追加パーツがDLCで登場するようになる。またこれまでは改良を施した新作がほぼ毎年発売されていたが、第三世代からは同じ作品をアップデートによって改良していくように変わった。それにより2012年発売のETS2、2016年発売のATS共に当初よりグラフィックやシステムが洗練され、トラックの車種も増え、新たな機能も追加、無料・有料の追加データやDLCによって内容が充実している。

車種名については、ETS2の当初こそ一部トラックが架空のものであったが、間もなくライセンス取得を経て全車種が実名になり、2016年発売のATSは最初から実名となっている。トラックメーカーとの協力も活発であり、実車サウンドの収録、発売間もない新型車がゲームへの追加、SCSスタッフとメーカー関係者が共演する動画の配信、メーカーSNSでのゲーム登場車の紹介などが行われている。

シリーズ作品一覧

主にアメリカを舞台にしたもの
作品名 発売年 説明
Hard Truck
18 Wheels of Steel
2002 栄光の初代。グラフィックは今見るとショボい。当時もそれなりにショボかったグラフィックだが、ここから全てが始まったのだ。日本ではマイクロマウスから「ハードトラック 18輪巨大トレーラー」として日本語マニュアル付英語版が販売された。今はドライブという会社がパッケージ版を扱っている。登場するトラックは実在のものをモデルにした架空のもの。
18 WoS
Across America
2003 グラフィックとシステムを改善した二代目。Hard Truckの名前が消え、作品名が18WoSに定まった。地域毎にマップが分かれ往来もできない初代に対し、アメリカ大陸横断が可能に成ったのが特徴。クイズ王者を目指す若者を乗せてコンボイリレークイズだ!。但しヘリコプターの乗務手当は海外なので出ない。日本ではマイクロマウスが「ハードトラック2」として販売していた。
18 WoS
Pedal to the Metal
2004 略称はPttM。メキシコとカナダにも行けるようになったもの。
18 WoS
Convoy
2005 (記述求む)
18 WoS
Haulin'
2006 はうりん。一説によると18WoS世代で一番売れたのがこれらしい。PttMを色々と改良した奴。パッケージ版の箱はトラックのタイヤとマッドフラップを模したもので、フラップの部分を上げるとソフトの説明が読めるという凝った作りであった。
日本ではやはりドライブが「18輪ハードトラック運送野郎」という名前で、日本語マニュアル付を販売している。「運送野郎」って・・・。
18 WoS
Amrican Long Haul
2007 基本的にはHaulin'だが、幾つかの追加要素を入れて改題したもの。
American Truck Simulator 2016 2016年発売の作品で、久々にアメリカが舞台。18WoSとは異なり、メーカーのライセンスを取り実名でトラックが登場。ETS2で培った改善を盛り込んでいる。美麗なグラフィックであり、18WoSとは隔世の感。

ヨーロッパを舞台にしたもの
作品名 発売年 説明
Euro Truck Simulator 2008 ヨーロッパを舞台にした第一弾。
基本的には18WoS譲りのシステム。
ヨーロッパの風景、キャブオーバーが基本のトラクターなど、
18WoSとは異なる雰囲気を持つ。
UK Truck Simulator 2009 システムは同じで、イギリスが舞台。
German Truck Simulator 2010 同じくドイツが舞台。
この辺りからメーカーからライセンスを得て、
MAN、IVECOなど実在のブランドが登場し始める。
Trucks and Trailers 2011 グラフィックが新しくなり、現在のETS2やATSへと連なる世代になってからの初作品である。但しモーションに関してはまだ旧世代相当で、いわば過渡期の作品でもある。

内容は、大型セミトラクタ-セミトレーラを動かすための教習及びチャレンジメニュー(ゲーム中ではTASKと呼ばれる)をこなしていくもの。トレーラを制御を学ぶベーシックから、より困難な状況でトレーラを動かしていくものまで多種多様。
Scania
Driving Simulator
2012 前作で新しくなったグラフィックを引き継ぎつつ、モーションも新しくしたもの。ここまで来ると、ETS2でなれた人も違和感が少ないのではと思う。

内容は、名前の通りスウェーデンのスカニアを取りあげたもの。
プレイヤーはスカニアRの4x2トラクターを駆る。
ゲームモード以下の通り。
  • トレーラーの基本的な操作を学ぶ「ライセンス」
  • 狭隘或いは危険な状況でトラックを運転する「デンジャラス」
  • スカニアの競技会に出場する「コンペティション」
  • オープンワールドで作られた市街地、及びスカニアのテストコースで集荷と配達などタスクをこなしていく「フリードライブ」
どちらかというと操作の正確性を競うものが多い。
注目はコンペティションで、これは実際に行われているスカニアの競技会を模したもの。それがどんなものかはこれ見て。 
Euro Truck Simulator 2 2012 グラフィックが大幅に改善された最新の世代。ライセンスを得てSCANIA RENAULT、MANが実名で登場。アップデートでIVECO、DAF、VOLVO、Mercedes-Benzも実名となった。
同時代のフルプライスゲームのグラと比べればショボい部分もあるが、広大なマップと格好いいトラックがあるので、文句はないところ。アップデート(v1.17)でライティングも改善され、よりリアルさを増した。ニコ動で人気があるのも多分これである。

エクストリーム系
18 WoS
Extreme Trucker
2009 これまでとは方向性が大きく変わったもの。
真冬の北極圏を舞台に、凍りついた海を渡って荷物を運ぶトラッカーになる。ヒストリーチャンネルのIce Road Truckersを参考にしたようだ。
18 WoS
Extreme Trucker2
2011 ↑の続編だが、舞台が北極圏からバングラディッシュに移った。インフラが整備されてない場所をトラック野郎が荷物を運ぶゲームらしい。

ドライビングシミュレーターとしての特徴

シリーズ作品の特徴のうち、この項目では運転や車両のシミュレーション、つまりドライビングシミュレーターとしての特徴を述べていく。

シリーズ各作品で操るのは基本的にトレーラートラックであり、トラクターでトレーラーを牽引することなど、運転に関わる様々な現象・機能をこのゲームではシミュレートしている。20年以上の長きにわたり製作されているだけあり、後年の作品になるほどゲーム開発技術の発展によってシミュレーションも改善されており、また現実の自動車技術の発展に伴い、ゲーム内で再現されるトラックの機能も変化している。

トレーラーの特性

トラクターとトレーラーは普通のトラックと違って連結部を持っており、そこで屈曲するようになっている。この構造ゆえに長さの割りに小回りが効いたり、目的に応じて様々なトレーラーを連結する事で、トラクターは多様な輸送に応えられるわけだ。だが良い事ばかりではない。連結があって自由に動くことのメリットとトレードオフで、トレーラーは常に不安定さを抱えている。乱暴なブレーキングやステアリングによって、トレーラーが暴れ回る事が良い例である。こういった事柄をシミュレートしつつ、プレイヤーはトラックを乗りこなしていかなければならない。

そして運転において最大の障害と思われるのが車庫入れである。

トラクターはトレーラーにとって前輪の役目を果たすため、トラクターの向きそのものがトレーラーにとって前輪の向きに成るようにしなければならない。例えばトレーラーを右へ曲げながら後退するのであれば、トラクターの先端が右向きになるように後退するということ。そしてトラクターが右を向くのはハンドルを左に切った時。つまり右曲がりに後退するにはハンドルを左に切る必要があるわけで、普通の車庫入れとは操作が逆になるのである。加えてトラクターを曲げすぎる、つまりトラクターとトレーラーの屈曲角が大きくなると、両方がついにはぶつかってしまう。そうならないようにハンドルを操作して曲がり角度を調整し、思い通りに車庫入れしなければならないのだ。

ブレーキ

走る、曲がる、そして止まる。自動車には欠かせない機能の一つであるブレーキ。大型トラックはその重さもあって、乗用車とは異なり圧縮空気を用いるエアブレーキシステムが使用されている。また近年は安全性の向上から、乗用車でも採用が広まっている予防安全装置の採用も進んだ。トラックシミュレーターシリーズでもそれらが幾らかシミュレートされいる。

サービスライン・サプライライン

いきなりゲーム中に出てこない用語の登場となるのだが、ブレーキの説明の土台となる部分なので説明していく。またブレーキシステムの基本的な構造についても述べていく。

大型トラックのブレーキシステムは圧縮空気を利用しており、後述するように各部にそれを送り込むことで制動装置を作動させている。それには空気の通り道である回路(配管)が必要になる。その回路は二種類あり、一つはサービスライン又はコントロールラインと呼ばれるもの。もう一つはサプライライン又はエマージェンシーラインと呼ばれるものである。

サービスラインはフットブレーキの回路で、ブレーキペダルを踏んだ時に圧縮空気が流れるもの。サプライラインはスプリングブレーキ(駐車ブレーキ)の回路であり、パーキングブレーキを操作した際に空気が流れるものである。トレーラーにもサービス・サプライの両ラインがあり、トラクターから空気の供給を受ける。トラクター背面には両ラインの送出ホースがあり、それぞれのコネクタをトレーラーに接続することで空気を送れるようになる。

ブレーキで使用する圧縮空気の大元の供給源はエアコンプレッサー。ここで圧縮された空気はエアタンクに高圧状態で一度溜められ、そこから回路を通じて各ブレーキ装置に供給される。各回路の途中にはバルブや逆止弁が設けられており、ペダルやスイッチでバルブを操作することで圧縮空気の送気と停止を行いブレーキを操作できる構造になっている。コンプレッサーとタンクがあることからも分かる通りブレーキを操作する圧縮空気は有限で、コンプレッサーがタンクに空気を補充する時間的余裕を作らなければならない。

本作にあってはトラクターとトレーラーを繋ぐラインのホースがグラフィックとして再現されているが、機能的な面でみると正直両ライン自体はそこまでは意識しにくい。ただこれから述べていく各ブレーキの機能は実車ではこの回路によって動くもので、ある意味で両ラインもシミュレートされていると言えるだろう。

フットブレーキ(主ブレーキ、サービスブレーキ)

ペダルを踏むと作動する一見しておなじみのブレーキだが、先述のようにトラックのフットペダルは圧縮空気を使って動いているのが乗用車との相違点。それ故に注意点があるのも特徴だ

まず作動方法から。ブレーキペダルを踏むと普段は閉じているブレーキ回路内のフットブレーキバルブが開き、エアタンク内の圧縮空気が回路を通じてブレーキチャンバーに送られ、空気に押されたチャンバーロッド(ピストン)がブレーキシューを動かしブレーキが効く。ペダルを緩めるとフットブレーキバルブが閉じチャンバーから空気が抜け大気中に捨てられ、ロッドはバネの力で元に戻りブレーキは解除される。大型車がブレーキをリリースするとプシュッ!という音が鳴るが、あれこそが大気中に空気が捨てられた音なのだ。そして大気中に捨てられた減った分の空気は、コンプレッサーが動きタンクに補充される。

よってブレーキの力の源は有限であり、コンプレッサーが空気タンクに空気を溜める余裕を与えてあげないといけない。ポンピングブレーキのように、短間隔でブレーキを踏んだり離したりすると貴重な空気を無駄に消費してしまい、ブレーキが効かなくなってしまう。エアブレーキ車界隈ではポンピングブレーキのような操作はバタ踏みと呼ばれ、非常に危険な操作とされている。また実際にバタ踏みが原因で事故が発生した事から、国土交通省は平成25年6月28日付けで注意喚起を行い、またトラックメーカーに対し使用者に対する注意喚起を要請している。

以上の話を、身近な物である浮き輪で説明するとこうなる。

( ´∀`) ←浮き輪を使う人(ブレーキペダル)

(`・ω・´) ←浮き輪に空気を入れる人(コンプレッサー)


通常の使い方

( ´∀`) 「浮き輪使うぞ!」

( ´∀`) 「空気抜けた!お前、空気入れとけ」

(`・ω・´) エッサ!ホッサ!


バタ踏み

( ´∀`) 「浮き輪使うぞ」「空気抜けた!」

(`・ω・´) エッサ!ホッサ!

( ´∀`) 「浮き輪使う・・・空気抜けた!」

( ´∀`) 「浮き輪!空気!浮き輪!空気!」

(´;ω;`) 「うっ・・・うううう・・・・」

ドンガラガッシャーン!!

これをシミュレートすることで、大型車独特のブレーキ操作を行うわけだ。

実はシリーズ1作目となるHard Truck:18 Wheels of Steelでは、ブレーキをかけ続けるとタンクの空気が減り続けついには無くなる謎仕様であった。後に改善され、ブレーキをリリースすると大気解放により空気が減り、その分だけタンクに補充されるようになった。

本来であれば、ブレーキを踏んでいる間は空気は回路内でブレーキに圧力をかけ続けているのだから、空気がどんどん減っていくことはない。ブレーキを離し回路内の空気が放出されて空気が減るのである。仮に実車でブレーキを踏んでる最中に空気が減り続けるのであれば、それはどこからか空気が漏れているわけだから、大気解放された圧縮空気が奏でる盛大な音と共に車は滑走していくはずである。また国土交通省とメーカーがバタ踏みについて注意を喚起しているのも、こういった構造があるから。

ちなみに本物のトラックは空気漏れによる制動不能の蓋然性を下げるために、最低でも2系統のブレーキ回路を搭載している。

補助ブレーキ

エアブレーキを使うトラックでは貴重な空気を無駄使いしないよう、補助制動装置が搭載されている。補助ブレーキには大きく分けて二種類あり、一つはエンジンブレーキを大きくするもの、もう一つは推進軸に回転抵抗を作り出すもの。前者は排気工程で抵抗を大きくする排気ブレーキと、圧縮行程の上死点付近で圧縮を抜きクランクシャフトの回転抵抗を大きくする圧縮開放ブレーキ(ジェイクブレーキ)。後者は総じてリターダと呼ばれるが、その方式には流体を使うものや磁力を使うものがある。
どの補助ブレーキを用いるかは各メーカーによりけり。すべて採用する場合もあれば一部を取り入れることもある。ゲーム内ではエンジンブレーキは排気・ジェイクの区別が特になく扱われており、リターダは選択する変速機によっても変わる。

これらはエアブレーキを使わずに大きく減速できるため、エア消費量の低減のみならず、ベイパーロックやフェードの防止にも役に立つ。特に下り坂で有効であり、もし補助ブレーキがなければバタ踏みをやり易いのも下り坂であろう。シリーズでは18WoSの2作目となるAcross Americaから登場している。

ちなみに排気ブレーキを使うと、

ブボボボボボボボボボボ!

という凄い音がするけど、別に車が壊れているわけじゃないので大丈夫。

スプリングブレーキ (駐車・非常ブレーキ)

エアブレーキと関連して把握して置くべきもの。シリーズでは(どのあたりからかは忘れたが)スプリングブレーキ(別名マキシブレーキ)を使った駐車ブレーキがシミュレートされている。「何それ?」と思ったあなたの為に、いすゞのトラックゼミナールから引用した説明をご覧頂こう。

ホイールパーキングブレーキ(スプリングブレーキ式)
中期安全ブレーキ規制※に対応するため、主に大型トラックに装備されている駐車ブレーキシステムです。従来の駐車ブレーキよりも確実な制動力を発揮するシステムとして、センターブレーキ式に代わって採用されています。ホイールパーキングブレーキは、車輪を制動させる常用ブレーキを作動させるシステムです。パーキングバルブの操作によりブレーキチャンバのエアを排出し、それにより解放されたスプリングの力を利用してブレーキシューを拡げ、強力な制動力を発生させます。
※中期安全ブレーキ規制:トラック・バスのブレーキ強化を目的に国土交通省が定めた規制。

ISUZU:トラックゼミナール ブレーキ編 より引用

スプリングブレーキは、スプリングの伸びる力で作動するブレーキ。伸びる力は後軸フットブレーキのブレーキシューやキャリパーに伝わり、ブレーキが作動する。つまり後輪フットブレーキは駐車ブレーキと兼用となっていて、また何もしなければスプリングの力でブレーキが自動的にかかるのだ。

だがそれでは走ることはできない。走る時は駐車ブレーキのレバー(スイッチ)を解除方向に操作することでエアタンクからブレーキチャンバーに空気がが送られ、空気がスプリングを縮めてブレーキシュー/キャリパーに掛かるスプリングの力を抜き、ブレーキが解除されるという仕組み。逆に駐車ブレーキをかける操作をするとチャンバーのエアが排出されスプリングを抑え込むが抜け、伸びたスプリングがブレーキシューを動かしブレーキがかかる。

さて、このエアの源は圧縮空気タンクで、先述のエアブレーキと同じである。つまりフットブレーキを動かすのに十分なエアがない場合、駐車ブレーキを解除しておくエアも足りなくなり、自動的に駐車ブレーキが作動するのである。つまり駐車ブレーキは非常ブレーキとしての役割もある。

作中では頻繁なブレーキ操作によってエアが不足するとスプリングブレーキが自動的に作動する。また衝突による車体やシャシーへのダメージ判定が出ると、サプライラインの空気が無くなりやはりスプリングブレーキが作動する。
前者への対処はエンジンをかけっぱなしにし、タンクの空気残量の回復を待つこと。この際にアクセルを吹かすとエアコンプレッサーが頑張ってくれて、エアが溜まって行くのが早くなる。後者は故障なのでいくら待っても回復することはないが、一度セーブしてリロードすると空気量は回復する。ただ故障しているのでまたどこで同じ症状が出るか分からないので、完全に直すにはサービスで修理を受けなければならない。

事故などで手動解除する場合

事故などでトラックが完全にぶっ壊れ、エアタンクもイカれた場合はどうするか。その場合の対処を示した資料を以下に引用する。内容自体はゲームとは直接は関係ないが、スプリングブレーキがどんなもんかを知る助けにはなると思う。

大型車事故に関する救助ガイド 

これは日本自動車工業会、日本自動車研究所、つくば市消防本部が作成した、大型車事故における救助要領を簡単にまとめた資料である。これの17~18ページにスプリングブレーキと、その解除方法に関する説明が載っている。これによると、全ての後輪(6x4では4輪)にあるブレーキチャンバーにリリースボルトを挿し込み、それにナットとワッシャをねじ込んで解除するとのこと。スプリングを人力で縮めると言うことだろ。
注意点として「工具が要るし時間がかかる」「夜間や不安定な場所では作業しづらい」と書いてある。

トレーラーブレーキ

トレーラーブレーキはサービスラインを流れる空気を使って作動するブレーキで、トレーラーのみに作動するもの。一般的には手で操作するスイッチによって作動させる。スイッチを操作するとバルブが開きサービスラインに空気が流れるのはフットブレーキと同じだが、フットブレーキのそれがトラクターとトレーラーの両方に空気が流れるのに対し、こちらはトレーラーへのサービスラインのみに空気が流れる。

用途としては、一例として補助ブレーキ作動時にトレーラーを減速させるものがある。補助ブレーキはトラクターの駆動系に作用するのでトレーラーへの制動力がなく、トレーラーは慣性力でトラクターを押し続けてしまう。これを抑えるのにトレーラーブレーキが用いられる。

ABS・ESP

急制動時のホイールロックを防ぐアンチロックブレーキシステム(ABS)と、車輪の横滑りなどで不安定になるのを防ぐ横滑り防止装置(ESP)。トラックシミュレーターシリーズではETS2とATSのv1.48(2023年)から実装された。

基本的な機能は実車と同じ。ABSはホイールロックを防ぐので急制動中も操舵が可能であるが、制動距離はいくらか伸びる。ESPは急旋回時に横転を抑えるなど安定性に寄与する。ゲームセッティングでトラクターとトレーラーの安定性を0%にするとこれは顕著になる。

車間距離維持クルーズコントロール・衝突軽減ブレーキ

2022~2023年にかけてのアップデートでETS2とATSに実装された機能。車間距離維持クルーズコントロール(Adaptive Cruise Control)はクルーズコントロールで走行中、前の車との車間距離が設定値以下にならないように排気ブレーキを使い自動で速度調整するもの。衝突軽減ブレーキ(Emergency Brake)は、例えば赤信号で停止している前の車に近づく速度が高すぎると、自動的に制動ブレーキがかかりハザードランプが点灯するもの。いずれも2010年代以降はトラックへの搭載が一般的なものであり、それが本作にも反映された。

変速機

エンジンで走る自動車に必須の変速機。電気自動車だって最近は二段程度の変速機がついているので、燃料の燃焼とピストンの往復運動を回転に変換する内燃機関自動車なら言わずもがな。本シリーズでももちろん変速機はシミュレートされており、特にETS2とATSという最新世代のものはより現実的になっている。この項目では変速機について解説していく。

変速機が複数種類用意される意味

現実のトラックでは何種類ものエンジンや変速機がカタログに載っている。大型車に限っても下は300馬力台から、上は500、600、700馬力まで。変速機も10段、12段、13段、14段、果ては18段という具合。さらに変速段が同じでも、最終減速比が2.59だと3.89だの。なぜこんなに種類が多いのか。

トラックは高速道路で高速巡行することもあれば、重量貨物をゆっくり運ぶこともある。一口にトラックと言ってもその役割は輸送目的で異なるのだ。高速道路での走りを重視するなら、高速巡行時にエンジン回転数が低くなるギア比が高速なものが良い。逆に重量貨物ならギア比が低速寄りで力強いものが好ましい (後述)。このように最適解は異なる。

本シリーズでは18WoSの途中から現実のトラックと同じく一つの車種に複数のエンジンと変速機が用意されるようになった(と記憶している)。ETS2やATSはゲーム標準で何種類ものエンジンと変速機が用意され、目的や用途に応じて選べるようになっており、また現実のそれらを模したMODも多数発表されている。それらを目的に応じて選択し購入する必要がある。何故なら用途に応じて最適なエンジンと変速機は異なるからだ。

実際に運転した時の操作もさることながら、こういう「最適なトラック選び」という点もシミュレートされているのがトラックシミュレーターシリーズなのである。

変速比・減速比の基本

自動車のエンジンが出力する回転は、以下の経路を辿ってタイヤまで伝わる。

エンジン → 変速機 → ディファレンシャル(差動歯車) → タイヤ

このように歯車を介する事で回転力と回転数が調整されてタイヤに伝わる。この回転数の調整が変速・減速と呼ばれるもの。入力側より回転数を遅くすると力が大きくなり、回転数を早くすると力が小さくなる。低速ギアは力強く加速に有利だが、エンジンの回転数に対し車輪の回転数は遅め(車速が低め)。トップギアはその逆で、回転力は弱く加速では不利だが車速を高く保てる。そしてエンジンの回転出力を伝達する主たる歯車機構が、変速機とディファレンシャル(差動歯車)なのである。

変速機はその内部に多数の歯車を備えており、噛み合せを変える事で回転力と回転数を変更することができ、これが変速と呼ばれるもの。走り出しの低速ギアは回転は遅いものの力強く、スピードが高まり高速ギアに切替えれば、回転力は弱くなるが同じエンジンの回転数でも車輪は沢山回転する(速く走る)ようになる。梃子で例えれば、力点と作用点の距離を長くしたり短くしたりと変えているようなもの。その状況にあった歯車の噛み合せを選べると言うわけだ。

こうして変速機を介して出力された回転はプロペラシャフトから車軸へと伝わるが、ここでさらにもう一段の回転調整が入る。それがディファレンシャル(差動歯車)によるもの。プロペラシャフトの回転をディファレンシャルで少し遅くして車輪に伝えている。車輪に伝わる前に最終的に回転を減速しているので、この回転比率を日本語で最終減速比と言う。

これまで述べた通り、歯車機構は入力側と出力側で回転数が変わっている。そこで歯車機構の特性を示すものとして、出力側1回転に対し入力側が何回転するのかの比率が示される。これが変速比・減速比と呼ばれるもの。数字が大きいほど力強い低速回転、数字が小さいほど速く回る高速ギアである。自動車において回転比率が関わるのは変速機とディファレンシャル。変速機はプロペラシャフト等の1回転に対し入力側、つまりエンジン側のシャフトが何回転するのかという意味になり、また変速をするので各段毎に変速比が示される。ディファレンシャルは車輪1回転に対し、プロペラシャフトが何回転するのかという意味。そして変速機各段と最終減速比をかけ合わせたものが、その状態における車全体の変速・減速比になるのだ。

商用車は積載により車両重量が重くなる都合から、全体的に低速よりの減速比になっている。つまり力強い回転と加速性を補うことを重視しているわけだ。一方で高速走行をするのであれば、エンジンの回転数が遅い方が燃料消費を抑える事ができ、そこを考えれば高速よりの減速比が望ましい。商用車の燃費は事業者にとって収益に関わる事であるから、高速走行も多用される商用車はジレンマを抱えていると言っても良い。

そこでこのジレンマを高い水準で均衡させるべく、特に大型トラックでは多段変速機が使用されている。低速段はより力強く、高速段は80km/h~100km/hの巡航でも耐えられるようにし、間に多数の変速段を用意することで滑らかできめ細かい変速をしていくということ。またメーカーは同一車種に複数の変速機を用意することで、高速巡航が多い事業者は高速寄りの仕様を、重量物輸送の事業者には低速よりの仕様を提供している。

だからどういうことなのよ…

現行世代の作品を例に出せば、ETS2のイギリスやルーマニアなど一部の国は制限速度が90km/h以上~100km/hで、ATSでは65~75MPH (約100~120km/h) で高速走行をする機会が少なからずある。それでいてなだらかな地形ばかりではなく、起伏の激しい地形も少なくない。一方でMODやDLCで重量のある貨物を運ぶ事もある。それぞれの用途に応じて変速機を選ぶのが良いということ。

例えるとこういうことになる。

同一車種でエンジンも同一の場合。

変速機A:13段変速、変速比は20.00~0.80、最終変速比は2.8
変速機B:13段変速、変速比は25.00~1.00、最終変速比は3.89

・変速機Aは最速段変速比が1.00より小さいオーバードライブ(OD)で、最終変速比も2.8。
→高速走行時の回転数が低く燃費も期待できる、重量物は不得意

・変速機Bは最速段が1.00で、最終変速比が3.89とAよりもはるかに低速寄り
→全体的に低速ギアで重い物を運びやすい、高速走行は不得意

そこでエンジンと変速機の選択メニューにある、通常貨物と重量貨物、登坂性の得意・不得意のグラフを確認しよう。通常貨物のグラフが長ければ高速巡航で低燃費、重量貨物のグラフが長ければ重積載で力強さが得られ、登坂性が高ければ荷物を積んでも登り坂を上手く登れる。ここを確認することで、自分の用途にあったトラックの仕様を決められるわけだ。

ただ細かいことを言えば、同じような傾向の変速機でも最終減速比等の微妙な違いから使い勝手に差が出てくる。また例え話をするとこういうことだ。

高速寄りだから最終減速比が異なる二つの変速機C、Dがあったとする。

変速機Cは70km/h巡行で11速に入り回転数が低めだが、80km/h巡行だと12速でやや高めの回転数になってしまい、80km/h時のODは回転数が下がりすぎて使えない。90km/hでODに入り回転数低め。

変速機Dは70km/h巡行時は11速で回転数高め、80km/hは12速で低めでODには入らない、90km/hのODでは回転数高め

最終減速比が0.20異なると巡行時の段数と回転数も変わってくるので、テスト走行などを通じて吟味し、そのトラックの目的や頻繁に運ぶ貨物の重量、地形、制限速度などを考慮することになる。

ブラインド・スポット・モニター

車線変更時に並走車両の見落としから事故に至るのを防ぐ、側面警戒と警告を行うブラインド・スポット・モニター。元々は乗用車で発展してきた技術だが、今日では長大な大型車に搭載される事例も増えてきた。本シリーズではETS2とATSの一部車種に機能が備わっている。側方になにか物体がある状態で方向指示器を出すと警告音や警告灯火で危険を知らせる。

タンデムスライド (トレーラー車軸前後調整機能)

ATS v1.53で追加された機能。トレーラーの2連車軸(タンデム、ダブルアクスルとも)の位置を前後調整できるもの。アメリカのトラックの機能なので採用はATSのみであり、ETS2では再現されていない。

実車においてこの機能が付いている背景は、アメリカでは州によって軸重上限値が異なっており、またキングピン(連結器)からトレーラー後軸までの長さ(トレーラーのホイールベース)上限値も異なっていることから。州を跨いで運行されるトラックは州毎の規制に応じてタンデムの前後位置を調整し、軸重と長さを適合させている。

タンデム位置による軸重変化

セミトレーラー/トラクターにおいては、トレーラーの車軸位置が変わると、トレーラー/トラクター双方の軸重が変わる。

Know how to slide your tandems (BIG TRUCK GUIDE)

タンデム位置を前に動かすとトレーラーの車軸にかかる重量は大きくなり、トラクターの後軸にかかる重量は小さくなる。後ろに動かした場合はその逆。トレーラーの軸重を小さくしたい場合は後ろに下げ、大きくしたい場合は前に出す。
これは鉛筆と指でも試してみることができる。鉛筆の真ん中あたりにある重心位置で指にのせれば、重さのつり合いがとれ指一本で支えられる、つまり重量は全て一本の指にかかっている。しかし左右どちらかの端では鉛筆は落ちてしまうので、別の指で鉛筆を支えなければいけない。つまり別の指に鉛筆の荷重が分散してかかる。

これと同じことがトレーラーでも起こるので、タンデム位置を前後に動かし軸重を調整し、またキングピンからタンデムまでの距離も変わるので長さも調整できる。

こうして各州の規制に対応できるようにしたのが、アメリカのトレーラーに備わっているタンデムスライド機能である。

連邦及び州の軸重規制

Bridge Formula Weights (U.S. DoT Federal Highway Adiministration)

Compilation of Existing State Truck Size and Weight Limit Laws (U.S. DoT Federal Highway Adiministration)

連邦橋梁規格 (Federal Bridge Formula) においては、単車軸は最大20,000lbs (9.07メートルトン)、タンデム車軸は最大34,000 lbs (15.4メートルトン)となっている。連邦政府はこれを基準値とし道路を整備しているのだが、一方で州の重量制限はこれとは必ずしも一致しない。
アリゾナのように連邦規格そのままの州もあれば、コロラドのように州間高速道路は36,000 lbs、それ以外の道路は40,000 lbsに規制している州もある。デラウェアは州間高速と合衆国道は34,000 lbs、それ以外の道路は36,000 lbsとなっている。

キングピン - タンデム長規制

軸重のことだけでも十分に話はややこしいのだが、輪をかけてややこしくするのがキングピンとタンデムの長さ規制である。

Kingpin to Rear Axle Maximums (BIG TRUCK GUIDE)

この長さに関して特に定めのない州が多い一方で、カリフォルニアは40 ft、ニューハンプシャーやニュージャージーは41 ft、メインやイリノイは45.6 ftと、具体的な規制値を定めている州も多い。多い上に数値は州毎に異なる。先述の軸重の話も絡めると、カリフォルニアはタンデムをかなり前に出した上でタンデム軸重を34,000 lbs以内にしなければならないが、ジョージア州は長さ規制がないので軸重だけ気にすればよい。

ややこしすぎるんだが

タンデムアクスルとその調整作業の背景事情にあるものとして以下の三点がある。

  1. アメリカは州が主体となって道路整備を行う
  2. カナダやメキシコとも頻繁に往来する
  3. 運転手は荷役を行わず、もっぱら荷主の作業員がこれを行う

1と2は別々の規制がある背景である。アメリカでは州の独立性が高い故に、道路整備も基本的に州主体で行っている。故に個々の州が個別に規制をかけるので、それが緩い州とキツい州があり、それらを往来するとどうしてもトラック側に調整機構と作業が必要になる。しかも陸続きであるカナダやメキシコとも往来するので、軸重を調整できるタンデムスライド機構を備え運転手が調整作業を行わざるを得ない。大型トラックは法律の上限いっぱいまで車体を大きくし積載量を大きくとる、というのも背景の一つとしてあるだろう。

3はアクスル調整作業の背景としてあるもの。アメリカでは中型以下のトラックによる地場配送は別にして、大型車、特に長距離トラックにおいて運転手が荷役を行うことはあまりない。荷主がトレーラーを保有し予め積載する事前積み込み(Pre-Loading)にせよ、トラクターにトレーラーを連結し荷物だけ引き取りに行く場合にせよ、荷役は荷主側の作業員が行うのが一般的だ。それ自体は運転手の労働負担を減らすうえで良いことだが、どう積み込むかは荷主作業員次第でもあり、運転手は「積まれた状態で軸重を調整し走る」ことになりがちである。

トラックのダメージ

ゲームでダメージといえば敵から攻撃を受けたり、罠に引っかかったり、座標を間違えて壁の中に入ったり、自動車ゲームであればぶつけた時のペナルティとして受けるもの、というのが一般的である。

このゲームではそれもあるが、走行に伴う通常の損耗もダメージとしてシミュレートされている。もっとも損耗しやすいのはタイヤであり、作品や走り方にもよるがエンジンやトランスミッションなども走行に伴って損耗することがある。タイヤが損耗するとグリップが悪くなるし、エンジンやトランスミッションは加速に悪影響が出てくる。これへの対策は整備である。どの作品でもマップ内にはいくつもの整備工場が点在しており、プレイヤーはそこを訪れて愛車の整備を受ける。

ETS2 v1.49では中古車販売の導入が開始され、それと同時にダメージのシステムも新しくされた。トラックには部品(アッセンブリー)ごとに、安価に修理可能で一時的な「ダメージ」と、高価な部品交換なしには回復しない恒久的な「消耗」の二つが設定されるというもの。自動車の走行等に伴う部品劣化を再現している。中古車と消耗システムはETS2とは違った形で18 WoS時代に導入されたことがあったが、いずれにせよより自動車の経年や走行に伴う消耗をシミュレーションしようというものである。

消耗の特徴

先述のようにダメージは従来からある一過性のものであるのに対し、消耗はv1.49から実装された恒久的なものである。ここではETS2とATSのv1.49で導入された消耗を、もう少し掘り下げていこう。

消耗にはアッセンブリーごととトラック全体の二種類がある。アッセンブリーはエンジン、変速機、シャシー、キャブ、タイヤの五種類。各アッセンブリーは別個に消耗していき、最も消耗が早いのはタイヤである。それ以外の各部はタイヤより遥かに緩やかだが、走行距離を重ねていくと確実に消耗していく。

各部の消耗を回復するには部品交換が必要で、出費はタイヤでおよそ数千~1万ユーロ、それ以外は数万ユーロと相応に高額である。但し全ての部品を交換しても消耗は0にはならない。なぜならこのパラメータには出てこない消耗も設定されており、それは各部の交換のみでは回復しないからだ。

消耗を完全に0にするには完全な補修を修理工場(自車)或いはトラックマネージメント(それ以外の車)で受けなければいけない。価格は新車価格+10万ユーロ程度は必要で、新車を買うより遥かに高額である。実際の自動車でいえば完全レストアであり(英語版では"Total restoration"と表示される)、それはつまり全てのボルトをバラして修理し組み立てなおすようなもの。それ故に高額になっているのだ。

疲労と眠気

運転していると疲労し、やがて眠くなってしまう。このゲームは疲労と眠気もシミュレートしている。
プレイヤーの分身であるトラック運転手は、ゲーム内時間で数時間~10時間程度経つと眠気に襲われる。欠伸をする声が聞こえ、画面の淵が黒くなって視界が狭まったり、一瞬真っ暗になったり、さらには数秒間も真っ暗になって視界が消えるなどして非常に危ない。

またETS2やATSでは、疲労のまま走り続けていると過労運転で罰金を取られる。世界各地の運輸法令では、連続して運転できる時間の上限値が定められており、それを超えて連続運転する事はできない。そしてヨーロッパでは警察が抜き打ちでトラックのタコグラフを調べ、連続運転可能な時間を超過していた場合には厳しい行政処分が下る事もある。それを模倣していると言えるだろう。

対策としてはどこかに車を停めて眠る事。シリーズ各作品では睡眠が取れるモーテルや無料駐車場が登場し、そこに車を停めて休む事になる。18WoSの一部作品では、スリーパーの有り/無しで睡眠の効果が変わるのもあった。一方で荷主さんが定めた期限に遅れないようにもしなければならず、そこは道順や休憩時間を考慮した運行計画で工夫すべき点である。

尚、根詰めてゲームをしていると自分自身にリアルな疲労と眠気がやってくるが、これもまた自分が休むしかない。

交通法規

トラックは安全運転が基本である。だから交通法規を守って走らないといけない。トラックシミュレーターでも現実と同じ法規が課せられている。外国が舞台とはいえ、基本的な法規は日本と変わらない。信号を守る、制限速度を守る、通行帯を守るなど。

当然これを破ることも可能だが、その時は取り締まりを受ける事になる。例えばスピード違反。18WoSではパトカーが取締りをしており、速度違反が見つかると追尾をしてくる。加速して振り切ることも可能だが、如何せんこっちは積荷を持ったトレーラー。逃げるよりおとなしく捕まったほうがマシだった・・・ということも当然あるわけだ。ETSではパトカーがいない代わりに各所にスピードカメラ(オービス)が配置されており、制限速度を超過すると即座に罰金となる。スイス政府に何度お布施をしたことか・・・。ATSではパトカーが巡回している上に即罰金で、振り切って逃げることすらできなくなった。このパトカーは後にETS2にも実装された。

ステファン・レディマン英運輸大臣「カメラの場所は公開しているし、捕まる奴がバカだ」

信号や通行帯の違反については、破ると即座に罰金になる作品がある。スピード違反がシリーズ一貫して「警察にバレなければおk」の状態なのに対し、こちらは割かし厳しい。

経営シミュレーターとしての特徴

もう一つの要素である経営シミュレーターとしての特徴について述べていく。

プレイヤーは運送会社を自営しているという設定であるから、トラックを増やし、雇用を行って良く事で経営の拡大が可能。この経営もシリーズ共通のシミュレーション要素になっている。ずっと一匹狼の流れ星一人旅でも良いが、経営を拡大して良く面白みもある。

また一匹狼であれ雇用主であれ、プレイヤーは発生するコスト以上に売り上げを得て、会社の経営を持続させていかなければならない。

被雇用者

トラックを増やしたら運転手を雇用するわけだが、大抵は異なる能力を持つ何人もの運転手が用意されている。能力が高いドライバーは収益面で優良だが賃金も高い。逆に能力が低いドライバーは安く雇用できるが、積荷をぶっ壊して報酬が減ったり、トラックの整備コストが上がるなどのデメリットもある。プレイヤーは損得を考えて雇うことに成るが、まぁ大抵は賃金が高くても能力が高い奴を選んだほうが良い。

この点はシリーズ全作品を通じて概ね共通していると言えるだろう。

雇用後のマネジメント

これに関しては作品毎にかなり異なる。

18WoS各作品では運転手のスケジュール管理が概ね可能で、どの運転手にどこで荷を積んで、次にどこでどの荷物を積んで・・・というディスパッチャー作業をプレイヤーが能動的に決定できた。但し労働者もプレイヤーと同じく休憩を取らなければならず、それはスケジュールに強制的に組み込まれるので、ブラック企業のようにスケジュールをギチギチに詰め込んでこき使うようなことはできない。

ETS2やATSだとそういったスケジュール管理はできない。プレイヤーは欧州・米国各都市にあるガレージ(事業所)を購入し、そこにトラックと共にドライバーを配置する。後は彼らがガレージのある都市を起点とし、自動的に仕事をこなしていく。受けられる仕事はドライバーの所属都市を出発するものと、配達先から所属都市に帰還するもののみなので、仕事がなければ空荷で帰投することもある。一方で各ドライバーにはプレイヤーと同じ能力値があり、それを育てることができる。この成長によってより多様な荷物を、より長距離まで運ぶことが可能になり、会社の収益にもプラスとなる。ブラック企業のような使い捨てをすると、会社が儲からないシステムになっている。

銀行

トラクターの新規購入や、作品によってはガレージ(事業所)の購入など、プレイしていく中で様々な設備投資をしなければいけない時がある。しかし手持ちの資金が乏しいと思うようにそれができない。そういう時は銀行からお金を借りて設備投資を行う。

与信額は決められており、その枠内では自由にお金を借りたり、残債を返済することができる。リアル銀行と違って融資にかかる面倒な手続きはなく、常務が土下座を迫ってくることもない。一方で年利18%というサブプライム金利を課せられたり、毎日金利と元本が口座から自動的に引き落とされていくなど、取立ては厳しい。

作品によってはゲーム開始直後からいくらかの借金を背負っている場合もあり、しかも初期のトラックは大抵は性能が低いので、そういう場合は借金返済で苦労することも。繰り返すが土下座は効かない。

かつて三和銀行の銀行員だった某人物のセリフを借りると。

「わてから金借りると、えらい高こうつきまっせ!」

「わてから借りた金、耳揃えて返してもらうさかい」

ということである。

ゲームオーバー

ゲームだから当然ゲームオーバーもある。

  • プレイヤーキャラが死ぬ
    • 参考動画 (youtube)
    • 初代の時はあったもの。自車が踏み切りで列車と衝突したり路外へ転落すると、トラックが全損になりプレイヤーキャラが死ぬ。すると「お前の嫁さんと親友は、お前の死に打ちひしがれて悲しみにくれた後に結婚した」みたいなメッセージが出てゲームが終わる。セーブデータは消えないのでそこからやり直し。
  • 破産
    • 記事主は自分で確かめた事はないが、これもゲームオーバーになるようだ。破産の条件は以下のとおり。
    • 1.現在の資産がマイナス(赤字)になり、燃料の購入ができない
    • 2.その状態でトラックの燃料が尽きる。
    • こうなると荷物を運んで稼ぐこともできない詰んだ状態になり、ゲームオーバーになるらしい。

World of Trucks

World of Trucks site

以下WoT。WoTはSCSソフトのサービスで、現在のところ対応しているのはEuro Truck Simulator 2とAmrican Truck Simulator。

WoTはトラックシミュレーターシリーズ向けのSNSのようなサイトで、アカウント作成にはプロダクトキーが必要。アカウントを作成するとゲームとWoTをリンクさせ、色々なサービスを受けることができる。サービスはゲーム内で撮影したスクリーンショットのアップロード、WoTアカウントで作成したナンバープレートとプロフィール写真のゲーム側への反映など。もちろん他の人のスクショを見ることもできる。時折イベントも開催される。

他の人のスクショで見たこともないような貨物とか、見たこともないトレーラーがあったら、それは大抵はMODである。ETS2など現在の仕様ではMODが自由に入れられるので、WoTにも多数のMOD画像が上がっているわけだ。

関連動画

ニコニコに投稿されている動画は、他のゲームと比較すると少ない方であるが、それでも一部のコアなファンが熱心に動画を投稿している。ETS2はシリーズの中では日本のファンも多い方であり、投稿されている動画もシリーズの中では一番多いだろう。

18 Wheels of Steel

検索タグ:18 Wheels of Steel

コーラ配送

Euro Truck Simulator 2

検索タグ:Euro Truck Simulator 2ETS2

「たかしへ、カーチャンはトラック野郎になりました」シリーズ

im@s架空戦記~トラック女王 日高舞、欧州へ~

毒リンゴPのim@s架空戦記シリーズ

ゆっくりと行く トラックの車窓から

Leclerc Expressシリーズ

外部リンク

  • 18輪皮置き場
    • 日本のファンサイトとしては、恐らく最古参に入るサイト。テクスチャMODを紹介したり、MODの導入方法などを解説している。
  • ETS2.LT
    • 海外のETS2大手MODサイト。
  • ETS2Downloads
    • やはり海外の大手MODサイト
  • SCS Software message board
    • SCS Softwareの公式フォーラム。MODの情報も豊富。

関連項目

  • Euro Truck Simulator 2
  • American Truck Simulator
  • トラクター
  • トレーラー(被けん引車)
  • トラックゲーム
  • ドライビングシミュレーター
    • 記事の内容は主として教習所にあるアレの話。
  • シミュレーションゲーム

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