ロサイル・インターナショナルサーキットとは、中東ペルシャ湾湾岸の産油国カタールにあるサーキットである。
3月にMotoGPの開幕戦がナイトレースで開催される。
カタールは中東のペルシャ湾湾岸に位置する国家である。国旗・国章ともにえんじ色を採用している。
かつては真珠採取と漁業ぐらいしか産業がなかったが、1940年代に油田が発見されてから何もかもが一変した。
カタールの首都ドーハから北に20km程度離れた場所に位置している。
周囲を砂漠に囲まれている。そして、海岸線から2kmしか離れていない海沿いのサーキットである。
海から吹き込む風によって砂がサーキットへ舞い込み、路面は常に砂埃で汚れている。
カタール全域が砂漠の平野であり、最も高い地点で標高海抜103メートルしかない。
こういう平坦なところには、風をせき止めるようなものが無いので、風がどんどん流れ込む。
2008年からMotoGPのナイトレースが定着している。
産油国特有の資金力を発揮し、1,000本の照明灯を立て、540万ワットの明るさを確保した。
サッカースタジアム70個分の照明というのがロサイルナイトレースの宣伝文句である。
闇夜にぽっかりとサーキットが浮かび上がり、マシンはキラキラと輝き、幻想的で美しい。
いつもの昼間のレースと違う点は、路面に映るライダーの影の様子である。
昼間のレースなら太陽が唯一の照明だから、一方向に伸びる影だけが濃く発生する。
ところがロサイルのナイトレースではライダーは2ヶ所以上の照明灯によって2つ以上の影が薄く発生する。
ライダーというのは「走っているときは後ろを振り返るな」と教育されているものであり、
レース中もあまり後ろを振り返らない。
自分の後ろに他のライダーが迫っていることは、路面に映る影を確認することで認識する。
その影が、いつもと様子が違う。ライダーは少し戸惑うことになる。
雨が降ったら濡れた路面が乱反射してライダーを惑わせてしまい危険なので、レース開催自体が中止される。
そのため、タイヤメーカーもレインタイヤを一切持ち込まない。
カタールは年間降水量40mm(ちなみに東京の年間降水量は1,500mm)なので、まあ雨が降るもないだろう・・・・・・
と思っていたら、2009年に土砂降りの雨が降って日曜決勝が中止になり、翌日月曜日に開催された。
2008年から2010年まではmoto3決勝が20時、moto2決勝が21時、MotoGP決勝が23時に行われた。
2011年から2014年まではmoto3決勝が19時、moto2決勝が20時、MotoGP決勝が22時に行われた。
2015年から2016年まではmoto3決勝が18時、moto2決勝が19時、MotoGP決勝が21時に行われた。
年を重ねるごとにレース開始時刻が早まっている。
(本当は2009年までmoto2ではなく250cc、2011年までmoto3ではなく125ccだが見やすくするためにこう書いている)
ロサイルサーキットは海に近く、夜になると湿度が上がって蒸し暑くなり、路面に夜露が発生する。
すると、転倒者が増えてしまうことがわかってきた。
そこで夜露を回避するため、レース開始時刻を早める措置がとられた。
時刻が進むにつれて気温と路面温度が下がっていくという、いつものレースとは真逆の現象が起きるので、
タイヤメーカーなどのメカニックたちは戸惑いやすい。
ライダーたちは体調管理にも気を遣う。
いつもなら朝早くに目を覚ましてホテルで食事してからサーキットに行き、日が暮れるまで忙しく作業して、
夕方にホテルへ帰って食事して、早めに就寝する。しかしロサイルのナイトレースは違う。
夜の22時まで走行し、それからチームのメカニックと打ち合わせして、ジャーナリストの質問に答える。
ホテルに辿り着くのは深夜1時~2時となり、レストランなど開いていない。
朝目を覚ますのは11時ぐらいであり、もうホテルのレストランは朝食を提供してくれない。
ホテルのレストランで食事するということが難しく、どこかで食べものを買い込んでそれを食べるしかない。
いつもは明るいうちに作業するのだが、ロサイルでは18時程度までひたすら何もしないで待たねばならない。
集中力を保つのが難しいという。
2008年からMotoGPの開幕を飾ることが定着している。
すでにカタールとドルナ(MotoGP開催者)との契約が結ばれ、2026年までMotoGPが開催される事になった。
ナイトレースの開幕戦であることも変わらない。
カタールはドルナにとって大スポンサーであり、まさに御大尽様である。
カタールから支払われる金によって、全てのチームが年間を通じて移動に使用する経費を賄っている。
中東のペルシャ湾湾岸の産油国ということで、白い服を着た、いかにも産油国の富豪といった人たちが登場する。
かつてカタールは真珠の名産地であったから、トロフィーは真珠をかたどったものが恒例となっている。
イスラム教のお国ということで、アルコール類は御法度であり、2014年までシャンパンファイトは行われなかった。
しかし2015年になって、とうとうシャンパンファイトが解禁された。
ただ、中身はノンアルコール飲料であり、Freixenet社のAishalというドリンクで、いわゆるハラールである。
メインストレートは1,068mと長い。
前半は低速コーナーが多いストップアンドゴーのレイアウトで、
後半は高速コーナーが並ぶテクニカルコースであり、二面性を持つ。
路面の起伏は少ない。
ドゥカティの成績が良いサーキットとしても知られ、
開幕戦のこのレースで躍進して「今年のドゥカティは違うぞ」と印象づけることが毎年の恒例である。
パッシングポイントがかなり多い。
メインストレート、メインストレートエンドの1コーナー、4コーナー、6コーナー、10コーナー、
12~14コーナー(右3連発)、15コーナーあたりが主なパッシングポイントである。
いつも砂埃にまみれているサーキットであり、タイヤに厳しい。
路面の砂埃がサンドペーパー(紙やすり)のようにタイヤをこすり、タイヤをすり減らしてしまう。
さらにはアブレーション(ablation 宇宙工学でも使われる言葉)といって、タイヤが荒れる現象が発生する。
タイヤが荒れてしまうと、その荒れた部分を中心にどんどん消耗が進んでしまう。
レースウィーク序盤は路面に砂埃が多いため、マシンが砂埃を巻き上げながら走ることになり、滑りやすい。
決勝当日になると、多くのマシンによって路面が掃除された格好になり、多少はマシになる。
多くのマシンが通った走行ラインは砂埃が少ないが、その走行ラインを外してしまうと砂埃が多く、滑ってしまう。
ゆえに、コース幅を広く使った走行は禁物である。
また、パッシングは走行ラインを外れ気味になる行為なので、やや難しく、慎重に行わねばならない。
メインストレートは長い。moto3だとスリップストリームを使ったパッシングが多く、順位変動が盛んに起こる。
2コーナーは、使用頻度が低いタイヤ左側を久しぶりに使う場所であり、転倒が多発する場所である。
3コーナー直前は、僅かながら上り勾配になっている。
7コーナーを立ち上がると、下り勾配になりながら緩やかなS字を切り返す。
9コーナーの立ち上がりは上り勾配になっている。
10コーナーを立ち上がってから高速テクニカルのセクションになる。
緩やかな11コーナーで加速し、12~14コーナー(高速の右3連発)に突入していく。
14コーナー立ち上がりから下り勾配になっており、ここで勢いを付けて高速の15コーナーに突っ込んでいく。
最終コーナーではパッシングを仕掛けずに綺麗なラインを通ることに専念し、
メインストレートでの加速を伸ばしつつメインストレートで抜くのがセオリーとなっている。
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最終更新:2025/12/12(金) 21:00
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