戦闘妖精・雪風とは (セントウヨウセイユキカゼとは) [単語記事]

戦闘妖精・雪風（せんとうようせいゆきかぜ）とは、神林長平のSF小説及びOVA作品シリーズである。

概要

原作小説は1979～83年までSFマガジンで連載されたもの。1984年、「戦闘妖精・雪風」として早川書房より文庫化。当時のカバーイラストは「Ma.K(マシーネンクリーガー)」で有名な「横山宏」だった。

突如南極大陸に発生した超空間通路から侵攻してきた異星体JAM（ジャム）。人類は地球上からジャムを撃退し、現在は超空間通路の向こう側にあるフェアリィ星でジャムとの戦闘を続けていた。ジャムと戦う人類側組織、フェアリィ空軍(FAF)は長く続いた戦いでその構成が変容。地球ではみ出された者達が送り込まれる場所となっていた。その中でもより特殊な人材ばかりを集めた特殊戦第五飛行戦隊、通称『ブーメラン戦隊』所属の深井零と彼が乗る戦闘機「雪風」との戦いを描いた作品。

アメリカ海軍の戦闘機操作マニュアルを引用としたといわれる操作シーンや、人類と異質な存在、<ジャム>、そして人類側の戦闘コンピューターとの関係性など、作者である神林長平の独特な文体と衝撃的な物語の展開ともあいまって、長い間SFファンの間でも名作と呼ばれていた。

一作目が出版されてから10年後、SFマガジンで続編の掲載。以後単発的な発表が行われ、99年、ハードカバーの「グッドラック戦闘妖精・雪風」(以後、グッドラック)が発表された。
のち、2002年、グッドラックの後を受けて若干の設定変更がされた「戦闘妖精・雪風<改>」が文庫で出版。内容そのものは第一作のものと変化はなく、細部の変更のみとなっている。
二作ともカバーイラスト、雪風等のデザインは「長谷川正治」が担当している。

現在もSFマガジンで第三部の発表が不定期に続けられている。

OVA版は2002年よりスタート。以後５巻まで続いた。タイトルは「・」（中黒）の無い「戦闘妖精雪風」と表記される^[1]。

池田昌子演ずる深みを与えられたリン・ジャクスン女史は必見である。

OVA版メカデザイナー山下いくと氏がデザインした美少女キャラ、「メイヴちゃん」を使った「互換性の無い」スピンオフ作品である「戦闘妖精少女助けて！メイヴちゃん」もOVAとして発売されている。

尚、劇中に登場する「スーパーシルフちゃん」には神林長平氏直筆のパーソナルネーム「雪風」の揮毫が衣装の一部分に記されている。

登場キャラクター

深井零
　特殊戦所属パイロット、少尉。「雪風」のパイロット。登場時点では「雪風」以外信用することなく、地上ではブッカー以外にあまり人付き合いすらすることはなかった。

ジェイムズ・ブッカー
　特殊戦、少佐。戦隊指揮官。零の直属上官。階級ではなく零との友人関係をもつ。元パイロットでエンジニア。「雪風」の名づけ親。のちにこの戦いの背後にあるものに興味をもつ。ブーメラン作りが趣味。

エディス・フォス
　特殊戦軍医、大尉。グッドラックより登場。零と「雪風」の関係性に興味をもっている。

リディア・クーリィ
　特殊戦、副司令。FAF空軍の一部隊に過ぎない特殊戦をその政治力で軍団レベルの存在にまで引上げた。

リチャード・バーガディシュ
　特殊戦、少尉。「雪風」二代目の後席パイロット(電子戦オペレータ)。ブーメラン戦隊らしいパイロット。

登場機種

FAF 特殊戦第5飛行戦隊(ブーメラン戦隊) 運用機

スーパーシルフ　　FFR-31MR Super Sylph
FFR-31「シルフィード」の改良型という名目であるが、実際は設計やエンジン等も全く違う別の機体であり、ブーメラン戦隊に全13機中12機配備されている多目的偵察機。双発副座型の後退翼機。

スーパーシルフ“雪風”　　FFR-31MR/D Super Sylph “雪風”
ブーメラン戦隊こと特殊戦第5飛行戦隊の3番機として配備された戦術偵察機であり、FFR-31MR「スーパーシルフ」の改良型。双発副座型の後退翼機。ブースターを装着せずに生産されたD型の内の1機（FAF運用機「スーパーシルフ」で詳しく説明）。
識別型式表記はB-503（又はB503）、呼称はB-3。パイロットは深井零少尉（後に中尉）。
原作ではコクピット脇、ＯＶＡ版では機首先頭にブッカー少佐の手による「雪風」の文字がある。
高度な中枢制御体（電子頭脳）を持ち、自律した戦術判断や戦闘を可能にしており、時に零の操縦を離れて勝手に戦闘機動を行う。
後にＪＡＭに関心を持たれ鹵獲されそうになった際、雪風自身が試験飛行中のFRX-00「メイヴ」へ自我を転送。その後、「スーパーシルフ“雪風”」は生まれ変わった「メイヴ“雪風”」によって破壊される。

メイヴ“雪風”　　FFR-41 Maeve “雪風”　（FRX-00 Maeve “雪風”）
無人戦術偵察機FRX-99「レイフ」（Rafe）と同時期に開発され、「レイフ」を元に有人機として改造された（ブッカーが「レイフ」を原型に有人機を造るようシステム軍団に要請した）双発の戦術偵察機。双発副座型の後退翼機。
ＯＶＡ版は逆に、FRX-99「レイフ」の運用プロト機（原型機）という設定に変わっている（wikiでの記述では間違ってるので注意）。又、双発副座型の上下可動式前進翼機となっている。
雪風自身が自我転送後、特殊戦1番機（ＯＶＡ版は3番機のまま）として配備される。軍に制式採用される際に、FRX-00からFFR-41（OVA版ではFFR-44MR）へと型式が変わる。
エディス・フォス大尉の手によって心理分析ソフトを搭載。ある程度の人語によるコミュニケーションを可能にした。

「雪風」という愛称は、あくまでブーメラン戦隊における個々の機体（あるいは電子頭脳）を区別するために付けられるパーソナルネームであり、俗に言うペットネーム（機体の公式愛称）は「スーパーシルフ」や「メイヴ」に該当する。

ペットネームの英表記はOVA公式サイトで「Mave」、「Maeve」とあやふやだったが、現在は「Maeve」で安定している模様。
又、FFR-41MRという表記があるが、これはプラッツ製1/200モデルの商品名であり、原作とOVAの型式名を混同させたものであると思われる。

FAF 運用機

ファーンⅠ　　FA-1 Fern Ⅰ
フェアリィ星の侵攻に合わせて配備されたFAFの主力制空戦闘機であり、主に前線基地の戦術戦闘隊（TFS）で運用されている単発の戦術戦闘機。

シルフィード　　FFR-31 Sylphide
FAFの主力制空戦闘機であり、FAFが初めて独自開発した双発の大型戦術戦闘機。
「シルフィード」とは「風の妖精」を意味し、ブーメラン戦隊の「スーパーシルフ」と区別して「ノーマルシルフ」とも呼ばれる。

スーパーシルフ　　FFR-31MR/D Super Sylph
防衛偵察航空団の戦略偵察隊に配備されている超高速戦術偵察機。
D型はブーメラン戦隊に配備されている通常型FFR-31MRを、空力設計の見直し、エンジンの高出力化、ラムジェットブースター装着等をして高高度超高速機として改良。空力設計は向上しているが機体外観は殆ど変わらない（OVA版ではTARPSポッド・センサーブレードが若干小型化されているくらい）。
又、数機がラムジェットブースターを装着せずに生産され、その内の一機が「スーパーシルフ“雪風”」としてブーメラン戦隊に配備された。

ファーンⅡ　　FA-2 Fern Ⅱ
FAFの次期主力制空戦闘機であり、FA-１の後継機として開発された新型戦術戦闘機。

レイフ　　FRX-99 Rafe
FRX-00と同時期に開発され原型ともなった次期主力無人戦術偵察機。