夕雲型駆逐艦

夕雲型駆逐艦（ゆうぐもがたくちくかん）とは、大日本帝国海軍の一等駆逐艦である。計画時の名称から前級の陽炎型駆逐艦と併せて「甲型駆逐艦」とも言われる。

前級は陽炎型駆逐艦、甲型駆逐艦としては本級が最終型。
一等駆逐艦の次級としては秋月型駆逐艦（乙型）/島風（丙型）/松型駆逐艦（丁型）。

　概要

第四次軍備充実計画（マル４計画）及び戦時急増計画（マル急計画）により建造された、陽炎型駆逐艦の改良型である。従って、陽炎型駆逐艦とほぼ同規模の船体である。

以下、陽炎型駆逐艦との対比を交えながら解説する。

船体

全長は119.3mで陽炎型と比べ若干延長された。これは、陽炎型に個体差が生じ設計速度（35ノット）が出ない艦が生じたためである。また、外観上の相違点として、陽炎型の艦橋が垂直であるのに対し夕雲型は下へ広がった末広がりの形状をしていることがある。陽炎型最終艦「秋雲」が戦後陽炎型と判明した決め手として、秋雲の艦橋部を移した写真が決め手になったと言われている。（当該写真では艦橋部分に夕雲型の特徴がなかったため。秋雲乗組員らは夕雲型僚艦と組んでいたこともあり、秋雲を夕雲型と認識していたらしい。）

兵装

主砲は従来型の50口径三年式12.7cm連装砲C型（仰角55°）ではなく本級及び「島風」が採用した12.7cm連装砲D型（仰角75°）。装填装置はC型と変わらなかったため、対空砲撃の際水平近くまで砲を戻す必要があり、対空角を取りやすくなった程度で対空性能は乏しいと言える。しかし、陽炎型等に「2番砲塔を降ろし25mm機銃を増備」する令達が本級にはなかった点を踏まえると、上層部はこのD型砲塔に一定の対空戦闘能力があったと考えていたようである。（実際、1944年末まで残っていた長波・朝霜・沖波にはこの訓令工事は行われていなかった。）

　性能諸元

排水量	基準：2077t 公試：2520t
全長	119.3m
全幅	10.8m
吃水	3.76m
機関	ロ号艦本式缶3基 艦本式タービン2基2軸 52000馬力
速力	35.0kt
航続距離	18ktで5000海里
燃料	重油：600t
乗員	225名
兵装	50口径三年式12.7cm連装砲D型3基 25mm連装機銃2基 61cm４連装魚雷発射管2基（九三式魚雷8本） 爆雷18～36

　同型艦

※④計画第125号艦＝島風
※『涼波』以降、所属は第十一水雷戦隊を経由するが記載省略。10駆＝第十戦隊　他＝二水戦

計 画 順	艦名 (仮称)	起 工 順	起工日 (建造所)	進 水 順	進水日	竣 工 順	竣工日 (所属駆逐隊)	喪 失 順	喪失日(状況) (喪失場所)
1	夕雲 ④計画第116号艦 →夕雲(艦これ)	1	1940年6月12日 京都・舞鶴海軍工廠	1	1941年3月16日	1	1941年12月5日 第十駆逐隊[IV]	4	1943年10月6日戦没 ベララベラ島沖(水上戦)
2	巻雲 ④計画第117号艦 →巻雲(艦これ)	2	1940年12月23日 大阪・藤永田造船所	3	1941年11月5日	2	1942年3月14日 第十駆逐隊[IV]	2	1943年2月1日戦没 サボ島沖(接雷･自沈処分)
3	風雲 ④計画第118号艦 →風雲(艦これ)	2	1940年12月23日 神奈川・浦賀船渠	2	1941年9月26日	3	1942年3月28日 第十駆逐隊[IV]	8	1944年6月8日戦没 ダバオ湾口(潜水艦)
4	長波 ④計画第119号艦 →長波(艦これ) →長波(アズールレーン)	4	1941年4月5日 大阪・藤永田造船所	5	1942年3月5日	4	1942年6月30日 第三一駆逐隊[II]	13	1944年11月11日戦没 レイテ島オルモック湾(空襲)
5	巻波 ④計画第120号艦 →巻波(艦これ) →巻波(アズールレーン)	5	1941年4月11日 京都・舞鶴海軍工廠	4	1941年12月27日	5	1942年8月18日 第三一駆逐隊[II]	2	1943年11月25日戦没 ブーゲンビル島沖(水上戦)
6	高波 ④計画第121号艦 →高波(艦これ)	6	1941年5月29日 神奈川・浦賀船渠	6	1942年3月16日	6	1942年8月31日 第三一駆逐隊[II]	1	1942年11月30日戦没 ガダルカナル島沖(水上戦)
7	大波 ④計画第122号艦	8	1941年11月15日 大阪・藤永田造船所	7	1942年8月13日	7	1942年12月29日 第三一駆逐隊[II]	6	1943年11月25日戦没 ブーゲンビル島沖(水上戦)
8	清波 ④計画第123号艦 →清波(アズールレーン)	7	1941年10月15日 神奈川・浦賀船渠	8	1942年8月17日	8	1943年1月25日 第三一駆逐隊[II]	3	1943年7月20日戦没 ベララベラ島沖(空爆)
9	玉波 ④計画第124号艦	10	1942年3月16日 大阪・藤永田造船所	10	1942年12月26日	9	1943年4月30日 二水戦付属 →第三二駆逐隊[III]	9	1944年7月7日戦没 マニラ湾(潜水艦)
10	涼波 ④計画第126号艦 →涼波(艦これ)	11	1942年3月27日 神奈川・浦賀船渠	11	1943年3月12日	10	1943年7月27日 第三二駆逐隊[III]	5	1943年11月11日戦没 ラバウル島沖(空爆)
11	藤波 ④計画第127号艦 →藤波(艦これ)	13	1942年8月25日 大阪・藤永田造船所	13	1943年4月20日	11	1943年7月31日 第三二駆逐隊[III]	11	1944年10月27日戦没 シブヤン海(空爆)
12	早波 マル急第340号艦 →早波(艦これ)	9	1942年1月15日 京都・舞鶴海軍工廠	9	1942年12月19日	11	1943年7月31日 第三二駆逐隊[III]	7	1944年6月7日戦没 タウイタウイ島(潜水艦)
13	浜波(濱波) マル急第341号艦 →浜波(艦これ)	12	1942年4月28日 京都・舞鶴海軍工廠	12	1943年4月18日	13	1943年10月5日 第三二駆逐隊[III] (→第三一駆逐隊[II])	13	1944年11月11日放棄 レイテ島オルモック湾(空襲)
14	沖波 マル急第342号艦 →沖波(艦これ)	14	1942年8月5日 京都・舞鶴海軍工廠	14	1943年7月18日	16	1943年12月10日 第三一駆逐隊[II]	15	1944年11月13日大破着底 マニラ湾(空襲) 1945年1月7日爆破自沈
15	岸波 マル急第343号艦 →岸波(艦これ)	15	1942年8月29日 神奈川・浦賀船渠	16	1943年8月19日	15	1943年12月3日 第三一駆逐隊[II]	17	1944年12月4日戦没 パラワン島沖(潜水艦)
16	朝霜 マル急第344号艦 →朝霜(艦これ)	17	1943年1月21日 大阪・藤永田造船所	14	1943年7月18日	14	1943年11月27日 第三一駆逐隊[II] →第二駆逐隊[V] →第二一駆逐隊[II]	19	1945年4月7日戦没 坊ノ岬沖(空襲) 1945年5月10日除籍
17	早霜 マル急第345号艦 →早霜(艦これ)	16	1943年1月20日 京都・舞鶴海軍工廠	17	1943年10月20日	17	1944年2月20日 第二駆逐隊[V]	11	1944年10月27日擱座放棄 セミララ島(空襲)
18	秋霜 マル急第346号艦 →秋霜(艦これ)	19	1943年5月3日 大阪・藤永田造船所	18	1943年12月5日	18	1944年3月11日 第二駆逐隊[V]	15	1944年11月13日大破着底 マニラ湾(空襲) 1955年解体
19	清霜 マル急第347号艦 →清霜(艦これ)	18	1943年3月16日 神奈川・浦賀船渠	19	1944年2月29日	19	1944年5月15日 第二駆逐隊[V]	18	1944年12月26日戦没 ミンドロ島沖(空襲)
マル４計画中止艦		128号艦　129号艦　：　｢信濃｣,111号艦 建造費欺瞞用
マル急計画中止艦		348号艦～355号艦　：　予定艦名｢妙風･清風･村風･里風･山霧･海霧･谷霧･川霧｣
改マル５計画艦		5041号艦～5048号艦　：　予定艦名｢山雨･秋雨･夏雨･早雨･高潮･秋潮･春潮･若潮｣

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大日本帝国海軍 一等駆逐艦 艦級一覧
戦間期	海風型 - 浦風型 - 磯風型 - 江風型
	峯風型 - 神風型[II] - 睦月型 - 吹雪型(特型) - 初春型 - 白露型 - 朝潮型 - 陽炎型(甲型)
戦中	夕雲型(甲型) - 秋月型(乙型) - 島風(丙型) - 松型(丁型)

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