ドーハの歓喜とは、2022年11月23日にカタール・ドーハのハリーファ国際スタジアムで行われた、2022 FIFAワールドカップのグループステージ(グループE)初戦であるサッカー日本代表とサッカードイツ代表の試合である。
2022年5月19日に行われた2022 FIFAワールドカップの抽選で日本はグループEに割り振られたが、グループ内には2010 FIFAワールドカップ優勝のスペインと2014 FIFAワールドカップ優勝のドイツが入り、日本にとって予選突破は非常に厳しい状況となってしまった(最後の1枠はこの時点で決まっていなかったが、6月14日にコスタリカで決定)。
各国のメディアは「グループEはスペインとドイツがグループ突破の鉄板、日本とコスタリカはノーチャンス」という予想が大多数で、特に日本は事前の強化試合で36年ぶり2回めのワールドカップ出場となるカナダに1-2で敗れるなど絶好調とは言い難く、「スペインとドイツにとって日本は敵ではない」「初戦(ドイツ戦)はどっちが勝つかではなくドイツが日本から何点取るか」という様相を呈していた。
日本時間11月23日午後10時に日本対ドイツ戦がキックオフ。前半8分に伊東純也からのクロスから前田大然がシュートを放つもオフサイドを取られノーゴール。するとその後はドイツがボールを完全に支配しシュートの雨を降らせ、前半31分にGK権田修一が相手を押し倒す形でPKを取られ、これを決められ先制点を許してしまう。終了間際にあわや2点目を取られ万事休すと思われたが、VARでオフサイドと判定されたことで助けられ、そのまま前半終了。この時点でドイツのシュート数が14に対して日本はわずか1、パス成功数は422に対して日本は62、支配率にいたってはドイツが81%に対して日本が19%と一方的展開で、「これで1点に抑えられたのが奇跡」とまで言われていたが、後半は日本が耐えられなくなり大量失点で完膚なきまでに叩きのめされる…と誰もがそう思った。
後半早々、森保一監督はドイツに対応するべく様々な策を講じる。まずドイツ相手にテクニックがまるで通用しなかった久保建英に替えて冨安健洋を投入し3バックに変更。さらに三笘薫、浅野拓磨、堂安律を次々と投入して攻撃力を強めていった。ドイツは前半同様日本のゴールに襲い掛かるが権田修一の好セーブで点が取れず、逆に日本の攻撃にDFが次第に疲弊していく。そして後半30分にドイツGKマヌエル・ノイアーがはじいたボールを堂安律が押し込み同点とし、さらに8分後の後半38分にはクロスボールを受けた浅野拓磨がドリブルで攻め込み、最後は右サイドから強烈なシュートでゴールを決めついに逆転。その後はドイツの反撃をかわし、2-1で勝利をおさめた。
最終的にシュート数はドイツ26に対して日本12、ボール支配率はドイツ69%に対して日本は31%と一方的展開だった状況での勝利に日本は狂喜乱舞。1993年の同地で行われた1994 FIFAワールドカップのアジア地区最終予選の最終戦で後半ロスタイムに同点ゴールを決められ本大会出場を逃したドーハの悲劇の対義としてドーハの歓喜またはドーハの奇跡という言葉がSNSで溢れかえった。
直近の日本代表の状況や強豪を倒したこと、さらにドーハの悲劇のイメージからこの試合の勝利は歓喜であるといえるが、奇跡であるかについては意見が分かれる。
まず対戦時のFIFAランキングでドイツは11位に対して日本は24位と思ったより差が開いておらず、抽選でもドイツが第2ポットに対し日本は第3ポットと隣り合っている。これはドイツは2018 FIFAワールドカップで韓国に敗れるなどグループリーグ敗退、EURO2020でもベスト16止まりとランキングを落としたためで、2010 FIFAワールドカップで日本が3-1で勝利したデンマーク(10位)より下回っている。また、ヨアヒム・レーヴの長期政権からの脱却を始めたばかりで世代交代の最中であり、マヌエル・ノイアーやトーマス・ミュラーなど2014 FIFAワールドカップで優勝した時のベテランが多く残っている状況であった。
番狂わせの指標としてアメリカのグレースノート社が各種資料をもとに発表している勝利確率にて日本がドイツに勝利する確率は25%とされ、これは2018 FIFAワールドカップでコロンビアに勝利した時の18%よりも高く、BBCのサッカー解説員も「能力的に日本は過小評価」と評して試合前に日本はドイツに勝利することを予言するなど奇跡と呼べるほどではないとされている。
ちなみにドーハの歓喜の前日(22日)にサウジアラビアがリオネル・メッシ擁するアルゼンチンに2-1と逆転勝利しているが、FIFAランキングでアルゼンチンが3位(第1ポット)に対してサウジアラビアは51位(第4ポット)と明らかに戦力差があり、先述の勝利確率も8.7%と過去最高の番狂わせとされている。こちらの勝利は(試合会場がルサイルスタジアムであることから)ルサイルの奇跡と呼ばれており、サウジアラビアは翌23日に急遽国民の祝日になったほどである。
この試合の直後に行われたスペインとコスタリカの試合はスペインが終始圧倒し、7-0(炭鉱スコア)で勝利、しかもコスタリカはシュート0という圧倒的状況となった。日本がドイツを破ったことで勝ち点6だけではグループリーグを突破できないと踏んで大量得点を得る必要があったことと、コスタリカが2014 FIFAワールドカップのグループDでウルグアイ、イタリア、イングランドを3タテして首位で突破したことがあることから日本同様勢いに乗せないためにも締め上げる必要があると踏んでスペインが本気を出したと思われる。
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最終更新:2025/12/16(火) 08:00
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